ビグ・ザムの解析を始めてから数日……俺は、ガルマに呼び出されていた。
ちなみに、呼び出されたのはガルマ達の泊まっているホテル……ではなく、そのホテルの近くにあるレストランだ。
その中でも、特別な料金が掛かる個室。
いやまぁ、食事をするとなると変装の効果が微妙になるから、皆のいる前で食事をする訳にはいかないんだが。
なら、正直なところ別にレストランじゃなくても、ホテルの部屋でいいと思うんだが……この辺、一体どうなんだろうな。
「料理をご馳走してくれるのなら、俺としては文句ないんだけどな」
「そう言って貰えると、この席を用意した甲斐があるよ。このレストランの料理は極上だという話なんだけど、アクセルは知ってるかい?」
「いや、知らないな。クレイドルはかなりの人数が流れ込んでいるだけに、数日で街並みが変わっていてもおかしくないし」
その上で北海道程――草原とか湖とか森とか山とかも入れてなので、この場合の表現は正確には違うのだろうが――の広さを持つクレイドルだけに、俺が知ってるような場所以外でもかなり街並みは変わるのが早い。それを全て認識してるような者は……それこそいないんじゃないかと思えるくらいに。
「そうなのかい? ともあれ、アクセルを驚かせることが出来て嬉しい限りだよ」
そう言うガルマの表情が嬉しそうなのは、言葉通り俺を驚かせる事が出来たからだろう。
まぁ、こういうサプライズなら俺は大歓迎だが。
にしても、以前ガイアに教えて貰った焼き肉屋もそうだったが、何気にクレイドルには料理の美味い店が揃ってるよな。
とはいえ、これもホワイトスターを通して新鮮な食料を輸入出来るからだろうが。
マブラヴ世界程ではないにしろ、この世界も食料は決して十分な量を確保出来る訳ではない。
一応コロニーには食料の生産設備とかもあるが、それで生産出来る野菜とかはどうしても限られてしまうし。
そういう意味で、ホワイトスターと繋がっているクレイドルや、ルナ・ジオンの勢力下にある月面都市は新鮮な食料を安く――あくまでもUC世界の他の食料と比べてだが――購入出来るのだ。
「まずは料理を楽しむか」
そう俺が告げると、ガルマ、イセリナ、マツナガの3人もそれぞれに頷き、料理を口に運ぶ。
そうして料理を食べるが、聞いていた通りどの料理も美味い。
典型的な洋食の店というのは、こういうのを言うんだろうな。
……個人的にはエビフライが食い応えがあって美味かった。
ビーフシチューも牛のすね肉が柔らかく、芋もほっこりとしていて、トマトが煮込まれているのか酸味もしっかりと感じられる。
個人的にはビーフシチューの肉は口の中で解けるタイプじゃなくて、しっかりと噛み応えのある肉らしい感じの方が好きなんだが……この件に関しては店の個性だし、このビーフシチューもかなり美味いのは事実だ。
パンもしっかりと焼きたての柔らかいパンが出て来る。
そうして食事が終わったところで……やがてガルマが口を開く。
「ジオンの代表の座、引き受ける事にしたよ」
「……そうか」
ガルマの性格を考えれば、現在のジオンの状況からそのような結論に達するのは納得出来た。
マツナガは表情を変えてはいないが、それでも雰囲気から嬉しそうな様子を見せているのが分かる。
マツナガにしてみれば、心酔していたドズルが可愛がっており、将来を嘱望していたガルマが、ジオンのトップに立つのだ。
そういう意味では、マツナガにとっては本望だろう。
……勿論、本来ならドズルもこの場にいるというのが最善の結果なのだろうが……今更それを言っても、それは意味がない。
イセリナの方はと視線を向けると、そこでは予想外なことに不満そうな様子はない。
イセリナの事だから、それこそこのままハワイでガルマと一緒に隠遁生活をしたいと思っていても、おかしくはないだろうに。
「イセリナは構わないのか?」
「はい。ガルマ様の決めた事です。私はガルマ様の側にいられれば、それだけで……」
どうやらイセリナも構わないらしい。
一途な女だな。
もっとも、だからこそガルマもイセリナに惹かれたのだろうが。
「俺にとっては……いや、ルナ・ジオンにとっては助かる。けど、セイラ……アルテイシアから聞いたと思うが、ア・バオア・クーの戦いでキシリアは突撃機動軍と一緒に逃げている。場合によってはキシリアが何らかの接触をしてくる可能性は十分にある。それでもいいのか?」
