「そう。……感謝するわ」
クレイドルにある政庁にて、ガルマの言葉……戦後のジオンを率いるということを聞かされたセイラは、俺といつも接している態度ではなく月の女王としての態度でガルマにそう言葉を返す。
「それで、1つ提案なのだが……この際、ジオン公国ではなく、ジオン共和国という名前に戻したいと思う」
「……本気?」
セイラが女王としての態度を崩し、そう尋ねるのは俺にも理解出来た。
何しろガルマが口に出したジオン共和国というのは、ジオン公国の前……それこそ、ジオン・ズム・ダイクンが定めた名前だ。
そのジオン・ズム・ダイクンを暗殺したデギンが国を乗っ取り、その結果としてジオン共和国はジオン公国という名前に変わった。
それを思えば、ジオン共和国という名前に戻すというのは……そこに一体どのような意味を持つのか、それこそ疑り深い者であれば幾らでも疑う事は出来るだろう。
「本気だ。勿論、これはアルテイシア女王に対してザビ家として謝罪の意味を込めて……というのもあるが、それ以外にこちらにとっての目論見もある」
「月側であると、そう連邦軍に思わせる為ね。あるいは、月の支配下に入ったと……そう連邦軍に思わせられるかもしれないわね」
ガルマの言葉に納得する事が出来たのか、セイラは頷く。
とはいえ、セイラにしてみれば今回の一件はかなり予想外の展開だろう。
ジオン公国が自分の父親の率いていたジオン共和国という名前になるのだから。
セイラにも父親の件で色々と思うところがあるのは間違いないだろうが、それでも今の月の状況……何より、ジオン公国にいる一般市民の事を思えば、ガルマからの提案は引き受けざるをえない。
もしこの場にシャアがいたら、一体どうなっていたんだろうな。
「そう言えば、シャアがどこに行ったのかは、まだ分からないのか?」
ふと呟かれたシャアという言葉に、それぞれが示した反応は大きく違う。
まずセイラは、一瞬だけ残念そうな様子を見せたものの、それもすぐに消えて月の女王アルテイシアの表情に戻った。
ガルマは嬉しそうな、残念そうな、複雑な表情。……ガルマにしてみれば、シャアは自分を殺そうとしたという点では恨んでいるのだろうが、そのような行為に走らせた理由も知っているので明確な表情を浮かべる事が出来ないのだろう。
マツナガは一瞬だけ険しい表情を浮かべたが、すぐにそれを押し殺す。
マツナガにしてみれば、シャアは敬愛するドズルの部下であったという事で一時的には仲間だった。
……そのドズルが可愛がっていたガルマを暗殺しようとしたという点で許せないのだろうが、すぐに現在の自分の立場……ガルマに仕える立場から表情を押し殺したのだろう。
だがこの場合、問題なのはイセリナ。
シャアの名前を聞いた瞬間、その目の色が明らかに変わった。
それこそ、俺ですら一瞬反応するかのような……鬼気とでも呼ぶべきものが漂ったのだ。
とはいえ、そんな鬼気を感じたのは、あくまでも俺だけだったらしい。
高いニュータイプ能力を持っているセイラにすら感じさせないというのは、何なんだろうな。
鬼子母神という存在がいる。
それこそ敵対する相手を殺してでも子供を守るとかいったような存在だったと思うが、イセリナはそれの恋人バージョン的な存在になっているように思えた。
勿論、それはあくまでも俺が感じた事だし、イセリナから感じた鬼気も俺が視線を向けるとすぐに消えてしまったが。
ただ……もし何らかの手段でシャアを取り込めたとしても、イセリナとは会わせない方がいいかもしれないな。
イセリナにとってシャアは、理由はどうあれ自分の愛する男を殺そうとした相手なのだから。
とはいえ、イセリナを見ているとニュータイプとは別の方面で何か新しい能力を覚醒しそうな気がするな。
「キャスバル兄さんはまだ行方不明よ。向かった先の候補は幾つもあるけど。アクシズ、突撃機動軍、デラーズ達ジオン軍の残党。ペズンにいるかもしれないと思ったけど、どうやらそれはなかったみたいね」
「だろうな。とはいえ、ペズンはシャアにとっても本命といった訳じゃなかった筈だ」
ガルバルディのような新型MSがあるのはいいとしても、ペズンはあくまでも新型MSの開発計画たるペズン計画が行われていた場所だ。
