「は? 本当か、それは?」
「間違いなく連邦軍の艦隊らしいね」
「……この場合は、タイミングがいいのか悪いのか、判断するのが難しいな」
シーマの言葉にそう返す。
ペズンとの交渉も無事に終わり、ペズンで開発されたMSを試験的にリリー・マルレーンや他のムサイ級に積み込んで一度月に持っていくという事になり……明日にでも出発しようという事から、今夜はペズンでパーティを開いてくれるといったことになっていた。
とはいえ、ペズンという小惑星基地……それも可能な限り秘匿されるべき場所である以上、物資に余裕がある筈もない。
つまりパーティはパーティでも、それは決して豪華なパーティという訳ではないだろう。
それでも、ダービットを始めとするペズンの面々が、月と上手くいくようにと考えての行動である以上、こちらとしても喜んでそのパーティに参加させて貰うつもりだった。
……個人的には、シーマのパーティドレス姿を楽しみにしていたんだが。
ともあれ、そんな時に突然艦隊が現れたと聞き、パーティの準備の前にやるべき事があってこうしてリリー・マルレーンのブリッジに来て……そして聞いたのが、接近してきている艦隊の所属が連邦軍の艦隊であるという事。
明日になって、俺達がペズンから旅立った後――それでも一応何隻が護衛として残すつもりだったらしいが――にこの連邦軍が来ていれば、かなり厄介な事になっていただろう。
連邦軍にしてみれば、ジオンの技術は可能な限り接収したい。
その接収したい技術の中には、当然の話だがジオン軍の次期主力MSを含めて複数のMSを開発していたペズンも入る。
……いや、接収したいといった程度ではなく、是非とも接収しなければならないといったような場所だろう。
ペズンそのものはジオン軍の中でも機密度が高かったらしいが、ジオン軍の中にも小狡い考えを持つ者はいる。
そのような者にしてみれば、何らかの情報を連邦軍に渡す事によって自分の待遇をよくする……場合によっては、ジオン軍から連邦軍に鞍替えをするといったような考えを持つ者がいてもおかしくはない。
それこそ、元シーマの上官だったアサクラ辺りなら……いや、駄目か。
アサクラがやらかした件は、ルナ・ジオン建国の際にシーマの一件と共に大々的に公開されている。
そうである以上、多少の情報を貰ったところで連邦軍がアサクラを匿うといったような事はまずしないだろう。
寧ろシーマを始めとした海兵隊の面々から聞かされたアサクラの性格を考えると、それこそ連邦軍に降伏するのは身の安全を保証出来ないとして、さっさと逃げていると言う可能性の方が高い。
「ジオン軍の中にも、裏切り者がいたという事か」
正確にはジオン軍が負けた――表向きは違うが、実質的に――以上は、ペズンの場所を知らせるのを裏切りと呼んでもいいのかどうかは微妙なところだが。
「ジオン軍と一括りにしたって、中にはそういう奴もいるんだろうね。……それでどうするんだい?」
「いや、それを俺に聞かれてもな。今回のペズン接収の件は、あくまでもシーマが指揮官だろ? なら、その辺はシーマがダービットと相談して決めた方がいいんじゃないか? ……とはいえ、採れる手段はそう多くはないけど」
まず、連邦軍にペズンを譲渡する。それは間違いなく却下だ。
俺達にとっての利益らしい利益はない。
妥協案としては、ペズンでの成果を連邦軍と山分けにするというのもある。
だが、1年戦争が終わった現在、既に連邦軍との間に協力態勢はない。……終戦協定はまだなので、正確にはまだ終わってないのだが。
ジオンと連邦の終戦協定における調停役ではあるが、言ってみればそれだけなのだ。
それどころか、戦後の連邦とは色々と問題が起きる可能性が高い以上、出来れば連邦軍が得られる利益は少なくするに越した事はない。
そんな訳で、俺がお勧めする……というか、月の利益が最も大きくなるようにするのに選べる選択肢としては、ペズンに関する利益は一切連邦軍には与えないというものだ。
連邦軍としては、わざわざ艦隊を派遣してきた以上、さっさと帰れと言われても、そう素直に従うような真似は出来ないだろう。
……そういう意味では、俺達がここにいる時に来てくれたというのは、こっちにとって運がよかったな。
もし向こうが強引にペズンを接収しようとしても、ここにはシーマ率いるルナ・ジオン軍がいるのだから。
