連邦軍の艦隊を率いていた指揮官は謝ったが、だからといってそのまま大人しく引き下がる様子はない。
何とかペズンにおいて連邦軍の利益を得ようと、あの手この手を使ってシーマとの交渉を続けている。
……だが、当然の話ではあるが、現状どちらが有利なのかは考えるまでもない。
「そっちから出せる利益が少なすぎるね。なのに、ペズンでの利権に絡みたいというのは……少し無理があるんじゃないかい?」
『そう言われましても、こちらとしては最大限の便宜を図っているつもりですが……』
困ったように言う男だったが、その言葉が本当かどうかというのは俺にも分からない。
……それ以前に、今の状況において向こうの言葉を素直に信じるというのが、そもそもの疑問だろう。
「取りあえず、その条件ではこちらとしても頷く訳にはいかないよ。……そもそもの話、あたしはルナ・ジオンの軍人であっても政治家じゃないんだ。ペズンを攻略するというのならともかく、既にペズンはこちらが制圧している。そうである以上、もっと詳しい話をしたいのなら、あたしじゃなくてルナ・ジオンに直接申し込みな」
『それは……』
言葉に詰まる男。
その理由としては、色々と考えられる。
ここでペズンを連邦軍とルナ・ジオン軍双方の勢力下におければ、それはこの男の手柄となる。
また、ルナ・ジオンは交渉相手という意味では非常に強い。
純粋に交渉能力が高いというのもあるが、それ以上にルナ・ジオンはスペースノイドの弱点である、資源や食料を自分達で解決出来るのだから。
特にセイラを相手に交渉する場合、高いニュータイプ能力で相手の考えている事を本能的に察したりといったような真似が出来るので、交渉では著しく不利になる。
その諸々を抜きにしても、現在この状況でこちらと交渉するのと、後日……つまり、ルナ・ジオン軍がペズンを完全に占拠し、掌握した後で交渉するのとでは、その意味合いは大きく違ってくる。
「残念だけど、そういう訳でこちらとしてはそちらとの取引に応じられないよ。あんた達がどこから来たのかは分からないけど、大人しく戻った方がいいだろうね。推進剤の類が足りないのなら、多少は融通してもいいが……どうするんだい?」
ぎりっ、と。
映像モニタに表示された男は、シーマの言葉に不満そうな様子を見せたものの、現在の連邦軍の状況でルナ・ジオン軍と本格的に戦いになるのは不味いと判断したのか、やがて不承不承といった様子で口を開く。
『分かりました。では、このまま帰らせて貰います。……推進剤の方は、まだ余裕があるので気にしなくても構いません』
そう言い、敬礼をして通信が切れる。
向こうにしてみれば、これ以上ここにいても意味がないと、そう判断したのだろう。
実際、シーマは交渉をする姿勢を全く見せなかったし。
それを思えば、引き際は悪くない。
もっとも、それはこのペズンにいたのがシーマだからこそだろうが。
宇宙の蜉蝣の異名を持ち、個人としての戦闘力だけではなく、部隊の指揮も上手い。
その上で、ペズンにどれだけの戦力が来ているのかが分からない以上、強引な手段は採れる筈もない。
だが……もしペズンに来たのがシーマ程に有名な相手でなければ、連邦軍が強攻策に出た可能性は十分にある。
そういう意味では、シーマを派遣したルナ・ジオン軍の上層部の判断は決して悪いものではない。
「それにしても、これでジオン軍の残党と連邦軍がペズンに来た訳だ。……そうなると、残ってるのは突撃機動軍だけだが、来ると思うか?」
扇子を手で弄んでいるシーマにそう声を掛ける。
シーマは少し考えてから、頷く。
「ペズンで開発されていたMSの性能は高い。そうである以上、突撃機動軍がいつ来てもおかしくはないだろうね」
「突撃機動軍……いや、キシリアが現在どこを拠点にしているのか、それとも拠点を探している最中なのかは分からないが、戦力は充実させる必要がある、か」
突撃機動軍には、結構な数の精鋭が揃っている。
また、ソロモンの時も脱出した宇宙攻撃軍の面々を少なくない数吸収している。
であれば、少なくても人数的には結構な数を有しているのだから、より高性能なMSを欲してもおかしくはないだろう。
ガルバルディなんかは、ゲルググとギャンの長所を組み合わせたようなMSである以上、突撃機動軍としても是非欲しいだろう。
