ゲドの火災事故があった数時間後、俺はドレイクの部屋にいた。
そう、謁見の間ではなくドレイクの部屋。
具体的に言えば、俺が気配遮断を使ってドレイクと会ったあの部屋だ。
「すまない、アクセル王。今回の件は儂の責任だ」
「気にしなくてもいい。見ての通り俺は特に怪我もしてないしな。……そもそも、普通の炎で俺をどうにか出来る筈もないし」
「それは……一体、どのような事なのだ?」
ドレイクが不思議そうにこっちを見てくる。
まぁ、この世界はファンタジー世界であるにも関わらず、魔法の類はない。
オーラ力とかいう生体エネルギーはあるらしいが……それはそれだ。
……ん? オーラバトラーはそのオーラ力で動くらしいから、そのオーラ力によって発火したのなら、俺がダメージを受けてもいいんじゃないか?
ふとそう思ったものの、ダメージを受けていない以上は気にする必要もないか。
「俺は魔法が使える。それによって、炎によってダメージを受けるといったようなことはない」
正確には色々と違うのだが、ドレイクにその辺をわざわざ教える必要もない。
俺とドレイクは信頼によって同盟を結んだ訳でもなく、あくまでもお互いに利用する為に同盟を結んだのだから。
それを考えれば、わざわざこちらの手札を晒す必要があるとは思えなかった。
「ふむ、なるほど。……ともあれ、今回の一件は儂も驚いた。そして驚いたと同時にアクセル王のような有能な人物と同盟を結べたことを嬉しく思うよ」
「そう言って貰えると俺としても嬉しいな。とはいえ、ゲドが破壊されてしまったのは痛いが」
「ああ、心配はいらぬよ。アクセル王に譲渡するゲドは別に用意しよう。それに……どのような理由なのかは分からぬが、今回の一件で何か不具合があるかもしれないと分かっただけで……うむ? 入れ」
ドレイクの言葉の途中で、扉がノックされる。
それを聞いたドレイクが中に入るように言うと、部屋の中に入ってきたのはショットとバーン。
……珍しい組み合わせ、といった訳でもないのか?
「ショットにバーンか。……どうした?」
「アクセル王が乗っていたゲドを検分しましたが、特に破壊工作といった様子は見られませんでした。ただ……」
「ただ? どうしたのだ?」
言い淀むショットに、ドレイクが先を促すように言う。
するとショットは、俺に視線を向け……やがて口を開く。
「ゲドのオーラコンバータが、酷く……それこそ通常では信じられない程に損傷していました」
「オーラコンバータが?」
ショットの言葉に、ドレイクが驚きの声でそう告げる。
オーラコンバータがどのようなものなのかというのは、ショットからの説明で聞いている。
大気中に漂っているオーラを取り込み、推進力にする……いわば、動力源だ。
シャドウミラーで使われているブラックホールエンジンや時流エンジンといった物と言えば分かりやすい。
問題なのは、何故その動力炉たるオーラコンバータがそこまで損傷しているのかといった事だろう。
「はい。正直、最初にこれを見た時は誰かがそのように仕掛けたのではないかと思ったのですが……アクセル王よりも前にマーベル・フローズンが乗った時には、何の問題もなく動いていたのを確認しましたから、その可能性は低いかと」
「では、何故そのような事になったのだ?」
「考えられる可能性としては、アクセル王がこのバイストン・ウェルでもなく、私のいた地上でもない、全く別の異世界からやってきたのが関係しているのかと」
「……なるほど」
ドレイクとショットの会話に、納得してしまう。
実際に俺は別の世界の人間である以上、そのような事になってもおかしくはないのかと。
「ただ、それも絶対ではありません。その……こう聞くのは何ですが、アクセル王には何か心当たりはありますか?」
そうショットに聞かれれば、俺が答える事が出来るのは1つだけだ。
「魔力、だろうな」
「魔力ですか……? それは魔法に関係する?」
魔力という言葉に疑わしい様子を持たないのは、バイストン・ウェルにはオーラ力という未知のエネルギーが存在しているからだろう。
「ああ。俺は魔力を持つ。それも、ちょっとその辺にはいない程に強力な魔力をな」
この場合の魔力というのは、俺のステータスにあるSPとイコールだ。
そして俺はそのSPをレベルアップする事で上げられるし、PPを使ってピンポイントで上昇させるといった真似も出来る。
結果として、俺の魔力はもの凄い魔力……エヴァ曰く、バカ魔力と呼ばれるような魔力にまでなっていた。
