転生とらぶる   作:青竹(移住)

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2722話

 木星との友好関係を結んでから少し時間が経ち、2月に入るかどうかといった頃。

 この時期となれば、もう俺が特に動く必要もない。

 1年戦争は終わり、終戦協定は今月の中旬に行われるという事になっており、現在のUC世界では本格的に戦後復興に入っている感じだ。

 そんな訳で、終戦協定が無事に結ばれたのを見たら、そろそろ他の世界にでも行こうと思っていたのだが……

 

「どういう事だ?」

「私に言われても、ちょっと分からないわ」

 

 クレイドルにある政庁。

 その中でもセイラの私室とも言うべき最上階の部屋の中で、俺はセイラに向かってそう告げるも、セイラからもそんな疑問の声を発する。

 

「それ、何かの間違いとか……いや、今の状況でそんな事をする筈がないか」

「そうね」

 

 美味い紅茶を飲んでいるにも関わらず、セイラの表情は疑問の色がある。

 それだけ、今回いきなり出て来たこの話題は驚きだったのだろう。

 

「アナハイムから言ってきたんじゃなくて、連邦から言ってきた。それは間違いないんだな?」

「ええ。これがアナハイムからなら、こちらでも手を打つ事が出来たんだけど」

 

 セイラの言う通りだろう。

 今回問題になっているのは、戦後のジオンの扱いをどうするかという事だ。

 正確にはジオンの存在する、ジオニック社、ツィマッド社、MIP社のいわゆる3大兵器メーカーや、その3つには及ばなくても中小の兵器メーカーの扱いについてだ。

 連邦からも、その兵器メーカーから技術者を引き抜くという話は聞いていた。

 それだけであれば、特に問題はなかったのだが……そこにアナハイムが絡んでくるとなれば、話は別だ。

 アナハイムは本拠地こそ北米にあるのだが、その実態は月面都市……中でも、クレイドルが登場するまでは最大の月面都市だったフォン・ブラウンでの活動が主となっている。

 そんなアナハイムだが、連邦から要請があったのはジオンの技術者の半分近くをアナハイムに引き取って貰うという事だった。

 これは、普通に考えれば有り得ない事だ。

 普通なら、アナハイムという存在は幾ら巨大企業であっても結局1つの企業でしかない。

 そんな1つの企業に何故連邦がそこまで気を遣うのか。

 

「アナハイムが連邦に対する何らかのカードを持っているのは確実だろうが……問題なのは、それが一体どんなカードなのかという事だ」

「そうね。ジョーカーと言うには少し強すぎるわ」

 

 セイラの言う通り、このカードは少し強力すぎる。

 普通に考えて、企業が国にこのような譲歩をさせるといったような事は考えられない。

 いや、例えば企業側がかなり巨大で、その企業がなければ国が運営出来なくなるような小国であったりすれば、そのような事になってもおかしくはないのだが……今回は違う。

 アナハイムが大企業であるというのは間違いないが、連邦という国はそんなアナハイムよりも遙かに巨大なのだ。

 アナハイムが大企業であっても、連邦にしてみれば別にアナハイムは出来ればあった方がいいが、なければないで構わない。

 そんな存在なのだ。

 だというのに、連邦がここまでアナハイムに気を遣う……いや、譲歩するといった表現の方が正しいか? そこまでの事をするのだから、アナハイムが持っているカードがそれだけ強力なものであるのは間違いない。

 

「どうする? アナハイムの査察でもするか?」

 

 軽食のツナサンドを食べながら、セイラに尋ねる。

 だが、セイラはそんな俺の言葉に対して首を横に振った。

 

「何か犯罪行為があったのならともかく、何も起きてないのに査察をする訳にはいかないわ。……連邦からの譲歩の件も、アナハイムがではなく連邦からどうしてもそうしたいと言ってきたんだし」

「脅迫とか、そういうのがありそうだけどな。……ともあれ、そうなると今度からアナハイムに対しては色々と警戒した方がいい。連邦にここまで譲歩させるとなると、最悪アナハイムがルナ・ジオンを邪魔だと判断して、連邦に攻めさせるといったことにもなりかねないし」

 

 もっとも、もし連邦軍が攻めて来てもそれに対応する準備は十分に出来ている。

 月の周囲には機動要塞が幾つも浮かんでおり、まずその防御網を突破するだけで連邦軍は大きな被害を受けるだろう。

 それを突破しても、メギロートやバッタといった無人機が大量に襲い掛かる。

 そして最後に異名持ちが大量に揃っているルナ・ジオン軍が迎撃するのだ。

 普通に考えれば、連邦軍が受ける被害は甚大だろう。

 1年戦争が終わったばかりの今の連邦軍に、そのような事を行うだけの戦力は残っていない。……あくまでも今はの話で、数年が経過して戦力が回復すれば、また分からないが。

 

