「……条件?」
訝しげにシーマがそう口にしたのは、当然だろう。
今のこの状況で、ペズン側がこちらに降伏する為に大人しく条件を出せる訳ではないのは、明らかだ。
もしかして、こうして条件を出す事によって自分達に少しでも都合のいい待遇を……いや、違うな。
ペズンにいるジオン軍の者達も、このまま下手に時間を掛ければいつ連邦軍が来てもおかしくはないと思っている筈だ。
そんな状況でわざわざ降伏の為の時間を掛けるというのは、正直なところ微妙だろう。
そうなると、他に何か条件をつけないといけない理由があるのか?
シーマも同様の疑問を抱いたのか、ダービットの映し出されている映像モニタを見ながら、口を開く。
「その、条件というのは何だい? そもそもそっちが現在の状況を理解しているのかどうかはともかくとして、一応聞こうじゃないか」
『助かる。……実は、現在このペズンにおいて、抗戦派と降伏派が存在している』
ペズンにいた者達にしてみれば、そんな感じに勢力が分かれるのはおかしくないか。
これが連邦軍なら、恐らく抗戦派が圧倒的に多かったんだろうが……俺達はルナ・ジオン。
セイラが建国宣言をした時の事を考えると、ルナ・ジオンこそがジオン・ズム・ダイクンの真の意思を継ぐ国家と、そういう風に認識されてもおかしくはない。
だからこそ、拮抗するくらいに……それこそペズンの司令官のダービットが悩むくらいには難しい問題となっているのだろう。
「それで?」
『抗戦派の主張は、自分達には新型MSがあるという点が大きい。そして、その新型MSを開発して、乗りこなしてる技量があれば負ける筈はないと』
「ちょっとお待ち。……ペズンで新型MSを開発してるのは知ってたけど、それはもう量産体制に入っているのかい?」
シーマのその疑問は、それこそ本来ならこの状況ではそう簡単に答えたりといったようなことは出来ない筈だった。
だが、ダービット自身は降伏した方がいいと判断しているのか、それともこのくらいは教えても問題はないと考えているのか……とにかく、シーマの質問に対し、首を横に振る。
『いや、新型MSは幾つか存在するし、生産設備も存在しているが、まだ実際には量産はされていない』
「……そんな状況で、新型MSがあればこちらに勝てると、そう思ってるのかい?」
ダービット……より正確には、抗戦派の言い分がルナ・ジオン軍を侮っているように思えたのだろう。シーマの言葉に多少不機嫌そうな色がある。
とはいえ、ペズンにいる面々は新型MSの開発に専念しており、他のジオン軍の兵士のように実戦に出るといったような事はなかった筈だ。
情報に関してはかなり高い収集能力を持っているみたいだが。
『身内で模擬戦を繰り返しているとなると、どうしてもな。実際に技量が高いのは事実だ。だからこそ……ここはこちらの土俵で戦って、実力を見せて欲しい』
「ふむ、つまり模擬戦をやれと?」
『そうだ。それで実力を見せれば抗戦派の者達も素直に従うだろうし、降伏派の者達も自分達の判断は正解だったと、そう思うだろう』
「……なるほどね」
ダービットの言葉にも一理あると判断したのか、シーマはこちらに視線を向けてくる。
模擬戦で勝った事で、本当にペズンの抗戦派が大人しくこちらの言葉に従うかどうかは分からない。
だが、そういう事情であれば、一度しっかりと力を見せつけておくといった事も必要だろう。
それに、純粋にダービットがそこまで言うペズンのパイロット達の実力を見たいというのもある。
シーマに向かって頷くと、それを見たシーマはダービットに向かって口を開く。
「そうだね。じゃあ、そっちの要望を聞いて模擬戦でもしようかね」
『……いいのか?』
まさかシーマがここまで素直に模擬戦を受諾するとは思わなかったのか、映像モニタに表示されるダービットの表情は、驚きの色が強い。
「ああ。模擬戦なら白黒はっきりつけることが出来て、その上でお互いに死ぬ事もない。……もう戦争も終わったんだ。なら、終戦後の混乱で死ぬような真似はしなくてもいいだろ」
『感謝する』
シーマの言葉に、しみじみといった様子で頭を下げるダービット。
本来なら、ペズンの司令官ともあろう人物がそう簡単に頭を下げるなんて真似はしない方いいんだろうが……取りあえず今回の一件はそれでよしとしておこう。
「構わないよ。それで、模擬戦は何人でやる?」
『3人で頼みたい。ペズンの中でもとびきり腕の立つ3人を出すから、そちらも腕利きを頼む』
「3人ねぇ。……ふむ、少し難しいね。これで5人ならちょうどよかったんだけど……」
3人という言葉に、シーマが少し悩んだように呟く。
その言葉の意味は俺にも分かる。
もし5人だとすれば、それこそ俺、シーマ、それと黒い三連星の3人でちょうど5人だ。
だが、これが3人となると……黒い三連星をそのまま出すか、それとも俺とシーマと黒い三連星から誰か1人か。
黒い三連星の異名を持つガイア達は、個人で戦ってもその辺のエース級の実力を持つ。
だが、その真価が発揮されるのは、やはり小隊で活動している時なのだ。
実際にシーマとガイア達が1人ずつで戦った場合、恐らくはシーマが全勝に近い形となる筈だ。
シーマはあくまでも個人で異名持ちになってるしな。
というか、小隊で異名持ちになったというのが、そもそも珍しいのだが。
他には……連邦軍の不死身の第四小隊くらいか?
