ドゥガチとの会談は、結局のところあれからすぐに終わってしまった。
当然だろう。ドゥガチにしてみれば、俺に触れた瞬間に妙な映像を頭の中で見てしまったのだから。
……取りあえず、今までの経験から考えてドゥガチのニュータイプ能力が上がったのは間違いなかった。
ただし、具体的にそれがどのくらい上がったのかというのは、他者のステータスを確認出来なくなった今となっては、はっきりとは分からない。
とはいえ……これはあくまでも俺の経験からなのだが、俺と接触した時の衝撃が強ければ強い程に、ニュータイプ能力のレベルが上がっているという印象だ。
そういう意味では、セイラやアムロのように極端にレベルが上がったという訳ではないだろうが、クスコよりはレベルが上がった……といった感じか。
具体的にどのくらいなのかというのは、それこそニュータイプでもないと分からないが。
「……そんな訳だけど、ドゥガチのニュータイプ能力がどのくらい上がったのか、分からないか?」
「そう言われても……」
ドゥガチがどれだけのニュータイプなのか、それを聞くのはやはりニュータイプがいいだろうという事でシャリアに尋ねたのだが、シャリアは首を横に振るだけだ。
ここはリリー・マルレーンなので、盗聴器を警戒して言葉を濁しているという訳ではないのだろうが。
シャリアはニュータイプなのは間違いないし、後から来たが性格が落ち着いていたり年齢の問題もあって、ニュータイプ部隊の纏め役という扱いになってはいるが、本人のニュータイプ能力はそこまで高くはない。
いやまぁ、それでもきちんとニュータイプと名乗る事が出来るだけの能力を持っているのは間違いないのだが。
そんな訳で、ドゥガチが具体的にどれだけのニュータイプなのかは分からない。
「友好的な関係を結ぶ為の会談だったのに、まさか自己紹介と握手だけで終わるとはね」
そう言いながら、シーマの視線が向けられるのは俺だ。
あの会談の出来事は、どこからどう見ても俺が悪いようにしか思えないだろうし。
それを考えると、シーマからこういう視線を向けられるのも理解出来ない訳ではなかった。
「一応聞くけど、あれってマイナスか?」
「……どうかしらね」
ハモンに尋ねるが、そこでハモンの口から出て来たのは俺にとっても予想外の言葉。
てっきり、間違いなく駄目だったと、そう言われるのかと思ったんだが。
「違うのか?」
「アクセルの話を聞く限りではドゥガチのニュータイプ能力は強くなったんでしょう? であれば、一概にアクセルの行動がマイナスだったとは言い切れないわ。勿論、ニュータイプ能力が上がったのなら、それはそれで厄介な事だけど」
ニュータイプ能力を持つということが、交渉でどれだけ有利な事か。
それは、セイラという女王を間近で見てきたハモンだけに、よく知っているのだろう。
嘘を口にすればすぐにそれが嘘だと見抜かれるというのは、交渉をする上で非常に大きなアドバンテージを得る。
とはいえ……
「セイラくらいにニュータイプ能力が高い相手は、そういないと思うんだが」
勿論油断するような真似は出来ないだろうが、それでもドゥガチがセイラのように相手の嘘を自由自在に見抜く……といったような真似が出来るとは思えない。
であれば、今回の件は交渉においてそこまでマイナスになるとは限らない。
今回はあくまでも友好関係を結ぶ為にやってきたのであって、具体的に何かを交渉したりといったような真似をする必要もないのだが。
敢えて交渉内容とするとなると……ヘリウム3を木星コロニーから購入するか、ルナ・ジオン側で木星から直接採取するか。
この場合、面倒を避ける意味でも木星コロニーから購入という形がいいと思うんだが、もし万が一お互いに関係が悪くなった時の事を考えれば、ヘリウム3の採取技術だったり、そのノウハウを確保しておいた方がいいのは間違いない。
そこら辺は、ハモンがドゥガチと話し合って決める事だろうから、俺からは何も言わないが。
「とにかく、ドゥガチ側からまた連絡が来るのは間違いないだろ。援助物資の類もまだ渡してないんだし」
「……あたしとしては、出来るだけ早く食料とかを引き取って欲しいんだけどね。パプア級はまだしも、ムサイ級やこのリリー・マルレーンの格納庫にも物資の入ったコンテナが置かれているというのは、あまり面白くはないし」