「そうさね。あたしの利益をよこからかっ攫おうなんて真似は、ちょっと許せないね」
シーマの口元は、獰猛な笑みが浮かんでいた。
自分達がペズンの情報を得てやってきて、模擬戦を行って実力を見せつけ、その後はペズンの面々と細かい打ち合わせをして……それでようやく話が纏まったところで、連邦軍が横から出て来てちょっかいを出してきたのだ。
それが許容出来るかと言われれば、当然その答えは否なのだろう。
「なら、やるべき事は決まってるんじゃないか? ダービットと話を合わせて、近付いてきている連邦軍に通信を送った方がいい」
「そうさね。じゃあ……ペズンに繋ぎな!」
シーマの命令はすぐに実行に移され、数十秒でリリー・マルレーンの映像モニタにはダービットの姿が映し出される。
「何で通信を送ったのかは、分かってるね?」
既にシーマの口調は他国の軍人に対するものではなく、身内……というには少し関係は離れすぎているか、ともあれそんな相手に対するものだった。
とはいえ、今の状況を考えれば堅苦しい言葉遣いをしながら意見を交わすよりも、それぞれが素早く意見交換をした方がいいのは間違いない。
『ああ、分かっている。それで、そちらとしてはどうするつもりだ?』
シーマの言葉に、ダービットも最初少しだけ驚いた様子を見せつつも、次の瞬間には言葉遣いを崩して合わせてくる。
この辺りの判断は素早い。
「やるべき事は単純だよ。既にペズンはルナ・ジオンが占拠したんだから、連邦軍には大人しく帰って貰うとしようかね。ああ、勿論ここまで来るのに推進剤の類は消費してるだろうから、それくらいは分けてあげてもいいけど」
『そう来るか。もう少し穏当な手段で対処すると思っていたが』
「ふふっ、そうなったらそうなったで、構わないけどね。……よりどりみどり」
そう言って笑みを浮かべるシーマに、ダービットは少しだけ気圧された様子を見せる。
この辺は複数の修羅場を潜り抜けてきたからこその迫力といったところか。
『では、任せよう』
「ああ、任されようかね。ただ、もし連邦軍が攻撃を仕掛けてきた場合は、ペズンからも戦力を出して貰おうと思うんだけど、構わないね?」
『構わんよ。双方にとって、初めての共同作業という訳だ』
シーマがシーマなら、ダービットもダービットだな。
ペズンの中には、今でもルナ・ジオンという存在を面白くないと思っている者もいる。
ルナ・ジオンにこのまま所属するのが嫌なら、サイド3まで送るという事は言ってあるのだが、それにしても自分達が今まで住んでいた場所をルナ・ジオンに奪われるというのは、間違いのない事実だ。
だとすれば、ここで共通の敵を作って戦場を共にしたという事にすれば、お互いが戦友という意識を持ち……上手く行けば、サイド3に戻らずペズンに留まるという風に考えを変えないとも限らない。
今の少しの会話で、シーマとダービットは揃ってそういう結論に達したのだろう。
この辺り、さすがだな。
「では、連邦軍に対する連絡は任せて貰うよ」
シーマの言葉に、ダービットはお手並み拝見といった様子で笑みを浮かべると、通信を切る。
「よし、ならオープンチャンネルで通信を送りな。それと、連邦軍が妙な行動をしないように、くれぐれも注意しておくんだよ。MSパイロットはいつ連邦軍が攻撃を仕掛けてきてもいいように、MSで待機させるんだよ。……アクセルもだ」
そう言ってくるシーマの言葉に頷き、俺は格納庫に向かう。
シーマと連邦軍の艦隊を率いてる者との舌戦を聞き逃したくないので、影のゲートを使ってだが。
「え? ちょっ!」
格納庫でいきなり影から姿を現した俺に、メカニックが驚きの声を上げる。
どうやら俺についてはあまり知らない奴だったらしい。
ルナ・ジオンでメカニックをやっていれば、そのうち慣れるだろ。
そう判断し、ガンダム7号機に向かう。
……そう言えば、結局宇宙での戦いの後半ではファーストアーマーもセカンドアーマーも装備しない、素の状態のガンダム7号機で戦っていたな。
基本的にFSWS計画の機体であるガンダム7号機だが、当然のように素の状態であっても非常に高い性能を発揮する。
それこそアレックスとかと同等の性能を持っていると言ってもいい。
全天周囲モニタは、アレックスと同じく使われているし。
