ゼットとの打ち合わせが終わり、俺とマーベルは城に戻ってきた。
すると、部屋の前でメイドが待っていた。
「お帰りなさいませ、アクセル王。マーベル様」
「ああ。それでこんな場所で待っていてどうした?」
「ドレイク様から、家の方に案内するようにと言われています」
「それはまた……」
ドレイクに家が欲しいと言ったのは、今日だ。
正確には今日どころか数時間前。
その数時間の間に家を……それもただの家ではなく、それなりに広い中庭のある家を用意したというのは、驚くべき事だ。
その上でドレイクの立場からすると、荒れ放題になっている家を用意したのではなく、きちんと住むのに問題はない程度の家なのだろう。
「準備がよろしければ、案内いたしますが……どうしましょう?」
メイドの言葉に、俺はマーベルに視線を向ける。
元々身一つでバイストン・ウェルにやって来たのだ。
そうである以上、俺は特に何も荷物らしい荷物はない。
もし何か荷物があっても、空間倉庫の中に収納出来るし。
だが、マーベルはそんな俺とは違って普通の女だ。
そうである以上、マーベルには何か荷物があってもおかしくはない。……もっとも、マーベルも身一つでこちらの世界にやって来た以上、特に荷物らしい荷物は持っていなかったが。
「私は構わないわよ。アクセルの方は?」
「俺の方もこのまま動こうと思えば動ける。……じゃあ、頼めるか?」
そう告げる俺の言葉に、メイドは深々と一礼するのだった。
「へぇ、ここが俺とマーベルの愛の巣か」
「……アクセル」
俺の言葉にジト目を向けてくるマーベル。
だが、俺とマーベルはそういう関係であるとドレイクに言っている以上、そのドレイクの手の者であるメイドがいる前ではそういう風に演技しておく必要があった。
マーベルも当然それは分かっているのだろうが……それでも、不意にそんな事を言われると、反応に困るのだろう。
「どうした? ともあれ、この家は使わせて貰う。ドレイクには俺が感謝していたと伝えておいてくれ」
「いえ。それで、家事を担当する者も用意するとドレイク様は仰ってましたが、どうしますか?」
家事、ね。
この場合の家事というのは、あくまでも表向きの話で、俺やマーベルに対する見張りだろう。
もしくは見張りとまではいかなくても、俺とマーベルから何らかの重要な情報を入手した場合はそれを伝える……といったような。
それだけに、今の状況を考えると迂闊に家の中に俺とマーベル以外の者を入れたくはない。
とはいえ、俺とマーベルが家事をしている暇があるかという問題もある。
この家そのものは、そこまで大きくはない。
俺とマーベルの2人が住むには十分な広さだ。
中庭はまだ見てないから何ともいえないが、中庭の広い家と要望して用意して貰った以上、その辺についても問題はないだろう。
ただ、俺とマーベルがこの家の家事を出来るかとなると、それはまた話が別だ。
そもそも、ここはバイストン・ウェルで科学技術の発達していないファンタジー世界なのだから、掃除機何てのは当然ない。
マーベルも地上でならある程度家事が出来たかもしれないが、今の状況では難しいだろう。
そういう意味では、家政婦やメイドといった者がいた方が便利なのは間違いない。
とはいえ、その連中は間違いなくドレイクの手の者だろうし……そういう相手は出来れば欲しくはない。
ただし、ゲートを設置してしまえばそれを隠し通す事は不可能になる。
というか、ゲートを設置してしまえばこのバイストン・ウェルじゃなくてホワイトスターの方で暮らしていて、何か用事があったらこっちに転移してくるといったような事も出来るのだが。
「どうする? 俺はどっちでもいいから、その辺の判断はマーベルに任せる」
言葉通り、どっちでもいいのは間違いない以上、マーベルにぶんなげる事にする。
「そうね。じゃあ、1人だけお願い出来る? この世界の暮らしはまだ慣れていないから」
マーベルの判断は、生活の質を落とさない為にかメイドを頼む事だった。
慎重に行動すると思ったんだが……マーベルにも色々と考え方はあるのだろう。
「では、ドレイク様にお伝えしてきます」
そう言い、一礼すると去っていくメイド。