ペズンにとって必要なのは、それこそシャアという1人の人間ではなく、ペズンを守る事が出来るだけの戦力を持った軍隊のような集団。
だからこそ、ペズンはルナ・ジオンを選んだのだろう。
実際、その選択は決して間違いではない。
ジオンは敗戦国である以上は問題外として、連邦軍もジオン軍に対して強い恨みを抱いている者が多く、そんな連中に降伏すればペズン計画に参加していた者達がどうなるか分からない。
それ以外となると、サイド6だが……表向きは中立であっても、実際には連邦軍の支配下にある以上、連邦軍と同様だろう。
そんな中で、ルナ・ジオンは連邦軍と協力したという事で戦勝国側に入るし、ジオンの人間を積極的に受け入れ、女王たるセイラはジオン・ズム・ダイクンの娘だ。
そういう意味では、ルナ・ジオンがペズンを占拠しに来たというのは、寧ろ望むところだったのだろう。
「キシリア姉さんの所にも、行ってないだろうね」
「どうだろうな。ア・バオア・クーでシャアはキシリアを殺し損ねた。……それが具体的にどういう形だったのかで、その辺は変わってくると思うぞ。実際に殺そうして失敗したのなら、ガルマの言う通りキシリアと合流しようとは思わないだろう。だが、もし実際に暗殺するよりも前にキシリアがア・バオア・クーを脱出していた場合……」
まだシャアの翻意はキシリアに知られていない以上、キシリアと合流している可能性は否定出来ない。
うーん、こうなるとア・バオア・クーでジオングと引き換えにシャアを逃がしたのは、微妙に失敗だったかもしれないな。
いっそ、ジオング諸共にシャアを逃がすべきだったか。
だが、そうした場合はジオングを入手出来なかった可能性が高いだろうし。
この辺、悩み所ではある。
「ともあれ、可能性はあり、と。……アクシズはどうかしら?」
セイラのその言葉に、何と答えるべきか悩む。
普通に考えれば、ジオン軍の残党で軍艦のような物を持っていたらアクシズに向かうというのは悪い選択肢ではない。
だが……そのアクシズは1年戦争中から月と連絡を取り合っている。
まだ正式にどういう関係になるのかというのは月でも決まっていないらしいが、それでもアクシズと月が友好的な関係になるのは確実らしい。
この辺は以前ガイアから聞いた話なので、間違いないだろう。
俺が言うのも何だが、ガイアを含めた黒い三連星は外見こそ強面だが、情報を重視する一面もある。……オルテガは見掛け通りの性格だが。
そんな性格でもなければ、黒い三連星という異名持ちの小隊として活動する事は出来ない。
「アクシズとルナ・ジオンの関係を、シャアが知ってるかどうかだな。……アクシズを仕切っているマハラジャ・カーンはダイクン派なんだろう? もしシャアがそれを知ってれば、既にルナ・ジオンと接触していると思うか……もしくは、自分の正体を知らせて取り込もうとするか。そしてダイクン派と知らなければ、アクシズに行く可能性は十分にある」
「他にも、可能性としては戦後の混乱に紛れて連邦軍に入り込むという可能性はあるかと」
そう言ったのはマツナガ。
……なるほど。戦後で混乱している今なら、誰かの戸籍を乗っ取るような真似も出来る可能性があるか。
とはいえ、シャアが連邦軍に入って何をするかという問題もある。
「ともあれ、シャアがどういう行動を取るのかは分からない以上、注意しておく必要があるだろうな」
そう言いつつ、イセリナに視線を向ける。
幸いにも今のイセリナは先程の鬼気を発するような事はなく、黙って話を聞いていた。
「話を戻すと……ジオン公国は終戦協定締結後にジオン共和国になるということでいいのか?」
俺が呟いたシャアの名前によって盛大に脱線していた話の流れを、元に戻す。
「ああ。私が率いるという事になるが、国の名前はやはりジオン共和国にして欲しい。ジオンにとって、それが最善の道だと思う」
「俺もそう思う。けど、ジオン公国に……いや、ギレンに忠誠を誓っていた者達は、ジオン共和国という名前にしたら反発する可能性があるぞ? デラーズとかな」
「デラーズ大佐ですか」
「……知ってるのか?」
まさか、マツナガの口からデラーズの名前が出て来るとは思わなかったので、驚きの視線を向ける。
「知っている。デラーズ大佐も、元々はソロモンにいたからな」
