転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2684話

 ルナ・ジオンの首都たる、クレイドル。

 その中心部分に存在する政庁に、俺の姿はあった。

 それも、本来ならルナ・ジオンの上層部の者しか入れないような、そんな場所に。

 いや、セイラがお茶を楽しむ場所である以上、ルナ・ジオンの上層部の者でもセイラに招かれない限りは来る事が出来ない場所か。

 

「何だか、こうしてセイラと一緒に紅茶を飲むのって随分と久しぶりな気がするな」

「あら、そう? でも、そう言われるとそんな気がしないでもないわね。……もっとも、アクセルの場合は、私が色々と忙しい仕事をしている間も、女の人と楽しい時間をすごしていたみたいだけど」

 

 若干拗ねた口調でそう告げるセイラ。

 何だかニュータイプではない、また別の迫力を感じるように思えるんだが……うん、これはきっと気のせいだな。

 何となくそう自分に言い聞かせて、紅茶を一口飲む。

 

「そう言われても、あまり心当たりはないな」

「……ふぅん」

 

 一瞬だけ鋭くなった視線は、やがてすぐに落ち着く。

 いや、こんなにセイラを怒らせるような事はあったか?

 そんな疑問を抱きつつ、取りあえずこの手の話をするのは止めておいた方がマシだろうと、俺はここに来た理由の一つを尋ねる。

 

「それにしても、まさかルナ・ジオンがジオンと連邦の間に停戦協定を結ぶ為の仲介役をするとはな。少し予想外だった」

「あら、そう? 私達にも利益があるからこそ引き受けたのよ。それに……間違ってるわよ。停戦じゃなくて、終戦ね」

「……は? 終戦?」

 

 セイラの言葉に対し、そう返す。

 停戦と終戦。言葉は若干似ているし、その生み出す効果も似てはいるが、性格そのものは大きく違う。

 停戦というのは、戦闘を一時的に停止すること。つまり、双方どちらかがその気になれば、すぐにでも戦闘を開始することが出来るのだ。

 そして終戦というのは、戦いそのものを終えるという意味。

 一度終戦してしまえば、何らかの大義名分の類がない限りは、再度戦闘を行うような真似は出来ない。

 ……もっとも、停戦であってもそれは名目上だけで実際には終戦と同じ扱いであり、停戦状態の国よりも別の国、それもその国を発展させてやった国に喧嘩を売って金を奪おうとする国もあるが、それは全世界的に見ても希少な例だろう。

 ともあれ、停戦と終戦というのは根本的に意味が違うのだ。

 だからこそ、セイラの口から終戦という言葉が出た事に驚き……そして考えてみれば、納得出来るものもある。

 ア・バオア・クーの宙域で停戦の仲介をすると連絡を貰った時に見た諸々の状況を見れば、確かに連邦とジオンの双方にとっても停戦よりは終戦の方がいいのだろう。

 ジオン軍はともかく、連邦軍の方でも既に学徒兵を使うかどうかといったところまで追い詰められていたのだから。

 

「なるほど、終戦か。……確かに中途半端に停戦とするよりは終戦の方がいいだろうけど、停戦と終戦だと当然のように条件も色々と違ってくるんじゃないか?」

 

 一時的な停戦ならまだしも、その戦争を公式的に終わらせるとなると、双方に色々な交渉が必要となる。

 であれば、特に連邦軍の方が有利だった以上、色々と要求してもおかしくはない。

 

「その辺はうちが間に入ってどうにかするという事になるでしょうけど……恐らく、連邦軍の方でも、そこまで厳しい条件は出せない筈よ」

「そうか? ……正直なところ、レビルがいればセイラのその言葉にも頷けたけど、そのレビルは死んでしまったんだぞ?」

 

 レビルが死んだというのは、連邦軍としても大きいだろう。

 連邦軍にとって、レビルという人物の影響は非常に大きい。

 レビルがいたからこそ……いや、レビルとゴップがいたからこそ、連邦軍はここまでジオン軍と戦えたのだ。

 そもそも、連邦軍にMSをもたらしたV作戦もレビルが提唱したものだ。

 あくまでも直接聞いた訳ではなく、噂でしかないが……当初はV作戦に対し、連邦軍上層部の大半や連邦政府の政治家達も反対していたらしい。

 それをレビルが半ば無理矢理押し通し、それでようやくV作戦が始まったとか。

 そんなレビルが死んでしまった以上、今の連邦軍で期待出来る相手は……それこそ、ゴップやレビルの派閥の者達くらいか?

