エレとアレンって、実は相性がいいのか?
ふとそんな事を思うが、実際にはどうだろうな。
ただ、アレンにとってエレはあくまでも女ではなく子供としてしか見ていないからこそ、そのように思えた……のかもしれないが。
ともあれ、そんなやり取りを眺めつつ、俺は口を開く。
「それでも、結局……エレは何をどうしたいんだ? ただ、偶然街中で俺に遭遇したから、その辺の話を聞いてみたいと、そう思っただけか?」
「え? あ、いえ。そんな事は……」
エレは俺の言葉に首を横に振る。
ただ見に来ただけ……もしくは偶然俺に遭遇した訳ではないとなると、もっと他に何か理由があって俺に会いに来たという事になる。
そのヒントとなるのは、先程言っていた……俺達が王国の住人に対して横暴な態度を取らないと、そういった事だろう。
「ちょっとその……聞きたい事があります」
「聞きたい事? 何だ? 言っておくけど、ドレイク軍の機密とかは教えられないぞ」
教えられないというのか、知らないというのが正しいのだが。
俺はドレイクと対等の同盟関係ではあるが、だからといってドレイクが持つ秘密を何でも知っている訳ではない。
当然知ろうと思えば知る事も出来るんだろうが……生憎と、俺にはそんなつもりはない。
「いえ。機密などという訳ではなく……この国は何を間違ったのでしょう?」
国が何を間違ったか、か。
エレのような子供がそんなことを言うというのはちょっと意外だったな。
というか、エレのような年齢でそういう事を気にするとなると……多分、エレは裕福な出なんだろう。
具体的には、反乱軍に協力しているような大商人……もしくは、貴族か。
「何を間違ったか、か。そうだな、究極的に言えばピネガンが国王になったのが国の滅ぶ最大の原因だろうな」
「お……ピネガン陛下が?」
何故、といった様子で視線を向けてくるエレは深刻そうな表情を浮かべていた。
自分の国の国王……それも、自分達が尊敬している国王が理由で国が滅ぶと言われてしまえば、そんな表情になってもおかしくはない。
「今回の戦いが起きた、最大の理由は何だと思う?」
「それは……ピネガン陛下がアの国の内乱に戦力を派遣したのが、最大の理由かと」
「まぁ、そうだな」
実際、あの戦いでドレイクはピネガンを敵だと認識したのだから。
そういう意味では、エレのその言葉は間違っていない。いないのだが……
「そうなると、問題なのは何故ピネガンがアの国の内乱に協力することにしたのか」
この件についても、既にドレイクの調べによって明らかになっている。
以前俺とドレイクが予想して話していたように、やはりラウの国のフォイゾンにフラオンから口利きをして貰うつもりだったらしい。
フラオンはアの国の王族の血を引く人物だ。
そしてフォイゾンは伝統と格式を重要視する人物だけに、フラオンが仲裁すれば、ピネガンとフォイゾンが会う事も出来たのは間違いない。
ましてや、当時の状況ではピネガンが協力するのは、フラオンとギブン家だ。
ドレイクが幾らオーラバトラーを開発したとはいえ、結局のところアの国の領主の1人でしかない。
そんな領主の1人と戦うのが、アの国の国王たるフラオンに、ドレイクと同様オーラバトラーを独自開発――正確にはドレイクのところから技術者を引き抜いたのだが――したギブン領という事もあり、ピネガンにしてみれば負けるとは全く考えていなかったのだろう。
正直なところ、この件に関してはピネガンを責めるのは少し酷だと思わないでもない。
普通に考えれば、あのような状況でドレイクが負けるのは当然だったのだから。
実際、俺の協力があって何とか生き延びた……というのが正しいところだし。
それを思えば、ピネガンは運がなかったと言うべきか。
あるいは、攻め込む前にもっとルフト領を詳しく調べていれば、また話は違ったかもしれないが。
その辺を怠ったのは、ピネガンのミスだろう。
ともあれ、アの国の内乱に協力する事になった理由は、フォイゾンと会ってラウの国との国交断絶を解除して貰う為。
そして何故国交断絶となったのかというのを考えれば、それは当然ながらピネガンがフォイゾンの娘と駆け落ちしたからだ。
つまり、自分の恋愛の為にミの国の住人が犠牲になった訳だ。
それによって大きな損失を受けた事により、反乱軍の類も結成された。
