本陣が結構な被害を受けていた件は、改めて確認してみるとやはりギブン家の攻撃が原因だった。
まぁ、予想していたからそこまでショックを受けるようなことはなかったけど。
「それで、この状況だと今日の出撃はないのかい? 折角あたし達が来たのに……」
不機嫌そうな様子を見せたのは、ジェリル。
今回ギブン家との戦いに参加する原動力となっていたのを考えると、それが空回りになるような感じになった事が面白くないのだろう。
「そう言っても、しょうがないだろ? まさか、俺達だけで出撃するような真似が出来る筈もないだろうし」
トッドのその言葉にジェリルは不機嫌そうに鼻を鳴らす。
とはいえ、話を聞いていたアレンは戦いが起きないことに少しだけ安堵した様子を見せていたが。
アレンとしては、もっとしっかりと訓練をしてから戦いたいという思いがあったのだろう。
しかし……そんなアレンの希望は、次にジェリルの口から出た言葉で引き攣る。
「向こうが少数でこっちの本陣を攻めてきたなら、こっちも少数で敵の本陣を攻めてみないかい?」
「待て、本気か!?」
慌てたように言うアレン。
声には出さなかったが、俺もアレンと同じ意見だ。
少数での襲撃となれば、当然だがそれは精鋭が行う事になる。
そんな中でジェリルはオーラバトラーに乗り始めたばかりで、とてもではないが精鋭と呼ぶ事は出来ない。
勿論、今の状況でも聖戦士特有の強いオーラ力によって、その辺の兵士を相手にした場合は優勢に戦いを進める事が出来るし、勝利するといったような事も出来るだろう。
だが、それはあくまでもその辺の兵士を相手にした場合であって、ショウのいるギブン家を相手にそんな真似は……少し難しいだろう。
あるいは、一度ジェリルとショウを戦わせてみるべきか?
結局のところ、ジェリルがここまで強気なのはショウが具体的にどのくらい強いのかが分からないからというのも大きいのだろう。
そうである以上、ジェリルにには現実を体験して貰った方がいい。
勿論、ショウと戦う以上はいざという時の為にジェリルが殺されないようにフォローの準備をしておく必要がある。
あ、でもそうなるとフォローに向かうのは俺かマーベルになるな。
本来ジェリルと組む予定だったトカマクの場合は、それこそジェリルと2人で戦ってもショウに勝てるとは思えない。
だとすれば、やっぱり1人でもショウと戦って勝てる俺かマーベル。
もっと具体的に言うのであれば、足手纏いになるだろうジェリルを抱えてショウと戦うという事は、それに勝てる俺が行くのが最善……か?
ただ、マーベルとジェリルの相性もよくないが、俺とジェリルの相性も決していいとは言えないんだよな。
そうなると……
「やっぱりトッドがジェリルと一緒にショウに戦いを挑んでみるのが一番か」
「はぁっ!? ちょっ、待てよ! 何で俺がそんな真似をするんだよ!」
「そう言ってもな。あの様子だと、ジェリルを止めるのはまず無理だぞ? そうである以上、誰かが一緒に行くしかない。で、お前達の中で現状一番操縦技術が高いのは、間違いなくトッドだ」
その言葉に、トッドは微妙な表情を浮かべる。
自分が一番技量が高いと褒められたのは、嬉しい。
だが、それが理由でジェリルと一緒にショウに戦いを挑むというのは、出来ればやりたくない……といったところか。
「ちょっと待ちな。その言い分だと、あたしじゃショウには勝てないってのかい!?」
俺とトッドの会話にそう口を挟んだのは、当然のようにジェリル。
「そうだ。そもそも、お前がトッドに勝てないのは、この前の訓練の時に証明してるだろ?」
「あの時は、初めてオーラバトラーに乗ったからだよ! 今やれば勝てるさ!」
「無理だな。今のお前とトッドの間には、大きな実力差がある」
そう告げると、ジェリルはこちらを睨み付けてくる。
ジェリルにしてみれば、自分が負けるなどといったことは絶対に許容出来ないのだろう。
とはいえ、客観的に見てジェリルがトッドに勝つといった事は、今の時点では不可能だ。