 

「そうね。レビル将軍が死んでしまったのは痛いけど、連邦軍も客観的に事実を見る事が出来る者はいる筈よ。そうなれば、私達から提案された終戦の話は決して悪くはない筈」

「……ちなみに、それを行って得られる事が出来る月の利益は?」

「兵器メーカーの多くを私達が得られるわ。それ以外にも、ジオン軍の持っていた技術の大半は情報や実物ごと譲渡するらしいわね」

「それは……また……」

 

 言ってみれば、ルナ・ジオンが欲している最大のものは、技術だ。

 特にジオン軍が持ってる技術の幾つかは、ディアナの技術より先をいってるものが多い。

 ニュータイプ系の技術なんかは、特にそうだろう。

 また、ビームライフルに関しても、何だかんだと最初に実用化したのは連邦軍で、それに続いてジオン軍。そしてルナ・ジオン軍は明らかにその2つの勢力よりも遅れていた。

 勿論、全ての面においてディアナが劣っているという訳ではなく、連邦やジオンよりも勝っているところも多い。

 その最たるものが、連邦系とジオン系の技術の融合だろう。

 ジオンと連邦、双方の技術者と……何より、俺が連邦やジオンから色々な機体を奪ってきたからこそ、双方の技術の融合は上手くいっている。

 

「なるほど、話は分かった。確かにそれが上手くいけば、俺達にとっても利益は大きい。ただ、仲介を依頼してきたジオンはともかく、連邦の方はそれを許容すると思うか?」

 

 ジオンの持つ技術は、当然の話だが連邦だって欲している。

 ……いや、ニュータイプ用のMSやMAによって大きな被害を受けたのは、連邦軍なのだ。

 それだけに、連邦がジオンの持つ技術をより多く欲しても、おかしくはない。

 

「その辺は、こちらの交渉次第でしょうね。連邦軍がこちらの要求を全面的に認めるとは思えないけど……今までの一件で、連邦軍は私達に対して大きな借りがある筈よ。そうである以上、向こうとしてもある程度の譲歩はする必要がある筈」

「……借りを借りと認識していればな」

 

 レビルやゴップなら、借りを借りときちんと認識出来るだろう。

 レビルの派閥の……例えばコーウェン辺りも、その辺はしっかりと認識してもおかしくはない。

 だが、強硬派はどう思うか。

 特にア・バオア・クーを占領した事によって、これで自分達の勝利は確実だと、そう判断している以上、ジオンの持つ全てを自分達が奪うと、そう考えてもおかしくはない。

 ルナ・ジオン軍が協力した事に対しても、すぐに忘れてしまってもおかしくはないのだ。

 だからこそ、今回の一件においてはこっちがどう行動するのかが重要になってくる。

 

「そうね。だから……こっちは連邦とジオンが終戦協定に入る前にサイド3に行って、技術者を連れてくるつもりよ。それに……ダルシア首相から面白い話を聞いたわ」

「……面白い話?」

「ええ。ジオン軍が有している小惑星を利用した要塞は、ソロモンとア・バオア・クーの他にも幾つかあるわ。例えば、火星に向かう途中に存在する、アクシズ。それに……この地球圏にもペズンという場所があるらしいの。アクシズの方は少し前からこちらに連絡をしてきていたから知ってるけど、ペズンという小惑星を入手出来れば、大きな力になる。何しろ、そのペズンでは新型MSの開発が行われていたらしいしね」

「それは、また……」

 

 セイラの言葉に驚き、同時に以前ガルマと会話した時の事を思い出す。

 そう言えば、ガルマもそんな感じの事を言っていたな。

 とはいえ、その辺は後で考えるとして……問題なのは、そのペズンだろう。

 

「新兵器を開発していたという事は、当然ながらそこにいるのはジオン軍の兵なんだよな? 向こうは、ルナ・ジオン軍がペズンを引き渡すように言っても、素直に信じるのか?」

「どうかしら。その辺は直接行ってみないと分からないと思うわ。首相からは、一応大丈夫だという話を聞いてるけど……」

「それを鵜呑みにするような真似は出来ない、か」

 

 俺の言葉に、紅茶を飲みながら頷くセイラ。

 ダルシアは首相という地位にいたとはいえ、その権限そのものはかなり小さかった筈だ。

 ジオン公国を実際に動かしていたのは、ギレンだったのだから。

 つまり、ダルシアの首相という地位は半ば名目上のものだったに近い。

 とはいえ、デギンが死に、ギレンも死に、ドズルも死に、ガルマも表向きは死んだ事になっているし、キシリアは……シャアを向かわせたけど、それがどうなったのかは、正直なところ分からない。

