「申し訳ありませんでした」
そう、ダルシアはガルマに頭を下げる。
モニクの言葉で、ダルシアとガルマのどちらがジオンを率いる方がいいのかというのがはっきりしたからだろう。
……実際、モニクがガルマを指名したのはジオンの為というのもあるが、どちらの方がより月に利益を与えるかといった面もあるのは間違いない。
月としては、ジオンには出来るだけ纏まっていて欲しいと、そう思っているのだろう。
戦後、連邦軍の仮想敵となるのは、恐らく……いや、ほぼ間違いなく月だ。
ゴップがいる以上、そこまで露骨な事はしないとは思うが。
それでも、ゴップだっていつまでも連邦軍にいる訳ではない。
そうしてゴップがいなくなった時、連邦軍が仮想敵とするのは月だけではなくジオンもそうであって欲しいと、そういう事だろう。
今回の1年戦争においては、月は連邦軍に味方した。
だが、今後の戦いでジオンと連邦が正面からぶつかるようになった時、次もまた月が連邦に味方をするとは限らないのだ。
そういう時、ダルシア率いる政治家――政治屋含む――と、ガルマ率いるジオンのどちらが信用出来るかと聞かれれば……それは、考えるまでもなくガルマだろう。
だからこそ、モニクの言葉は聞いていた俺にとっても十分に受け入れられる事だった。
当然グローブの件を知っていた政治屋達は、それに不満を口にするが……その政治屋達を率いているダルシアがガルマを認めたとなれば、その連中にもどうする事も出来ない。
あるいは、上手くやれば別の旗印を用意してガルマに対抗する……といった事が出来たかもしれないが、問題なのはダルシア以上の旗頭がいるかどうかだろう。
元からそういう相手がいるのなら、それこそ最初からダルシアではなく、そっちを担ぎ上げているだろうし。
「ダルシア首相がそう言ってくれて、私も嬉しい。ジオン共和国を運営していく上で君の力を貸して欲しい」
「私が……ですか?」
「そうだ。今まではギレン兄さんやキシリア姉さんが行っていた事を、私が1人で出来ると思うかい? 勿論、ジオン共和国はジオン公国と比べて大分規模は小さくなる。だが、それでも私達だけでというのは無理だ。ダルシア首相の協力が必要だ」
「ガルマ様……」
ガルマのその言葉に感動したのか、ダルシアはガルマの名前を口にすると目尻に涙が浮かぶ。
それは他の者達……具体的には、グローブの件を知らなかった者達も同様だ。
そんな者達に対し、ガルマは髪を弄りながら笑みを浮かべ……だが次の瞬間、その笑みは一変し、鋭い視線をグローブの一件を知っていた者達に向ける。
「君達はいらない」
「何故ですか!」
半ば反射的に叫ぶ政治屋達。
……この状況で、何故かとそう叫ぶのが理解出来ない。
もしかして、この流れで自分達までもが新しいジオンを動かせる立場になれると思ったのか?
「ガルマ様、先程から何度も言っていますが、グローブの件は必要悪なのです! もしグローブを犠牲にしなかった場合、ジオン全土でグローブと同じような出来事が起こり……最終的には、再び連邦軍と戦いになっていたのかもしれないのですよ!」
「そうかもしれない。だが、それなら最初からそのようにならないように動けばいいだけだ。何より、私が作るジオンには自らの手足を切り捨てるような者は必要ない」
「それは甘いです!」
「かもしれない。だが、甘いからといって最初から切り捨てるような真似はしたくない。君達に思うところはあるが、ダルシア首相が選んだ人物だ。それを思えば、ここで無理に捕らえるといったような真似はしたくない。……だが、この件が公表された時のことを考えれば、サイド3に居場所はないだろう。……当然私の下で仕事があるというのも期待しないで欲しい」
「ちなみに、月に来ても政治の仕事は出来ないかと」
ガルマに続き、モニクがそう告げる。
実際には、月の人材不足は結構深刻だ。
だからこそ、アンリ率いるワルキューレの者達を引き入れるといった真似をしたのだから。
ダイクン派だったアンリはともかく、ワルキューレの中にはダイクンだろうがザビ家だろうが、そういうのは特に構わないといったような者も決して少なくはない。
ただ、有能……というか、一定以上の能力があればいい。
そんな面々を集めたワルキューレに引っ掛からなかっただけでも、この連中の能力は想像出来る。
