「ここがルフト領か。……こうして見た限りでは、住人に活気があるな」
目の前の光景を見ながら、そう呟く。
エルフ城から脱出して情報を得た場所から影のゲートを使って移動し……俺とマーベルの姿は、あっという間にルフト領についていた。
影のゲートが転移という魔法である以上、基本的に影を使えば一瞬にして次の場所に転移出来る。
寧ろ、影の転移よりも街道の分かれ道に到着してから誰かが通るのを待ち、もしくは近くにいる者を探して、どの街道がどこに通じているのかというのを聞く方が時間が掛かった。
話を聞く際も、どちらに行けばどこに通じているのかといった風に色々と話を聞く必要があったので、余計に時間が掛かってしまうのだ。
それでも、午前中のうちにルフト領まで到着出来たのは、十分な成果だろう。
基本的にユニコンを使った移動か、歩いて移動するのが一般的である以上、転移の移動速度は反則並なのは間違いなかった。
「そうね。エルフ城に比べると住人が活力に満ちているのは分かるわ」
マーベルも俺と同じ感想を抱いたのか、ルフト領にある村を見るとそう呟く。
これは、ルフト領の領主たるドレイク・ルフトが有能な人物であり、領主として十分な実力を持っている事を意味していた。
少なくても、フラオンのように無闇に税を徴収したりといったような事はしていない点は褒めてもいい。
「ドレイク・ルフトは有能な人物なのは間違いないな。……まぁ、オーラバトラーを開発している時点で有能なのは間違いないと思ってたけど」
「本当に今更の話だけど、よくこの世界の技術レベルでロボットなんか作れたわね」
「この世界だからこそ、だろうな」
「どういう意味?」
「ん? 言ってなかったか? オーラバトラーは何らかの生物の身体の一部とかを作って作られてるらしい。少なくても俺が昨日エルフ城で見た限りだと、何かの生き物なのか、それとも錬金術で培養されたのかは分からないが、何らかの生き物の筋肉を使ってたぞ」
「……そう」
生き物の筋肉を使っているというのは意外だったのか、驚いたようにそれだけを言う。
同時に、何故マーベルの世界……アメリカですら作れないようなロボット……人型機動兵器をこのファンタジー世界で作れたのかというのは、その特異性で納得出来たらしい。
まぁ、こうして普通に見た感じでは、とてもではないが科学技術が発達してるようには思えないしな。
「それで、どうするの? こうやってルフト領まで来たけど……」
強引に話題を変えるマーベル。
だが、今の状況を考えると、その理由に納得出来た。
マーベルにしてみれば、オーラバトラーというのはあまり気分のいい存在ではないのだろう。
とはいえ……間違いなくマーベルはこの世界の登場人物だ。
主人公かどうかは分からないが。
ともあれ、そのような人物である以上、間違いなくオーラバトラーに乗るといったことはすると思うんだが……乗れるのか?
そもそも、人型機動兵器を操縦するのは相応に技量が必要だ。
例えば、俺のように色々な種類の人型機動兵器に乗っているのなら、操縦に慣れるのは早い。
だが、初めて乗るとなると、最初から操縦方法を習っていく必要がある。
オーラバトラーの操縦形式が具体的にどのようなものなのかは、俺には分からない。
出来ればマーベルのような初心者でも、上手く操縦出来ればいいんだが。
……いや、マーベルの場合は恐らくこの世界の原作の登場人物だろうから、何気にオーラバトラーに乗れるんじゃないか?
