「アクセル、本当にいいの?」
ドレイクとの会食が終わり、俺達のナムワンの部屋に戻ってくると、マーベルがそう言ってくる。
何に対して本当にいいの? と言ってるのかは、考えるまでもなく明らかだ。
それはつまり、ドレイクが口にした一件だろう。
フラオンをこのミの国で殺すのではなく、ラウの国へ逃がして戦いの理由とする件についての話なのは間違いない。
「そう言ってもな。ドレイクも言っていたように、向こうが決めた事だ。そうである以上、俺が止めろとは言えないし」
ドレイクが言っていたように、俺とドレイクは対等の同盟関係だ。
アドバイスを求められればするし、依頼をされれば報酬次第でそれを請負もする。
だが、それでもドレイクに対して上から命令するといったような事は出来ない。
「それは……」
マーベルも、俺とドレイクの関係については理解しているのか、それについて突っ込んでくるような真似はしない。
「それに……実際、ドレイクの言葉も分からない訳じゃないしな」
「え? 本当に?」
驚きの表情を向けてくるマーベルに、頷きを返す。
実際に俺が集めた情報とかでも、ラウの国のフォイゾンはかなり苛烈な性格をしている。
自国が大国だというのを理解しているので、周辺諸国にも自分の国のルールを守らせるような一面がある。
また、例え自分の娘が駆け落ちしたとはいえ、それでミの国と国交断絶したのも、その辺が理由の1つだろう。
小国とはいえ、ミの国は国だ。
そうである以上、国交断絶といったような真似をした場合、ミの国程ではないにしろ、ラウの国にも多少は影響があったのは間違いないのだから。
「フォイゾンの性格……まぁ、実際に見た訳じゃないから、あくまでも人から聞いた話で判断した場合、ドレイクがフラオンのように王族の血を引いてないからという理由で攻撃してくる可能性は十分にある」
とはいえ、それでもフラオンを送りつけて先制攻撃をするというのは、どうかと思わないでもなかったが。
何しろ、フォイゾンが攻撃をしてくるというのは、あくまでも可能性にすぎない。
ましてや、伝統とかを大事にするような性格をしているのなら、それこそ奇襲などといった真似はせず、きちんと宣戦布告をした上で攻撃をしてくる筈だ。
「悪しきオーラ力……」
と、不意にマーベルがそんな言葉を呟く。
「懐かしい言葉だな」
それは、リムルが自分の父親のドレイクを表現する時に口にしていた言葉だ。
その悪しきオーラ力というのが、具体的にどのようなものなのかは俺にも分からない。
ただ、それが理由でリムルはショウを連れてギブン家に亡命したのは間違いない。
俺の予想では、悪しきオーラ力というのは野望の強さとか、そういうのだと認識していたが……それが悪い事だとは思わない。
実際、アの国の住人にしてみれば、フラオンを追い出してドレイクが国王になった事によって、幸福になったのは間違いないのだから。
そういう意味では、ドレイクの功績は間違いないだろう。
ミの国の住人にしてみれば、それで自分達が戦争に巻き込まれるって事でドレイクは敵と思っている者も多いかもしれないが、ぶっちゃけた話、ミの国が戦争に巻き込まれる事になったのは、フラオンの口車に乗ったからであって自業自得に近いだろう。
であれば、その件については別にドレイクの悪しきオーラ力が理由ではないのは事実。
「とはいえ、そもそもその悪しきオーラ力ってのが具体的に何なのかが分からない以上、どうしようもないと思うけどな。少なくても、俺が見ている限りでは今までのドレイクの行動は間違ってないと思うし」
「それは……」
マーベルは俺の言葉に反論出来ない。
優しい性格をしているマーベルにしてみれば、この状況でラウの国にも攻撃を仕掛けるというのは、あまり納得出来るものではないのだろう。
これがミの国のように、こちらが何もしていないのに向こうから攻撃をしてきたといったような理由があれば、まだ納得も出来る。
しかし、今のところラウの国は直接こっちにちょっかいを出してきてはいないのだ。
あるいは、ミの国との戦いの中でちょっかいを出してくるという可能性もあるが……いや、国交断絶している以上、ここで手を出してくるなんて心配はしなくてもいいか。
ともあれ、そう考えると今のところラウの国がこっちに攻撃をしてくるといったことは、心配しなくてもいい。
