ドゥガチとの交渉は無事終わり、これから2週間に1度は木星まで来る事になった。
とはいえ、次から来るのは俺じゃなくてシャドウミラーの他の誰か……もしくは量産型Wといったところだろう。
システムXNを搭載しているファブニールは、特機以外はシャドウミラーの機体で普通に操縦出来る。
つまり量産型Wが操縦するシャドウであっても、全く問題なくファブニールを操縦出来る訳だ。
「けど、ドゥガチをまだ心から信用はしていないんだね」
リリー・マルレーンの格納庫。
そこで木星の連中がコンテナを運んでいくのを眺めながらシーマと話していたのだが、不意にそんな風に言われる。
「そうか? 結構信用している方だと思うけどな」
「……でも、通信機は渡さないんだろう?」
俺の言葉にそう突っ込むシーマ。
その言葉には俺も何も反論出来ない。
シーマが言った通信機……それはこのUC世界で普通に使われている通信機ではなく、シャドウミラーが使っている通信機だ。
ゲートの技術やフォールド通信の技術が使われているこの技術は、それこそ地球と木星であっても何のタイムラグもなく、リアルタイムで通信出来るという優れ物だ。
当然この世界の人間が知ったら欲しくなるのは間違いなく、木星に置いていけば……それを分解したりといったような真似をされかねない。
シャドウミラーの技術をこの世界の人間が盗用出来るとは思わないが、それでも万が一というのはある。
「ドゥガチには、そういう事をするつもりはないようなんだけどな」
俺と接触した影響からか、ドゥガチは俺を上位の存在と思っている節がある。
もしくは、ニュータイプ能力でお互いの存在の格の違いを感じてしまったのか。
その辺りの理由はどうあれ、今のドゥガチが好んで俺と敵対するような真似をするとは思えない。
そういう意味では、通信機を渡してもいいのだが……ドゥガチが安心出来るからとはいえ、その下にいる者達も同様に裏切り行為を働かないという可能性は否定出来なかった。
それに人というのは恐怖を感じても忘れやすいものだ。
今の状況ではドゥガチが俺に敵対行為を働かなくても、数ヶ月、数年、あるいは十数年といった時間が経過した場合、ドゥガチが俺に対する畏怖や恐怖を薄れさせ、敵対するということは十分に有り得る。
その辺の事情を考えると、やっぱり通信機の類は渡さない方がいい。
「ふーん。……まぁ、アクセルがそう言うのなら、それで構わないさ。それより、今回の一件が終わったら、そろそろ終戦協定に本腰を入れる必要があると思うけど、アクセルはどうするんだい?」
「基本的には何かちょっかいを出す気はないな。これはあくまでもルナ・ジオンの活動なんだし……何より、今回の一件をどうにかすればルナ・ジオンの名前は世界中で知られるようになる」
元々、建国宣言によって世界中にルナ・ジオンの存在を知らせてはいた。
1年戦争中も移住を求める者達を集めたり、地球上では戦火から逃れた者達がハワイに集まってきたりといったような事もあったし、連邦軍と協力してジオン軍と戦ったりもした。
だが……これらの件はあくまでもそれなりに限られた者達しか分からない事だ。
それ以外の人々にしてみれば、ルナ・ジオン? そう言えばそんなのもあったっけ? と、そう思う者も少なくない。
何しろ、現在は戦争が終わった直後だ。
復興だったり何だったりで、戦争中に建国したルナ・ジオンの存在を覚えているような者は決して多くはない。
そして何か大きな出来事でも起こらない限り、ルナ・ジオンというのはそこまで名前を知られるといったような事にはならないだろう。
まぁ、魔法とか異世界とか、そういう存在に興味を持つ者であれば、話は別だが。
そんな中で、1年戦争の終戦協定の仲介をルナ・ジオンがやるという事を大々的に知らせれば、セイラの建国宣言を思い出す者も多いだろう。
だからこそ、セイラが今回の一件を引き受けたのは英断と言える。
……また、ジオン公国がジオン共和国と国名を変更する――というか戻す――という事や、何よりガルマがジオン共和国を率いる立場になるというのも、この終戦協定を見守っている者達の興味を惹くのは間違いない。
「そうだね。そうなってくれるといいんだけど。……ちなみに、終戦協定に関しては、クレイドルで行われるらしいよ」
