ウィル・ウィプスの中……そこで、これからどうするのかというのを考えていると、不意に誰かがこの部屋に近付いてくる気配を感じた。
誰かというか、この状況でドレイクの部屋に近付いてくる相手なのだから、ドレイクの部下以外にいないだろうが。
あるいは、ドレイクを狙った刺客という可能性も否定は出来なかったが……近付いてくる気配に殺気の類はない。
それを考えれば、やはりドレイクの部下で間違いないだろう。
「ドレイク、お前の部下が来たみたいだぞ」
「何?」
ドレイクは不思議そうに首を傾げる。
当然だろう。今は重要な話をしているので、余程の用件がないようなら来ないようにと言ってあったのだから。
にも関わらずこうしてやって来るという事は、その余程の事があったらしい。
問題なのは、その余程の事ってのが何なのかだな。
戦闘音の類が聞こえてこない以上、再度の襲撃といった訳ではないみたいだが。
「失礼します、ドレイク王。クの国の援軍が近付いているとの事です」
部屋の中に入ってきた兵士が、ドレイクに向かってそう告げる。
なるほど。何かと思ったらそっちだったか。
クの国の援軍が来るというのは、当初の予定通りではあった。
だが、到着するのが遅れたというのは……取りあえず、向こうの話を聞いてからその辺は判断した方がいいのかもしれないな。
ドレイクもそう判断したのか、俺に視線を向けてくる。
「アクセル王、儂はブリッジに行くが……どうする?」
俺だけに聞いてきたのは、ガラリアはドレイクの側近である以上、ドレイクと一緒にブリッジに行くと決まっているからだろう。
そしてマーベルは、俺と一緒に行動すると思っているので、別に聞いたりしない訳だ。
「そうだな。何で遅れたのか、少し気になるな」
ドレイクにしてみれば、ビショットが自分の戦力を消耗したくないと考えての行動だと思っているのかもしれないし、実際にその一面があるのも間違いはないだろうが、それでもビショットの性格から考えると、遅れるのなら遅れるで、連絡をしてきてもおかしくはない。
にも関わらず、こうし何も言わずに連絡が遅れたのは……恐らく何かがあったからだろうというのは、容易に予想出来る。
まぁ、単純に現在バイストン・ウェルで使っている通信装置はそこまで遠くに通信を飛ばせないというのもあるので、その辺が連絡しなかった理由なのかもしれないが。
そうして、俺達はブリッジに向かう。
ウィル・ウィプスは巨大なので、ブリッジに向かうにしてもそれなりに歩く必要がある。
専用のピグシー辺りがあってもいいのかもしれないな。
そんな風に考えながら、俺達はドレイクと共にブリッジに向かうのだった。
『これは、ドレイク王、アクセル王も。遅れてしまい、申し訳ない』
ウィル・ウィプスのブリッジで、映像モニタに表示されたのは……ビショット。
え? ビショット? 何で?
一瞬そんな疑問を抱く。
勿論、クの国からの援軍だというのは知っていたが、まさかそこにビショット本人がやって来るとは思わなかったのだ。
ビショットは、言うまでもなくクの国の国王だ。
それもフラオンのように無能な国王ではなく、有能な国王。
国王としてしっかりクの国を治めており、更にはオーラバトラーの開発にまで才能を発揮するという存在。
その上人当たりもよく、部下からの人望も厚い。
そのような人物である以上、わざわざ戦いの場に来る必要があったのか? と、そんな風に思ってしまうのは当然だろう。
これがドレイクなら、今回のラウの国との戦いは今後のアの国の行方を左右するようなものである以上、ドレイク軍の士気を高める為に自分が出て来てもおかしくはない。
しかし、ビショットはこの戦いに関しては本人が出張ってくる必要はない。
あくまでも、ビショットがドレイクに要望されたのは援軍なんだから、部下に命じておけば問題はない筈だった。
……そうなると、ビショットが戦場までやって来たのは軽率と言う他はない。
「ビショット王、予定していたよりも随分と遅かったようだが?」
『うむ。ゲア・ガリングの最終確認に思ったよりも時間が掛かってな。それ以外にも新型のオーラバトラーが開発出来たので、どうせなら持ってきたいと思ったのだ』
「ぬぅ」
ビショットのその言葉に、ドレイクは何も言えなくなる。
ビショットの言葉が真実であるのなら、ラウの国との戦いの為に新たな戦力を用意してきたという事になるのだから。
にしても……ゲア・ガリング?
