「さて、そろそろ本題に入ろうか」
イセリナの持ってきた紅茶を一口飲むと、ガルマは俺とマツナガを見てそう言ってくる。
ガルマの横では、イセリナも若干緊張した様子を見せつつ、こちらの様子を見ていた。
「そうだな。その為にここまで来たんだから」
そう言いつつも、俺がこれから言う内容は、ガルマにとって決して面白いものでないのは間違いない。
特に、俺はガルマからドズルの命は何とかして助けて欲しいと、そのような頼みすら引き受けていたのだ。
だが、結局ドズルは死んでいる。
まさか、ソロモンの司令官にして宇宙攻撃軍を率いるドズルが前線に出てくるとは思ってもいなかったのだ。
「単刀直入に言う。……ドズルは死んだ」
「……だろうね」
数秒の沈黙の後、ガルマがそう告げる。
ガルマもまた、ドズルが死んだというのは理解していたのだろう。
もしドズルが生きているのなら、それこそ捕虜になったとして連邦軍が大々的に発表していてもおかしくはないのだから。
それがなかったという事は、ドズルは死んだか……もしくは、キシリアと同じように逃げ出したか。
その辺りはガルマにもはっきりとしなかったのだろうが、それでもドズルの性格を考えれば、戦死と逃げ延びたと言われれば、前者の方がらしいと、そう思ったのだろう。
「お前からもドズルは助けて欲しいと言われていたんだがな。それを叶える事は出来なかった」
「構わないさ。戦争の中で起きた出来事なんだから。それを考えれば、どうしようもない事はある」
そう言いながら、ドズルの事を思い出したのか寂しそうな表情を浮かべるガルマ。
ギレン、キシリア、デギンについて話すべきか?
けど、デギンはギレンに殺され、ギレンはキシリアに殺され、キシリアは突撃機動軍を率いてどこかに逃げていった……といったような事を、ガルマに言ってもいいものかどうか。
その辺は、取りあえず後回しにしておくか。
「そう言って貰えると、こっちも助かる。それでドズルの遺体だが……現在ドズルが乗って、俺達と戦ったMA……ビグ・ザムという機体だが、その機体は俺の空間倉庫の中に入っている」
「っ!?」
さすがにこれは予想外だったのか、ガルマの表情に驚きの色がある。
「何故、そのような真似を?」
「理由は幾つかある。まず、ビグ・ザムというのはIフィールドという特殊なシステムが搭載されていて、それが欲しかったというのが一番の理由だな。そして次に、俺はこれを確認していないが、コックピットにはもしかしたらドズルの遺品の類が何かあるかもしれない。その辺りをしっかりと確認するのなら、やっぱりガルマが一緒にいた方がいいと思ってというのもある」
その言葉に、ガルマは複雑な表情を浮かべた。
俺に対する感謝の気持ちもあるのだろうが、それ以外にも色々と思うところがあるのは間違いないのだろう。
そして複雑な表情のまま、何かを考える。
そんなガルマの手をイセリナが握り、ガルマもまた無意識にかイセリナの手を握り返す。
そのまま1分程が経過し……そこでようやくガルマが口を開く。
「それで、僕にどうしろと?」
あれ? ガルマの一人称は私だった気が……いやまぁ、その辺は別にいいか。
僕だろうか、私だろうが、俺だろうが。……拙者とか朕とか余とかだったりしたら、ちょっと違和感があるけど。
「宇宙に来て欲しい。ドズルが乗っていたMAはかなり巨大で、地球でも……まぁ、どうにか出来ない事はないと思うけど、安全を考えれば宇宙でビグ・ザムを取り出してドズルの遺品がないかどうかを探した方がいい。……それに、ハワイでそのような真似をすれば、どうしても目立つだろうしな」
月でなら、ビグ・ザムの解析をする為に出しても、色々と隠す方法はある。
だが、ハワイにおいてそのような真似をすれば、間違いなく連邦軍に嗅ぎつけられるだろう。
何より、ビグ・ザムを解析するディアナがあるのが月である以上、それが最善だろう。
一応ハワイにもアプサラスの為の研究所はあるので、無理ではないのだろうが。
「そうか、分かった。それに関しては問題ない。……けど、それだけじゃないんだろ?」
「ああ。単刀直入に言う。ガルマには、ジオン公国を率いて貰いたい」