問題なのは、キシリアがガルバルディについての情報を持っているかだが……まず、持っていると判断した方がいいだろうな。
ペズンについてはかなり機密度が高かった筈だが、だからといってザビ家のキシリアがその情報を入手出来ない訳がない。
であれば、やはりペズンについては理解していてもおかしくはない。
「けど、そうなると……明日、あたし達全員が帰る訳にはいかなくなったみたいだね」
俺の言葉に、シーマがそう呟く。
その言葉には俺も同意する以外の選択肢は存在しない。
今の状況でもしルナ・ジオン軍が明日全員いなくなれば、突撃機動軍が来た時に対処する奴がいない。
……それだけではなく、連邦軍が何食わぬ顔をして再び姿を現してペズンを占拠しないとも限らない。
そうなった時、迎撃する戦力は必要だ。
ペズンの戦力も、MSの性能は高いしパイロットの操縦技術は高い。
だが……それでも、やはりこのペズンは前線基地といった訳ではなく、あくまでも新型MSを開発する為の基地なのだ。
相応の戦力があっても、十分にその戦力を運用出来るかと言われれば、また違う。
「残るのは、黒い三連星か?」
「そうだね。というか、それしか選択肢はないというのが正しいだろうね。それに月から応援が来れば入れ替わりに戻れるだろうし」
相手を警戒させる……それだけの脅威と思わせるのに最適なのは、やはり異名持ちだ。
そして今回のシーマ艦隊の中に、異名持ちは宇宙の蜉蝣シーマ、月の大魔王の俺、そして黒い三連星。
だが、シーマ艦隊という名称を見れば分かる通り、シーマはこの艦隊の指揮を執っている人物でもある。
そんなシーマ艦隊からシーマがいなくなるというのは、色々な意味で不味い。
かといって、俺は実際にはルナ・ジオン軍の人間ではなく、シャドウミラーの人間だ。
そうなると、やはりここに残るのは黒い三連星しかいない。
ただし、ガイアとマッシュはともかく、オルテガは面白くないだろうな。
オルテガとマリオンの関係は、具体的にどこまで進んでいるのかは分からない。
だが、オルテガがマリオンという相手に心の底から惚れているのは事実であり……バカップルと呼ばれてもおかしくないようなやり取りをしているというのは知っている。
とはいえ、そのバカップルぶりを発揮しているのは、実はマリオンの方なのだが。
基本的には大人しい性格をしているマリオンが、オルテガを相手に積極的に攻めていく。
猪突猛進気味のオルテガは、そんなマリオンの責めに押されっぱなし。
そういう、ある意味でアンバランスなカップルなのだが……それでも、オルテガにしてみればマリオンとの時間は非常に大切な筈だった。
ましてや、1年戦争もようやく終わり、これから暫くは平和な時間を楽しめると思っていただけに、ペズンに残るようにと言われれば、決してそれを許容は出来ないだろう。
本来なら、戦後というのは戦後処理をしたりといった事で、かなり忙しいのだが。
ただ、1年戦争の主役はあくまでも連邦とジオンである以上、それに協力した月は、そこまで忙しくはない。
とはいえ、戦後の瓦礫とかを処理するという意味では、間違いなく忙しくなるだろうが。
瓦礫を含めて、そういう存在の後始末は何だかんだとかなり面倒だ。
だが、それを月まで持ってくれば、格安で処分する。
……勿論これは、マブラヴ世界でBETAをキブツの資源にしたように、そういう瓦礫とかも月を通してホワイトスターに運び込み、キブツの原材料とするのだが。
「オルテガは、ガイアから説得して貰うしかないだろうな」
ガイアは黒い三連星のリーダーを務めているだけあって、オルテガからも強く信頼されている。
そんなガイアだけに、ペズンに残るという事をオルテガに言えば、不承不承ではあるが従う可能性は高い。
「そっちは、黒い三連星に任せるしかないだろうね。とにかく、ペズンを完全に月で占拠する以上、一度月に戻ったら急いで戦力を整えて、またペズンに戻ってくる必要があるだろうね」
「色々と忙しそうだな」
「ジオンと連邦の終戦協定の仲介役もあるし、他にも色々とやる事はあるからね」
「だろうな」
俺が知ってる限りでも、木星にあるコロニーと友好関係を築くといった事があるし、アクシズが月と……正確にはセイラと接触してきているという話も聞いてる。
