ペズンに向かうという事にはなったのだが、ア・バオア・クーを攻略する為の星一号作戦が終わったばかりであり、それこそチェンバロ作戦から今までずっと戦い続けだったという事もあって、さすがに今すぐにペズンに向かう……といったような事は無理だった。
いや、やろうと思えば出来たのかもしれないが、今の状況を思えば、そこまで無理をする必要はない。
そもそも、連邦軍はまだサイド3にも到着していないのだから。
一応停戦協定……いや、終戦協定についての話はルナ・ジオンから連邦とジオンの双方に知らされているので、一応現在は終戦協定に向けての停戦という事になってる筈だ。
とはいえ、それはあくまでもそのように通知されているというだけであって、ジオン軍、連邦軍双方共に必ずそれを守る……とは限らないのだが。
また、終戦協定の橋渡し役であったり、ジオン公国から譲渡される技術の確認、今回の戦いでルナ・ジオンに投降した者達の家族や友人、恋人といった者達を暴徒の類から守る為……それ以外にも様々な理由があり、ルナ・ジオン軍からもある程度の部隊はサイド3に向かっている。
ジオン軍の方は、終戦……自分達の負けを認めるといったことが出来ずに、もしくはギレンが死んだ事を許せずに戦っているのか……それとも、ア・バオア・クーから逃げ延びたというキシリアが裏で糸を引いているのか。
正直なところ、セイラとのお茶会というか、面談というか、報告会というか……ともあれ、あの時にキシリアが逃げ出したという話を聞いても、俺は素直に納得する事が出来た。
一応キシリアを殺せるようにと、シャアを逃がしはしたのだが……どうやら、そのシャアは間に合わなかったらしい。
ア・バオア・クーから逃げ出したキシリアが、現在どこに潜伏してるのかは俺にも分からない。
それでも、ダルシアの主導でジオンと連邦の終戦協定が結ばれようとしているという事になると、サイド3に向かうという訳にはいかないだろう。
陰謀を得意とするキシリアだけに、恐らくは自分と信頼出来る部下以外は誰も知らないような……そんな場所があっても、おかしくはない。
コロニーを確保しているというのは少し考えにくいので、可能性としてはペズンのような小惑星基地とかか?
……もしかして、実はキリシアがペズンにいるとか、そういう事はないよな?
いやまぁ、いたらいたでこっちも色々と助かるんだが。
ギレンが死んだ以上、キシリアは出来れば戦争の責任を取るという意味で確保しておきたい。
でないと、最悪の場合はガルマがその役を担う事になってしまう。
だが、ガルマは将来のジオン公国を率いて貰いたい相手である以上、そのような真似は出来れば避けたい。
というか、ジオンにおけるガルマの人気を考えると、下手にそんな真似をすれば、再び戦争が起きてもおかしくはないんだよな。
だからこそ、出来ればキシリアは出来るだけ確保したい。
あくまでもシャアに殺されてなければ、だが。
一応セイラに入ってきた情報によると、その辺は心配する必要はなさそうだが、それはあくまでもその情報が正しければだ。
それに、もしキシリアを確保しても、ガルマの性格を思えば何とか助けようとするだろうし。
その辺の事情を考えると、やっぱり色々と面倒な事になりそうな……
「ちょっと、アクセル。聞いてる?」
「ん? ああ、悪い。それで?」
考えに集中していたところで、レモンに声を掛けられて我に返る。
そんな俺の様子に、レモンは呆れ混じりの視線を向け、口を開く。
「だから、アクセルが連れてきたこの娘の事よ。身体の方には結構な薬が残ってたけど、ホワイトスターの施設なら、その辺もどうにかなるわ」
「クロエを連れてきた時には5日くらいでどうにかなるって話だったけど、その辺は変わってないのか?」
「当然でしょ。そもそも、この娘を連れて来たのも今日じゃない。それがすぐにどうこうなる訳ないでしょ?」
そう言われると、クリスと一緒にクロエをここに連れて来てから、まだ1日も経ってないんだよな。
あれからも結構な出来事があったから、その辺はすっかり忘れてた。
いや、本当にア・バオア・クーで行われた星一号作戦では、色々な事があったよな。
それこそ、いつまで続くんだって思うくらいに色んな出来事があった。
それは勿論嬉しいが……それでも、今の状況を考えるとイベントが多すぎだろう。
この世界の原作で、アムロは一体どれだけの経験をしたのやら。
