俺の言葉に、猗窩座は少し考え……やがて頷く。
「いいだろう。アクセルの賭けを受ける。だが、賭けた以上は俺に負けたからといって鬼にならないといった事は聞かないぞ? それはお前の誇りに誓って貰う」
「ああ、構わない。もし俺が猗窩座に負けたら、鬼舞辻無惨の血を受け入れる」
そう言うと、炭治郎達が俺の背中に強い視線を向けているのが分かる。
とはいえ、俺は猗窩座との戦いに負けるつもりはないし、もし負けて俺が鬼になるとしても……さて、どうだろうな。
もし俺の身体に鬼舞辻無惨の血が入れられても、その血が俺を鬼にするかどうかというのは微妙だろう。
そもそも相手はただの鬼だ。
それに対して、俺の身体にはリョウメンスクナノカミという鬼神の血というか、その頭部を吸収している。
ただの鬼が鬼神に勝てるかと言われれば、微妙だろう。
とはいえ、鬼と鬼神ではあっても鬼は鬼滅世界の鬼で、鬼神はネギま世界の鬼神だ。
そう考えると、その二つを素直に比べるような真似は出来ないだろう。
結局のところ、俺が勝てばそれでいいんだが。
「いいだろう。では……賭けは成立した。では、行くぞ!」
鋭く叫ぶと、猗窩座は俺との間合いを詰めてくる。
先程の一撃よりも更に鋭い一撃。
高速で拳を俺に向かって放ってきた。
連続して放たれるその一撃は、猗窩座にとって自慢の攻撃だったのだろう。
長い修練の末に行えるようになった攻撃。
そんな攻撃ではあるが……その拳が俺に命中するような事はない。
次々と放たれる攻撃の全てを回避し、回避、回避し続ける。
猗窩座にとって、まさかここまで攻撃を回避されるとは思っていなかったのか、その表情は驚きに染まる。
そして驚きは次第に焦りに変わる。
「うおおおおっ!」
怒声と共に放たれる攻撃は勢いを増し……その隙を突くかのように猗窩座の足に向かって蹴りを放つ。
猗窩座はそんな攻撃を見逃すような真似はせず、後ろに跳んで回避し……そのまま地面に着地した足を蹴って、俺に向かって蹴りを放ってくる。
拳の一撃では埒が明かないと思ったのか、一撃で俺に大きなダメージを与える為の蹴り。
その一撃は先程の拳の連続攻撃よりも鋭い一撃ではあったが……同時に、猗窩座の動きそのものは大きくなっている。
自分の攻撃を次々に回避されたのが、猗窩座にとっても予想外だったのだろう。
「甘いな!」
正確に俺の頭部……側頭部を狙い、決まれば一撃で相手の意識を奪うどころか首の骨を折るなり、頭蓋骨を骨折してもおかしくはない一撃。
一般的な鬼殺隊の剣士でも防ぐのは難しいだろう、威力と速度を持つ蹴り。
そんな蹴りが放たれた瞬間に俺は前に出る。
ただ前に出た訳ではなく、肘の一撃を蹴りに合わせ……
ゴキ、という猗窩座の膝の関節が砕ける感触が肘を通して俺に聞こえてくる。
「ちぃっ!」
膝の関節を砕かれたというのに、猗窩座の顔には殆ど痛みを感じている様子はない。
砕かれたのではない方の足を使って後方に跳び……そうして着地した時は、既に砕けた膝の関節は治っていた。
猗窩座は高い格闘能力を持っているが、それ以上に驚くべきなのは再生能力だろう。
鬼だから高い再生能力を持っているのは十分に理解は出来るものの、猗窩座はそんな俺が予想しているよりも更に高い再生能力を持っていた。
この辺りは、上弦の参……つまり十二鬼月の中で3番目に強い実力者であるというのを示しているのだろう。
「どうした? 俺の攻撃は当たるが、猗窩座の攻撃は当たらないな」
「そうだな。それは否定出来ない。だが……アクセル、お前は鬼の力について知らない。お前程の力を持つ者であっても、人とは老いる。そして老いれば、その力は衰えていく。しかし、鬼になれば老いる必要はないのだ。素晴らしいとは思わないか?」
「いや、全く」
一切動揺した様子を見せず、そう返す。
とはいえ、それはあくまでも人である事に拘っているとか、そういう意味ではない。
そもそも人云々という話をするのなら、俺は人ではなく混沌精霊なのだから。
そんな俺が人である事に拘る筈もない。
それでも俺が鬼になるというのに魅力を感じないのは、そもそもシャドウミラーに所属している者なら、普通に不老を入手出来るからだ。
時の指輪の受信機を身に着ければ、それだけで不老となる。
勿論不老ではあっても不死ではないので、例えば回復不可能な程の傷を負った場合は死ぬ可能性も否定は出来ない。
