転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2716話

 光の繭が解除されると、そこは既に月ではなく木星の見える場所。

 映像モニタには、かなり遠くにではあるが何基ものコロニーの姿が見える。

 シャリアから聞いた座標で転移座標を設定したのだが、それが正確だった形だ。

 

「シーマ、聞こえているか? そっちの様子はどうだ?」

 

 リリー・マルレーンの格納庫からブリッジに通信を送る。

 するとすぐに映像モニタにシーマの顔が表示された。

 

『現在状況を確認中だよ。何せ、初めての転移だ。何か不具合がないかどうかの確認に少し時間が掛かりそうだね。悪いんだけど、アクセルはもう少しニーズヘッグの中で待機していてくれないかい?』

「了解」

 

 転移というだけなら、それこそ俺の影のゲートを使った転移を経験した者もそれなりにいるだろう。

 だが、システムXNを使った転移となると、同じ転移であっても魔法と科学技術という点で大きく違う。

 求める結果は同じであっても、そこへの過程が違うのだ。

 ……俺にしてみれば、双方共に今まで何度となく使ってきた転移方法である以上、どっちも信頼出来る力なんだが。

 とはいえ、それはあくまでも俺の経験からであって、システムXNでの転移を初めて味わう者達にしてみればそこまで信じる事は出来ないのだろう。

 そんな訳で俺はシーマ達の事は取りあえず放っておいて、ここに来た目的たるコロニー……ではなく、その先にある木星を映像モニタに表示する。

 星に何本もの線が引かれているかのような、そんな外見。

 これが木星か。

 ……まぁ、木星ってだけなら別にこれが初めて見た訳ではないが。

 それでも、こうして間近――実際にはまだかなりの距離があるのだが――で見ると、そこには目を奪うだけの迫力があった。

 まさか、このUC世界にも木星の近くに無人機の製造プラントとかないだろうな?

 いや、もしあればコロニーの方で確保しているか。

 そして木連という名前で地球に攻撃を仕掛けてきてもおかしくはない。

 

『アクセル』

 

 と、俺がニーズヘッグの映像モニタに表示されている木星の姿を見ながら考えていると、別の映像モニタにシーマの姿が表示される。

 

「シーマ、どうだった? 多分、問題はないだろうけど」

『ああ、今のところは問題ないようだよ』

「だろうな。今までそれで問題が起きたといった事はなかったし」

『それでも初めての経験なんだから、警戒するのは当然だろう?』

「その辺の判断はシーマに任せるよ。ともあれ、問題はなかったんだろう? で、これからどうするんだ?」

『勿論、木星に向かうよ』

「なら、俺はどうする?」

『ニーズヘッグは見せたくないしね。ガンダム7号機に乗り換えておくれ』

「了解」

 

 シーマにそう返事をし、通信を切ってニーズヘッグのコックピットから降りる。

 そしてニーズヘッグに触れると、空間倉庫に収納する。

 万が一……本当に万が一だが、木星の連中がとち狂ってこのシーマ艦隊を捕らえる事に成功して、どうやって木星までやってきたのかといったことを調べても何も分からない。

 リリー・マルレーンを始めとする軍艦を隅から隅まで調べたとしても、転移能力を持つシステムXNは俺の空間倉庫の中だ。

 そうである以上、転移の秘密を知る事は出来ない。

 ましてや、シーマ艦隊に所属している者達はシーマに対して強い忠誠心を抱いている者が大半だ。

 情報を得ようにも、そう易々と情報を入手するような真似は出来ないだろう。

 そんな風に考えつつ、俺はガンダム7号機のコックピットに乗り込む。

 生活物資を格納庫の中にまで積み込んではいるが、俺のガンダム7号機は普通に搭載されている。

 当然、シーマのヅダA型もいざという時の為に搭載はされていた。

 他にも何機かMSは搭載されており、もし木星側が攻撃をしてきた場合は、こちらからも相応の態度を取る事になるだろう。

 

「シーマ、ガンダム7号機に乗ったぞ。そっちはどうだ?」

『今、コロニーに近付いているよ。シャリアがいるから、そう簡単におかしな事にはならないと思うけどね。ただ、それも絶対とは言わない。アクセルは何かあった時、すぐにでも出撃出来るように準備しておいておくれ』

「了解」

 