「……僕が?」
ガルマにとって、それはあまりに予想外だったのだろう。
今の言葉は何かの聞き間違いではないかと、そんな様子でこちらに視線を向けてくる。
だが、俺はそんなガルマの言葉に頷きを返す。
「そうだ。ガルマはザビ家の中でも人気が高かった。そんなガルマがジオン公国を率いれば、連邦もそこまで勝手な真似は出来ないだろうし、何より現在サイド3にいる連中も救われる。それに……現在、ジオンが負けたという事で方々に散って独自に行動しているジオン軍の面々も、ガルマがジオンを率いるとなれば戻ってきてもおかしくはない」
ただ……ギレンを暗殺して、ア・バオア・クーの戦いを破綻させたキシリアがジオンに戻ってくるという事はないだろう。
それ以外にも、ペズンに向かう途中で遭遇したデラーズはザビ家ではなく、ギレン・ザビという個人に忠誠心を抱いていた様子だった事から、ガルマがジオンを率いても戻ってきたりはしない筈だ。
そういう意味で、現在行方不明中のジオン軍の残党の全てがジオン公国まで戻ってくるとは限らない。
だが、それでも小規模で動いている者達はサイド3に戻ってくる者も多い筈だ。
これは連邦軍にとって不利益なのかと言えば……必ずしも、そうではない。
オデッサから逃げ出した者達を含めて、現在地球上にはまだ結構な数のジオン軍の残党が残っている。
そのような者達にしてみれば、ガルマがジオンを継いだと知ったら大人しく連邦軍に出頭してサイド3に戻る……といったような事も考えられるだろう。
あるいは、ジオンという名前からルナ・ジオンの領土たるハワイに来る奴もいるかもしれないが。
実際、オーストラリアのジオン軍は結構な数がハワイに来ているのだから。
「それは……いや、だが……」
ガルマは戸惑ったように言葉に詰まる。
まさか、俺からそんな要望が出るとは思ってもいなかったのだろう。
とはいえルナ・ジオンとしては、そうなってくれた方が最善の結果である以上、ここで退くという事は考えられない。
「もし僕がその話を引き受けない場合、ジオンはどうなるんだい?」
恐る恐るといった様子で尋ねてくるガルマ。
こういう風に言うって事は、多少なりともやる気はあると思っていいのか?
「その辺は、それこそジオンと連邦の終戦協定で話し合う事になるだろうから、しっかりとは分からないが……最悪の場合は、連邦政府から役人が派遣されて、その人物が治める事になるだろうな」
最悪と言ったが、それは他のコロニーにしてみれば普通に行われている事だったりするんだが。
ただし、1年戦争を起こしたという事実がある以上、サイド3における税金の類は他のコロニーよりも高くなってもおかしくはない。
……具体的に幾らくらいになるのかと言われれば、俺もまだ分からないが。
そもそも、1年戦争でジオンが連邦に与えた被害は、とてもではないが数えきれるものではない。
オーストラリアなんかは、地図を書き換える必要があるくらいのダメージを受けているし、コロニーの方でも受けた被害はかなりの大きさだ。
その辺りの事情を考えると……一体どうなる事やら。
とはいえ、あまりに毟り取るような真似をした場合は、再度1年戦争が繰り返されかねない。
その辺を上手くやるのは、赴任してきた連邦政府の人間の匙加減次第だろうが……ともあれ、ジオンの人間にとって厳しくなるのは予想出来る。
だが、もしガルマがジオンを率いる立場になったら、どうなるか。
勿論その場合でも、戦勝国の連邦軍からは人が送られてくるだろうし、軍隊に関しても必要以上に持つというのは禁じられる可能性が高いが、それでも連邦政府の人間が好き勝手にやるような真似は出来ないだろう。
また、ガルマの場合はハワイで……ルナ・ジオンに匿われていたという事から、そちらとも繋がりがある以上、言ってみればジオンの後ろ盾にルナ・ジオンがいるような形だ。
そしてルナ・ジオンの後ろ盾には、当然のようにシャドウミラーがいる。
その辺の事情を考えれば、連邦政府も好き勝手な真似は出来ないだろう。