唯一出て来た名前に疑問を覚える。
「ちょっと、あれ……」
と、不意にマーベルが俺の服を引っ張ってそんな風に言ってくる。
何だ? と思ってウィル・ウィプスの映像モニタ……ビショットが映っているのではなく、外の光景を映しているそちらに視線を向けると、マーベルが何故驚いたのかを理解した。
やって来たのは、オーラシップ……いや、オーラバトルシップだった。
左右対称になった……X字型というか、そんな形のオーラバトルシップ。
さっきビショットがゲア・ガリングの最終調整云々と言っていたのを思い浮かべると、恐らくこのオーラバトルシップこそがゲア・ガリングなのだろう。
オーラバトルシップの開発を始めたのは、ドレイクの方が先だ。
なのに、完成がほぼ同じ時期だったのは……考えるまでもなく、俺のヨルムンガンドのせいだろうな。
ドレイクはヨルムンガンドよりもウィル・ウィプスの完成を優先させていたとはいえ、それでも結局のところそれは優先であって集中ではない。
ウィル・ウィプスとヨルムンガンドを同時に開発していたのだから、その建造速度が遅くなるのは当然の話だった。
とはいえ、ドレイクにはヨルムンガンドの完成を遅らせすぎるといった訳にはいかない。
元々、以前に行われた依頼の報酬として、俺はヨルムンガンドを受け取る事になっていたのだから。
それを思えば、依頼の報酬として渡すヨルムンガンドの完成を後回しには出来ないだろう。
いや、後回しという意味では今も後回しになっているが、それでもウィル・ウィプスと同時進行だったのは間違いない。
「オーラバトルシップも出揃ってきたな」
「驚かないの?」
俺が平然とゲア・ガリングと思しいオーラバトルシップを見て呟いたのに驚いたのか、マーベルは意外そうに言ってくる。
「驚きはしたけど、色々と考えると納得のいく部分も多かったからな」
『おや、それは残念だね。思ったよりもアクセル王を驚かせる事は出来なかったらしい』
俺とマーベルの会話を聞いていたのか、ビショットは笑みを浮かべつつ、そう言ってくる。
笑みを浮かべているとはいえ、残念そうな様子も見てとれる。
ビショットにしてみれば、俺を驚かせられると、そう思っていたのだろう。
まぁ、それも決して間違いって訳ではないのだが。
マーベルにも言ったが、驚いているのかいないのかで考えれば、俺は間違いなく驚いているのだから。
ただ、単純に俺が表情に驚きを出していないだけだ。
「俺の件はいいから、取りあえずドレイクとの打ち合わせを進めたらどうだ?」
「うむ。正直なところ、まさかビショット王が自らやって来るというのは思ってもいなかった。言うまでもないですが、危険ですぞ?」
ドレイクにしてみれば、その言葉通りビショットがやって来るというのは完全に予想外だったのだろう。
とはいえ、自分も王であるドレイクが言っても説得力は薄いが。
そして同様に俺もまた王という立場なのだから、そういう意味では俺の言葉にも説得力はないようなものか。
『ドレイク王とアクセル王がいるのですから、こちらとしては問題ありませんよ。それに……こう言ってはなんですが、完成したこのゲア・ガリングと新型のオーラバトラーの運用試験として考えても、悪い話ではないですし』
なるほど。
ビショット本人が来たのは、ゲア・ガリングや新型のオーラバトラーの試験的な意味もあったらしい。
オーラバトラーはともかく、ゲア・ガリングはビショットの旗艦だけに、それを動かすにはビショットの許可が必要だ。
また、技術者……いや、正確には設計者か? オーラマシンの設計についても才能のあるビショットにしてみれば、ゲア・ガリングの試験は自分でやってみたいと、そう思ってもおかしくはない。
俺個人としては、オーラバトルシップも興味深いが、やはりもっと興味深いとなると、それは新型のオーラバトラーだろう。
クの国独自のオーラバトラーは、アルダムがある。
その性能は非常に高く、ドラムロと比べても明らかに上だ。
ドラムロよりも後に開発されたのに、生産性を重視した為にドラムロよりも性能の低いダーナ・オシーとは、同じ高機動型のオーラバトラーでも比べものにならないくらいに。
とはいえ、その生産性という点ではダーナ・オシーの方が上だし、何よりダーナ・オシーを開発したのはギブン家というアの国の中の領主の1人でしかない。