「だろうな」
クレイドルが月の首都である以上、終戦協定が月で行われるというのはそうおかしな話ではない。
終戦協定に出て来る軍人や政治家といった面々の中で、クレイドルを自分の目で見てみたいと思う者がいてもおかしくはないが。
「とはいえ、ジオンは敗戦国であると分かっているし、ルナ・ジオンとジオンの名前がついているから、そこまで横暴な振る舞いをしないと思うが、連邦側がどう出るのかはちょっと疑問だな」
自分達が戦勝国だと思っており、その上ルナ・ジオンとジオンの名前が残っている国だ。
自分達が特権階級だと思って、横暴な振る舞いをする奴は必ず出て来る。
とはいえ、連邦全体に問題があるという訳ではない。
数少ない連邦の者達が大きな騒ぎを起こすからこそ、傍から見ても問題行動をしていると、そう思ってしまうのだ。
「そうだね。セイラがどんな風に考えているのかは分からないけど、ここで甘い顔を見せると戦後も色々と問題が起きる可能性がある。ここは、例え連邦の人間が相手であっても厳しく処置をする方がいいだろうさ」
シーマの言葉に俺も頷く。
実際、ここで下手に出るような真似をした場合、強硬派のような連中がいれば、自分達の方が上だと判断し、戦後も無茶な要求をしてくるだろう。
戦後に連邦が月を欲するのは間違いないので、結果としては変わらないのかもしれないが、それでもやはり強硬派に侮られるような真似はしない方がいい。
「とはいえ、クレイドルを見れば間違いなく連邦の欲望を刺激するだろうけどな」
「そうだね。その辺は正直どうしようもないと思うよ。クレイドルは特別だし」
クレイドルが特別だというシーマが嬉しそうなのは、それだけクレイドルを自分の帰るべき場所と認識しているのだろう。
そうしてシーマと話していると、やがて木星の人間がこちらにやってくる。
「コンテナは、全部運び出しました。輸送船の方がもう少し掛かるようですが、このリリー・マルレーンの分は問題ないかと」
そう言い、深々と頭を下げてくる。
「私達の為に、多くの食料を持ってきてくれたと聞きます。本当にありがとうございました」
「うちは木星とは友好的にやっていきたいからね。これからは月に2度やってくる事になるんだ。もっとも、次からは無償の譲渡って訳じゃなくて、ヘリウム3との取引になると思うけど、その時に何か希望する物があれば、それに応じるよ」
シーマの言葉に、木星の男は嬉しそうに頷く。
木星のコロニーに住む者にとって、定期的に……それも月に2度という頻度でやって来る月の人間は、非常にありがたいのだろう。
木星コロニーともなると、娯楽の類も基本的にはないだろうし。
……もしここで木星コロニーにナデシコ世界のゲキガンガー3を持ってきたらどうなる?
ふとそう思ったが、第2の木蓮を作るのもなんだし、その辺は取りあえず止めておこう。
ただ、映画とかドラマとか漫画とかゲームとか……そういうのは持ってきてもいいかもしれないな。
「では、失礼します」
そう言い、男が少し名残惜しげにしながらも去っていく。
……シーマの美貌を間近で見て、薄らと頬が赤くなっていたのは間違いない。
どうやら、木星の人間にとってもシーマは美人という扱いらしい。
「何だい?」
「いや、何でもない。それより、今回は無償の譲渡って言ってたけど、実際には返礼という形でヘリウム3を貰うんだろ?」
「そうだね。けど、あくまでも返礼であって、取引じゃない。次回からはともかく、今回はお互いに挨拶代わりに無償譲渡という形を取ってるんだ。だからこそ、その辺に関してはしっかりとしておいた方がいいんだよ」
「そういうものか? ……まぁ、シーマがそう言うのなら構わないけど」
それが流儀だと言われれば、納得するしかない。
次からきちんと取引が行われるのなら、今回の件はそこまで気にしなくてもいいだろうし。
それに、ドゥガチの様子を見ればこっちの足下を見たりといったような事はしないだろう。
何しろ、ヘリウム3は木星から幾らでも採取出来るのだ。
わざわざ足下を見たりしても、それは迂闊に俺を……そして月を敵に回すだけだ。
ぶっちゃけ、俺達がこうして木星までやって来たのはあくまで友好関係を結ぶ為だ。