「それでも、僕は……いや、私はガルマ・ザビとしてジオンを率いる」
私から僕になって、そしてまた私に戻るか。
この辺は、ガルマが自分を一体どのような存在であるかと認識しているのかによって変わってくるんだろうな。
そして一人称が私になったという事は、本気でガルマはジオンを率いる気になった訳だ。
元々ガルマはジオンでは非常に人気が高かった。
それだけに、敗戦国となったジオンの者達にしてみればガルマの存在に希望を感じて、暴発するような真似もしなくなる……といいなぁ、と思う。
「なら、マツナガはガルマの下で行動するという事でいいのか?」
「そのつもりだ」
一瞬の躊躇もなく頷くマツナガ。
マツナガにしてみれば、ドズルの可愛がっていたガルマの下につくのは当然なのだろう。
そうなると……戦後のジオン公国の軍事的な看板は白狼のマツナガになるのか。
白狼の異名は、ジオンや連邦に広く響き渡っている。
勿論、赤い彗星、青い巨星、黒い三連星……そして今となっては、あるいはその3つの異名よりも知られるようになった、宇宙の蜉蝣や月の大魔王。
そんな諸々に比べると一段劣るが、それでもこのUC世界において白狼という異名は大きな意味を持つ。
そして他の異名持ちは大体がルナ・ジオンだったり、真紅の稲妻のように突撃機動軍の所属だったりする。
……キシリアを殺し損ねたシャアが現在どうしているのかは分からないが、自分が暗殺した筈のガルマがジオンを率いるようになれば、まさかジオンに来るといったような真似は出来ないだろう。
つまり、白狼のシン・マツナガがジオンの最大の戦力となる訳だ。
「分かった。俺としてはガルマ達の判断に対しては、特に何を言う事もない。いや、寧ろ俺達にとって都合がいいんだから、喜びすらある」
元々この件はガルマやジオンの事を考えて……というのもあるが、当然のように第一に考えられるべきはルナ・ジオンについてだ。
もしガルマがジオンを率いる身となれば、ハワイで隠匿していた件……いや、俺がシャアの暗殺から助けた件もあって、ルナ・ジオンに大きな借りが出来るという事になる。
つまり、この先ガルマは何をするにしても、ルナ・ジオンに対して配慮する必要が出て来る訳だ。
「そうなると、取りあえず早いところその辺を発表した方がいいかもしれないな。でないと、連邦軍とかがジオンの持つ技術を接収したり、技術者を連れて行ったりとか、そんな事をしそうだし」
「それは……」
言葉に詰まるガルマ。
もっとも、ダルシアとの話で技術はルナ・ジオンに渡される事になっているし、技術者達に関しても兵器メーカーとかから結構な人数を引き抜きに掛かっている。
……それ以前に、1年戦争中にジオニック、ツィマッド、MIPを含め、それ以外の兵器メーカーからも結構な数が既に月に亡命してきていたのだが。
そういう技術者達にしてみれば、負けが濃厚なジオン公国ではなく、自分達を優遇し、研究費もたっぷりと渡し、連邦軍の最新鋭機を持ってきて解析させてくれるルナ・ジオンというのはかなり魅力的だったのだろう。
そういう意味では、今もジオン公国に残っているのは……その兵器メーカーに対する愛着とか、ジオン公国に対する愛国心とか、家族が月への移住を拒んでいるからとか……もしくは、ディアナ側から必要ではないと判断されたような奴とか、何らかの特殊な理由を持っている者だろう。
「特に連邦軍は、ジオン軍に技術力で遅れている場所もあるし。そういう意味では、戦勝国の連邦軍にとっても、その技術格差を縮める絶好のチャンスだろうし」
とはいえ、個人的には連邦軍の技術力って基本的にジオン軍よりも高いというのが俺の感想なんだよな。
勿論、その技術がニュータイプに関してだったり、MAに関してだったり、水陸両用MSだったりといった具合であれば、また話は別だが……ビームライフルを開発したのも連邦軍だし、ガンダムという超高性能MSだったり、マグネットコーティングだったり……ルナ・チタニウムもそうか。
いや、ルナ・チタニウムは一応ジオン軍でも製造出来る。
ただし、非常にコストが高くなるので、ジオンの国力では連邦のような真似は出来ないのだろうが。
