ドレイクは判断すると行動に移すのも早い。
即座に戦闘を中断するように命じて、エルフ城に使者を送る。
エルフ城を攻めている兵士達にしてみれば、それこそもう少し……もう1時間あれば、エルフ城を落とせてもおかしくはなかった。
にも関わらず、ドレイクは戦闘中止を命じたのだ。
兵士達にしてみれば、本来ならその命令には従いたくなかっただろう。
……もしガラリア辺りがいれば、戦闘中止の命令を無視してでもエルフ城に攻撃をした可能性は否定出来なかったが。
そういう意味では、ガラリアがここにいなかったのは運がよかったのだろう。
フラオンにしても、このままでは負けるといった事を考えると、ドレイクからの使者を受け入れないといった選択肢はないらしい。
そこまでは俺の予想通りだったのだが……
「何で俺がここにいるんだ?」
エルフ城に向かうユニコンが牽く馬車の中で、俺はそんな声を漏らす。
この馬車には俺とマーベル、ドレイク、そして護衛の騎士が2人乗っている。
「向こうがアクセル王と会いたいと言ってきたのだ。それを考えれば、アクセル王には来て貰いたい」
「フラオンが、か。正直なところ、フラオンが俺に会ってどうするつもりなんだ? まさか、不満を言う為だけに俺を呼んだとか、そういう事じゃないよな?」
これは素直に疑問だ。
フラオンにしてみれば、俺という存在……正確には俺とマーベルという存在は、それこそ自分が追い詰められる原因となった相手と認識してもおかしくはないだろう。
であれば、そんな俺とわざわざ会いたいといったように考えるのは、正直疑問だ。
それこそ、恨みを抱いて俺に攻撃をしてくる……といったような可能性も、否定は出来ないのだから。
「さて、どのような理由なのかは、儂にも分からんよ。だが……元々フラオンを逃がすというのはアクセル王の提案だ。多少は協力してくれてもいいと思うが?」
そう言われると、俺も反論はしにくくなる。
実際にフラオンを逃がしてミの国と戦争をする際にこちらに有利とするようにしてみては? と提案したのは、間違いなく俺なのだから。
それを思えば、フラオンからの要請を引き受けるのも仕方ない。
「そう言えば、ドレイクのオーラバトルシップはどんな具合なんだ?」
エルフ城に到着するまで、まだそれなりに時間がある。
そんな時間の暇潰しをするという意味も含めて、ドレイクに尋ねてみると、ドレイクは少し難しそうな表情を浮かべる。
「少し予定よりも遅れているな。もっとも、オーラバトルシップそのものが初めて建造する軍艦なのだから、それは仕方がないのかもしれんが」
「それでもオーラシップで基礎技術は得る事が出来たんだろ? ナムワンとか、今までバイストン・ウェルでは考えられないような存在だっただろうし」
「ナムワンか。現在はその後継艦のブル・ベガーを建造しているところだがな。寧ろ、オーラバトルシップについては、ブル・ベガーの技術の方が役に立っているのは間違いない」
「そんなのを開発してたのか」
驚きつつも、その考えには納得する。
ナムワンは、あくまでも初めて開発されたオーラシップだ。
そうである以上、オーラバトルシップといったような、旗艦として使うような存在を開発するには、ナムワンよりもっと先進的な技術が必要となるだろう。
であれば、そのブル・ベガーといったオーラシップを開発するというのは納得出来た。
俺に情報が入ってこないのはどうかと思うが。
あ、でも俺の興味はあくまでもオーラバトラーにあったからな。
ナムワンの後継機を開発していると言われても、特に興味を持たなかった可能性はあるかもしれないな。
「うむ。……本来なら、ブル・ベガーはもう少し早く完成していた筈だった。それこそ、もっと上手くいけばエルフ城攻略についても戦力として出せるくらいにはな」
「なら、何で開発が遅れたんだ?」
そう言うと、何故かドレイクから呆れの視線を向けられる。
え? 何で俺がそんな視線を向けられるんだ?
「つまり、アクセルが何かして、それで遅れた訳ね」
「うむ」
マーベルの言葉に、ドレイクが頷く。
俺のせいで? と言われても、特に何か思いつくようなことはないんだが。
ナムワンを報酬として貰ったか?