ダルシアとかのように地位的な問題だったり、ダルシア個人に忠誠心を抱いているような相手なら、ワルキューレに引き入れるといったような事も出来なかったのだろうが……政治屋達の場合は、単純に無能とまではいかないが、それでも能力的に物足りないからこそ、アンリにもスルーされたのだろう。
とはいえ、一応月に来たりした場合はコバッタとかを使って裏切り行為がないように見張らせるといった事も出来るんだが……まぁ、こういう連中だと知っている以上、月に来て欲しくないという気持ちは理解出来た。
「……後悔しないで下さいよ!」
そう叫び、政治屋は部屋を出て行く。
グローブの件を知っていた他の政治屋達も、1人が出て行くと、それを追うように部屋を出ていった。
そうして部屋に残った面々は、これからの事を話す。
さて……こうなると、俺はもう特にやるべき事はないな。
モニクは見届け人なので、まだここに残る必要もあるのだろうが。
「モニク、話は大体決まったみたいだし、俺はいなくてもいいよな?」
少し離れた場所で話しているガルマ達を見ながら、そう尋ねる。
そんな俺の言葉に、モニクは少し不満そうな表情をしながらも頷く。
「分かったわ。……けど、妙な騒動は起こさないでよ?」
「俺を何だと思ってるんだ?」
まるで俺が無意味に騒動を起こしているような、そんな風に告げてくるモニク。
とはいえ、トラブルほいほいとも呼ぶべき俺の体質を思えば、何気にモニクの言葉はそんなに間違ってる訳じゃないんだよな。
「アクセルの事だから、何が起きてもおかしくはないでしょ」
「……否定はしない」
そう告げると、俺は部屋から出る。
部屋の前には秘書やガードマンの類がいたが、俺の姿を見るとそれぞれ頭を下げてくる。
向こうにしてみれば、月という存在は慎重な態度を取る必要があるのだろう。
今の俺は表向き月の人間だし、秘書やガードマンにしてみれば丁重にする必要があるのだろう。
「どちらに行かれるのですか?」
頭を上げた秘書が、そう尋ねてくる。
秘書にしてみれば、先程政治屋達が出て行った直後に俺が出て来たから、心配になったのだろう。
現在この部屋……会議室の中で行われているのは、これからのジオンにとって大きな意味を持つ事だ。
当然の話だが部屋は防音になっており、中の話をこっそりと聞くといったような真似は出来ない。
……ここにいるのが1人だけなら、そんな真似も可能だったかもしれないが。
「ちょっと外の様子を見てくる。会議室の中については心配するな。現在は友好的に話をしているよ」
そう告げると、秘書は安堵した様子を見せる。
秘書にしてみれば、ダルシアやガルマといった面々の話の内容が気になるところなのだろう。
とはいえ、ダルシアの秘書をやっている人物だ。俺の言葉を心の底から信じているとは限らないが。
だが、秘書が何を考えていようとも、それは俺には関係ない。
月に被害が出るような事でもあれば話は別だが……今の様子を見る限りでは、そんな心配とかはしなくてもいいしな。
「お気を付けて。ガルマ様の件で結構な人数が集まっているので」
「だろうな」
グローブの件を片付けてホテルに戻ってきた時も、ホテルの周辺にはガルマが生きていたという情報を確認しようと多くの者が集まっていた。
そんな中で俺が堂々とホテルから出れば、当然のように集まっている者達が俺から話を聞こうと殺到してくるだろう。
とはいえ……俺の場合は影のゲートがあるので、その辺の心配はいらない。
……俺の場合はそれでいいけど、このホテルに泊まっている他の客はどうするんだろうな。
このホテルでダルシアとガルマが会談をやるとはいえ、別にこのホテルそのものを貸し切っている訳ではない。
ホテルの中には他の宿泊客も大勢……とは言わないが、それなりにいるのだ。
敗戦国となったジオンだけに、このような豪華なホテルに泊まる客はそう多くはない。
だが、仕事だったり何らかの理由だったりで、宿泊している者は決して少なくなかった。
ダルシアとガルマの会談は、それこそジオンの今後について大きな意味を持つのだから、ホテルを貸し切るといったような真似をしても、そうおかしくはないと思うんだが。
そんな風に考えつつ、俺は人に見られない場所に移動してから影のゲートでホテルの外……それもそれなりに離れた場所まで転移する。