自分の恋愛を叶える為に重要な隣国……それも自国よりも圧倒的に上の国力を持つラウの国を怒らせたのだから、それは国王として失格だろう。
言ってみれば、ピネガンは自分の恋とミの国の国民のどっちを選ぶかということで、自分の恋を選んだのだから。
これがその辺の一般人であれば、そういうのもまだ許容出来たかもしれない。
だが、ピネガンはミの国の国王……頂点に立つ存在なのだ。
当然ながら、自国よりも圧倒的に強国のラウの国を敵に回して、ただで済む訳がない。
実際、国交断絶という結果によって、ただでさえ小国のミの国は更に疲弊したのだから。
……それでも、ピネガンのやった事を考えれば、ラウの国に宣戦布告されてもおかしくはなかった。
そういう意味では、運がよかったと言ってもいいのかもしれないが。
あるいは、もし……本当にifの話ではあるが、ミの国がラウの国以上に強国であれば、ラウの国としてもピネガンとパットフットの結婚を大目に見た可能性はある。
だが、それはあくまでもifの話でしかない以上、考えても意味はない。
結局のところ、ピネガンとパットフットが出会ってしまったのが最大の原因と言ってもいいだろう。
その辺りの事情について説明すると、エレは落ち込んだ様子を見せる。
「そう、ですか。……やはり、ピネガン陛下が……」
まぁ、ピネガン以外に王族の血筋がいなかったとなると、その辺はしょうがないという一面もあるんだろうけど。
それ以外にも、ピネガンは民衆からの人気が高いというのもあるし。
現在反乱軍になっている者達も、ラウの国の件があるからピネガンに国王を任せられないと判断したのだろうが、それまでは皆と同様に慕っていた筈だろうし。
「ああ。ミの国の住人にしてみれば信じたくないことだろうが、ピネガンが王になった事、そのものが間違いだ」
フォイゾンを納得させてパットフットを嫁に貰うといったようなことが出来れば、まだ話は別だったのだろうが、ピネガンにはそのような真似が出来なかった。
「では、この状況でピネガン陛下がどうにか出来る方法があると思いますか?」
必死な様子で俺とアレンに尋ねてくるエレ。
この様子からすると、商人じゃなくてやっぱり貴族の娘といったところか。
だからこそ、現在の状況でどうにかなる方法を考えているのだろうが……
「無理だな」
あっさりと、俺はそう告げる。
実際、既に反乱軍の上層部の交渉や、略奪をしたドレイク軍の公開処刑という行動から、既にミの国はどうしようもない状態だ。
それこそ、実は裏では既に停戦交渉……もしくは終戦交渉を行っていると言われても、意外に思わないだろう。
既にもうピネガンは詰みなのだ。
「そんな……」
ショックを受けたエレを見ていたアレンは、不意に口を開く。
「アクセル、俺が聞いた話だと、ピネガンは殺さないで追放するって話になってるって聞いたぞ? 何でそれを教えない?」
そんなアレンの言葉に、エレは期待の視線を向ける。
「その件は知ってたのか? けど、それって一応機密じゃないか?」
こんな場所で言うのは不味いだろう。
そういうつもりで告げたのだが、アレンは軽く肩をすくめるだけだ。
「そんな事を言われてもな。それに、この件は結構知ってる奴も多いぜ? 別に機密って程じゃねえよ」
なるほど、ドレイクはその辺について公にしたのか。
それでも大々的に公表している訳ではなく、知ってる者は知っているといったところなんだろうが。
「じゃあ、本当なんですね?」
「ああ。俺が聞いた話だとそうなっている。……だよな、アクセル?」
「そうだな。ドレイクとしては追放するといったことにするつもりらしい」
アレンがそう言うのならという事で、俺もその件に頷く。
元々、反乱軍との約束はピネガンを玉座から追放するといったものだった。
反乱軍にしても、ピネガンには色々と言いたい事はあるのだろうが、殺したいとまでは思ってないといったところなのだろう。
それに……追放というのは、ドレイクにとっても悪い選択肢ではない。
ピネガンを殺せば、どうしてもその恨みはドレイクに向けられる。
だが、追放となれば……勿論、それでもピネガンを慕っている者には恨まれるのは間違いないだろうが、それでも殺した時のように恨まれる訳ではない。
……まぁ、追放されたピネガンがどうなるかは、また別の話だが。
