「……やっぱりジオン軍だな」
ムサイ級だったからこそ、前もって相手がジオン軍であるというのはシーマからの情報で知っていた。
だが、それでもやっぱりガンダム7号機の全天周囲モニタを見ると、出撃してきたのがザクとリックドムの2種類だけだったのを見れば、改めてそんな風に思うのは当然だろう。
ただし、ペズンでは戦闘になる可能性も十分にあった以上、あのジオン軍の艦隊はあの戦力でペズンと戦う気だったのか?
そうなると、あの艦隊は突撃機動軍じゃなくて、キシリアに反感を抱いている連中……といったところか?
もし突撃機動軍なら、リックドムではなくリックドムⅡだったり、ゲルググだったりといったようなMSが出撃してきてもおかしくはないだろうし。
あ、でもア・バオア・クーから逃げ出してきたという事を考えれば、それこそザクやリックドムよりも性能の高いMSを出撃してきてもおかしくはない。
だとすれば……この艦隊を派遣してきたのが誰であっても、ペズンの占領そのものはそこまで重要視していないといったところか。
まぁ、どのみちペズンと協力してルナ・ジオン軍に対抗するといったような真似をされるよりも前に、ここで倒しておいた方がいいのは間違いないが。
「シーマ、どうする? まずは降伏勧告をするんだろ」
『そうさね。じゃあ、ちょっと待っててくれるかい?』
「その辺は任せるよ。……ただ、シーマはジオン軍にはかなり嫌われてるだろうけど、大丈夫か?」
『あははは。まぁ、それはしょうがないよ。ジオン軍……いや、ジオン公国がここまでの有様になったのは、あたしのせいってのもあるしね』
俺の言葉に、シーマは全く気にしていないような笑みを浮かべてそう告げる。
シーマがセイラとは違った意味でルナ・ジオンの象徴となっているのを見れば分かるように、ルナ・ジオンの建国でシーマの果たした影響は決して少なくない。
だが、そのシーマの言動によってジオン公国の評判が悪くなったのは事実だ。
コロニー落としをやったということで元々評判は最悪だったのだが、そのコロニー落としをやる為に何も知らないシーマ達を騙して毒ガスを使わせたというのは、決定的なまでに評判が悪くなる理由だった。
結果として、このままジオン公国にいるのは不味いと判断した者達が月に移住や亡命をしてきたりしたし。
その上で、シーマ本人は宇宙の蜉蝣の異名を持ち、それに見合うだけの実力もあって、海兵隊を指揮する能力もある。……ある意味、万能な奴だと思っても間違いではない。
実際にルナ・ジオン建国後から、シーマはかなりの活躍をしている。
連邦軍の強硬派が月に攻めて来た時も、その報復としてルナツーを占拠した時も、そしてチェンバロ作戦や星一号作戦でも。
……うん、こうして考えてみると、シーマはルナ・ジオン建国後の大きな戦いにはほぼ全て出撃してるんだよな。
あくまでも宇宙での戦闘はという限定でだが。
とはいえ、地上ではハワイしかルナ・ジオンの領土はないし、そのハワイにしてもそこまで広くはないので、現有の戦力で十分守れるから、どこかが攻めて来ても対処するのは難しい話ではない。
……最悪、アプサラスⅢがいるし。
正直なところ、アプサラスⅢがいるという時点で攻めてくる方にしてみれば脅威だよな。
一撃の威力が高いメガ粒子砲だけではなく、複数の相手を同時に攻撃出来る拡散メガ粒子砲とかもあるし。
特に連邦軍は、オデッサでアプサラスⅢの威力を直接見ているだけに、その脅威度は余計に高いだろう。
もっとも、脅威度が高いからこそ、いつそれを使われるかも分からないと考えて、先制攻撃をしてきたりとかしかねないのだ。
「ともあれ、シーマが何かを言えば向こうは色々と言ってくる可能性が高い。それは分かってるのか?」
『なら、この戦いが終わった後、アクセルの胸で眠らせて貰うのも面白そうだね』
冗談っぽく告げてくるその言葉は、いかにもシーマらしい大人の余裕が見える。
「そうだな。シーマが傷ついてるのなら、慰めてもいいぞ」
『……ば……全く、いきなり何を言うかと思ったら。とにかく、通信を切るよ』
薄らと頬を赤くしたシーマは、通信を切る。
……照れたのか?
