転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2721話

「では、月と木星。お互いの友好を祝って……乾杯!」

『乾杯!』

 

 ドゥガチの言葉と共に、コップを掲げて乾杯と告げてから口に運ぶ。

 コップの中に入ってるのは、酒ではなくお茶だ。

 一応護衛という扱いになっているという事で、そんな状況だと酔う事は出来ないからと、お茶にして貰ってる。

 実際には、護衛云々という理由じゃないんだが。

 今までの流れから考えて、この状況で酒を飲めば間違いなく俺はシーマを抱く事になってしまうだろう。

 少なくても、俺はシーマに対して女として強く意識している。

 シーマも、それが男女間のそれか友情的な意味なのかは分からないが、俺に多少なりとも好意を抱いているように思える。

 そんな訳で、この状況で俺が酒を飲むという事は色々と危ないというのが、お茶を飲んでいる理由だった。

 

「ふぅ。……それにしても、月と友好関係を結べたのは木星としても嬉しい限りだ」

 

 こちらは俺と違って酒を飲んだドゥガチが、ハモンに向かってそう告げる。

 俺を上位者と認識したドゥガチだったが、それはあくまでも俺個人に対するもので、月の人間を上位とは認めていない。

 お互いに対等なパートナーであるというのが、ドゥガチの態度の理由だ。

 それに関しては、俺から特に何か言うべき事はない。

 実際、月側でも今のところは明確に木星との間で上下関係をつけようとは思っていないみたいだし。

 だからこそ、今の状況を考えるとその辺を特に心配する必要はなかった。

 

「そうですね。これからも末永くお付き合い出来る事を願っています」

 

 ハモンもドゥガチを相手にする時は自分よりも格上の相手という態度を崩さない。

 ハモンは月の中でこそ実力者だが、外から見た場合は月の人間の1人にすぎない。

 そんなハモンがドゥガチを相手にするなら、こういう言葉遣いでおかしくはないだろう。

 

「それでは、お互いの友好の架け橋となる為にも……MSだったか。あれを少し譲って欲しいのだが」

「MS、ですか。耳が早いですね」

 

 輸送艦のパプア級ならともかく、リリー・マルレーンやムサイ級の格納庫にも補給物資の入ったコンテナが詰め込まれていた。

 木星の人間がそれを運び出す時に格納庫にあったMSを見ていれば、当然その話はそれなりに広まり、上層部の耳にも入るだろう。

 いや、あるいは木星でもMSの存在はそれなりに知られていたのか?

 歴史の表舞台にMSが立ったのは、1年戦争……正確にはその初戦となったルウム戦役の時だ。

 だが、ジオン軍がMSを開発していたのはもっと前の話で……MSの性能を連邦軍に知らせないようにして各種データを蓄積し、パイロットが操縦に慣れるという意味では、連邦軍の目の届かない場所で訓練する必要がある。

 そういう意味では、木星船団公社の……いや、木星船団公社はジオンも連邦も手を出せないようにしているのか。

 そうなると、それ以外。それこそシャリアがかつて所属していたジオン所属の木星船団でMSのテストしたというのは……俺の穿ちすぎか?

 もしそんなテストをしたとしても、片道2年、往復4年と考えると……データを取っても、サイド3に戻ってきた時は既に時代遅れになっていてもおかしくはない。

 そうなると、ジオンの木星船団から噂だけは聞いていたとか、そういう流れか?

 ……とはいえ、MSはジオンにとっても最重要機密だった筈で、そう考えれば迂闊に情報が広がるとは思えないが。

 そんな事を考えている間にも、ドゥガチとハモンの交渉は進む。

 俺はそれを聞き流しながら、料理を楽しんでいたのだが……ぶっちゃけ、この料理って今回俺達が持ってきた物資の材料を使った料理なんだろうな。

 木星側でもある程度の食料は作っているのだろうが、それでもやはり今回持ってきた食料には味として劣ってしまうのだろう。

 これは立地上、そして住んでいる人数や技術的な問題を考えれば、どうしようもない事だった。

 調理技術はそれなりなので、絶賛する程ではないにしろ、十分に美味いと言う事が出来る料理だったが。

 

「それでは、MSですが……やはりここは、MSという存在を理解する上でも、最初期のMSを幾つか持ってくるのはどうでしょう? ああ、勿論最初期とはいえ、普通に作業用として使う事が出来るMSですが」

 