いや、そもそもナムワンはかなりの数が売りに出されている。
何しろ、バイストン・ウェルにとって空を飛べるナムワンというオーラシップは非常に使い勝手がいい。
地上にある道はきちんと整備されたような道ではなく、あくまでも踏み固めたような道が大半だ。
そのような場所を移動するより、空を飛ぶナムワンで移動する方が圧倒的に安全なのは間違いない。
とはいえ、空を飛んでいるからといってそれが絶対に安全なのかと言えば、決してそのような訳ではない。
恐獣の中には空を飛ぶ鳥型の奴もいる。
そういう恐獣にしてみれば、空を飛んでいるナムワンとかはかなり見つけやすい敵だろう。
もっとも、ナムワンはそれなりに武器が装備されている。
そうである以上、恐獣が襲ってきても撃退するといった真似は容易だろう。
その件はともあれとして、俺が原因というのは……考えられるとすれば、サーバインと、それを使う為のマジックコンバータの開発とかか?
それらを考えれば、ブル・ベガーの開発が遅れたというのは俺が関係しているのかもしれないな。
「それはともあれ、話を戻すとしよう。ドレイクのオーラバトルシップの建造が遅れているとなると、俺が貰う予定のオーラバトルシップも建造は遅れてるのか?」
防御力を重視し、機械の館をそのまま持ってくるという意味で、オーラバトルシップについてはかなり期待している。
だが、ドレイクのオーラバトルシップの建造が遅れているとなると、俺の方の建造は当然のように後回しになるだろう。
そう思って尋ねたのだが……
「いや、同時に建造は進んでいる」
「……本当か?」
ドレイクの口から返ってきたのは、俺にとっては完全に予想外の言葉だ。
この状況なら、普通は自分のオーラバトルシップの開発を重要視するのは当然だろう。
それを行わないという事は、それだけ俺に配慮しているのだ。
あるいは、これも俺を同盟者として自分の側に置いておく為の行動の一環か?
普通に考えれば、この状況で同盟者である俺の事を自分と同等に扱うというのは、考えにくい。
だが、影のゲートや気配遮断といった脅威的なスキルを持っている俺という存在は、ドレイクにとってどうしても味方に引き入れておきたい相手なのだろう。
最悪でも敵に回るのではなく、中立にしておきたいといったところか。
何しろ、ドレイクは俺が生身でも恐獣やオーラバトラーと戦えるというのを知っている。
そうである以上、俺を敵にするという選択肢がドレイクになくても当然だった。
「そうか。なら、ありがたくその言葉に甘えさせて貰うか」
「うむ。そう思ってくれれば、こちらはそれでいい」
言葉の裏の意味を理解したのか、ドレイクはそんな風に言ってきた。
そうして会話をしていると、やがてエルフ城に到着して馬車が停まる。
最初に馬車の外に出たのは、当然ながらドレイクの護衛の騎士達。
別に俺が最初に馬車から出てもよかったんだけどな。
いやまぁ、騎士達はドレイクの護衛が仕事である以上、ここで自分が仕事をしない訳にはいかないのか。
そうして馬車から降りると、そこにはフラオンの兵士達が待っていた。
こちらに向けてくる視線には、敵意……がない?