その友好関係を木星側から破壊するような事があったら、それこそもう木星まで来なければいい話なのだから。
ヘリウム3に関しても、木星コロニーから直接購入という形なら木星船団公社から購入するよりも安くなるが、月の経済力を考えれば多少割高であってもそちらから購入しても構わない。
まぁ、ドゥガチは木星のコロニーを纏めているだけあって、かなり有能な人物だ。
そのくらいの事は当然分かっているだろうし、ドゥガチの部下もそれくらいは分かってるだろうが。
「さて、じゃあそろそろこっちも準備をするか。とはいえ、特に準備らしい準備は必要ないんだが。個人的には、ペズンの時のようにシーマのパーティドレス姿を見られなくて残念だったけど」
「あのねぇ……」
シーマが呆れと照れの混ざった様子でそう告げてくるが、別にこれはお世辞でも何でもなく、本心だ。
これから行われる、ドゥガチを含めた木星の首脳陣との食事会。
パーティといったような派手な催し物でないのは、やはり木星側にそれだけ食料の余裕がないからだろう。
一応俺達が持ってきた食料である程度余裕は出来た筈だが……だからといって、大々的に人を集めてのパーティとはいかないらしい。
なので、服装も当然パーティドレスの類ではなく、普段着でいいらしい。
……それでも限度というのがあるだろうから、Tシャツ短パンといったような服装で行くのは問題外だろうが。
「ハモンとシャリアを入れて、こっちは4人。木星側からは何人くらい来ると思う?」
「そうさね。こっちと人数を合わせるんじゃないかい? だとすれば、ドゥガチも含めて向こうも4人といったところだと思うよ」
「4人か。……だとすれば、特に問題らしい問題はないな。木星料理とか、そういうのが出て来るかが楽しみだけど」
ナデシコ世界では火星丼ってのがあったが……ぶっちゃけ、あれってハヤシ丼にタコさんウインナーをトッピングしただけなんだよな。
ハヤシ丼と言ったって、ようはハヤシライスをカレーとかの皿じゃなくて丼に盛り付けただけだし。
……ただ、それはあくまでも俺の印象での話であって、実際には色々と手が込んでいるという可能性も否定出来ないが。
「木星丼とか出て来ないか?」
「は? それはどういう料理だい?」
俺の口から出た木星丼という言葉に、シーマがそう尋ねる。
とはいえ、俺も別に木星丼といった料理がどういう料理なのかは知らないので、何とも言えないが。
ナデシコ世界の火星に比べると、UC世界の木星はかなり厳しい環境なだけに、木星丼なんて料理を用意するのは難しいだろうし。
ナデシコ世界の火星は、ナノマシンの影響で少なくても普通に火星で暮らす事が出来ていた。……土壌的な問題で、農業とかは難しかったし、出来た野菜も不味かったらしいが。
だが、UC世界の木星は、そもそも木星に降りる事すら出来ないのだ。
勿論、火星と木星では条件が大きく違うというのは分かる。
火星は地球に最も近い環境なのだから。
その辺の事情や、何より原作の世界が大きく違うんだから、その辺りを考えると……うん、やっぱり同じように考えるのがそもそも間違いだ。
「アクセル、どうしたんだい?」
「いや、今は無理でも将来的には木星ならではの料理とか、期待出来たらいいなと思ってな」
その言葉に、シーマも納得したように頷く。
シーマにしてみれば、木星が発展するというのはそう悪い話ではないのだろう。
月としては、ヘリウム3が一番の取引材料になるのだろうが、それ以外にも色々とあった方が助かると思うのは当然なのだから。
「ともあれ、いつまでもここでこうしている訳にもいかないし……準備をするか」
「そうだね。向こうをあんまり待たせる訳にもいかないし」
ドゥガチ達は今回のホストだ。
ホストクラブのホストではなく、客人を招くという意味でのホスト。
それだけに、ドゥガチにしてみればもう準備万端という形で、こっちの事を待っていてもおかしくはない。
今回の会食は、木星側としても決して軽く考えてはいない筈だ。
……寧ろ、ここでファーストフードで食べるようなハンバーガーが出て来たら、それはそれで驚くが。
そんな風に思いながら、俺は会食の準備を行うのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637