いよいよ、終戦協定の交渉が始まった。
……本来なら俺はそこに参加する必要はなかったのだが、今回の交渉はUC世界の歴史上に残るという事で、俺にも参加要請が来たのだ。
今の俺はUC世界で行動する時の10代半ばの姿ではなく、シャドウミラーの代表としての20代の姿となっていた。
「1年戦争を終戦とする為の交渉が始められる事を、嬉しく思う。そして始まるだけではなく、無事に終戦の交渉が締結する事を強く願う」
そんな俺の言葉と共に終戦協定の交渉が行われる。
……ジオン側からガルマが出て来たということで、連邦側は多くの者が驚きの表情を浮かべていたが。
また、ジオン公国からジオン共和国という名前に国名を変えるという事に対しても驚いていた。
そういう意味では、ジオン側の先制攻撃が命中した形か。
連邦も前もってガルマの件の情報を入手しただろうが、やはり実際に目の前に出て来られると違うのだろう。
俺がやるのは、あくまでも見届け人といった形だ。
つまり、今の俺は何かを口にしたりせず、ただ黙って見ていればいい。
……それは、俺が今の状況では何もやるべき事がないというのを意味してもいたのだが。
そんな俺の視線の先で、交渉は進む。
「こちらとしても、戦力をこれ以上増やさないようにというそちらの言葉は理解出来る。だが、サイド3に対して襲ってくる相手もいるのは事実。……現に、連邦軍の駐留軍がグローブという街で盗賊のような真似をしていたのだから」
「それは……」
このカードを出されると、連邦側としても言葉に詰まる。
実際、連邦という組織にとってグローブで行われた略奪や暴行といった類は、かなり大きなマイナスだった。
……連邦にとって幸いだったのは、この交渉の様子が放映されていないという事か。
もしこの件を連邦の人間が知ったら、間違いなく騒動になっただろう。
「グローブの件は駐留軍の指揮官の独断だったとはいえ、不幸な出来事だったと思う。だが……こちらに入ってきた情報によると、ジオン公国……いや、今はジオン共和国か。そのジオン共和国にもグローブの件に関わっていた者がいると聞いているが?」
それは事実だ。
ダルシアの部下……というか仲間の何人かの政治家……いや、政治屋が、グローブの件に関わっていた。
それどころか、他の場所で不特定多数が事件を起こさない為にという考えでグローブを生贄にしたのだ。
そういう意味では、ジオン軍に恨みを持っていた連邦軍よりも同胞を売った政治屋達の方が罪が重いと言ってもいい。
「その件については、連邦軍から強引に要求されたと聞いている。断った場合は、もっと酷い事になると言われたと」
ガルマの言葉が真実かどうかは、分からない。
だが、連邦軍の態度を見ていれば、それを嘘と言うことが出来ないのも事実だった。
……とはいえ、連邦側では当然それを受け入れるといった事はなかったが。
「おかしいですな。こちらではジオン側からその話を持ち掛けられたという情報があるのですが? 代わりに自分達に便宜を図って欲しいという条件で」
「そのような事実はない。……とはいえ、ここでああだこうだと言っていても話は進まない。だが、現在サイド3には一般市民……非戦闘員を襲った連邦軍兵士が捕らえられている事を忘れないで欲しいものだな」
「ぐ……」
ガルマの言葉に、連邦の政治家が呻く。
ここでお互いを非難しあったところで、ガルマの言う通りジオン側で実際に略奪や暴行を働いた兵士達を確保しているという点は、否定出来ない事実なのだ。
そうである以上、連邦側がどう言ったところで結局はジオン有利となる。
……これで俺がここにいなければ、連邦側でも兵士が捕らえられたのはジオンの陰謀だなんだと騒いだりしたのかもしれないが……生憎と、グローブで連邦軍の兵士を捕らえたのは俺だしな。
ジオン……というかガルマやダルシアもその辺については、前もって連邦に伝えてあるだろうから、連邦がここで騒ぐといったようなことはない。
こうしてジオン側が最初に1本取ったが……それでも、やはり連邦が戦勝国で、ジオンが敗戦国であるという事実は変わらない。
最初こそどうにかジオン側が押していたが、交渉が長引くとやはり連邦側が押していく。
「では、コンペイトウ……いや、ソロモンとア・バオア・クーは双方ともに連邦軍が所有するという事で構いませんな?」