 そう返事をし、通信を切る。

 正直なところ、コロニーとのやり取りを見ておきたいという思いはあったのだが、交渉中に木星側が何か妙な行動をしてこないとも限らない。

 であれば、俺としてはいつ何があってもいいように準備しておく必要があった。

 それに、こちらの交渉団を率いているのはハモンだ。

 その交渉能力は月でも屈指のもので、木星の連中とやり合っても互角以上に渡り合えるだろう。

 ……木星側が、彼我の実力差を理解してくれればいいんだが。

 そういえば、シャリアがニュータイプとして覚醒したのは木星に来たからという説があったな。

 実際にその説が正しいのかどうかは俺にも分からない。

 だが、もし正しいのだとすれば、シーマ艦隊の中から新たなニュータイプが現れる可能性はあるし、もしそれが事実なら、これからコンスタントに人を入れ替えたりして、多少なりともニュータイプを増やすといったような事が出来るかもしれないな。

 そうしてニュータイプを増やす事が出来れば、それは月にとって大きな……非常に大きな意味を持つ。

 と、不意に映像モニタにシーマの姿が映し出され、俺が何かを言うよりも前に口を開く。

 

『アクセル、交渉が纏まったよ。……とはいえ、今回の交渉が纏まったのはコロニーに寄る事が出来るといった結果だけどね』

「つまり、友好関係とか協力関係を築く為の交渉はこれからって事か」

 

 俺の言葉、シーマが頷く。

 どうやら第一段階は突破といったところらしい。

 ただし、今の状況で向こうがどう反応してくるのかは分からないが。

 

『そうなるね。ただ、向こうもこちらを警戒しているようだったけど。……それでもこちらを受け入れたんだから、それだけ食料や水が厳しいんだろうね』

「だとすると、こっちにとってはかなり有利だな。何しろ、水や食料は幾らでも入手出来るし」

 

 勿論、クレイドルで作っている食料とかは、クレイドルだったり月面都市で消費される。

 だが、異世界間貿易に参加すれば、食料はどの世界からでも入手出来るだろう。

 それこそ、ただ純粋に食料となると、マブラヴ世界からだって合成食を入手出来る。

 それも強制労働をしている者達が食べている不味い合成食ではなく、各世界の協力によってきちんと食べられる味になった合成食だ。

 ……ちなみに、不味い合成食も調理の仕方によっては、普通に食べられるのは事実だ。

 問題なのは、それだけの調理技術を持っている者が希少だというだけで。

 そんな訳で、ルナ・ジオンであれば他の世界から幾らでも食料は入手出来る。

 そして俺のニーズヘッグか、もしくはファブニールを使えば、木星まで転移するのもそう難しい話ではない。

 酸素は……そっちは少し難しいかもしれないが、それはあくまでも食料や水に比べての話だ。

 何だかんだと、やっぱり転移可能だというのは非常に大きな利点だよな。

 何しろ、本来なら片道2年、往復4年の道のりが一瞬なんだから。

 

『そうだね。おかげでハモンも交渉が纏まりそうだと喜んでるよ』

 

 そう告げるシーマだったが、本人の顔はそこまで喜んでいるようには思えない。

 それこそ、何か心配事でもあるかのような、そんな様子だ。

 

「どうした? 何かあるのか?」

『木星の連中にしてみれば、あたし達の持つ技術というのは魅力的だ。それを欲して、妙な真似をしないといいんだけどね』

「そんな心配はしなくてもいいんじゃないか? 戦力という点で、こっちが圧倒的に有利なんだし」

『そうだね。今は、ね』

 