「俺は別にどっちでもいい。シーマの判断に任せる」
この艦隊の指揮官は、あくまでもシーマだ。
そうである以上、俺が出来るのはあくまでも助言だけで、決めるのはあくまでもシーマだ。
そしてシーマが決めた以上、海兵隊が主体のこの艦隊で不満を口にする奴は……いない事もだろうが、その数はかなり少ない筈だ。
「分かったよ。なら、こっちからも3人だそう。それで、模擬戦の時間と場所は?」
『1時間後にペズンの側で行いたい。ペズンの側なら、ペズンにいる者達も模擬戦を自分の目で確認することが出来るだろう』
そうして話は決まって、通信が切れる。
「で? どうするんだ? 俺とシーマの黒い三連星の誰かを出すか、それとも黒い三連星を出すか」
「難しいところだね。取りあえず、その黒い三連星からも話を聞いてみる必要があるだろうね」
そう言い、シーマはコッセルに黒い三連星が乗っているムサイ級に連絡するように命令する。
その命令はすぐに実行され、数分でリリー・マルレーンのモニタにはガイア、オルテガ、マッシュの黒い三連星が映し出される。
『どうした? ペズンを攻めるのか?』
「いや、模擬戦をやることになったんでね」
そう告げ、シーマは事情を説明する。
その話をガイア達は微妙な表情で聞いていた。
ガイア達にしてみれば、ペズンを攻略する為にやってきた筈が、何故そうなったと、そう思いたいのだろう。
普通ならそのように思ってもおかしくはない。
そういう意味では、ダービットが提案してきた模擬戦というのが、そもそも常識外のものなのだろう。
『それで? こうして通信を送ってきたということは、俺達にその模擬戦に出ろという事か?』
「そうなるね。正確には、あたしとアクセルと、黒い三連星から1人か、それとも黒い三連星が模擬戦に出るか。……どっちがいい?」
『……アクセルはどう思ってるんだ?』
シーマの言葉に、ガイアが俺を見てそう尋ねてくる。
ガイアにしてみれば、今の状況は色々と思うところがある……といったところか。
「この艦隊の指揮官はシーマなんだから、その辺はシーマが決めればいいとは思う。だが……そうだな。個人的な意見を言わせて貰うとすれば、その模擬戦には俺が出たい。ペズン側から出て来る連中は、ペズンで開発した新型のMSに乗って出て来る筈だ。そうである以上、出来れば実際に戦ってみて、自分でその性能を多少なりとも見てみたい」
模擬戦と実戦は、当然のように違うところも多い。
だが、それでも誰かが戦っているところを自分の目で見ているよりは、実際に自分で戦ってみて、それで相手のの実力を体験してみたいと思うのは当然だろう。
『なるほど。なら、シーマの方はどうだ?』
「あたしかい? あたしもアクセルと同じような感じかね。ペズンを接収した場合、そこで開発されていたMSは間違いなくルナ・ジオン軍の次世代機に影響してくる。なら、現在ペズンに存在するMSが一体どんな性能なのか……その辺りを、しっかりと体験してみたいしね」
シーマの言葉は、海兵隊というルナ・ジオン軍の中でも象徴的な部隊を率いているからこその言葉なのだろう。
それに、ルナ・ジオン軍の次世代機ともなれば、当然のようにそれは海兵隊でも使う事になるのだから。
『分かった。なら……マッシュ、お前が出ろ』
『了解』
俺とシーマの言葉を聞いたガイアは、マッシュにそう告げる。
するとマッシュは、特に動揺したりする様子も見せず、そう返事をする。
オルテガではなくマッシュを選んだのは……どちらがより冷静に戦えるか、という事なのだろう。
オルテガのそんな性格は、普通に戦うだけなら特に問題はない……どころか、戦意旺盛といった感じで、戦いに向いている一面もある。