……まぁ、連邦から派遣されてきた人物が、その辺も考えられないような奴なら、もしかしたらルナ・ジオンと連邦の関係を悪化させるような真似をしてもおかしくはないのだが。
その辺りの説明をすると、ガルマは難しい表情で口を開く。
「なるほど。話は分かった。だが……その返事に関しては、すぐにしなければいけないかい?」
「いや、さすがにジオン公国を継ぐといった事を、いますぐこの場で返事をしろとは言わないさ。取り合えず月に行ってビグ・ザムとドズルの件を片付けてからでもいい」
「……分かった。そうさせて貰うよ。それで、アクセルの用事は分かったけど……」
そう言い、ガルマの視線はマツナガに向けられる。
俺とガルマが話している間、マツナガは一言も口を開く事はなかった。
それこそ銅像か何かなのかと思う程に、その場でじっとしていた。
たまにイセリナの入れた紅茶を口に運ぶような真似をしなければ、もしかしたら本当に人間かどうかも分からないといったような事になっていた可能性もある。
「私の用件も、アクセルと同じようなものです。私は、ソロモンでドズル閣下を守ることは出来ませんでした。その仇討ちとして、アクセルに戦いを挑みましたが……」
そこで一度言葉を止めたマツナガは、黙って首を横に振る。
白狼の異名を持つ自分が、俺に圧倒されてしまった事を思い出しているのだろう。
「結局私はアクセルに勝つ事は出来ず、捕虜になりました。……本来なら、捕虜になどなるつもりはなかったのですが、アクセルからガルマ様が生きているという話を聞き……」
最後まで言わずとも、マツナガが何を言いたいのかガルマにも分かったのだろう。
ガルマも、ドズルが自分を可愛がってくれたというのは、当然のように理解していた筈だ。
だからこそ、マツナガが投降したのは自分を支える為に……ジオンを支える自分を支える為になのだろうと。
「俺が言うより、ガルマの方がよく知っているだろうが、白狼の異名はジオンや連邦に広く知られている」
赤い彗星、青い巨星、黒い三連星といった面々には劣るだろうが、真紅の稲妻と同等程度には知られている異名持ちだ。
そして白狼がドズルの懐刀で親友と言ってもいい間柄なのは、当然のように知られている。
そんな白狼がガルマの下につけば、誰もがガルマはドズルの後継者であると、そう認識するだろう。
そうなれば、ドズルに恩義を感じている者はガルマの下に集まってくる。
……個人的な希望としては、ソロモンでキシリアに持っていかれた宇宙攻撃軍の連中がガルマの下に来てくれればいいんだけどな。
そうなれば、キシリア率いる突撃機動軍が現在どこを拠点にしているのかが判明するという点もあるんだけどな。
「マツナガ、君は本当にそれでいいのかい?」
「は。ドズル閣下はガルマ様に強い期待を抱いてました。そしてドズル閣下は、人を見る目はあります。そうである以上、ガルマ様がジオンを率いるといったことになれば、それはジオンの国民にとって大きな希望の光となるでしょう」
マツナガのその言葉は、真剣な表情で告げられたものであるが故に、ガルマに強く響いたらしい。
「そう……か。ドズル兄さんに君のような存在がいた事を、羨ましく思うよ」
しみじみと告げるガルマは、お世辞でも何でもなく、本気で言ってるのだろう。
実際、ガルマの場合は自分が親友だと思い込んでいたシャアに暗殺されそうになったのだから、尚更だろう。
「ともあれ、マツナガの件もあるだろうし、しっかりと考えてくれ。それに……この件は、ガルマだけの考えだけでは決まらないだろうしな」
そう言い、黙ってガルマの手を握っているイセリナに視線を向ける。
ガルマがサイド3に戻るとなれば、当然のようにイセリナも同行するだろう。
であれば、イセリナはある意味でファーストレディー的な存在となるのだが、それは決していい事だけではない。
何しろ、ジオンのファーストレディーなのだ。
1年戦争でジオンに恨みを持っている奴にとって、イセリナは十分にテロの標的になるだろう。
その辺も考えて、どう対処するかを決めてから、ガルマには判断して貰いたかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637