さて、これでどんな相手が送られてくるのか……少し楽しみではあるな。
ともあれ、メイドが去ったことでここにいるのは俺とマーベルだけになる。
「取りあえず中に入るか? 家を貰ったけど、どういう家なのかはドレイクに任せたからな」
「そうね。……見た感じ、それなりの広さがあるみたいだけど」
外見からでも、かなり立派な建物なのが分かる。
1階建てではあるが、その面積は結構な広さがあった。
広い中庭が最重要だったので、それを思えばこのくらいの広さにはなるのだろう。
「部屋数で困る事はないようで何よりだ」
これでアパートとかそんな感じの部屋であれば、マーベルも同棲といったような印象を持ったかもしれないが、このくらいの広さの家であれば、同棲というよりは同居といったような感じになってもおかしくはない。
勿論、それでも色々と気を抜くといったような真似は出来ないが。
いわゆる、ラッキースケベの類は起きないように注意しておこう。
俺とマーベルは家の中に入る。
予想通り、家の中はきっちりと清掃されていた。
多分、俺がオーラコンバータの実験をしている時にメイドとかに掃除をさせたんだろうな。
これで地上なら、ドレイクに盗聴器とかそういうのを仕掛けられたかもしれないと警戒する必要があったんだが……幸い、その辺の心配は多分ない。
いやまぁ、ショットやゼットならそういう装置を作っても不思議ではないが。
「まずは部屋を決めるか。……どうする? やっぱり少し離れた方がいいよな?」
「そう……ね。一応そうして貰えると助かるわ」
マーベルも、俺と一緒に暮らすというのは納得したのだろうが、それでも部屋は離そうとしたのだろう。
その後、俺とマーベルはそれぞれ自分の部屋を決める。
……とはいえ、何か私物がある訳ではないので、自分の部屋を決めたら、後は特に何かをするといった訳ではなかったが。
とはいえ、ゲートを設置すれば部屋がどうとかそういうのは関係ない訳だが……まぁ、それはそれ、これはこれといった奴だ。
そうして部屋を決めてから、俺は早速中庭に出る。
それに気が付いたのだろう。マーベルもまた自分の部屋から中庭にやってきた。
「アクセル」
「ああ、これからゲートを設置する。折角ドレイクが家を用意してくれたのに悪いけどな」
出来れば、ドレイクの用意したメイドが来る前にゲートを設置しておきたい。
まぁ、メイドが見ていてもゲートについてどうこう出来るとは思わないのだが。
中庭に十分な広さがあるのを確認し、空間倉庫の中からゲートを取り出す。
「……それが? ちょっと、聞いていたのとは違うような感じがするんだけど」
コンテナ状のゲートを見て、マーベルが訝しげに尋ねる。
マーベルにしてみれば、完全に予想外だったのだろう。
いやまぁ、このコンテナを見てこれがこの世界と異世界を繋ぐゲート……転移装置だなんて事は、とてもではないが想像出来ないか。
いっそ、後で技術班に言ってもっとそれらしい形にして貰うか?
いや、けどコンテナ型なのはそれなりに理由があっての事だろうし。
何よりも、一見してこれがゲートに見えないというのは、万が一……億が一、ゲートが何らかの理由で俺と敵対する相手に盗まれたりしたところで、ゲートだと思われないという点が大きい。
「さて、ここで下手に時間を使ってもしょうがないし……ゲート展開、と」
そう告げ、ゲートを起動させる。
コンテナの状態からサイコロを分解するかのように展開していく。
コンテナの中身には、一目で何か怪しげな……そして高い技術で作られていると分かるゲートの本体があった。
「これが……」
ここまで来れば、マーベルも自分の目の前にあるのがゲートであると認識出来たのだろう。
驚きの声を上げる。
マーベルにしてみれば、このような存在を見るのは初めてといったところか。
「ああ。世界と世界の狭間にあるホワイトスターと転移で行き来する為のゲートだ」
そう答えつつ、ゲートを起動させる。
後はホワイトスター側にあるゲートとこっちのゲートをリンクさせてしまえば、向こうと自由に行き来出来るようになる。そう思っていたのだが……
不意に予想外の音がして、ゲートの各種操作をする画面にエラーの文字が浮かび上がる。
……エラー?