 ハモンの言葉に、最初期という事から恐らくザクⅡ……もしくは旧ザクだろうと予想出来る。

 旧ザクは戦力としてはゲルググやジムと比べるとかなり劣っているが、それはあくまでも最新鋭のMSと比べればの話だ。

 MSが1機も存在しない木星においては十分な戦力になるだろうし、何よりMSの基礎を学ぶという意味で旧ザクやザクⅡといった存在は非常に良好な学習材料だ。

 とはいえ……ぶっちゃけ、木星で使うMSとなるとヅダの方がいいと思うんだが。

 コロニーはともかく、木星近くでの作業をするとなると当然のように重力に引かれる。

 木星の重力は地球よりも強い以上、機動力の高いMSの方がいい。

 何より、ルナ・ジオン軍ではヅダを量産している以上、ノウハウがあるというのも大きい。

 ……そして、一番重要な理由としては、1年戦争が終了してルナ・ジオン軍の主力MSは新しい物になっていく。

 一般的な兵士が使うMSはガルバルディをベースにした機体。

 異名持ちやエースが使うMSはギャン高機動型をベースにした機体といったように。

 であれば、ヅダは必然的に使われなくなっていく。

 新兵のMSの操縦訓練や武装とかを解除して作業用だったりといったように使ったりはするだろうが、それでも現在ルナ・ジオン軍が有するヅダの数を考えると必ず余る。

 そうして余ったヅダはどうするか。

 それこそ武装を解除して民間に払い下げるといったような事も出来るだろうし、最悪俺達シャドウミラーに売ってキブツで別の資源に変えるといったような真似も出来る。

 だが、木星に売るという選択があれば、それはかなり大きいだろう。

 木星コロニーは、地球圏だとサイドというコロニーの集合体には及ばないが、それでも結構な数のコロニーがあり、住人の数も相応に多い。

 そうである以上、ヅダを買い取るといった真似をすれば木星軍とでも呼ぶべき軍隊を作ってもおかしくはない。

 そういう意味で、木星というのは月にとってお得意さんとなるには十分な可能性を持っているのだ。

 

「それにしても、木星でこれだけのコロニーを作るのは苦労したでしょう?」

 

 MSについての商売の話が終わり、今は世間話という名の情報交換や情報収集が行われている。

 

「そうだな。木星のコロニーをここまでにするには苦労の連続だったよ」

 

 ドゥガチがしみじみと告げ、その言葉に同意するように他の三人の男達も頷く。

 恐らくはドゥガチの側近とかそういう感じなのだろう連中だけに、ドゥガチがどれだけ苦労してきたのかも理解出来るのだろう。

 

「しかし、苦労したというのなら私だけではなくそちらも同様ではないか? 言ってみれば、木星にコロニーがあってもそれを不満に思う者はいない。だが、月に新国家を樹立するとなれば、それを不満に思う者は多い筈だ」

「そうですね。実際、ルナ・ジオンを建国してすぐに戦いになったのは事実です。ですが、私達はシャドウミラーの協力があったので、それに対処するのは難しくありませんでした」

「……羨ましいことだな」

 

 ドゥガチはそう言いながらも、俺の方に視線を向けてきたりはしない。

 ここでドゥガチが俺に対して月と同じような助けを求めてきても、俺がそれをそう簡単に受け入れる事はないと、そう理解しているからだろう。

 もしくは、俺を上位の存在と認識しているが故に、自分から話し掛けるのが不味いと思っているのか。

 その辺の事情は分からなかったが、向こうから話し掛けてこない以上、俺は話を聞きながら料理を楽しむだけだ。

 

「そう言われても仕方がないかと。ただ、その代わりという訳ではないですが、ジオンと連邦の戦争……1年戦争と呼ばれている戦争が終わった今後、連邦の目は間違いなく月に向けられるでしょう」

「月の生み出す経済効果は、連邦全体で見ても結構な割合になるだろうしね。連邦政府にしてみれば、戦後ということで各地の復興作業を行わなければならない以上、金は幾らあっても足りない筈だ。そんな連邦政府にしてみれば、月は禁断の甘い蜜といったところか」

 