そういう意味では、強い再生能力を持ち、高い身体能力を持つ鬼の方がいいかもしれないが……太陽の下を歩く事が出来ず、人間しか食えず、更には鬼舞辻無惨によって呪いを掛けられるという……うん、デメリットが多すぎるだろ。
再生能力は回復魔法やレモンの治療があるし、高い身体能力は魔力や気による身体強化がある。
鬼だからこそのメリットに比べるとデメリットが厳しすぎる。
あ、でも血鬼術とかはちょっと魅力的なのは間違いないな。
鬼でないと使えないから、俺達には使えないものの、個人の資質によって使える血鬼術は大きく違う。
例えば糸を自由に扱ったり、炎を操ったりといった感じで。
「何故だ! 鬼にならなければ、アクセルの類い希な力もいずれ失われる! それは分かっている筈だろう!」
「そうだな。いつかは失われると思う。ただ、それは今すぐという訳じゃない」
混沌精霊として不老の俺だが、それでも永遠に存在するというのは……恐らく、精神が保たないだろう。
100年、200年といった年数は問題がなくても、将来的にどうなるのかは分からない。
だからこそ、シャドウミラーの中で時の指輪の受信機を使っている者達も強制的ではなく、あくまでも本人の意思で使わせている。
いずれ長い時間生きるのに疲れたという者が出てくれば、時の指輪の受信機を外せば普通に年齢を重ねて老いる事は出来るだろう。
「なら!」
「だが……俺は今のままの俺で十分に満足している。……むしろ、猗窩座が俺の側に来い。そうすれば、今よりも強くなれるのは間違いないぞ」
「何……?」
俺の言葉に胡乱げな様子を見せる猗窩座。
普通に考えて、その言葉を理解出来るとは思えないしな。
だが、これは決してデタラメという訳ではない。
実際に俺の血を使って召喚魔法の契約をすれば、元の状態と比べて明らかにパワーアップするのは間違いのない事実だった。
もっとも、それは俺の血に耐えられればという前提条件があるが。
今のところ俺の血に耐えられて召喚の契約を結べたのはグリと刈り取る者だけだ。
そういう意味では、猗窩座と契約をしてみるのは面白いような気がしないでもない。
明確にモンスターだったグリと刈り取る者と違い、猗窩座は鬼だ。
そんな鬼の猗窩座が俺の血に耐えた時、一体どうなるのか。
興味を抱くなという方が無理だろう。
もっとも、そう上手くいくかどうかは、また別の話だが。
「まぁ、その件は俺に負けた後でまだ強くなりたかったら教えてやるよ」
「そのような事にはならない! 破壊殺、空式!」
その叫びと共に、猗窩座は何もない場所を殴り……次の瞬間には俺の顔を衝撃が襲う。
……が、その衝撃は身体を動かす事で回避する。
猗窩座の顔に驚愕と喜びという2つの感情が同時に浮かぶ。
今の攻撃は、言ってみれば空中を殴って衝撃を飛ばす技だ。
ただ、純粋な物理現象ではなく血鬼術である以上、普通の物理現象とは違う場所もあるのだろうが。
空中を殴った瞬間にこちらに衝撃が放たれる……いわゆる出が早い技だ。
その速度は空中を殴ったのとほぼ同時で、回避をするのは難しいだろう。
ただ、それはあくまでも普通ならの話だ。
混沌精霊の俺にとっては、この程度の攻撃は回避しようと思えば容易に出来る。
猗窩座にしてみれば、そんな俺の様子が信じられなかったのか、続けて何度も同じ攻撃を仕掛けてくるが……その全てを、俺は回避してみせる。
「どうした、もっと他の技を見せないのか? なら……そっちにばかり攻撃をさせておくのもどうかと思うし、こっちから行くぞ」
そう言った瞬間、俺は瞬動を使って猗窩座のすぐ横にまで移動すると、先程の猗窩座がやったように蹴りを放つ。
ただし、俺の一撃はもしかしたら普通に鬼を殺すかもしれないので、首や頭部ではなく腕を狙っての一撃だったが。
そして、そのついでにちょっとした仕掛けをする為に空間倉庫からとある物を取り出し、使う。
以前の鬼がゲイ・ボルクで死んだ事を考えると、魔力を使った一撃は効果的なのは間違いない。
実際に美砂や円、凛といった面々からも魔法や魔術を使って鬼を殺したという話を聞いているし。
そう考えれば、やはり蹴りを首に当てるのは止めておいた方がいい。
俺の身体は一見すると普通の身体のように見えるものの、実際には白炎で出来ている。