「そうなったら、こちらも相応の処置を執るしかないわね」

 

 セイラのこの果断さは、月の女王として高く評価出来るところだろう。

 世の中には何があっても最後まで話し合いで解決すべきと考えており、それこそ明らかに向こうから攻めて来ているのに、実際に被害が出るまでは絶対に攻撃をしてはいけないという事を言う者もいる。

 ……その最初の一撃が核兵器とか、それに類するようなもので、その一撃で首都が消滅したらどうするんだろうな。

 そんな頭がお花畑の者達とは違い、セイラは相手が戦力を用意して月に近付いてくれば、最初は警告をし……その警告が聞き入れられない場合は、先制攻撃を行う事を躊躇しない。

 勿論、それはあくまでも月の戦力が精鋭だという大前提があってこその話だが。

 

「出来れば、そうならない事を祈るしかないな。……まぁ、それでも今回の件はあくまでもサイド3に残っていた技術者達についてなのが、せめてもの救いだな」

 

 1年戦争の中盤……ルナ・ジオン建国前からセイラ達はMIP社に接触していたし、建国後もヅダの件でツィマッド社の人間が月にやって来ていたり、ジオニック社が近付いてきたりした。

 戦争終盤になると、兵器メーカー側でもジオンが負けると判断した為か、3大メーカーだったりそれ以外の中小企業からも月に来る者が増えていたし、ア・バオア・クーでの戦いが終わってからも結構な数が月に来ている。

 今の状況でもジオンに残っているのは、ジオン公国への愛国心だったり、家族や恋人が月に行くのを拒否していたり、連邦に雇われた方が自分にとって有利だと認識していたり……そのような様々な理由から、月に行くよりもジオンに留まっている方がいいと判断した者達だ。

 そのような者達の中にも腕利きの技術者はいる。

 いや、寧ろ連邦に行って自分の腕でのし上がってみせると考えている者の中には、飛びきりの腕利きがいたりするのも珍しい事ではない。

 自分の技術に自信を持っているからこそ、連邦に行っても大丈夫だと思っているのだから。

 中には、自分はもっと評価されなければおかしいのに、評価されていないといったような勘違いした者もいるのだろうが。

 

「取りあえず、月は十分満足出来る技術者を確保出来たんだから、それで満足しておいた方がいいな。……ただし……」

「ええ。アナハイムに対してはこれから注意しておくわ。コバッタや量産型Wから何らかの情報が来たら、すぐに対応するつもりよ」

 

 そう断言するセイラの言葉に頷き、気分を変える意味で別の話題を口にする。

 

「そう言えば、いよいよ本格的にルナ・ジオン軍の後継機の開発を始めたんだってな」

 

 勿論、以前から少しずつ開発が進めてられていたのは間違いない。

 だが、ガルバルディを始めとしてペズン計画のMSを入手し、1年戦争も終結したということで、本格的にディアナが動き始めたのだ。

 

「そうね。他にも私が乗るMAを開発してるらしいけど、それが完成するのはまだ先になりそうよ」

「……そんなのも開発してるのか。普通なら、国を率いる者が戦場に出るという時点で負け戦に等しいんだけどな」

「あら。ならアクセルはどうなの?」

「だから、普通ならと言っただろ? 俺は普通じゃないからな」

「狡いわね」

「そう言われてもな。そもそも、セイラはニュータイプだけど戦いは得意じゃないだろ?」

「あら、私も訓練くらいはしていてよ?」

「……訓練と実戦は違う」

 

 何で俺がセイラを戦いに出さないようにしてるのやら。

 

「そうね。でも、どうしようもない時はあるでしょう?」

 

 そう言われると、俺も反論出来ない。

 

「それに……キャスバル兄さんの件を考えると、私がMSやMAに乗れるようになっておく必要があるのは間違いないと思うし」

「あー……そうだな。その件に関して言われると反論出来ないな」

 

 俺がセイラと初めて肉体的な接触をした、あの時。

 シャアが地球に向かって小惑星を落とそうとしている光景。

 そのような事が起こらない為に行動している俺達だが、いざそのようなことが起きた場合は、小惑星をどうにかする方法を考える必要がある。

 そういう意味で、ニュータイプ……それも、現在は恐らくこのUC世界で最高のニュータイプの1人であるセイラが戦場に出るという意味では大きい。

 