多分、原作でもジオン軍との戦争が終わって、第一部完的な終わりだったんだろうから……あ、でも原作でシャアが小惑星を地球に落とすまで一体どれくらいの時間が掛かるか分からない以上、注意を怠るような真似は出来ないが。
「そうだな、今日なんだよな。……まぁ、それはいいとして。クロエの治療が終わった場合、薬の影響はないと思ってもいいのか?」
「ええ。身体に薬の影響はないと思うわ。ただ……問題なのは、フラッシュバックでしょうね。一度そういう経験をしただけに、どんなタイミングで薬で苦しんでいた時の影響が来るのかは分からないと思ってもいいわ」
「それは……正直なところ、厄介だな。話に聞いた事くらいはあるけど」
薬の影響によるフラッシュバックというのは、かなり有名な話だ。
とはいえ、この辺は極端に人によって変わるらしいが。
俺はそういう薬を使った事も、使われた事もないから、その辺については実感がない。
「千鶴かあやかに頼めば、魔法でその辺を何とかしてくれるかもしれないけど。どうする? それか、木乃香なら生活班の中でも回復魔法に特化してるから、そっちに任せてもいいかもしれないわね」」
レモンの言葉に少し考える。
千鶴は回復魔法に大きな才能を持っていて、あやかは全ての魔法を高難易度で使いこなす。
とくにあやかは、普通なら器用貧乏と言われてもおかしくはないのだが、本人の才能と厳しい訓練により、器用貧乏ではなく万能型とでも呼ぶべき能力の持ち主になっている。
それこそ、純粋に魔法だけの技量という点ではシャドウミラーの中でもエヴァの次くらいの実力ではないかと思えるくらいに。
そして、近衛。
それこそ、回復魔法という点においてはシャドウミラーでもトップクラスだ。
基本的にシャドウミラーにおいて魔法を教えているのはエヴァだが、そのエヴァの場合は吸血鬼という関係で回復魔法が苦手なんだよな。
だからこそ、純粋に回復魔法ということになれば、近衛が一番腕利きとなる。
「凛の魔術の方でもいけそうだけど……その辺は、やっぱり魔法の方が便利なのか?」
「どうかしら。ただ、凛ってイメージ的に回復魔法は苦手そうじゃない?」
「それは……」
そうレモンに言われると、俺としても納得せざるを得ない。
凛の性格からして、回復か攻撃かで考えると、明らかに攻撃向きなのだから。
……もっとも、夜の事になると受け身になって散々鳴かされる事が多いのだが。
「取りあえず、フラッシュバックがあるようなら、千鶴とあやかに頼んでみた方がいいな」
ちなみに、シャドウミラーの中では一番の魔法の使い手は間違いなくエヴァなのだが、エヴァの場合は自分が吸血鬼だという影響もあってか、回復魔法は苦手なんだよな。
魔法じゃなくて、アーティファクトなら美砂のセイレーンの瞳で対処なんて真似も出来るかもしれないけど。
「そうね。そっちの方は専門家に任せた方がいいと思うわ。けど、この娘……治療が終わったらどうするの? シャドウミラーに?」
「いや、月にだな。そこからはクロエ次第だ。軍人になるもよし、それ以外の道を探すもよし」
ペイルライダーのパイロットをやっていたくらいだから、MSの操縦技術という点では結構な技量があるのだろう。
俺が見つけた時は半ば錯乱状態だったので、実際にどのくらいの技量があるのかまでは、ちょっと分からないが。
ただ、MSの操縦技術……それも高い技術を持っているのなら、ルナ・ジオン軍では喜んで引き受けるだろう。
とはいえ、薬物による強化で得た身体能力に任せた操縦をしていたのなら、その薬物が抜けてしまえば同じような操縦は出来なくなるだろうが。
「ふーん。……まぁ、アクセルがそう言うのなら別にいいけど」
「何だ? 何か、妙に含んだような言い方だな」
「特に何かがある訳じゃないんだけどね。何となくそう思っただけで」
そう告げるレモンは、特に何かを隠している様子ではなく、本当にそのように思っているように考えられた。
「それより、UC世界で得た技術についてなんだけど……」
不意に話を変えた様子に少しだけ驚く。
とはいえ、微妙な雰囲気になるよりは話題を変えた方がいいだろうと思えたので、それはそれで助かったのだが。
「何か有用な技術があったか?」
「うーん……そうね。幾つかそういう技術があったのは間違いないわ。けど、UC世界の技術は基本的にミノフスキー物理学が前提になっているものなのよ。つまり、ミノフスキー粒子とかがどうしても関わっている訳で……正直、UC世界以外では使わない方がいいと思うわ」
「やっぱりそうなるか」
このUC世界特有の物質である、ミノフスキー粒子。