それに対し、アルダムを開発したのは、ビショットが率先し、クの国として開発したのだから、その差は当然か。
国と領主では、差がありすぎる。
「クの国が開発したオーラバトラーか。……興味深いな」
『そう言ってくれると思っていたよ。私からの贈り物を喜んで貰えるのは幸いだ』
「は?」
ビショットの口から出た贈り物という言葉に、一瞬訳が分からなかった。
アルダムは賭けの結果として俺が貰ったが、新しいオーラバトラーを俺に贈る……プレゼントするというのは、予想外だった。
とはいえ、もしそれが本当なら俺にとって嬉しい事だが……だからこそ、この件に関して何か裏があるのではないかと、そう思ってしまうのは当然だろう。
「何か企んでいるのか?」
『まさか。……いや、アクセル王が何故そのように思ったのかは、私にも分かるよ。だが、これは私がアクセル王との友情を示す為であると同時に、アクセル王の配下が増えたことを祝ってのものだよ』
へぇ。
俺の部下が増えたというのは、考えるまでもなくキッス家の面々の事だろう。
その件について詳しく知っている辺り、高い情報収集能力を持っているのは間違いない。
恐らく、何らかの伝手……情報収集役がいるのだろうが。
それが誰なのかは、生憎と俺には分からない。
これで大使館とかそういうのがあれば、また話は別だ。
しかし、このバイストン・ウェルでそういうのはないしな。
ファンタジー世界であっても、大使館とかがあってもおかしくはないと思うんだが……これに関しては、そういうものだと認識するしかない。
ドレイクも自国にビショットの情報収集役がいるというのは知ってるのだろう。
だからこそ、現在はこうしてビショットの話を聞いても、特に何か反応する様子がないのだ。
それはつまり、ドレイクもまたクの国で同じような真似をしているという事を意味している。
その件については、もう問題はない。
今回の場合、もっと大きな問題なのはビショットが俺にオーラバトラーをプレゼントするという事だろう。
当然の話だが、オーラバトラーというのは気軽にプレゼント出来るような値段ではない。
……まぁ、世の中には数億円の外車をプレゼントされるホストとかホステスとかいるらしいので、そう考えれば納得出来ない訳でもない、のか?
それでもこのような状況で俺にプレゼントしてきたという事は、単純にビショットが俺と友好的に接しておきたいと考えたのが大きい筈だ。
何故わざわざそのような真似をするのか。
それは、やはり色々な意味で特殊な俺がドレイクと近すぎると考えての事だろう。
ビショットにしてみれば、俺というジョーカーをドレイクだけが握っているというのは面白くない。
だが、俺はドレイクと対等の同盟関係を結んでいる以上、俺とドレイクを離すのは難しい。
これで俺に戦闘力がなければ、力でどうにか出来るのかもしれないが……生憎と俺は、生身でも恐獣やオーラバトラーと戦えるだけの実力を持っている。
そうである以上、ビショットとしては自分から俺と近付いて友好関係を築く必要がある。
元々俺とビショットの間には多少なりとも友好関係があったのは事実だから、それを強める必要があった。
俺を嫌っているルーザが俺と友好的な関係になりたいと思うよりは、よっぽど簡単だろう。
「そうか。そっちにも思惑はあるんだろうが、贈り物を楽しみにさせて貰うよ」
結局俺はそう言って、オーラバトラーを貰う事にする。
一体どんなオーラバトラーなのか、楽しみなのは間違いない。
普通に考えれば、クの国が独自に開発したアルダムの後継機といったところだが、もしくはアルダムとは全く別のコンセプトを持ったオーラバトラーか。
その辺は、色々と興味深いのは間違いない。
ドレイクはそんな俺の方を見て、仕方がないといった様子で息を吐く。
ドレイクにしてみれば、本来なら俺とビショットにはあまり近付きすぎないで欲しいのだろう。
だが、俺とドレイクはあくまでも同等の立場だ。
俺がビショットに会いたいと言えば、それを否定出来る筈がなかった。
アクセル・アルマー
LV:43
PP:1560
格闘:305
射撃:325
技量:315
防御:315
回避:345
命中:365
SP:1987
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1680