ただ、リニアシートは採用されてないんだよな。
もっとも、リニアシートというのは、あくまでも耐G負荷を軽減する装備だ。
混沌精霊の俺の場合は、G? 何それ、美味しいの? といった感じなので、ぶっちゃけリニアシートの意味はないんだが。
そんな事を考えつつ、機体を起動させて映像モニタにシーマと向こうの艦隊を率いている者の通信を表示する。
『シーマ・ガラハウ!? 宇宙の蜉蝣が、何故こんな場所に!?』
『おや、こんな場所とは言ってくれるね。このペズンは既にルナ・ジオン軍が占拠したんだ。つまり、ルナ・ジオンの領土だよ。そんなペズンに対して、こんな場所というのは、ちょっと問題じゃないかい?』
どうやら通信そのものはまだ殆ど進んでいなかったらしい。
俺にとっては、ちょうどよかった。
『占拠? ……占拠だと? ペズンは私達も欲しているし、そもそもジオン軍と戦争中だったのは、我々連邦軍であってルナ・ジオン軍ではない。だというのに、ルナ・ジオン軍がジオン軍の拠点を占拠するというのは、問題だとは思わないかね?』
『そうかい? けど、こういうのは結局のところ早い者勝ちって奴だろ。それに……連邦軍は、ソロモンとア・バオア・クーを手に入れたんだ。それにルナツーもある。ペズンの1つくらい、こっちに渡してもいいと思うけどね』
シーマの言葉は、かなり強気だ。
だが、現在のシーマは宇宙の蜉蝣という異名を持ち、その実力は多くの者に知られている。
それこそ、今の状況で戦うという事になれば、連邦軍の艦隊も間違いなく大きな被害を受けるだろう。
ましてや……シーマはまだ明かしていないが、現在ペズンには黒い三連星や俺もいる。
特に連邦軍にしてみれば、黒い三連星という相手はある意味でトラウマものだ。
何しろ、ルウム戦役においてレビルを捕らえたのが、黒い三連星なのだから。
その辺りの事情を考えれば……いやまぁ、連邦軍の指揮官がプライドの高い奴なら、それこそ以前レビルを捕らえた報復として攻撃してくる可能性は皆無という訳ではないが。
そうなったらそうなったで、こっちとしても連邦軍を撃破してしまえばいい。
……いや、撃破じゃないな。ここで捕らえることが出来れば、それは連邦軍に対する取引のカードとして使える。
ルナ・ジオンが占拠したペズンに攻めて来たというだけでカードとして使えるのだが、そのような場合は殺すよりも生きて捕虜にした方が、カードとしては色々と使い道が多くなる。
『……では、そちらは退く気はないと?』
『当然さね。何の為に、月からわざわざこんな場所までやって来たと思うんだい?』
『そちらの希望も理解出来ますが、こちらも占拠しに来ましたが、先にルナ・ジオンに占拠されていました……などという事は言えないのですよ。そうである以上、こちらとしても、そちらが退かない場合は、相応の対処をするしかないのですが?』
向こうの指揮官は口元に笑みを浮かべながらそう告げる。
……ただし、表情をよく見れば、かなり緊張している様子なのが分かる。
今はこうして平静を装っているが、だからといって本気でこちらに向かって攻撃を行おうなどとは考えていないのだろう。
さっき考えたように、気の強いタイプじゃなくて慎重なタイプで助かった。
そんな風に思いつつ、2人の会話の成り行きを見守る。
『へぇ。そっちがその気なら、こっちもそれなりに対応してもいいんだよ? ただ……分かっているのかい? あんたの行動によって、連邦軍が月に対して攻撃をしたという事になる。それはつまり、ジオンとの戦争が終わってすぐにまた、連邦軍は月を相手に戦争を始めるという事になるんだ。……それで、本当にいいんだね?』
そう告げるシーマだったが、相手の指揮官は言葉に詰まる。
当然だろう。ジオンとの戦争で連邦軍が受けた被害は非常に大きい。
ジオン軍程ではないにしろ、連邦軍も学徒兵を出すかどうかといった感じになっているのだ。
いや、こっちに入ってきた情報によると、ソロモンやア・バオア・クーの内部を確認する作業とかには学徒兵が使われているという話も聞いている。
そんな状況で月と戦争出来る筈がなく……連邦軍の指揮官は、たっぷり数分は沈黙した後で、謝罪の言葉を口にするのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637