 ハモンの言葉に続けるように、シーマがそう告げる。

 そしてシャリアとハモンもシーマの言葉に同意するように頷いていた。

 シーマにしてみれば、連邦がこれから月と敵対するというのは織り込みずみなのだろう。

 問題なのは、その敵対という行為が具体的にいつ実際のものとなるか……といったところか。

 とはいえ、1年や2年は大丈夫だと思うが。

 連邦も復興作業だったり、何よりも連邦軍の立て直しで忙しい筈だから。

 1年戦争で勝利した連邦軍だが、その受けた被害は大きい。

 ジオン軍は学徒兵を実戦に出したが、連邦軍もジオン軍まではいかずとも、それに近い状況に陥っていたのは間違いない。

 実際、俺が聞いた話によるとソロモンやア・バオア・クーの駐留部隊の中には学徒兵がいるらしいし。

 そういう意味では、国力が30倍とも100倍とも言われている連邦軍を相手に、ジオン軍は大健闘したと言ってもいいだろう。

 そこまで連邦軍が疲労した以上、部隊を幾つか結成するといった程度ならまだしも、今回と同じような規模の戦いを再度連邦軍が行う事が出来るようになるまでは、下手をすると10年近く掛かる可能性がある。

 何しろ、ジオン軍との戦争で兵士はともかく、その兵士達を指揮する士官や士官候補生といった面々までもが死んでいるのだから。

 

「連邦政府に……そうなると、商売をするのも苦しいのでは?」

「そうなりますね。ですが、1年戦争が終了した現在は、連邦政府以外にも取引をする相手はいますので。ジオン共和国は間違いなく。サイド6が戦後どうなるのかは分かりませんが、ジオンや月の存在を考えると戦時中と同じく中立という立場になるままの可能性は高いでしょう」

 

 そうなると、もし連邦が月に対して経済封鎖をしたりしようものなら、それこそサイド6を経由して三角貿易的な感じになるのかもしれないな。

 

「なるほど。そしてその取引相手には私達木星も含まれる、と」

「そうなると、こちらとしても幸いです」

 

 ドゥガチが悪党染みた笑みを浮かべると、ハモンも艶然とした笑みを浮かべる。

 うん、この2人は何だかんだと相性がよさそうだな。

 ……幸いなのは、その相性というのが男女間の相性ではなく、商売相手としての相性といったところか。

 とはいえ、今回は初めて木星と接触するから月の中でも重要人物のハモンが来たが、次に転移してくる時にハモンは来ない筈だ。

 誰が来るのかとなると、俺にも分からないが。

 次に月がここに来た時、一体どうなるのかは分からないが……その辺は、月の上層部が考える事だろう。

 

「ヘリウム3を確保するという事は、この世界において大きな意味を持ちます。それを考えると、やはり木星の存在は重要ですね」

「それは私も同様に思っている。だが……連邦は、木星のコロニーに対して興味を持っていない。距離が遠いからこそ、そのような態度になっているのだろうが……私達がヘリウム3の採取を止めたら、どうするつもりなのだろうな」

 

 しみじみと呟くドゥガチ。

 もしそのような事になれば、間違いなく連邦……いや、ジオンや月も含めてパニックになるだろう。

 連邦もそれは分かっているのだろうが、それでもやはり木星に興味を持たないのは、やはりその距離が原因なのだろう。

 木星船団公社の影響で、連邦とはどうしても付き合わなければならなかったのだろうが……さて、月が木星に接触した今となっては、どうなるんだろうな。

 その後も色々と話は続き……やがて午後9時くらいまで会食は続くのだった。

 

 

 

 

 

「そっちの準備はどうなっている? こっちはいつでも転移可能だけど」

 

 リリー・マルレーンの格納庫。そこに待機しているニーズヘッグのコックピットでブリッジに通信を送る。

 

『こっちも問題ないよ。この時間であっても、眠いなんて言ってる奴はいないしね。それに、木星側からの要望が書かれた紙もしっかりとハモンが受け取っている』

 

 シーマの言葉に、そうかと頷く。

 普通に考えれば、会食が終わって30分もしないうちに木星から月に帰ると言われれば、何を言ってるんだ? といったような視線を向けられるだろう。

 だが、このシーマ艦隊は……正確にはシステムXNを搭載している俺のニーズヘッグがあれば、それこそ近所のコンビニにでも行くような感覚で月と木星を行き来出来る。

 

「そうか。なら、転移するぞ」

『了解。……まさか、日帰りで木星に行けるようになるとはね』

 

 そんなシーマの言葉を聞きながら、俺はシステムXNを起動させる。

 

「システムXN、起動。転移座標入力……OK。転移フィールド生成開始」

 

 その言葉と共に、シーマ艦隊そのものが光の繭に包まれ……

 

「転移」

 

 こうして、俺達は月に戻るのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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