何かの間違いではないかと、改めてリンクの手続きをする。
だが……再度起きるのはエラー。
「おい、これは……」
疑問に思い、どのようなエラーが起きているのかを確認するべく、詳細を調べる。
すると、この世界は何らかのエネルギーに包まれており、ホワイトスターに存在するゲートとリンクが出来ないと表示された。
「マジか」
思わずそんな声を漏らした俺は悪くないだろう。
そして同時に、このバイストン・ウェルという世界の事を思い出して納得してしまう。
海と陸の間にあるというこの世界は、ファンタジー世界だ。
オーラ力という力が存在するこの世界においては、当然の話だが今までと同じような普通の世界とは言えない。
敢えて似ている世界を上げるとすれば……門世界か?
とはいえ、あの世界もファンタジー世界ではあったが、それでもバイストン・ウェルと違うのは間違いない。
であれば、やはり今回のエラーはバイストン・ウェルだからこそか。
……こうして順序立てて考えてみれば納得は出来るのだが……それでも、予想外だったのは事実だ。
「アクセル? どうしたの?」
「……エラーらしい」
「エラー?」
「ああ。ホワイトスターにあるゲートとリンクが確立出来ない。つまり、ホワイトスターに転移出来ない」
「本当なの? 何か操作を間違ったとかじゃなくて?」
「いや。基本的にゲートは起動してしまえば、後はこっちの指示通りに動いてくれるから、操作ミスって事はない」
考えられるとすれば、このゲートを製造した時に何らかのミスがあったといった可能性だったが、ゲートはシャドウミラーにとって非常に重要な代物だ。
完成した後は、何の問題もないか繰り返し……それこそ、くどいくらいに確認されている。
それでなくても、技術班謹製のゲートだ。そこに何らかの問題があるとは思えない。
「恐らく、このバイストン・ウェルが海と陸の間にある世界ってのが影響しているんだと思う。多分だけど」
「そう」
マーベルが短くそう告げてくるが、ホワイトスターとの間を行き来出来なくなったというのに、そこまでショックを受けてる様子がないな。
「何でそんなに落ち着いてるんだ?」
「あら、そんなに意外?」
「ああ。ホワイトスターに行けないとなったら、不満を爆発させてもおかしくはないと、そう思った」
そう、不思議な程にマーベルは落ち着いている。
そんな驚きの表情を向ける俺に、マーベルは笑みを浮かべて口を開く。
「元々私はアクセルがいなければ、1人だったのよ? エルフ城に到着しても、そこでどんな行動をするのか……きっと迷っていたわ。そしてアクセルがやったように服を売ったとして、フラオン王の兵士に捕まっていたわ。もしそこで上手く逃げたとしても、ルフト領まで無事に来る事が出来たと思う? アクセルの影のゲートがあったからこそ、私は今ここでこうして無事にいるのよ。……私を抱き上げたのには、色々と言いたい事もあるけど」
最後だけ、少し照れたように告げるマーベル。
マーベルにとっては、横抱き……お姫様抱っこは色々と思うところがあったのだろう。
実際にあの時は、かなり照れて顔を赤くしていたしな。
「そういう意味でアクセルには感謝してるんだから、ここでアクセルに不満をぶつけるような真似をしても、意味はないしょ?」
強いな。
マーベルの様子を見て、そう思う。
普通であれば、この状況で俺を責めるといったことは普通だろう。
この点、マーベルが人格者というか、この世界の原作のキャラ……それも恐らく主人公か、主人公側の人間である可能性が高いよな。
それとも、これも禅の効果か
「それに、今のアクセルの話を聞く限りだとバイストン・ウェルだからホワイトスターに行けないんでしょう? なら、バイストン・ウェルじゃなくて地上に戻れば……」
「なるほど」
バイストン・ウェルがオーラ力か何か分からないが、ともあれ特殊なエネルギーによってホワイトスターのゲートとリンク出来ないのであれば、そのバイストン・ウェルから出て地上に行けば……
それが成功する可能性は十分にある。
そうなると、次に問題なのはどうやって地上に出るかだな。
地上からバイストン・ウェルに来る事が出来る以上、バイストン・ウェルから地上に行く事も出来る筈。
そうなると……
「取りあえず目的は決まったな」
「そうね。地上に戻れるのなら、私も喜んで協力させて貰うわ」
俺の言葉にマーベルはそう告げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1290
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1637