それ以外にも、まだ俺の空間倉庫の中にあるビグ・ザムを取り出して、マツナガやガルマの見ている前でどうにかする必要があるし、ガルマをハワイから宇宙に連れて来てジオン公国に連れていく必要もある。
ハワイの方も、1年戦争が終わったという事で色々と体制を変えたりする必要があるだろう。
他にも月で現在開発中のMSの問題や、アルテミスの方で行われているニュータイプ研究、現在のジオン公国から必要な技術や人材の引き抜き。それ以外にも、細かいところを考えると……一体どれくらいあるのか。
本当に、現在の状況ではやるべき事が数えられないくらいあるので、悠長に遊ぶといったような事は、こっちでも出来ない。
「戦争をしている時よりも、戦後の方が忙しくなるってのは……大変だな」
「随分と他人事だね」
「実際に他人事だしな。……それに、月には優秀な人材が多数いるだろ? なら、何だかんだとどうにかなると思うぞ」
無責任かもしれないが、実際に月に優秀な人材が多数集まっているのは、間違いのない事実だ。
それ以外にも、コバッタと量産型Wのおかげで治安が非常にいいという事もあり、ハワイも含めて集まってくる者はいる。
国を運営していく上で、優秀な人材は必要だが、それ以外の……際だって優秀ではない一般人というのも、大きな戦力となる。
もっとも、これはあくまでも普通の国家の場合であり、シャドウミラーの場合は色々な意味で特殊な状況なのだが。
幹部はそれぞれ非常に優秀で、時の指輪と魔法球がある影響から、その気になれば24時間……いや、魔法球に入る時間が必要なので、23時間働けますかといったことを、普通に出来る。
また、他の国なら一般人の役割をこなすのが、量産型Wだ。
それこそ、疑似経験で経験を積み、それをダウンロードする事で、一瞬にして専門技術を使いこなせるようになる。
もっとも、シャドウミラーは様々な意味で特殊な場所である以上、それを参考にするというのが、そもそもおかしいのだろうが。
「そうだね。恐らく、この戦後がルナ・ジオン建国の中で最初の試練になるだろうね。そして、この試練を無事に乗り越える事が出来れば、これからはそう簡単にどうにかなるような事はない」
そう断言するシーマ。
実際、その言葉が間違っているとは、俺も思わない。
連邦とジオンの間に結ばれる終戦協定に関しても、ルナ・ジオンが間に入って取り持つという事になる以上、かなり厳しい事情になるのは間違いない。
何しろ、連邦にしろジオンにしろ、中には未だに継戦を主張するという強硬派は絶対にいる。
そして強硬派程、声が大きくなって影響力もまた大きくなりやすい。
ルナ・ジオンの仲介によって戦争が終了するのは許せないと考え、終戦協定をしようとしているルナ・ジオンに妙なちょっかいを掛けてくるといったくらいは、平気でやりかねない。
そういう者達にしてみれば、目の上のたんこぶといった存在のルナ・ジオンの面子を潰し、このまま戦争を続けられるというのは、美味しい話だろう。
……そういう強硬派に限って、戦いをやる気ではあるが、補給をどうするとかは、全く考えていなかったりするのだが。
「そうなってくれると、俺としても嬉しいな。……というか、そうなってくれないとルナ・ジオンの建国を助けた意味がないし」
UC世界における独自の技術を入手するという意味では、ルナ・ジオンは既に結構な成果を挙げているのは間違いない。
だが、それでも現在のところは、シャドウミラー側の持ち出しがまだ多数ある。
その持ち出しを返済する為には、ルナ・ジオンの面々にはもっと頑張って貰う必要があった。
「そうだね。アクセルの立場としては、そう言うか。……さて、ともあれ連邦軍の件はこれで片付いた。後はパーティを楽しむとしようかね」
「パーティか。……シーマのドレス姿は、俺も楽しみにしてるよ」
「……全く、ああいう場所はあまり好きじゃないんだけど」
俺の言葉に溜息を吐くシーマだったが、そんなシーマのパーティドレス姿は、恐らく何人もが見たいと思うのは間違いなかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637