シーマは顔立ちが整っていて男好きのする身体をしているが、その性格から女として見られるよりも前に姐さん的な存在として見られる事が多いからな。
また、本人の放つ風格的な存在もあってか、シーマを直接口説くといったような真似が出来る者は、希少だ。
そういう意味では、純情な性格をしているのかもしれないな。
そんな事を考えている間に、ルナ・ジオン軍の面々は揃って出撃して隊形を整える。
何だかんだと、MSの数は30機くらいか。
普通に考えれば結構な大戦力なんだろうが、ソロモンやア・バオア・クーでの戦いを経験した身としては、少ないと思えてしまう。
ペズンにいる部隊はそこまで大規模ではないし、何より昨日の今日で戦力を揃えるのは大変だったんだろうから、この規模でもしょうがないんだろうが。
『聞こえているね? あたしはルナ・ジオン軍で海兵隊を率いている、シーマ・ガラハウだ』
オープンチャンネルで、シーマの声が響く。
『どうやらあたし達と同じ場所に向かってるようだけど、こっちは退く気はないよ。そうである以上、そちらが退かないのならここで戦いになる。こっちは精鋭が揃っているから負ける気はないけど、どうするんだい?』
シーマのその言葉に、暫く返答はない。
だが……1分が経過するかどうかといった頃に、やがて向こうからもオープンチャンネルで通信があった。
『シーマ・ガラハウ……栄光あるジオンを汚した貴様の如き姦婦は許容出来る筈がない。ギレン総帥が貴様のせいで、どれだけ無念な思いをした事か。ジオンの大義が失われた原因の幾つかは、貴様にも問題がある』
そう言い、通信に出たのはシーマよりも年上の中年の男。
スキンヘッドにしている為か、年齢は詳しくは分からない。
髭を生やしている事もあり、かなり強面の様相をしている。
だが、その様子から一角の人物であろう事は予想出来た。
……その言葉の内容から、ギレンの崇拝者だというのが残念だが。
『あんたは……知ってるよ。エギーユ・デラーズ大佐。まさか、あんた程の大物がムサイに乗ってるとはね。けど、あんたには確かグワジン級が与えられていた筈だろう?』
シーマが知っていたとなると、このデラーズという男はジオン軍の中ではそれなりに有名なのか?
あ、でもシーマの所属は突撃機動軍で、キシリアの部下だ。
デラーズは、その言葉の内容からギレンの派閥なのは間違いない。
そしてシーマは、海兵隊として色々と後ろ暗い事をやっていたらしいから……そういう意味では、ギレンにとって忠誠心の高い部下のデラーズは、暗殺候補にでもなっていたのかもしれないな。
何しろ、シーマの話を聞く限りではグワジン級を与えられていたのだから。
忠誠心だけではなく、能力的な意味でも間違いなく高いのだろう。
『貴様に心配される筋合いはない』
『そうかい? まぁ、それはいいさね。それで、どうするんだい? ギレン・ザビの信奉者……いや、信者のあんたとルナ・ジオンのあたしがここでぶつかれば、結局喜ぶのはキシリア・ザビになると思うけど』
『……よかろう。今は戦力の消耗を避けたいからな。だが、覚えておけ。貴様は我ら大義あるジオン軍人にとって不倶戴天の敵の1人であるという事を』
そう告げ、通信が切れる。
同時に、ザクやリックドムがそれぞれ自分の出撃してきた母艦に戻っていく。
どうやら、デラーズは退く事にしたらしい。
にしても、厄介だな。予想はしていたが、やっぱりキシリアと合流しない……言ってみれば、ギレン派の生き残りが存在した訳か。
これで、もしかして他にもドズル派やガルマ派とか、そういう連中がいたりしないだろうな?
あ、でもガルマ派がいるのなら、こっちの予定通りに事が運んだ場合、ジオンの戦力が確保出来るという意味では大きいのか。
ドズル派も、ドズルが可愛がっていたガルマの下になら集まるかもしれないし。
もしくは、マツナガがいるからという理由でドズルの部下達が集まる可能性も十分にある。
『取りあえず話はついた。皆、戻るよ。戦闘がなかったのは、喜ぶべきか悲しむべきか分からないけどね』
シーマがオープンチャンネルでそう言ってくる。
シーマにしてみれば、デラーズとのやり取りで色々と思うところはあったのだろうが、それが表に出るという事はない。
一応姦婦とか何とか、そんな風には言われていたみたいだったが……そういう意味では、やっぱり結構ショックだったりするのか?