視線の中にあるのは、怯えの感情が強い。
なるほど、昨日と今日の戦いで完全に心をへし折られた訳か。
戦ってる方としては、下手に抵抗されるよりはこっちの方が楽でいいのだが。
そうして騎士達によって、俺達は城の中に案内される。
城の中では、俺達の姿を見るや否や即座に逃げ出す者達が多かった。
というか、文官はともかくメイドとかは戦いが始まる前に逃がしておけばよかったと思うが。
そんな疑問を抱くが、そもそもフラオンにその辺を考えろというのが無理な話だろうと思い直す。
城に残っていた非戦闘員達にしてみれば、俺達はまさに不吉の象徴とも呼ぶべき者達だろう。
だからこそ、少しでも目を合わせないように……そして見つからないようにと、素早く離れていく。
マーベルは自分がそういう目で見られているというのが少しショックだったらしいが、それでも不満を口に出すような真似はしない。
そうして案内されたのは、謁見の間。
……まさか、謁見の間に案内されるとは思ってもいなかったな。
武官も文官も、揃っている事は間違いないのだが、その数はかなり少ない。
武官は昨日と今日の戦いで死んだ者も多いのだろうし、文官の方は戦いになったという事で逃げ出した者も多いのだろう。
フラオンにしてみれば、少しでも自分が有利な存在だと、そう示したいのだろうが……武官と文官の数の少なさは、フラオンの人望のなさを表している。
もし俺がフラオンの立場なら、さっさと降伏してしまうんだが。
現状でフラオンがドレイクに勝つという選択肢は……それこそ、ギブン家をこちらに呼んで、一か八かでドレイクの首を取るといったような事しか思いつかない。
ドレイク軍というのは、その名の通りドレイクの軍だ。
結局のところドレイクの存在でどうにかなっている状況なのだから、もしここでドレイクが死ねばどうなるか。
ドレイクに子供がいれば、その人物がドレイク軍を引き継いでもいい。
だが、その子供のリムルはギブン家に亡命している。
今のこの状況で、もし戻ってきて自分がドレイク軍を引き継ぐといったような事を口にしても、とてもではないが信じられないだろう。
というか、そうなった場合ドレイク軍はギブン家の管理下に置かれる事になりかねない。
だとすれば、ルーザか?
それこそ、もしルーザがドレイク軍を引き継ぐといったような真似をした場合、最悪の未来しか存在しないだろう。
少なくても、俺がルーザに協力するといった事は有り得ない。
それ以前に、ルーザが俺を捕らえるなりなんなりする方が早いと思うが。
そうして考えていると……やがて、謁見の間にフラオンが姿を現す。
何らかの恐獣の革で作ったと思われる鎧を身に着けてはいるが、それだけにフラオンの滑稽さが際立つ。
フラオンが着ている鎧は、間違いなく一流の品なのだろう。
だが、それを着ているフラオンが3流といったような人物なので、完全に鎧に着られているといった感じだ。
フラオン本人は、自分の着ている鎧が似合っていると、そう思っているのだろうが。
「ドレイクよ、降伏を認める」
……は?
いきなりフラオンの口から出た言葉は、俺には理解不能だった。
いや、何を言ってるのかといった事は分かる。
分かるが、それでもまさかこの状況でフラオンの口からそのような言葉が出て来るというのは、完全に予想外だったと言ってもいい。
そもそも、俺達……俺とマーベル、ドレイク、更にはドレイクの護衛の騎士までもが、フラオンというこのアの国の王を前にしているにも関わらず、跪いたりはしていない。
それどころか、玉座に座るフラオンを前に堂々と立っている。
見るからに不遜といった行動なのだが、現在の俺達はフラオンと敵対している身だ。
それを考えれば、このような行動をとっても特におかしなところはない。
フラオンはそんな俺達の様子を見ても、特に何か反応する様子はなかったのだが。
その辺を気にしている余裕がないのか、それともここで気にしたら自分の負けだと判断してるのか。
理由は分からなかったが、それでも今の状況を思えば向こうは何も言えないだろう。
そう思っていたら、出て来た言葉が今の一言だったんだが。
「何を言ってるのか、理解出来ませんな」
普通なら、ここは何を仰っているのかといったように言うところだろう。
にも関わらず、ドレイクがこのような言葉遣いをするとなると、もうフラオンに価値を認めていないのだろう。
いやまぁ、実際に味方としての価値は認めていないが、敵としてなら大歓迎という意味で価値を認めているのだが。
そんな風に考えつつマーベルの方に視線を向けると、そこでは不愉快そうな表情が浮かんでいた。
マーベルにしてみれば、指名手配の件もあって元々決してフラオンに好意的ではなかった。
そこでいきなりの裏切りとも呼ぶべき、ギブン家と手を組み、更にはミの国まで引き入れて攻撃されたのだ。
マーベルの性格からして、そんな行動をしたフラオンを許せる筈もない。
その上で、エルフ城がもう少しで陥落するといった状況にも関わらず、降伏を許すといったような、明らかな上から目線。
マーベルでなくても面白くないと思うのは当然だろう。
「何か勘違いしているようですな。儂は別に降伏しにきた訳ではありません。フラオン王、貴方にこそ降伏を勧めに来たのですよ」
当初の予定とは違うドレイクの言葉に、俺は首を傾げるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1525
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1673