これは使いようによってはかなり便利な代物だ。
それこそMSに搭載出来るような核融合炉だったり、メガ粒子砲やそれを防ぐIフィールド、アプサラス系やアッザム、ホワイトベースが装備しているミノフスキークラフト等々。
他にも探せば、まだ色々と便利な代物があるのは間違いのない事実。
だが……同時に、電子機器の類を問答無用で使えなくなるといったような効果を持っており、そういう意味では非常に使いにくい。
この技術が下手に他の世界に流出したりしようものなら、色々と問題になるのは確実だろう。
だが、そうなればそうなったで、UC世界の中でもシャドウミラーが欲しがるような技術の類は、基本的にミノフスキー粒子が関係している以上、それを迂闊にシャドウミラーで使うという訳にもいかないんだよな。
とはいえ、このUC世界とはこれからも長い間付き合っていく事になるんだろうし、そう思えばいずれミノフスキー粒子じゃない技術が何か出て来る可能性は否定出来ないが。
ただ、多分このUC世界においてはミノフスキー粒子が大きな意味を持つ以上、そんな技術が具体的にいつ出て来るのかというのは、正直なところ俺にも想像は出来ない。
「ええ。……政治班の人達も少し困ってたわよ?」
「政治班が? ……ああ、異世界間貿易で輸出する奴がないのか」
俺の言葉に、レモンはその通りといったように頷く。
現在、シャドウミラーを中心とし、その本拠地であるホワイトスターを中継点として行っている、異世界間貿易。
その名の通り、シャドウミラーと交流のある世界との間で貿易をするといった行為だが、基本的にはその世界独自の物が高値で取引される。
ただし、兵器は余程の――マブラヴ世界のような――例外がなければ、輸出されることは許可されないが。
ともあれ、その世界独自の商品が好まれる以上、UC世界独自となると……ミノフスキー粒子を抜きにして考えた場合、ルナ・チタニウムとか?
ただし、金属という点では色々な世界で多数の金属がある以上、最初は物珍しさから購入はするかもしれないが、それ以後となると継続的に購入するといった事はまずないだろう。
そうなると、UC世界で貿易の商品として出せるのは……プチモビとかボールとかの、ミノフスキー物理学由来ではない動力炉を持つ作業用ポッドとか?
あれ? プチモビとかボールは何で動いてるんだったか。
それはともかくとして……それ以外でUC世界独自の物となると、他に何がある?
「ニュータイプとか?」
「それは……どうかしら。実際、他の世界ではかなり興味深い能力だとは思うけど、それをこちら側……具体的には、ルナ・ジオンのセイラが許容すると思う?」
レモンの言葉に、俺は考えるまでもなく首を横に振る。
ニュータイプとして優れているが故に、セイラとしてはニュータイプを商品として売り込むなどといった真似は、まず許容しないだろう。
そのような真似をするくらいなら、それこそわざわざ貿易をしなくてもいいと、そう考えてもおかしくはない。
特にフラナガン機関の研究所にいた者は、その時の事を思い出すだろうし。
とはいえ、フラナガン機関にいた子供達の中でも、現在のアルテミスにいる研究者達のような者が担当だった子供達は、そこまで酷い虐待を受けていない。
そういう子供達なら、報酬によっては他の世界で実験を受けたりといったような事を希望する可能性もあった。
勿論、非人道的な実験の類であれば、許容出来ないだろうが。
……問題なのは、セイラがそれを許可するかどうかだろう。
セイラ自身がニュータイプだという事もあってか、その辺の制限は結構厳しいものになりそうだし。
とはいえ、だからといってUC世界からの輸出はと考えると……ハロとか?
いやまぁ、アムロが改造したハロなら結構な人気が出そうだが……それだって、別にUC世界独自のって訳じゃないだろうし。
これがシャドウミラーに対してだけってなら、それこそ小惑星とかスペースデブリとか、キブツの材料になる代物で十分役立つんだが……他の世界に小惑星とかスペースデブリを輸出してもな。
異世界って事で、興味を持つ者はいるかもしれないし、未知の金属とかそういうのを入手出来る可能性もあるので、ギャンブル的な意味で欲しがる者はいるかもしれないが、結局のところ、その程度で終わりだろうし。
そんな風に考えながら、俺は後で政治班の面々に相談でもしようと考えるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637