「まぁ、落ち着けって。ジェリルも戦う相手はあくまでもギブン家だったか? そいつらだろ? トッドも、ここは俺の顔を立てろって。な?」
「……ふん」
アレンのその言葉に、トッドは不満そうにしながらも鼻を鳴らしてそう告げる。
今の流れでアレンが俺に何かを言ってこなかったのは、若干疑問ではあるが。
「取りあえず、これからどうするのかはバーンに話を聞いた方がいい。指揮権を持ってるのはバーンなんだから。そのバーンが許可をするのなら、出撃したりも出来るだろうし」
「分かったよ!」
俺の言葉に、ジェリルは不満を露わにそう言う。
そしてトカマクを引っ張って、この場を去っていく。
どこに向かったのかというのは、考えるまでもなく明らかだろう。
……けど、トカマクはジェリルにいいように振り回されてるな。
あれって男として目を付けられた訳じゃなく、舎弟として目を付けた感じだろう。
とはいえ、トカマクの方もそんな風に自分を振り回すジェリルを決して嫌っている訳ではないらしい。
もし本当にそれを嫌がっているのなら、それこそこうも言いなりになっていたりはしないだろうし。
何より、ジェリルにしてみれば逃がさないといった意味で捕まえているのだろうが、そうして捕まえているという事はジェリルの身体に密着しており、トカマクの顔は緩んでいた。
うん、取りあえず本人が幸せそうならそれでいいか。
「おい、アクセル。本当にいいのか? バーンの性格を考えれば、ジェリルの言葉に素直に頷くんじゃないか?」
「トッドの言いたい事も分かるが、さっきも言ったが結局バーンが指揮権を持っているというのは変わらない。なら、ここで俺達がどうこう言っても、結局最終的にはバーンが攻めると決めれば攻めるだろ。もっとも、今の状況で攻めたりといったような真似は普通ならしないと思うが」
「気安く言ってくれるな。もしこれでバーンが気安く攻めるって言ったらどうするんだよ?」
「そうなったら、トッド達が頑張るしかないんじゃないか?」
「……俺、一応アクセルに借りを作った筈だけどな」
俺がアレンと一緒に組んでギブン家との戦いに参加するという件か。
「その件は分かるが、まさか本陣がこうなってるとは思わなかったしな。まぁ、あの件はチャラってことでいいよ。ここまでナムワンで運んできたのもサービスって事にしておいてやる」
ナムワンを出したのは間違いないが、俺がやったのは言ってみればそれだけだ。
寧ろ、ナムワンを動かす事で改修された場所に問題がないかどうかを確認するという意味でも試験飛行をやっておきたいのは間違いない。
出来るだけ少数で動かすようにするという意味では、このナムワンはある意味で俺用に建造されているオーラバトルシップの試験艦的な意味合いもある。
そういう意味では、このナムワンは出来るだけ多く使って何か異常がないのかどうかを確認する必要があるのだが……ただ、俺とマーベルだけで活動しているとなると、ナムワンを使う機会はあまりないんだよな。
そう考えると、今回ナムワンを出せたのは悪い話じゃなかったのは事実だ。
「……あ」
そうして話をしている中、不意にマーベルがそんな声を上げる。
何だ? と思ってマーベルの視線を追うと、そこにはジェリルとトカマク、そしてガラリアの姿があった
それは別にいいのだが、ジェリルが嬉しそうな笑みを浮かべているのを見ると、何となく話の流れが予想出来る。
「嘘だろ」
ジェリルの嬉しそうな様子を見て、俺と同じことを思ったのだろう。
トッドは信じられないといったように呟く。
うん、まぁ……話の流れ的に、大体理解出来てしまった。
アレンもまた、そんなトッドの言葉やジェリルの様子を見て、嫌そうな様子を見せる。
まさか、と。
そんな表情を浮かべるアレンだったが、フェイはそれなりにやる気だったのか、笑みを浮かべていた。
「バーンから許可を貰ってきたよ。これでいいんだね?」
「やっぱり」
得意げに呟くジェリルの言葉に、トッドはそう呟く。
というか、この状況でジェリル達を出すって、バーンは何を考えてるんだ?