何しろ、他人から血を吸って魔力を回復させるエヴァでさえ、俺の血は魔力が濃すぎてそのままでは飲めないと言われる程なのだから。
「なるほど。そうなると、やはりオーラコンバータがあそこまで損傷した理由は、アクセル王の魔力によるものかと」
「待て。オーラコンバータはあくまでも大気中のオーラを取り込んでオーラバトラーが空を飛ぶ際の推進力になるんだろ? なら、俺が魔力を持っていても構わないんじゃないか?」
「いえ、大気中のオーラを取り込むという能力があると同時に、パイロットのオーラ力も同様に使用します。その際、アクセル王の場合はオーラ力ではなく魔力……それもアクセル王の話を聞く限り、かなり大きな魔力を持っているという事になります」
そうですよね? と確認を求めて尋ねてくるショットに、頷きを返す。
それを確認してから、ショットは少し考え……やがて口を開く。
「オーラ力と魔力というのは、名前が違うのと同様、性質その物も違います。それが影響している可能性は、やはり高いかと」
「つまり……俺はオーラバトラーに乗れないのか?」
ショットの言ってる事は、つまりオーラバトラーを動かす動力源として俺はオーラ力ではなく魔力を使っているというもの。
言ってみれば、車を動かすのにガソリンではなく食用油を使おうとしているといった感じか。……あ、でもペルソナ世界のTVでやってたバラエティ番組で、車を改造してサラダ油で動くようにして、一般家庭や店に寄っては廃油を貰って車を動かす……というのを見た事があったな。
だとすれば……
「魔力でオーラコンバータが動くように改造は出来ないのか?」
「分かりません、としか言いようがないです。そもそもオーラ力でさえ私達は全てを解明した訳ではありません。こうすればこう動くといったような経験から、オーラコンバータを開発したのです。それに魔力となると……少し難しいかもしれません。ただ、その為に試したい事があるのですが」
ショットが演技か本気なのか分からないが、申し訳なさそうな表情でそう言ってくる。
にしても、試したい事?
「何だ?」
「はい。魔力がオーラコンバータが損傷したというのは、あくまでも私の予想でしかありません。ですので、出来ればそれをしっかりと把握する為にも実験をしたいのですが……」
「ショット、貴様……儂の盟友たるアクセル王を実験に使うと言うのか!」
ショットの言葉に、ドレイクが叫ぶ。
その声には強い力があり、なるほどアの国でもトップクラスの実力を持っていると言われるのは納得出来る。
だが、ショットはそんなドレイクの言葉に対し、特に怯える様子もなく口を開く。
「先程のゲドの一件、アクセル王はコックピットが炎に包まれても全く怪我をしていませんでした。私には理解出来ませんが、アクセル王は生身で炎に触れても問題ないのでは?」
ショットの言葉に、ドレイクは驚きの視線をこちらに向けてくる。
一応ゲドの件で報告は上がっていた筈だが、そこまで詳しくは説明されていなかったのか。
……まぁ、ドレイクの同盟者の俺が乗ったゲドのコックピットがいきなり炎に包まれたとなれば、報告する方も迂闊な真似は出来なかったのだろう。
「事実だ。俺は炎で火傷をするといったような事はない」
炎獣でも作って見せようかと思ったが、今はそこまでする必要もないだろうと止めておく。
「であればこそ……アクセル王の持つ魔力がオーラコンバータにどのような影響をもたらすのかを知るのは重要です」
「なるほど。つまり、魔力がどのような存在なのかを調べれば、それに適応したオーラコンバータも作れると?」
「そうですね。魔力専用のオーラコンバータ……いえ、この場合はマジックコンバータと言うべきですか? それに関しては1からの開発になるので難しいでしょうから、現状のオーラコンバータをどうにか魔力で動かすといったような事も可能になる……かもしれません。残念ながら、確実にそうなるとは断言出来ませんが、私もゼットもやる気はあります」
へぇ。
そのショットの言葉には少し驚く。
いや、ショットもゼットも凄腕の技術者であるというのは変わらないのだろうが、ここまで接触した俺の感覚からすると、ショットは技術者ではあってもそれだけではなく政治にも高い能力を持ち、それに対するとゼットはより純粋な技術者といったイメージだったからだ。
それだけに、ショットが俺の魔力に興味を持つのは……いや、それもまた自分の利益になると考えたからか?