「……構わない」
数秒の沈黙の後、ガルマが連邦の言い分を認める。
小惑星を利用したその2つの基地は、ジオン側にとっては非常に大きな意味を持つ。
……また、ガルマにとってはソロモンはドズルが、ア・バオア・クーはギレンとデギンが死んだ場所という事でもある。
そのような場所だったが、現状では連邦軍に占拠されている以上。返せという訳にもいかない。
また、同じ理由で地球上の大半を占領していたジオンは、オデッサからの一連の動きでその領土を全て失ってしまっている。
こちらも当然だが、現状のままだ。
敢えてジオンの領土になりそうな場所となると……イセリナの故郷たるニューヤークか。
だが、イセリナは父親を捨てて、半ば駆け落ち状態でガルマの下に走った。……実際にはイセリナをガルマのいるハワイまで連れて行ったのは俺だったりするのだが。
ともあれ、そんな訳でニューヤークは確かにイセリナの故郷かもしれないが、現状から考えるととてもではないがイセリナの父親がガルマやジオンに友好的に接するといった事はないと思う。
そんな訳で、ジオンの領土は1年戦争が開始される前よりも減った事になる。
「その代わりといっては何ですが、連邦はジオン共和国の自治権を認めましょう」
これは元々ジオン公国が求めていたものだ。
そういう意味では、1年戦争の目的を達したと言ってもいい。
……ただし、自治権そのものは連邦と南極条約を結んだ時点で既にあったんだよな。
条約というのは、あくまでも国と国の間で結ばれるものなのだから。
そういう意味では、自治権を認めるというのは現在もう行われている事を後追いで承認したにすぎない。
ガルマやダルシアもそれが分かっているのだろうが、総合的に見た場合、対処のしようがないというのが実情だ。
とはいえ、説明によるとジオン共和国は自治権を認められたが、それはあくまでも連邦政府の一員……言わば属国に等しい扱いであって、明確に連邦と同等の国という形になっているルナ・ジオンと比べるとどうしても劣ってしまうが。
そして交渉は次の話題に入る。
「お互いの戦争責任に関してですが……これに関してはお互いにそれを免責するということでどうでしょう?」
「それは……」
連邦の政治家の言葉に、ガルマが驚きの表情を浮かべる。
いや、それはガルマだけではない。ダルシアを始めとしたジオン側の面々もそうだったし、見届け人としてここにいる俺もまた同様に驚く。
まさか、連邦がここでそのような事を主張してくるとは思ってもいなかったからだ。
それこそ、この一件だけでソロモンとア・バオア・クーを連邦に渡したとしても、ジオンにとってはプラスになるだろう。
戦争責任の免責。
それはつまり、敗戦国のジオンが連邦に賠償を求めないというのは当然の話だが、連邦側もまたジオン側に賠償責任を求めないということを意味している。
これは、ジオン側にとってコロニー落としを始めとした被害の賠償をしなくてもいいという事を意味している。
ジオンにとって、戦後というのは当然ながら厳しい。
それこそ、戦争開始前よりも厳しい状況になるのではないかと、そう思えるくらいに。
だからこそ、戦争責任の免責というのはガルマにとってありがたかったのだろうが……だからといって、連邦の言葉をガルマも素直に受け取る事は出来ない。
「それは助かるし、非常にありがたい。だが……正直、そこまで譲歩して貰えるとは思っていなかったので、少し驚いている、何故そのような真似を?」
「色々と理由はありますが、連邦としてはここでジオンの者達にこれ以上反連邦の感情を持って欲しくないという思いが強いですね。それに……貴方の姉、キシリア・ザビが突撃機動軍と共に姿を消していますし、そちらと別の行動を取っているジオン軍の残党もいる。それに……いえ、何でもありません」
最後の、それに……というのは、俺に向けられた言葉だろう。
正確には俺ではなく月に、というのが正しいのだろうが。
つまり、連邦にとってこれ以上敵を増やしたくないという事なのだろう。
何とか連邦の従属国という扱いになったジオンだったが、敵が多い今、これ以上は敵を増やしたくないという事か。
連邦軍も1年戦争で失った戦力はかなり大きい。
そんな状況で再度戦いを行うような事になったら、それは連邦にとって致命的なダメージとなる。