とはいえ、これはあくまでも予想でしかない。
世の中には予想を裏切るような事が幾らでもあるというのは、それこそ俺がその身でこれまで何度も証明してきたのだ。
そう考えると、ミの国が滅亡しそうになったことで、フォイゾンが突然娘への愛情を思い出して助けにくるといった可能性も、ない訳ではないのだろう。
「結局のところ、問題なのはドレイクがどうするかだ。俺はそれを止めるように命令したりは出来ない」
「アクセルの言いたい事も分かってるんだけどね。けど……それだと、やっぱり関係ない人が多くの被害を受けるような気がするんだけど」
「それは……まぁ、村で戦闘になったり、フラオンがやったように村から略奪をしようとしたりすれば、村にも被害が出るかもしれないな」
特に、村の略奪は大きいだろう。
だがそんな真似をすれば、当然ながら村の住人達はドレイクを恨む事になる。
ラウの国を統治するといったような事になった場合、それはドレイクにとって大きなマイナスとなってしまう。
ドレイクなら、当然その辺についての情報は理解していてもおかしくはないと思うんだが。
とはいえ、このバイストン・ウェルはファンタジー世界だ。
軍人としての教育も、地上程にしっかりとはしていない。
いや、地上であっても軍が村を略奪したり女を襲ったりといった事は珍しくはない。
ライダイハンとかいう、有名な話もあるしな。
ともあれ、ファンタジー世界である以上は略奪とかが普通に行われてもおかしくはない。
ドレイクが決してそのような真似をするなと、そう厳しく言っても、それがある程度の地位にあって事情を理解出来るならまだしも、末端になればそんな命令は聞き流されるのは珍しくない。
あるいは、兵士とかもしっかりと教育していればそんな真似も出来ないんだろうが……バイストン・ウェルにおいて義務教育とかはまず無理だしな。
というか、基本的に学校の類は存在しない。
教育を受けるとなると、それこそ家庭教師とかが一般的なんだよな。
だからこそ、教育を受けられる者は家庭教師を雇う財産やコネのある者達に限られる訳で。
とはいえ、平民が教育を受けた場合は、それによって余計な事を考えたりするといったように考えてる者も多く、その辺については俺が何か言うような事はない。
この辺は、それこそドレイクを始めとしたバイストン・ウェルの人間が自分達で決める必要があるのだから。
個人的には、人材の発掘も含めて平民であろうが何だろうが一定の教育をする義務教育という制度は悪くないとは思う。
「そう言えば、マーベルは大学生だったんだよな? 教育学部だったりするのか?」
「え? 何よいきなり」
突然話題が変わった為だろう。
マーベルはいきなり何を? といったような視線をこっちに向けてくる。
「いや、義務教育とかがされていれば、兵士も最低限の教育はされていて、村で略奪をしたりといったような事はしなくなるかもと思ってな」
その言葉は、マーベルも理解したように頷く。
ある意味でそれが理想論に近いというのは、俺も納得はしていたが、それでも何の教育も受けていない者達が軍にいるよりは随分とマシなのは間違いない。
「でも、アクセルの言いたい事は分かるけど、そんな真似が出来ると思う?」
「無理だろうな。……まぁ、ドレイクならその辺を考えているかもしれないけど、普通に考えて無理なのは間違いない。可能性としては、ドレイクから領土を貰ってそこの領主として義務教育をやるとか、そんな感じだけど」
そのような事をする場合、それこそ数年……場合によっては10年以上の時間が必要になるだろう。
そんな長時間バイストン・ウェルにいるかどうかとなると、どうだろうな。
とはいえ、ゲートを設置出来ない以上、バイストン・ウェルとホワイトスターの間にはどのくらいの時差があるのか分からない。
そうなると、下手をすれば10年どころかもっと長い間バイストン・ウェルで暮らすという事も考えられる。
もしそんな状況になったとしたら、領地でも貰ってそこで領地運営とかをしてみるのも面白いかもしれないな。
マーベルがいれば、大学生だし小学生くらいの教育は出来てもおかしくはないし。
トッド辺りは……いや、トッドは自分が土地を貰うのを希望していたし、自分で領地を運営するか。
けど、出来るのか?