ともあれ、バイストン・ウェルに来てオーラバトラーに乗れないというのは、未知の技術を集めるという意味でも俺にとっては非常に都合が悪い。
特にオーラバトラーは、今までシャドウミラーが集めてきた技術の中でもとびきりの異端……つまり、未知の技術だ。
その技術を入手出来ないのはシャドウミラーにとって大きな不利益だ。
ましてや、俺がオーラ力がないのは混沌精霊だからかもしれないが、シャドウミラーにいる他の面々までもが同じようにオーラ力がない可能性がある。
それを考えれば、オーラコンバータを魔力で動かすといったような技術は絶対に必要になる。
……それ以上に必要なのは、それこそ先程ショットが言ったようなマジックコンバータだろうが。
ともあれ、オーラコンバータを魔力で動かすといったような真似が出来るのなら、それに対する協力を惜しむつもりはない。
「分かった、俺がオーラバトラーを操縦出来るようにするのなら、非常にありがたい。その為なら協力しよう」
「アクセル王!?」
ドレイクが信じられないといったような表情でそう言ってくる。
ドレイクにしてみれば、俺がそんな事を言うというのはとてもではないが信じられないのだろう。
とはいえ、俺にとっては必要な技術……あ、いや。違うな。ここはドレイクにもう1つ条件を呑ませる機会か。
ドレイクにしてみれば、意図的ではなかったとはいえ同盟相手を焼き殺しそうになったのだ。
であれば、こちらの条件をもう1つ呑ませる事くらいは問題ないんだろう。
「ドレイク、これは俺の決定だ。だが……そこまで俺の心配をしてくれるのなら、1つ頼みがある」
「頼み?」
「ああ。俺とマーベルはここに泊めて貰っている。それは悪いから、家を一軒くれ。出来ればある程度の広さの庭が欲しい」
「それは……」
驚きの表情を俺に向けてくるドレイク。
それだけ、俺の要望がドレイクの意表を突いたからだろう。
「今回の一件は、それで手打ちとしたい。ドレイクにしてみれば、そこまで大きな出費ではないと思うが?」
実際、ドレイクの領地は他の領地よりも豊かで、俺に庭付きの家を用意するくらいは難しくはない。
それで同盟をした他国の王を焼き殺しそうになったのを帳消しにするのだから、ドレイクにとっては利益しかないだろう。
「話は分かったが、それだとアクセル王1人でいいのでは? アクセル王と一緒にバイストン・ウェルに来たマーベル・フローズンはこちらに残っても構わないと思うのだが」
マーベルを引き留める?
俺に対する人質か? それとも、マーベルという人物に価値を見いだしたか。
実際、乗れる者が少ないと言われるゲドに、いきなり乗って動かす事が出来たのだから、オーラバトラーのパイロットとして非常に優秀な素質を持っているのは間違いないし。
とはいえ、俺としては家……というよりも俺の自由になる土地、具体的に言えばゲートを設置出来る土地は欲しいし、同時にこの世界の原作キャラだろうマーベルを手放すといった訳にもいかない。
そうなると、何とかマーベルを俺と一緒に暮らすようにする理由が必要なんだが……そうだな、しょうがない。
「悪いが、俺とマーベルは男女の仲という奴なんだ。なら、どうせなら一緒に暮らしたい」
「……アクセル王と彼女は、まだ会って数日の筈だが?」
「恋や愛に時間は関係ないだろう?」
「なるほど。アクセル王は随分と情熱的な性格をしているらしい。話は分かった。今回の一件の謝罪の意味も込めて、アクセル王の要望を全面的に呑もう。……ただし、リムルには妙なちょっかいを掛けないようにして欲しいものだがな」
そう告げるドレイクの表情は、領主ではなく父親としてのものだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637