ともあれ、ペズン攻略前に余計な戦いをしなくてもよかったのは、戦力を温存するという意味では大きい。
デラーズが言っていた内容から考えても、向こうも同じような感じなのだろう。
いや、ルナ・ジオン軍と比べれば、台所事情はもっと厳しいだろうが。
ルナ・ジオン軍はシャドウミラーの全面的なバックアップがあるので、資源や資金の心配をする必要はない。
だが、デラーズが率いている……のかどうかは分からないが、ともあれデラーズが所属している軍が態勢を立て直すには、かなりの労力が必要になるだろう。
デラーズの様子を見れば、ルナ・ジオンに援助を求めてくる事はない。
敵対していた連邦に対しては、こちらも当然援助を求めるような真似はしないだろう。
キシリア率いる突撃機動軍は……こちらはまだ、可能性は少しならあるか?
それ以外となると、サイド6とかか。
あるいは、俺が知らないだけで他にもそういう勢力はあるのかもしれないが。
それ以外の場所で可能性があるとすれば……ジオンの3大兵器メーカーか?
月に戻ったら、その辺は……いや、諜報部の方でもう動いているか。
かなり有能な人材が揃ってるし。
俺がサイド6で会った連中も、間違いなく有能だったからな。
『アクセル? どうしたんだい? リリー・マルレーンに戻るよ。その胸で私を泣かせてくれるんだろう?』
「……それはシーマがショックを受けてたらの話だろ」
シーマからの通信に、若干呆れた様子で返事をしてから、ガンダム7号機でリリー・マルレーンに戻る。
そう言えば、デラーズもルナ・ジオン軍の中にガンダム7号機の姿があったのは当然気が付いていたんだろうけど、それについて何かを言ってくる様子はなかったな。
デラーズにとっては、ガンダム7号機について何か言うよりも、ジオンを苦境に追い込んだシーマに色々と言いたい事があったんだろう。
格納庫に戻って、ガンダム7号機をメカニック達に預ける。
とはいえ、今回は本当にリリー・マルレーンから出撃しただけで、戦闘らしい戦闘をしていないし、すぐに戻ってきたので整備らしい整備は必要ないだろうが。
「補給だけでいい。ペズン到着まではそう時間は掛からない筈だし」
「分かりました」
メカニックと話をし、そうして格納庫から出ようとしたところで、ヅダから降りてきたシーマと遭遇する。
「シーマ」
「おや、アクセル。胸を貸しに来てくれたのかい?」
「シーマが希望するなら、いつでも貸してやるけどな」
「……いきなり何を言ってるんだい」
俺の返しが予想外だったのか、シーマは数秒の沈黙の後でそう言ってくる。
その頬が薄らと赤くなっているのだが……武士の情けという事で、その辺には突っ込まないでおいてやろう。
「あのデラーズとかいう連中……何らかの後ろ盾があると思うか?」
「どうだろうね。今の状況でそんな余裕がある勢力となると……それこそ、月くらいじゃないかい? けど、月がギレンに心酔しているデラーズに協力するとは思えないけどな」
「まぁ、だろうな。元々月は……というか、セイラは反ザビ家なんだし」
ザビ家によって、セイラの人生は大きく狂わされた。
父親が暗殺され、兄は名前を変えてザビ家に復讐する機会を狙っており、最終的には地球に対して小惑星を落とすという未来すらある。
その辺の事情を考えると、とてもではないがセイラが協力する筈がない。
あるいは、誰かが独断でという可能性もあるが……高いニュータイプ能力を持っているセイラに、その辺を隠し通すのは難しいだろう。
そうなると、やはりギレンに心酔しているデラーズ達ジオン軍の残党に、月が協力するとは思えない。
いやまぁ、成り行きでデラーズの部下になっているが、実はそこまでギレンに対して深い忠誠心を抱いていない……といったような者だったら、月に引き取るといったような事をしてもおかしくはないが。
「とにかく、これでペズンに向かう戦力は1つ減った。……後は、他に妙な連中が出て来るよりも前に、何とかペズンに到着して接収することだろうね」
シーマのその言葉に、俺は同意するように頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637