ドレイクの予定としては、フラオンと共にラウの国に押し付けるといった様子だった。
ラウの国への侵略を既に決めているドレイクにしてみれば、フラオンやピネガンがラウの国に行く事により、ミの国の時と同じように……とまではいかないだろうが、それでも多少なりとも混乱させることが出来れば、それでいい。
そういう思いだったのだろう。
その戦いの中で、フラオンやピネガンが死ねば、それはそれでよし。
生き残れば生き残ったで、また何らかの方法に使うということを考えていても、おかしくはなかった。
本人がそれを望むかどうかは、また別の話として。
「そう、ですか。なら……少しは安心出来ますね」
安堵した様子を見せるエレ。
貴族の家の子供だけに、自分の両親が一体どうなるのかというのが、気になっていたのだろう。
とはいえ、もしピネガンと一緒にラウの国に亡命するような事があった場合、エレも死ぬ可能性は高かったが。
あるいは、エレのような子供は戦場に連れていけないと判断して、エレをラウの国に残して自分はドレイク軍と戦うと聞いたが。
「それにしても……」
と、不意にエレが話題を変え、しみじみといった様子で俺の方を見てくる。
何だ?
取りあえず安心したというのはあるのだろうが、随分と唐突に話題を変えるな。
「どうした?」
「いえ、貴方のオーラ……やはり、凄いと思いまして」
「そう言われてもな。俺は特にその辺を気にしたりしたことはないから、何とも言えないんだよな」
エレの感じているオーラというのが、実は俺の魔力だという可能性が高いのは間違いないが、だからといってそれでどうこうといった特殊な事はない。
「そうですか。……ですが、貴方の力はもの凄いもの。その力によっては、バイストン・ウェルの未来の行く末も変わるかもしれません」
エレのその言葉は、一種の予言のようにも思える。
とはいえ、今の自分の状況を思えばエレのその言葉が適当に言ってるようには思えない。
実際、現在のシャドウミラーは俺とマーベルだけだが、戦力という点では突出している。
あくまでも質の面で量はどうしようもないけど。
そういう意味では、エレのその予言は間違っている訳ではない。
……あるいは、サーバインではなく、俺の半身とも呼ぶべきニーズヘッグの存在について察しているのかもしれないが。
「分かった。その話は気に留めておくよ。けど、それを信じるかどうかは、また別の話だが」
「はい。……それでは、私はそろそろ帰りたいと思います。今の話を両親にもしたいので」
帰る、か。
けど、大丈夫なのか?
具体的には、このままエレが無事に帰ることが出来るのかといった意味で。
この王都は、現在そこまで治安が悪い訳ではない。
ドレイクが略奪した自分の兵士を公開処刑したおかげで、略奪なんて馬鹿な真似をする者はいないのだから。
また、王都であるという事や、ドレイク軍が大量にいるというのも影響してか、ガロウ・ランの類もいない。
そういう意味では治安が悪化するといったことは心配しなくてもいい。
ただし、戦争で自国が負けつつあるというのを理解している者にしてみれば、苛立つなという方が無理だ。
寧ろドレイク軍の兵士やガロウ・ラン、恐獣といった相手よりも、そのような相手の方が厄介な存在なのは間違いなかった。
エレのような子供がそういう連中に絡まれるかどうかは、分からない。
それでも、エレが貴族の子供だというのがはっきりとした場合、それはかなり不味い事態になるのは間違いない。
「アレン、送っていってやれ」
「はあ!? 俺がかよ! 何で……」
「エレのような小さな子供が、何かトラブルに巻き込まれて怪我でもしたら、どうする?」
そんな俺の言葉に、アレンは言葉に詰まる。
今の状況を考えると、アレンとしてもエレをそのままにするといったような事は、危険だと判断したのだろう。
実際、街中で俺にぶつかるといったようなことをしてはいたのだが、もしあれが俺じゃなくて他の奴……気の荒い奴であれば、間違いなく騒動になっていた。
その辺の事情を考えれば、アレンも俺の言葉に否とは言えず……やがて、渋々とではあるが、頷くのだった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680