「シャアも結局今のところ見つかってないしな」

「そうね。どこに行ったのかしら」

 

 普通に考えれば、ザビ家の下にはいないだろうから突撃機動軍を率いているキシリアではなく、ジオン軍の残党……デラーズ達と合流している可能性が高い。

 ただし、ア・バオア・クーにおいてシャアがキシリアに対してどのような行動をしたのかで、その辺は大きく変わってくる。

 具体的には、もしア・バオア・クーでキシリアを暗殺しようとして失敗したのなら、突撃機動軍と行動を共にするといった事はないだろう。

 だが、そもそもア・バオア・クーでキシリアを暗殺しようとする前にキシリアが逃げたら……キシリアの暗殺を狙って、突撃機動軍と行動を共にしている可能性は否定出来ない。

 それ以外でも、キシリアと行動を共にしていればニュータイプ用MSやMAが入手出来るというのも、ニュータイプのシャアにとっては大きな意味を持つだろう。

 ニュータイプの研究を積極的に進めていたのはキシリアだし、フラナガン機関の人間がどれだけ残っているのかは分からないが、もしいたとすればキシリアと合流している可能性が高い。

 戦後の混乱を思えばキシリアと合流出来ずに別の集団に合流した奴も相当数いるだろうが。

 ともあれ、ニュータイプのシャアにとってニュータイプ用のMSやMAというのは非常に強力な武器だ。

 そして現状でそれを開発出来るところは限られている。

 ちなみに、ジオングを開発したのもキシリアらしい。

 

「あ」

「……どうしたの?」

 

 不意に声を上げた俺に、セイラが疑問の視線を向けてくる。

 そんなセイラの言葉を聞き、俺は自分を落ち着かせるように紅茶を一口飲んでから口を開く。

 

「普通に考えて、ニュータイプ用のMSやMAを開発出来るところは多くはない。その1つがキシリア達だが……ニュータイプ用の研究所という意味なら、月にもアルテミスという存在があるだろ?」

「待ってちょうだい。それはもしかして、キャスバル兄さんが月にいるかもしれないという事?」

 

 俺の言葉が予想外だったのか、セイラが驚きの声を上げる。

 

「あくまでも可能性だけどな。……それにこう言ってはなんだけど、アルテミスはこの世界でも数少ないニュータイプ研究所だが、その能力そのものはそこまで高くはない」

 

 アルテミスは捕らえた研究者の中でも、子供達を虐待していなかった者達で構成されている。

 それ以外にも研究者を目指している見習いが集まったりしている。

 そんな関係で、どうしてもフラナガン機関の研究所よりも能力が劣るのは間違いない。

 とはいえ、それはあくまでも今の話だ。

 将来的にはフラナガン機関の研究所よりも高い能力を持つ事になってもおかしくはない。

 それだけに、シャアが求めているニュータイプ用のMSやMAを今の状況で開発出来るかと言われれば……正直、微妙だろう。

 

「それでも、一応キャスバル兄さんがいないかどうか、調べておいた方がいいわね。とはいえ、キャスバル兄さんはジオン軍にいた時はずっと仮面を被っていたから、素顔を知ってる人は限られているし……」

「写真はないのか?」

 

 尋ねるが、セイラは首を横に振る。

 家族思いのセイラなら、シャアの写真を持っていてもおかしくないと思ったんだが。

 どうやら、残念なことに違ったらしい。

 そうなると、確かにどうやってシャアの顔を知らせるかといった問題が出て来る。

 

「取りあえず、ラルや……ペズンから戻ってきている黒い三連星辺りならシャアの顔を知ってるんじゃないか?」

「どうかしら。……それに知っているだけでは意味がないのも事実よ」

「取りあえず、シャアがどこにいるのかを探す方が先だな」

 

 突撃機動軍やデラーズ達、それ以外にも個別に動いているジオン軍の残党。

 そういう連中がどこにいるのかを確認すれば、色々と動きやすい。

 そう思いながら、俺はセイラとのお茶会を楽しむのだった。




アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
   努力 消費SP8
   集中 消費SP16
   直撃 消費SP30
   覚醒 消費SP32
   愛  消費SP48

スキル:EXPアップ
    SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
    念動力 LV.11
    アタッカー
    ガンファイト LV.9
    インファイト LV.9
    気力限界突破
    魔法(炎)
    魔法(影)
    魔法(召喚)
    闇の魔法
    混沌精霊
    鬼眼
    気配遮断A+

撃墜数:1637

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