「ソロモンにいたのか?」
それは俺にとっても驚きだった。
デラーズとは直接話した訳ではなく、シーマと通信で話しているのを見ただけだ。
だが、それでも一種の……そう、カリスマ性とでも呼ぶべきものがあったのは、理解出来た。
当然の話だが、相応の実力の持ち主でもあるだろう。
そうなると、ソロモンで遭遇してもおかしくはなかったと思うんだが。
とはいえ、ソロモンの広さを考えるとそうおかしな話でもない。
あの広大な戦場であった以上、偶然俺が遭遇するといったようなことがなくても、おかしくはないのだから。
ただ、今の面倒さを思えばソロモンでさっさと遭遇して倒しておけばよかったと、今更ながらしみじみと思う。
「そうだ。とはいえ……宇宙攻撃軍に所属していたものの、デラーズ大佐の忠誠心が向けられていたのはドズル閣下ではなくギレン閣下だ」
「だろうな」
シーマとの通信でも、ギレンの存在に敬服しているのは理解出来た。
だからこそ、ザビ家とはいえ、ガルマがジオン共和国を率いるようになっても、それを認めるとは思えない。
今の状況においては、それこそガルマがジオン共和国のトップにいるということそのものを決して許容出来ないだろう。
「そうなると、やっぱりデラーズは厄介な存在になりそうだな。……どうするつもりだ?」
「出来るだけジオン共和国に戻ってくるように呼び掛ける。デラーズ大佐は無理でも、その下にいる者全てがギレン兄さんに忠誠心を抱いてた訳じゃないだろうしね」
「ガルマ様は、皆に慕われていますから」
イセリナの言葉通り、ガルマはジオンの人間から慕われている。
そんなガルマがジオン共和国を率いるといった事になれば、ジオン軍の残党の中からも恭順を示す者が出て来るのは間違いない。
ドズル配下にあった宇宙攻撃軍の者達であっても、ガルマとマツナガがいるとなれば……ソロモンでキシリアの突撃機動軍に吸収された宇宙攻撃軍の者達が戻ってくる可能性も否定は出来ない。
そうなれば、突撃機動軍がどこを拠点にしているのかや、どれだけの戦力を持っているのかといった情報を入手出来る可能性が高い。
であれば、ガルマの件は色々と大きな騒動になるのは間違いない。
「問題なのは、私がジオン共和国を率いる事を連邦軍が認めるかどうか、か」
「普通なら認められないだろうが、ルナ・ジオンがそれを認めると言えば……普通なら、それを拒否する事は出来ないと思うんだがな。そして連邦軍にはゴップがいる。あのゴップが、それを認めないという選択肢はないんじゃないか?」
ア・バオア・クーの戦いでレビルが死んだのは、非常に痛い。
だが、それでもまだ連邦軍にはゴップがいるのだ。
であれば、そのゴップが連邦軍にとって危険な目に遭わせるような……そんな真似をするとは、思わない。
とはいえ、それはあくまでもゴップがルナ・ジオンを……そしてシャドウミラーについて理解しているからこそであって、自分達が戦勝国になったと考えているような連中の場合は、妙な事を考えかねないが。
具体的には、強硬派とか強硬派とか強硬派とか。
強硬派と言っても、実は何気に色々な連中がいるんだよな。
1年戦争中に月に攻撃をしてきたような連中は、それこそどうしようもない連中だが。
そんな連中が排除された中でも、強硬派は生き残っている。
1年戦争で戦い続け、自分達が勝ったから強硬派になった連中。
だが、こういう連中はまだ納得出来ない訳でもない。
実際に自分達が戦って勝ったからこそ、強硬派になったのだから。
最悪なのは、1年戦争終了直前に連邦軍の戦力として戦いに参加した連中だろう。
実際の戦場を殆ど知らない状態で戦勝国になり、その戦勝国の戦力の一端だったという事もあるからこそ、自分達の力を過信する。
強硬派にはその手の連中が多いのは事実だが、戦闘経験が少ないからこそ、その過信の度合いが高くなるのだ。
「ゴップはともかく、強硬派には注意した方がいいかもしれないな。1年戦争中にも、こっちは強硬派に色々と迷惑を掛けられたし」
そう告げる俺の言葉に、色々と思うところがあったのかガルマは真剣な表情で頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637