「そうだな。取りあえず村の住人とかに少し話を聞いてみるか。ルフト領の領主、ドレイク・ルフトについて俺達が知っているのは、あくまでもエルフ城で聞いた噂話でしかない。そうである以上、実際に領民から話を聞くのが一番手っ取り早いだろうし」
「そう? ……まぁ、アクセルがそう言うのなら、それでいいわ。私としては、出来れば地球……私の住んでいる地球に戻る方法を知りたいところなんだけど」
マーベルにしてみれば、この世界にやって来た以上は自分の世界に帰りたいと思うのは当然だろう。
ただ、ゲートのシステム上、そういう真似は出来ないんだよな。
もしこの世界のどこかにゲートを設置しても、それで戻れるのはホワイトスターだ。
そしてホワイトスターから転移出来るのは、あくまでも現在俺達が移動出来る世界……つまり、これまで接触してきた世界であって、そんな中では例えば地球に行けたとしても、それはマーベルの知らない地球だ。
マーベル・フローズンという人物はいないか、もしいても同姓同名の別人だろう。
つまり、マーベルの知っている地球に戻る為には、この世界から何とかして脱出する方法がいる。
マーベルは大学生という話だった以上、こうしている今も授業をサボっている……少し言い方を整えるのなら、自主休校している状態だ。
であれば、やはりマーベルとしては留年をしない為にも少しでも早く地球に戻りたいと思っても当然だろう。
……この世界とホワイトスターのように、時差がないといいんだけどな。
もし時差がある場合、こちらの世界で数日しか経過していないのに、マーベルのいる地球では実は数ヶ月も経っており、大学を留年するといった可能性も否定は出来ない。
「その為には、ここの領主のドレイクと上手い具合に接触する必要があるだろうな。領主という立場なら、一般人が知らないような事を色々と知っていてもおかしくはないし」
ファンタジー世界だと、基本的に一般人……いわゆる平民とか言われている者達は学がなくてもおかしくはない。
領主という立場であれば、下の者の頭がいいと、それこそ最終的には革命とか、そういう流れになりかねないのだから。
ただし、そうなると一般人の中で眠っている才能を見いだすというのは、絶対に出来ない……訳ではないが、かなり難しい。
この辺は、領主の判断次第だろう。
「取りあえず、村の住人にドレイクの評判を聞くか」
「そうね」
俺の言葉にマーベルも異論はなかったのか、素直に頷く。
そうして村に近付いて行くと、当然ながら俺とマーベルは村の住人達に見つかる。
別に隠れて移動している訳じゃないし、その辺は特に気にする必要もないか。
向こうが見つけてくれたのをこれ幸いと、村の門番らしき人物に声を掛ける。
「少しいいか?」
「ああ、それは構わないけど……あんた達は?」
「旅人だよ。正確には前はエルフ城の城下街に住んでたんだが、税がきつくてな。それでこの領地は税もそこまで高くないし、暮らしやすいって話を聞いて来てみたんだ」
「ああ、なるほど」
適当にでっち上げた内容だったのだが、向こうは素直にこっちの話を信じてくれたらしい。
……もしかして、実は俺が適当に言ったような内容でルフト領に来る奴がいたりするのか?
俺とマーベルは結局のところ1日でエルフ城を出て来たから、具体的にどのくらい税が厳しいのかといった事は分からない。
分からないが、それでも今の状況を考えると結構な人数が城から抜け出していたとしても、おかしくはない。
「で、どうなんだ? エルフ城とかではルフト領の評判はかなりよかったんだが……暮らしやすいのか?」
「ああ、それは断言出来るぞ」
俺の問いに、一瞬の躊躇もなくそう断言する。
その様子は、嘘を吐いているようには見えない。
つまり、心の底から素直にそう思っているのは間違いないだろう。
なるほど。少なくてもドレイクは領民に慕われてはいるらしい。
とはいえ……若干疑問も残る。
「税が安いんだよな? それでよく領土の運営が出来るな」
領土の運営をする上で、当然だが金は必須となる。
ましてや、ドレイクはアの国の中でも特に広い領土を持っている領主の1人なのだから。
「何でも機械ってのを色んな領や周辺にある国に売ってるらしいな」
「……へぇ」
それは少し意外だった。
いやまぁ、エルフ城にゲドとドロがあった以上、それを売るといった商売方法は当然思いつく。
だが……同時に、それはある意味でルフト領にとっては自殺行為に等しい。
昨日エルフ城で集めた情報によると、オーラバトラーやオーラボムといった代物は、まだ非常に珍しい代物だ。
つまり、それを持っているというだけで周辺の領地や……場合によっては他国に対してまで大きなアドバンテージとなる。
特にルフト領と隣接しており、同じくらいの実力を持つギブン家に対しては、ルフト領の秘密兵器と言ってもいいオーラバトラーやオーラボムを売るのは疑問だ。
エルフ城にあったのは、フラオンに対する献上品として納得も出来るが……
勿論、ドレイクにとってはともかく、この世界全体で見ればオーラバトラーやオーラボムを周辺に売るというのは決して悪い選択ではない。
そうする事によって、ゲドやドロを購入した者達によってオーラバトラーやオーラボムはそれぞれに発展しく事になるのだから。
だが、それはあくまでも俺の立場での話であって、ドレイクが何を考えてそんな真似をしてるのかは……幾つか予想は出来ない事もないが、それも確実ではない。
「とにかく、この領地は他の領地に比べて暮らしやすいのは間違いないな」
「この村の様子を見る限り、それは事実らしい。そう言えば、隣のギブン領も暮らしやすいって話を聞いた事があったけど、どうなんだ?」
「あー、どうだろうな。そういう話も聞くけど、俺としてはこっちの方がいいと思う」
ギブン領の名前を出しても、特に不満そうにする様子はない。
ギブン家とドレイク家の仲は悪くなってるって話だったが……それは上の者だけの話であって、こういう村では特に敵対心を持ってはいないのか?