「ともあれ、ガルマの気持ちは分かった。……アルテイシアにその辺は言ったのか?」
「いや、まだだよ。まずはアクセルに言ってからと思ってね」
別にそこまで義理堅くする必要はないんだが……いやまぁ、これだからこそガルマらしいといった感じか。
「分かった。なら、今後の事はアルテイシアと話し合って決めてくれ。俺はそっちに関わるような事は……基本的にないだろうから」
よっぽどの何かがあった場合であれば、俺が出る必要もあるのかもしれないが……今の状況では、他に色々とやる事があるし。
特に大きいのは、やはり木星のコロニーとの接触だろう。
ルナ・ジオンの行動予定として、木星にあるコロニーと接触し、友好的な関係を築くというのがある。
それを行うとすれば、当然のように俺の出番となる。
正確には、俺の乗るニーズヘッグに搭載されている、システムXNの転移能力が。
勿論、システムXNがなくても普通に輸送艦や軍艦で移動するような真似は出来る。
だが、普通に移動するとなると、片道で年単位の時間が必要となってしまう。
……それでも幸いなのは、ルナ・ジオンの場合はゲートを使った通信システムを使えるという事だろう。
それこそ、月と木星の間でも全くタイムラグなしで、リアルタイムに会話が出来るのだから。
だからといって、それでも片道年単位というのは……色々と不味い。
俺のニーズヘッグか、もしくはシャドウミラーで外部武装追加ユニットのファブニールのシステムXNを使う必要がある。
ただ、ファブニールはドラゴンをモチーフにした外見なので、見た者に脅威を抱かせたりする。
ファブニールのシステムXNは、あくまでも量産型のシステムXNで、ニーズヘッグのように異世界間に転移するといった真似は出来ない。
だが、このUC世界で活動する分には、その辺は特に気にする必要もないしな。
「アクセル、そろそろ店を出ようと思うのだが、構わないか? これから早速政庁に行って、アルテイシア女王に話を通したい」
「分かった。なら、送っていくよ」
前回同様、今回の一件でガルマやマツナガの正体が知られるといったことは出来るだけ避けたい。
イセリナもニューヤーク市長の娘として、その美貌と共に有名だから知ってる者がいる可能性もあるし。
そんな訳で、街中を歩くのならともかく、政庁のような場所にガルマ達が向かうのは……色々と不味かったりする。
ガルマ達は微妙に嫌そうな表情を浮かべつつも、影のゲートを使わなければならないというのは理解している訳で……渋々といった様子で納得する。
「じゃあ、ちょっと待ってくれ。アルテイシアに連絡を取ってみるから」
そう告げ、通信機を使ってセイラに通信を送り……
『アクセル? どうしたの?』
空間スクリーンに浮かび上がったセイラの姿に、ガルマ達は大小の差はあれども驚きの声を上げる。
あれ? シャドウミラーの通信機を見た事がなかったか?
「ガルマが話があるそうだ。見つかる訳にはいかないから、この前みたいに俺が影のゲートで連れていこうと思ってるんだが、そっちは時間大丈夫か?」
『そう、ね。……後30分くらいしたら大丈夫よ』
30分という言葉を聞き、ガルマに視線を向ける。
その視線を受けたガルマが頷くのを見てから、セイラに視線を向ける。
「分かった、それでいい」
『そう。じゃあ、待ってるわね』
いい話を聞けると思ったのか、それともまた別の理由で何か考えたのか……それは俺にも分からなかったが、セイラは笑みを浮かべて通信を切る。
「そういう訳だ」
「ああ、それは分かったが……そう言えば、アクセルはアルテイシア女王をセイラと呼んでるんだな」
「ああ、それか。セイラってのは、アルテイシアが偽名として使っていた名前だ。本名のアルテイシアって呼んだ方がいいんだろうが、生憎と俺が会った時はセイラだったからな。公の場以外ではセイラと呼んでいる」
「私達の前でアルテイシアと呼んでいたのは、セイラだと分からないと思ったからか」
「そうなるな。……取りあえず、30分経ったら政庁に行くから、その準備をしてくれ」
俺のその言葉に、ガルマ達は真剣な表情で頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637