一応、俺はホワイトスターという国を運営した経験がある。
実際には政治班に国の運営については任せているのだが、それでも一応重要な項目の最終決定に関しては俺のサインが必要だったりするので、多少なりとも運営に関わっていたりする。
また、俺の空間倉庫の中には様々な物資が入っており、それもまた国を運営する上で役立つ。
そんな俺に比べると、トッドは領地運営に関しては完全に素人で、物資の類も自分で用意する必要がある。
そう考えると、やはりトッドが領地を貰ってもそれを運営するというのは……いやまぁ、ドレイクからそういうのに詳しい連中を借りればどうにかなるか。
「ドレイクから領地を貰って、それで義務教育をする場合、教師はマーベルにやって貰うのも面白いかもしれないな」
「え? ちょっと、本気!?」
俺の言葉にそう叫ぶマーベルだったが、生真面目な……いや、お堅い性格をしているマーベルだけに、女教師というのは似合いそうな気がするんだけどな。
うん、見てみたい気がする。
「……アクセル。貴方何か妙な事を考えてない?」
「え? いや。別に何も?」
一瞬驚いたが、この手の事は俺の家ではそう珍しくはない。
特に千鶴なんかは非常に鋭い第六感を持っており、俺が年齢とかそういう風な事を考えると、グリンといった様子で首が動いて『オホホホホホ』と笑いながら得体のしれない圧力を掛けてくるしな。
それを思えば、マーベルはまだまだ甘い。
いやまぁ、そんなので凄くなられても困るのは間違いないが。
「まぁ、そもそも領地を貰えるかって問題もあるし……何より、領地を貰うって事は、俺はドレイクの部下になるのと同じようなものなのが問題なんだよな」
それが嫌なら、それこそまだ国として成立していない場所……例えば、恐獣の住処となっているような場所とかを確保して、国とするような必要がある。
まぁ、そこの恐獣の住処となっている場所も、どこかの国の領土だった場合、色々と問題になるのかもしれないが。
「出来れば、それは避けたいわね」
マーベルにしてみれば、ドレイクがラウの国を攻めるといった一件で、色々と思うところもあるのだろう。
だからこそ、俺が……そして自分が、ドレイクの部下になるのを嫌がるのはおかしくはない。
とはいえ、誰かに代わって領主になったという事なら、既にその領地に住んでいる住民がいるだろう。
だが、恐獣を殲滅してそこに国を建国するといったような事になった場合、当然だがそこに住人は誰もいない。
そうなると、どこか他の国から移住者を募るか、もしくは今こうして起きているような戦争から逃げてきた相手を受け入れてといったような事をする必要があった。
当然、そのような事になった場合、かなりの時間が必要となる。
うん、やっぱり建国ってのはちょっとな。
ホワイトスターと繋がれば、同じファンタジー世界である門世界から移住してきたエルフ達なら、バイストン・ウェルに移住してもいいと言ってくるかもしれないが。
ホワイトスターの中でも自然豊かな公園とかで暮らしているエルフ達だが、それでもやっぱり公園の自然は作り物だ。
本当の意味で自然がいいと言うのなら、門世界と同じファンタジー世界のバイストン・ウェルは、ちょうどいい筈だ。
「まぁ、あの連中がそうするかどうかは、別の話だが」
「……何がどうしたの?」
俺の呟きに、マーベルがそう尋ねてくる。
そんなマーベルに、俺は何でもないと首を横に振る。
マーベルがエルフに興味を持つかどうかは別として、今ここで言ったところで、実現するかどうは、全く未定の話だし。
「いや、いつかマーベルをホワイトスター……俺の国に案内したいと思ってな」
「ホワイトスター? シャドウミラーじゃなかったの?」
「国の名前はシャドウミラーだな。で、その首都がホワイトスターだ」
正確には首都という表現は正しくないのか?
ホワイトスターは、言ってみれば世界と世界の間、次元の狭間に浮かぶ小惑星的な存在だ。
そうである以上、正確には首都ではなく首都星とでも呼んだ方がいいのかもしれないが……ともあれ、俺はそんな風にマーベルに教えるのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1555
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1679