 何しろ、アムロもシャアを追ってア・バオア・クーに行ったしな。

 少なくても、俺にはキシリアがどうなったのかといった情報が入ってきていない。

 上手くア・バオア・クーを逃げ出せたのか、それともシャアが仇討ちを成功させたのか。

 そう言えば、シャアに関してはセイラにも話しておく必要があるだろうな。

 

「ええ。だから、近いうちにペズンに向かわせる予定よ。……連邦軍が来るよりも前に、ペズンはこちらで確保しておきたいのよ」

 

 そう告げるセイラの言葉は、納得出来る面が大きい。

 ソロモンもア・バオア・クーも、連邦軍が確保している。

 その上で、連邦軍にはルナツーもある。

 それに比べると、ルナ・ジオンは小惑星の要塞は1つも所持していない。

 もっとも、小惑星の要塞の代わりに月の周辺に配置されている機動要塞が幾つも存在しているのだが。

 ともあれ。小惑星の基地を確保したいというセイラの気持ちは理解出来る。

 また、小惑星であれば、月の近くだったり地球の近くだったりに運んでくるような真似も出来る。

 

「そうだな。なら、ペズンに行く時は俺にも知らせてくれ。少し興味あるし」

 

 ペズンで開発しているMSというのは、俺にとっても興味深い。

 また、ペズンにあるMSを持ってきてディアナで研究をするにも、俺がいれば空間倉庫を使えるし。

 わざわざペズンという小惑星で開発している以上、恐らくジオン軍が現在使っているMSとはまた違う、別のMSなのだろう。

 この辺はあくまでも俺の予想である以上、実際には行ってみないとどうにもならないのだが。

 

「いいの? いえ、勿論アクセルが行ってくれるのなら助かるけど」

「ああ。新型MSとかそういうのは、見てみたいし」

 

 これは正直な感想だ。

 ペズンで開発されているMSに、興味を持つなという方が無理なのだから。

 だからこそ、俺はペズンに向かうのに自分から進んで立候補したのだ。

 

「そう言ってくれると嬉しいけど……本当にいいのね?」

「問題ない。……そこまで念を押すって事は、何かあるのか?」

「何でも、ペズンではペズンで色々と問題があるらしいと聞いてるわ。具体的に言えば、ペズンにいる人達が素直にこちらの言葉を聞くとは思えないといったところかしら」

「それは、また……厄介だな。けど、別にペズンって言ってもアクシズみたいに遠い場所にある訳じゃないんだろ? なら、ジオンの方から連絡を入れて貰えば何とかなるんじゃないか?」

「そう簡単にはいかないらしいわ。ジオンはジオンで色々とあるらしいから」

「それって……もしかして、ペズンといういらない小惑星基地を押しつけられただけじゃないのか?」

 

 ふと思いついてそう告げると、セイラは満面の笑みを浮かべて頷く。

 この様子を見ると、セイラもその辺は承知の上で今回の話に乗ったといったところか。

 実際、そのペズンでどういうMSが開発されているのかは分からないが、それがルナ・ジオン軍に……そしてディアナやアルテミスに影響を与えるのなら、ペズンを確保しておいて悪くはないって事か。

 ともあれ、ペズンについての話が一段落したところで、俺は少し冷めてきた紅茶を一口飲んでから、今回の本題とも言うべき話題を口にする。

 

「ア・バオア・クーでの戦いで、俺はシャアと遭遇した」

「……そう。それで?」

 

 セイラは俺がシャアを連れてきていない時点で、この話の先は分かったのだろうが、それでもそう言葉を返す。

 

「シャアの乗っているジオングを入手する代わりに、シャアは逃した」

 

 そう言った瞬間、一瞬だけがセイラから発せられるプレッシャーが明らかに増した。

 それこそ、何も知らない一般人なら、腰を抜かしてもおかしくはない程のプレッシャー。

 

「何故? と聞いてもいい? アクセルも、私がルナ・ジオンを建国した理由は理解しているでしょう?」

 

 嘘や冗談を言ったら許さない。

 そう視線で告げてくるセイラに、俺は少し考えてから口を開く。

 

「ジオングという、ジオン公国の秘密兵器が欲しかったのも事実だったが、あの時点でシャアを無理矢理月に連れてきても、問題の解決にはならない。そう判断したからだ。……もっとも、キシリアがどうなったのかは、俺にもまだ情報が入ってないけどな」

「……キシリア・ザビは生きてア・バオア・クーを脱出したそうよ」

 

 そう、セイラは告げるのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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