シーマにとっては、いざ何かあった時にMSの出撃を邪魔する可能性の高いコンテナは、出来るだけ早くどうにかしたいのだろう。
一応俺の空間倉庫の中に入れるという方法もあるのだが、それは出発前に却下されてるしな。
木星コロニーとは初めて接触――シャリア以外――するのだ。
そんな時に、俺の空間倉庫とかを見せたらどうなるか。
とはいえ、握手した事によってドゥガチのニュータイプレベルを上げてしまった以上、説得力がないが。
「そうね。シーマの気持ちも分かるから、出来るだけ早く補給物資を渡したいとは思うけど、まさか向こうが受け入れ準備も整っていないのに、それを渡す訳にもいかないでしょう?」
ハモンのその言葉は、これ以上ない程の説得力があった。
相手の準備が整っていないのに次々とコンテナを運び込むなんて真似をすれば、それは嫌がらせと思われてもおかしくはない。
そんな真似をすれば、当然の話だが友好関係を結ぶといったような事も出来ないだろう。
「取りあえずは待つしかない訳だ。……けど、あたしの予想が正しければ、そこまで長い間待つ必要はないと思うよ」
「でしょうね」
シーマの言葉に、ハモンも同意するように頷く。
その意見には、俺も反対ではない。
ドゥガチにしてみれば、俺達と友好関係を結ぶというのは、利益ではあっても害ではない。
……自分達にあまりに条件がよすぎて、それを不安に思うといったようなことはあるかもしれないが。
「そうなると、俺達が出来るのは待ってるだけか。……いっそ、俺がちょっと周囲の様子を見てくるか?」
影のゲートに気配遮断のスキルといった能力がある以上、忍び込むといった事は得意だ。
実際、今までそれによって多くの場所に忍び込んでは、MSに限らず各種機動兵器を奪ったりしてきたし。
しかし、そんな俺の提案はハモンから即座に却下される。
「駄目よ。アクセルの能力が幾ら強力でも、絶対という訳ではないでしょう? であれば、ここでその危険を冒すような真似は、今回の交渉の担当者として許容出来ないわ」
今回の交渉団を率いているハモンの口からそう言われると、俺としても無理を通す事は出来ない。
木星ならではの技術とか、少し興味あったんだけどな。
ただ、この世界独自の技術という点では、MSがまだ伝わっていない以上、そこまで気にする必要もないのかもしれないが。
『シーマ様、木星側から連絡が来ましたぜ』
と、不意に通信が開くとブリッジにいたシーマの部下からそんな通信が入ってくる。
どうやら、向こうもすぐにこっちと話をしたいと思ったらしい。
「そうかい。それで、何て言ってきた? それとも、こっちから誰か出る必要があるのかい?」
『1時間後に、さっきと同じ部屋に同じメンバーで来て欲しいってことらしいですぜ』
「なるほど。……どうする? 万が一にも向こうが何か仕掛けてくるという可能性は否定出来ないけど」
シーマに視線を向けられたハモンは、少し考えて頷く。
「行きましょう。この状況で向こうが何かしてくるとは、到底思えないわ」
交渉団を率いるハモンがそう言えば、話は早い。
すぐに向こうに返事をし……そして俺達は1時間後に再び先程の場所に向かうのだった。
「先程は失礼しました」
そう言い、ドゥガチは頭を下げてくる。
本来なら木星コロニーの頂点にいるような立場である以上、そう簡単に頭を下げたりしては不味いんだろうが……それでもこうして頭を下げてくるという事は、色々と理由があるんだろう。
「いえ、お気になさらず。……体調の方に何か影響はありましたか?」
ハモンの質問に、ドゥガチは少し戸惑ったように頷く。
「はい。そちらのアクセル殿の言った通り、何と言えばいいのか……認識出来る範囲が広がった? そのような感じです」
アクセル殿……ね。
まぁ、ドゥガチにしてみれば自分の能力を高めてくれた恩人といった認識なんだろうし。
そう考えれば、呼び捨てではなくアクセル殿と、そう呼ぶのも分からないではない。
だからといって、それで俺がどうこうするつもりはないが。
あ、でも俺という存在に対して思うところがあるのなら、月に対して友好的な態度をしてくれると助かる。