だが、それはあくまでも普通の戦いならではの話だ。
こういう模擬戦で、特に相手の実力を確認するといったような戦い方をする場合、オルテガよりもマッシュの方が向いているのだろう。
オルテガもそんな自分の性格は理解しているのか、それとも単純に模擬戦は面倒だと思ったのか、特に反対の声はない。
相手を見極めるといった意味でなら、ガイアが出てもいいと思うのだが……この辺は、やはり万が一の事を考えてか。
ガイアは、黒い三連星のリーダーだ。
そんな人物が、もし万が一にもこの模擬戦で……いや、模擬戦を装った戦いで死んだりといったような事になったら。
そんな判断からだろう。
いやまぁ、ガイアも別にマッシュを捨て駒にするって訳じゃなくて、マッシュなら何があってもどうとでも対処出来ると、そう信じているから、という一面が強いのだろうが。
「どうやら、それで決まりのようだね」
シーマの言葉に、俺とマッシュがそれぞれ頷く。
それにしても、シーマとマッシュの機体は、揃ってヅダ……それも、双方共に強襲型のA型だ。
実際には細かい改修がそれぞれにされているので、細かな違いはあるのだが。
それでも、ヅダはヅダだ。
そんなヅダと一緒に俺のガンダム7号機が模擬戦に参加するというのは……正直なところ、若干の違和感がある。
ペズンの連中も当然のようにそんな風に思うだろう。
それでガンダム7号機が目立って、結果として敵に狙われやすくなるのは……まぁ、その辺は問題ないか。
「じゃあ、取りあえずマッシュはリリー・マルレーンに来てくれるかい? 色々と打ち合わせはしておいた方がいいだろうしね」
『それは構わないが……俺達が戦う上で、打ち合わせは必要か? 俺達の場合、特に連携を組んで戦った事もないんだから、それぞれが自分で好きなように戦った方がいいと思うがな』
小隊での連係攻撃に慣れているマッシュにしてみれば、一緒に戦う訓練も積んでいない以上は、無理に連携をしなくてもいいと、そう思ってるのだろう。
本来なら、それこそ軍人は初めて会う相手とでも最低限の連携をとって行動するといったような能力は必須だ。
だが……幸か不幸か、俺、シーマ、マッシュ……この3人は全員が異名持ちであり、だからこそ自分だけでどうにかなるだけの実力を持っているというのは、間違いのない事実だった。
勿論、本当に連携が必要な相手と戦うのなら、連携の類は必要になるだろう。
だが、今回の模擬戦の相手は決してそこまでするような相手ではない。
「それでも、一応話し合っておいた方がいい事はあるだろう? ……アクセル、あんたもだよ」
シーマが俺を見て、そう言ってくる。
逃げたら許さないよ。
そう視線で言ってくるシーマに、俺はしょうがないと頷く。
ここで何かを話すのは、あまり意味があるとは思わない。
だが、それでも実際に何かの決まりを作っておいた方がいいと言うのなら、それに従う事に否はないのだ。
「分かったよ。今回の一件はシーマの仕切りなんだ。そのシーマがそう言うのなら、それに従う。……だろ?」
『ああ、分かったよ』
俺の言葉に、マッシュもしょうがないといった様子で頷く。
マッシュにしてみれば、別にシーマの言う打ち合わせはどうしてもやりたくない……といった訳でもなかったのだろう。
「よし、決まりだ。じゃあ、ペズンで模擬戦だけを繰り返していた連中に、実戦を潜り抜けてきたあたし達の力を見せてやるとしようかね」
シーマそう言い、獰猛な……それこそ、雌豹の笑みといったような笑みを浮かべるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637