「ガラリア、彼女の言ってる事は本当なの?」
ガラリアと一番仲のいいマーベルがそう尋ねるが、ガラリアは即座に頷く。
「うむ。こちらの本陣が大きな被害を受けた以上、ギブン家の出鼻を挫いておかなければ、向こうが調子に乗るだろうと主張してな。実際にその通りなだけに、反対も出来ん」
「調子に乗るって、今の状況でそんな真似が出来るとは思わないけど」
マーベルの言葉に、ガラリアは少し迷った様子を見せる。
ガラリアにしてみても、バーンの意見に賛成出来るところはあるが、それと同時に素直に納得出来ないところもあるのだろうが。
「アクセル王、どうしますか?」
「どうって言われてもな。……正直なところ気は進まないが、トッドに貸しを作れると思えば悪い話じゃないか」
幸い……という表現が相応しいのかどうかは分からないが、現状で俺が急いで何かやるべき事はない。
もし緊急の出来事があるのなら、そちらを理由に断ってもよかったのだが、今の状況を考えるとこちらに手を貸しても構わないという状況だった。
また、ラース・ワウでトッドに約束したように、トッドに貸しを作れるというのも、俺にとっては悪い話ではない。
「……悪いな」
俺の言葉を聞き、トッドがそう言ってくる。
トッドにしてみれば、俺を巻き込んでしまったといったように思っているのだろう。
もっとも、トッドにとっても俺にとっても、これはきちんとした契約だ。
そうである以上、それを何の理由もなしに一方的に破棄するといった真似は出来なかった。
「そんな訳で、前もって決まっていたように俺はアレンと一緒に行動する。……だが、俺がやるのはあくまでもアレンのフォローで、俺が主体になって動くといったようなことはないから、そのつもりでな」
トッドから視線を逸らし、アレンにそう告げる。
アレンはそんな俺の言葉に気が進まないといった様子で頷く。
「分かったよ。まぁ、聞いた話だとアクセルはかなり強いんだろうし……そういう意味では、俺の運も悪くないのかもしれないな」
自分に言い聞かせるようにそう言うアレンだったが、マーベルと一緒に行動するフェイが嬉しそうな笑みを浮かべているのを見ると、やっぱり不満そうな様子を見せる。
自分の安全が懸かってるんだから、俺がフォローするのは当たりだと、自分ではそう思ってるんだけどな。
もっとも、マーベルも始まりの聖戦士として腕利きなのは事実だ。
そういう意味では、フェイもまた安全は約束されたようなものだろう。
この場合、問題なのは……トカマクと組むジェリルか。
ダンバインに乗っている時は、頻繁に機体を破壊していたトカマクだ。
ドラムロに乗り換えて才能を発揮するようになったが、それでも俺やマーベルと比べると能力的には落ちてしまう。
そんな状況で、普通の敵ならともかくショウと戦うなんて事になったら一体どうなるのか。
とはいえ、アレン、ジェリル、フェイの3人は別にそれぞれが別行動をする訳ではなく一緒に行動をするのだから、何かあった場合はこちらでもすぐに援護は出来るだろうが。
「はぁ……」
心底嫌そうな様子で溜息を吐くアレン。
アレンにしてみれば、出来れば今回の一件には参加したくないといったところか。
だが、現在の状況を見る限りではそれを受け入れないという選択肢はない。
だからこそ、自分に言い聞かせるようにしているのだろう。
「取りあえず俺が一緒に行くからには、ショウとの戦いになっても死ぬようなことはないから安心しろ。そう考えれば、今の状況はそう悲観的なものではないだろ? 敵の中で一番強い相手と、自分の生存が確保された上で戦えるんだからな」
そんな俺の言葉を聞き、半ば無理矢理納得した様子を見せるアレン。
この様子なら、取りあえず大丈夫そうであるな。
「アレンも問題ないようだし、そろそろビランビーの準備をするぞ。これが最初の実戦なんだから、気を抜くなよ」
そう言うと、命令されたのが面白くなかったのかジェリルは不満そうな様子を見せながらも、トカマクを引っ張ってビランビーの方に移動する。
ちなみにビランビーは俺のナムワンの格納庫にあるので、そっちの方だ。
ナムワンの搭載機は6機だが、俺のサーバインとマーベルのダンバインは空間倉庫に収納されているので、アレン達の3機とトッド、トカマクの2機はナムワンの格納庫で運んでくるのに問題はなかった。
本来ならもう1機搭載出来たのだが、マーベルが自分の機体は俺が持っていた方が安心だと判断され……こんな感じになった訳だ。
バーンとガラリアのオーラバトラーは、別途運んでくるらしい。
バーンが今の時点で自分の出撃に積極的ではないのは、その辺にも理由はあるのだろう。
「アクセル、私達の方も準備をしておきましょ」
「ああ」
マーベルの言葉に頷き、俺も準備を始めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1540
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1676