「ガルマ・ザビ。貴方は別としても、ギレン・ザビ、キシリア・ザビ、ドズル・ザビ、デギン・ザビについては戦争責任を問うことになるでしょう」
つまり、ガルマ以外のザビ家全員か。
正確にはドズルの娘もいるのだが、その辺はまた気が付いていないのか、それとも意図的に見逃しているのか。
まぁ、見届け人でしかない俺はそれに対してどうこう言うつもりはないが。
「受け入れよう」
この件についても、ガルマは受け入れる。
基本的にガルマは家族思いだ。
それだけに、1年戦争の責任を自分以外の兄や姉、父親に向けられるというのは、決して面白い出来事ではないだろう。
だがそれでも、今のガルマはガルマ・ザビという個人ではなく、ジオン共和国の代表たるガルマ・ザビなのだ。
ジオンの為になるのなら、私情を押し殺す事は必須となる。
連邦の政治家達は、そんなガルマの言葉に安堵した様子を見せる。
恐らく、ガルマが家族を大事に思っているというのは、連邦側でも掴んでいたのだろう。
だが、戦争責任は必ず誰かに負って貰う必要がある以上、それが誰なのかと言われれば、やはりそれはザビ家の面々になる。
そんな中でも、連邦側が一番に狙っているのはキシリアだろう。
ギレンを暗殺したり、ニュータイプ研究で非人道的な真似をしたり、それ以外にも後ろ暗い事を多々行っている。
何よりも、まだキシリアが生きているというのが、この場合は大きな意味を持つ。
そして……連邦側にとっては一番大きな山場を乗り越えたという事で、その後の交渉は比較的楽に進む。
ジオン軍は軍備を制限される事になり、定期的に連邦軍の査察を受ける事になる。
また、核兵器を始めとした特定の兵器の使用禁止。
この辺りは、戦勝国の連邦としてはそうおかしな話ではないだろう。
当初予想していた内容と比べても、間違いなくジオンにとっては緩い内容となっていた。
ジオン共和国という国を、連邦軍はそれだけ重要視しているといったところか。
そうして……終戦についての交渉は大まかに纏まる。
普通であれば、終戦についての交渉となればこうしてすぐに決まったりはしない。
下の者達がそれぞれ話し合って、それによってお互いに条件を詰めていくというのが普通だ。
にも関わらず、今回……UC世界で初めてとも言える程の大規模な戦いの終戦協定がこうして素早く条件が整っていったのは、少しでも早く……それこそ1日でも早く終戦協定が結ばれたということを示す必要があったからだろう。
連邦にとっては、今回の1年戦争で負った被害はそれだけ大きかったという事か。
それは連邦だけではなく、ガルマ達も同様だ。
ジオン共和国を率いる事になったガルマだけに、何らかの成果は少しでも早く出す必要がある。
元々ガルマはジオンの人間に高い人気を持つ。
しかし、人気だけでは国を運営するといった真似は出来ない。
最初はいいが、人気だけだと後々問題が起きるのは確実だ。
そういう意味で、ジオン側も連邦側と同様に出来るだけ早く休戦協定を結ぶ必要があった。
そうして、お互いに終戦の協定について書いた文章にガルマと連邦の政治家がそれぞれサインする。
それを見て、俺は口を開く。
「これで正式にジオンと連邦の戦争は終了した事を宣言する。また、この条約はクレイドルで結ばれた事から、クレイドル条約と名付ける。異論がある者は?」
そう尋ねるが、部屋の中にいた者は誰も口を開かない。
誰も俺の言葉に異論はないという事だろう。
「では、これにてクレイドル条約は無事に結ばれた。……今夜、クレイドル条約が結ばれた事を祝ってパーティを開く。連邦もジオンも今後のことを色々と話す機会があるだろう」
そんな俺の言葉に、聞いた者達はそれぞれに頷く。
取りあえず、これで本当に1年戦争は終わったか。
そうなると、次の問題は……シャアが小惑星を地球に落とす件が具体的にいつになるのか、だろうな。
ある程度戦力を整える必要があるから、今日明日といった訳ではない。
恐らく数年……場合によってはもっと長い時間が必要になるのだろうが、それを何とかする必要があるだろうと、そう思いながら俺は交渉の終了を告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637