「ニュータイプ能力が上がったか。その能力はドゥガチにとっては大きな武器にもなるだろうが、同時に自分に向けられる凶器にもなりかねない。くれぐれも気をつけることだ」
相手が嘘を吐いているのを理解するというのは、自分が騙されないという意味では非常に助かるだろう。
だが同時に、親しい相手が自分に嘘を吐いた……そんな風に認識するという事は、精神的な負担となるのも間違いない。
もっとも、俺は嘘が全て間違っているとは思っていない。
相手を安心させる為に嘘を口にするという事もあるのだから。
ドゥガチが具体的にどのくらい相手の嘘を見破ったり、隠し事を察知したりといったような事が出来るようになったのかは、俺にも分からない。
だが、木星という特殊な環境においては、ドゥガチの上がったニュータイプ能力が一体どういう風に働くのか……
ついでに、ドゥガチと接触した時に見た、あの巨大MSかMAか分からない、鳥の翼のようなものを持つ機体。
あれが具体的にどのような存在なのかは分からないが、今までの経験から考えると、将来的に起きるのは間違いないのだろう。
であれば、将来的にあの機体を入手する可能性は、決して否定出来ない。
「分かりました。……ありがとうございます」
深々と一礼するドゥガチ。
それは交渉相手への態度という訳ではなく、まるで自分よりも上位の存在への態度。
……まぁ、俺との接触によってドゥガチのニュータイプ能力が上がったのだから、そのような態度を取るのは分からないでもないんだが……木星コロニーのトップとして、それはいいのか?
「ああ、分かった。その辺は気にするな。俺に恩を感じてるなら、ルナ・ジオンと友好的な関係を築いてくれると、俺としては嬉しいけどな」
「はい、分かりました」
ドゥガチが頷き、そう告げる。
にしても……今更、本当に今更の話だが、ニュータイプということはドゥガチも実は原作に出て来たりしたのか?
いや、けど木星なんだよな。
アムロが何らかの理由で木星まで来るとか?
ただ、地球から木星までは、片道2年くらい掛かる。
原作の主人公たるアムロが、合計4年も地球にいないとなると……もしかして、木星が次の話の舞台になるとか、そんな感じなのだろうか。
「では、その件はそれくらいにして……本題に入りましょう」
ハモンのそんな言葉で我に返る。
とはいえ、話そのものはそこまで難しいものではない。
「我々ルナ・ジオンとしては、木星コロニーと友好的な関係を築きたいと思います」
「……その前に1つ聞かせて欲しい。地球からこの木星に来るまで、2年は掛かる。それにそちらの艦隊を見る限りでは、とてもではないが地球から木星までやって来る事は出来ないように思える」
「ああ、それなら簡単な話です。……いえ、簡単というか、少し信じられないかもしれませんが、説明させて下さい」
そう言い、ハモンはルナ・ジオンが建国された経緯を説明する。
そうなれば、当然のようにシャドウミラーについても説明する事になり……
「異世界から……っ!?」
ドゥガチが何かに気が付いたかのように、俺に視線を向けてくる。
その視線に、正解だと頷いて口を開く。
「そうだ。異世界から来た存在が俺だ。だからこそ、ルナ・ジオンという国が建国出来たのも事実だな」
建国という事で、シャドウミラーからはかなりの持ち出しがあった。
具体的には、クレイドルとか、機動要塞とか……それ以外にも様々な資源や食料。
まぁ、クレイドルはマクロス世界から報酬として貰ったのはいいものの、実際に今回のような事がなければ、使い道に困っただろうが。
それこそ空間倉庫の中に収納されっぱなしだった可能性は非常に高い。
「……異世界というと、具体的にどのような場所なのですか?」
「そうだな。色々とある。分かりやすいので言えば、これだな」
そう言い、指を白炎にしてそこから炎獣を生み出す。
白い炎で身体を構成された犬や猫、小鳥といった動物達は、部屋の中を好き放題に動き回る。
ドゥガチを始めとした他の面々は、目の前でいきなり繰り広げられた光景にただ唖然とすることしか出来なかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637