「そうか。なら、もう少し様子を見てみるよ」
「おう、そうしてみな。ラース・ワウに行ってみれば、ここよりもっと栄えているぞ」
ラース・ワウ……ルフト領の首都的な存在だったな。
ドレイク・ルフトの本拠地と言ってもいい場所。
当然、そこに行けばドレイクに会う事も出来るだろう。
「もっとも、夫婦揃って引っ越してくるのなら、俺達の村の方が色々と便利だと思うぞ。顔見知りが多い分、夫婦が暮らすにも便利だろうし」
「な……」
夫婦と言われ、マーベルが反射的に何かを言い返そうとするものの、何とか喋るのを我慢する。
マーベルにしてみれば、昨日会ったばかりの俺と夫婦や恋人に間違われるのは面白くないのだろう。
それでもここで何も言わなかったのは、今の状況で目の前にいる男を怒らせても意味はないと、そう理解しているからか。
ともあれ、俺としてはマーベルがここで爆発しないでいてくれてよかったと、しみじみ思う。
「悪いな。もしここに引っ越すにしても、こういう場所だと農地の割り当てとかそういうので色々と大変だろ? なら、まずはラース・ワウに行ってみるよ。それでもしどうにもならないようだったら、こっちに戻ってくると思う」
そう言い、俺はマーベルと共に村から離れていく。
もし俺とマーベルが普通に旅をしているのなら、それこそ食料とかそういうのを村で購入したりする必要があるのだが、何しろ移動手段は影のゲートがある。
わざわざ何かを買わなくても、今日中にはラース・ワウに到着するのは間違いない。
とはいえ、エルフ城から旅をしてきたと言っても特に荷物らしい荷物を持っているようには見えないだろうから、怪しまれる可能性は十分にあったが。
「もう」
村から十分に離れたところで、マーベルが不満そうに呟く。
「そう面白くなさそうにするなよ。こうして男と女の2人で旅をしてるんだから、夫婦に間違われてもしょうがないだろ?」
これで俺がUC世界でよくその姿だった10代半ばであれば、もしかしたら姉と弟といったように見られたかもしれないが……今の俺は20代だ。
夫婦……もしくは恋人と見られるのはしょうがない。
兄と妹といったように見られる可能性もない訳ではなかったが。
「分かってるわよ。……それで、アクセルはどう思った?」
「ドレイク・ルフトか? 少なくても、ああやって話を聞いた限りでは悪い奴には思えないな」
これは、ドレイクはこの世界の主人公の味方とか、そういうパターンか。
オーラバトラーを開発したという点では、納得出来ない訳でもなかったが。
ともあれ、実際にドレイクに会ってみないと何とも言えない。
それに、ゲドが実際に動いているところを見てみたいという思いもあるし、出来るだけ早くラース・ワウには行きたいな。
ただし、問題なのはどうやってドレイクに会うかだろう。
普通に考えれば、ドレイクは領主だ。
どこの誰とも分からない俺達が普通に尋ねていって、それで会ってくれるとは思えない。
そうなると……やっぱり影のゲートを使って忍び込むのが一番か?
それとも気配遮断を使って会いに行くか。
ともあれ、この世界はファンタジー世界の割には魔法使いの類がいないというのは、エルフ城を思えば間違いなく……そういう意味では、俺にとってかなり有利な出来事だった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637