 ……なるほど。今のシーマの言葉で、何を言いたいのかを理解する。

 確かに今は木星と月の技術や戦力は離れすぎていて、何も知らない状況ならまだしも、事情を理解すれば危害を加えようとは思わないだろう。

 だが、それはあくまでも今はだ。

 この先、木星と月が交流を続けていけば、当然の話だが自然とある程度の技術交流も行われる筈だ。

 それどころか、MSというのはボールやオッゴのような戦闘用ポッドとかと比べても、宇宙空間で作業をする上で非常に便利だ。

 何しろ、木星の重力は月はともかく、地球と比べてもかなり高い。

 つまり、ボールやオッゴのような戦闘ポッド、もしくは作業用ポッドではあっさりと木星に引き込まれてしまう。

 そうなれば、当然のように待っているのは死でしかない。

 だが、MSはボールやオッゴよりも高い推進力を持っている影響で、重力にある程度逆らう事が出来る。

 ……それでも、重力に引き込まれれば待っているのが死なのは間違いないのだが。

 そんな訳でMSの譲渡が行われれば、当然のように木星でもMSの開発が進むだろう。

 何より、MSの動力部である核融合炉に必須のヘリウム3が、ここでは使いたい放題だというのも大きい。

 つまり、木星でのMS技術が発達し……場合によっては、その技術は月や連邦軍、ジオン軍に匹敵する可能性もある。

 だが……問題なのは、MSの技術を幾ら伸ばしても転移という技術には行き着かない事だ。

 当然だろう。システムXNという転移の技術は、このUC世界の技術という訳ではなく、シャドウミラーの持ち込んだ技術。全く別の系統の技術なのだから。

 それを思えば、MSの技術を幾ら高めても転移なんて技術に行き着く筈がない。

 あるいは、本当にあるいはだが、MSの技術を伸ばす事で、もっと別の技術……例えば、転移程ではなくても木星と地球の間をもっと短時間で行き来出来るような技術にはなるかもしれないが。

 ともあれ、MSの技術が高まっても転移の技術はない。

 だが、自分達に物資を持ってくる月の人間は転移の技術を持っている。

 こうなった時、一体どうなるのか。

 普通なら、月に恩を感じて妙な真似をしたりはしないだろう。

 だが、人間の中には自分の利益の為なら恩人であっても牙を剥くような者もいる。

 シーマが心配しているのは、それか。

 キシリアの下で色々と後ろ暗い事を散々やらされてきただけに、その辺にも考えが回るのは当然だろう。

 

「シーマの考えは理解出来るが、今はそこまで心配する必要はないだろ。そうなったらそうなったで、こっちも相応の対応をすればいいだけだし」

 

 木星側でMS関係の技術が発展しても、結局転移はどうしようもない。

 ましてや、転移の能力を持つニーズヘッグを奪うのは確実に不可能だし、ファブニールを奪おうとしても、ファブニールは最初に登録した者しか操縦出来ないようにされているし、最悪の場合はファブニールはS-11ミサイルやブラックホールエンジンの暴走によって自爆する。

 量産型Wだからこそ、出来る事ではあるが。

 そして当然のようにシャドウミラー用の通信によって、その件は月やホワイトスターに伝えられ……以降は、木星にこれ以上接触しないか、もしくは反撃をするかを決める事になるだろう。

 

『だと、いいんだけどね。……それより、コロニーが近付いてきたよ』

 

 シーマの言葉に映像を切り替えると、そこには木星のコロニーが幾つも見えてきた。

 コロニーの形そのものは、一般的なコロニーという訳ではなく、サイド3が使っている密閉型のコロニーだ。

 この密閉型のコロニーというのは、密閉型であるが故により多くの人間を収容する事が出来る。

 勿論密閉型であるが故の難点もあり、具体的には閉塞感が強いということを意味していた。

 閉塞感と言えばその程度か? と思うも、それによってコロニーの住人がストレスを感じる事になったりするのを考えると、それは大きなマイナスだ。

 特にここは木星だ。

 地球の側にあるサイドなら、密閉型であっても地球の側にいるという安心感から、密閉型であっても、そこまでストレスはないだろう。

 だが、ここは木星だ。

 地球から大きく離れている上で、密閉型コロニーとなれば……あ、でも意外とそうでもないのか?

 木星の側にいるからこそ、密閉型コロニーだという事になれば……まぁ、その辺は人それぞれか。

 

「コロニーでの対応はお前に任せてもいいのか? 俺が出る必要は?」

『うーん……アクセルがいると心強いのは間違いないんだけどね。でも、今の状況で木星側にアクセルの事は知られたくないんだよ。だから、最初はこっちだけで話すよ。……うちの連中も荒事には慣れているんだ。心配しなくても大丈夫さ』

 

 シーマの言葉に、俺は頷く。

 木星を相手にするという事に色々と思うところがあるのは間違いないが、シーマがこう言ってる以上は任せるしかないだろう。

 

「分かった。なら、そっちの件は任せる。けど……危なくなったら、すぐに俺を呼べよ。何があってもシーマのいる場所に向かうから」

『ばっ!? ……全く、取りあえずはあたし達に任せておきな!』

 

 何故か顔を赤く染めたシーマが、乱暴に通信を切るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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