ガルマの生存という情報は、当然のように駐留している連邦軍の耳にも入っているのだろうが……連邦軍の方は連邦軍の方で、グローブの件があるしな。
グローブの件を駐留している連邦軍のどの辺りまで知っていたのかは分からない。
勿論、あのような大きな騒ぎになってしまっている以上、駐留軍を率いている司令官は連邦軍から相応の処分が下されるのは間違いない。
そういう意味では、司令官がグローブの件を知らなかったとしたら、思い切りとばっちりだな。
その辺は俺が考えるような事じゃないから、構わないけど。
ただ、ホテルからそれなりに離れた場所に転移して街中を見て回っているが、連邦軍……それも軍人ではなく諜報部といったような者達の姿を何人も見つける事が出来た。
いやまぁ、もしかしたらジオン軍の諜報員という可能性も否定は出来なかったが。
「精々頑張ってくれ」
そう告げると、街中を歩き回る。
当然の話だが、戦争中だった影響もあり……何より敗戦国だという事もあってか、街中の景気は決してよくはない。
ホテルの周辺に人が集まりすぎているというのも、その辺りの理由なのかもしれないが。
「とはいえ、こうして見るとそこまで暗い雰囲気はないな。……店の商品もあまり多くはないけど」
サイド3の食料というのは、元々決してそこまで豊富な訳ではない。
勿論、1年戦争を起こしたというのを考えると、食料に関しても前もって蓄えていただろうし、それ以外にもコロニーの方で可能な限り食料を増産していたのだろう。
それでも、そこで作られた食料の大半は軍隊行きとなった。
また、品数が少なくなれば当然のように値段が高くなり、店先で売られている商品はかなり高額なものとなっている。
誰か知り合いにでも会えば……と思うが、そもそも現在の状況ではズムシティに俺の知り合いはそんなにいない。
さて、そうなると街中に出て来たのはいいけど、一体何をどうすればいいんだろうな。
それこそ、あの会議室でダルシアとガルマの会談を眺めていた方が有意義だったという思いがしないでもない。
そんな風に考えていると……
「ふざけるな、このジオン野郎がっ!」
と、不意にそんな声が聞こえてくる。
とはいえ、その声は普通の人間ならまず聞き取れないような、そんな声だ。
混沌精霊の俺だからこそ、聞き取れたのだろう。
ジオン野郎。
そんな風に言うような相手は、それこそ連邦軍くらいしか存在しない。
であれば、その声が聞こえてきた場所で何が起きているのかは、それこそ考えるまでもないだろう。
どうせやるべき事もなかったので、声の聞こえてきた方に向かう。
街の中でも、裏通りに近い方に進み……やがて見つけたのは、予想通り連邦軍の軍人が複数で1人を相手に殴る蹴るといった暴行を働いているところだった。
さて、どうするか。
普通に考えれば、ここはジオンの人間を助けた方がいいんだが……もしかしたら、ジオンの人間が何か連邦軍の兵士を怒らせるような事をしたとも限らないし。
とはいえ、あの様子だと殺されてしまいかねないし、一応止めておくか。
「その辺にしておいたらどうだ?」
「ああっ!?」
俺の言葉に、勢い込んでそう叫ぶ連邦軍の兵士の1人。
その様子からは、叫んだ人物がどれだけ興奮しているのか……もしくは怒っているのかを示していたが、その辺は特に気にしない事にする。
にしても、こういう性格の兵士なら、それこそグローブに行っていてもおかしくはなかったんだが。
「その辺にしておいたらどうだ? と、そう言ったんだが……聞こえなかったのか?」
「てめえ……俺達は連邦軍の人間だぞ? それを理解した上でそんな真似をしてるんだろうな?」
「それは理解しているが? けど、どんな事があったのかは分からないが、それ以上やったら死ぬぞ?」
実際、連邦軍の兵士達に殴る蹴るをされていた男は、既に意識も朦朧としている。
そうである以上、このまま暴行を続ければ死ぬ可能性は十分にあった。
「ああ? ジオン野郎が死んだところで、どうだってんだよ」
「……取りあえず、お前達はもう寝ろ」
その兵士の言葉に、グローブにいた連邦軍の兵士達の事を思い出し……俺はそのまま兵士達に襲い掛かり、一瞬で全員の意識を奪うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637