そして白炎は俺の魔力そのものと言ってもいい。
つまり……もしかしたら、俺が殴って頭部を粉砕するといったような真似をした場合、鬼は死ぬ可能性がある。
猗窩座はどこかムラタに似ているという事もあってか、どこか嫌悪感の類はない。
いやまぁ、上弦の参ともなれば鬼の中でもトップクラスの存在で、それだけに多数の人を喰い殺しているのだろうが……それでも、不思議と嫌悪感の類は少なかった。
……それでも今の一撃で間違いなく腕の骨は粉砕骨折したのが、感触から分かったが。
「ぐおおおっ!」
蹴りによって腕の骨を折られながら吹き飛ばされた猗窩座。
悲鳴というか驚きの声を上げながら空中でバランスを整えてて地面に着地し……その瞬間には、既に腕の骨折は治ってしまったらしい。
「やるな、アクセル! 今の攻撃はかなり強力だったぞ! だが、それだけに惜しい! アクセル程の才能があれば、至高の領域に届く事も出来るだろうに!」
「そう言われてもな。今の俺とお前の状態を考えてみろ。お前の攻撃は俺に命中せず、俺の攻撃は次から次にお前に当たっている。それを思えば、それこそ俺が既に至高の領域とやらに届いている事の証にならないか?」
「ははは、それはどうだろうな! なら、俺を倒してみせることで、それを証明してみるといい!」
叫ぶと、再び猗窩座は俺の方に向かって突っ込んでくる。
「破壊殺、鬼芯八重芯!」
その言葉と共に放たれるのは、左右合計4発の攻撃。
言葉だけで表せばそれだけの単純な攻撃だが、鬼特有の高い身体能力と、長年の訓練の成果が結集した時、それはほぼ同時に放たれる4発の攻撃となる。
佐々木小次郎のツバメ返しに似て非なる技。
だが、同時に近いとはいえ、その攻撃はあくまでも時間差があるのも事実。
そして時間差がある以上、俺に対応出来ない筈もない。
「ぐおっ!」
吹き飛ぶ猗窩座。
何をやったのかと言えば、単純に猗窩座の放った4発の攻撃全てにカウンターを放っただけだ。
言ってみれば、鬼芯八重芯とやらを俺もやったという事になるのか。
「な……何だと……」
さすがにこれは猗窩座にとっても予想外の攻撃だったのだろう。
驚きの表情を浮かべたまま、俺の方に視線を向けてくる。
そして当然のように、猗窩座の身体からは俺がカウンターとして放った一撃の傷は既に癒えていた。
これは……分かっていたけど、延々と勝負がつかないな。
いやまぁ、本当に勝負をつける気になれば、それこそゲイ・ボルクを使うなり、白炎を使うなり、もしくはニーズヘッグを出すといった手段もある。
しかし、俺はあくまでも生身で猗窩座と戦うと決めている以上、それを破るつもりはない。
猗窩座の方から何か妙な動きをしたりすれば、また話は別だったが。
「どうやら驚いて貰えたようだな。しかし、今の一撃はかなり感心したぞ。ただ鬼の高い身体能力に任せて攻撃をするのではなく、きちんと訓練を重ねたからこその動きだ。……血鬼術の影響も多少はあるのかもしれないが」
「なるほど。なら……ちぃっ」
俺の言葉に何かを言おうとした猗窩座だったが、不意に舌打ちをする。
心底残念そうな、悔しそうな、そんな感情が込められた舌打ち。
一体何があったんだ? と思って俺から逸れている猗窩座の視線を追うと……そこには、朝日が昇りかけている光景があった。
鬼が太陽を弱点としている以上、これは仕方がないか。
「どうやらタイムアップ……いや、時間切れのようだな」
タイムアップと言い、この世界が大正時代であった事を思い出して言い換える。
まぁ、それなりに外国との付き合いもある以上、タイムアップという言葉を理解出来てもおかしくはなかったが。
「そうだな。俺はもう少しアクセルとの戦いを楽しみたかった。そうすれば、俺も至高の領域により近づけた筈だ」
「お前が来るのが遅いのが悪い。……汽車を追ってきたんだから、それは仕方がないが。とにかく、この勝負は俺の勝ちでいいな? 賞品を貰おうか」
「ふん。約束を破るような真似はしない。これが血だ」
そう言い、猗窩座は自分の手首を爪で切断し……その傷を俺に向けてくる。
「どうした? これがあの御方の血だ」
「……猗窩座の血じゃないのか?」
「違う。これは俺の身体の中にあったあの御方の血。信じられないなら渡さないがどうする?」
そう言う猗窩座だったが、その言葉を取り合えず信じて……俺は空間倉庫の中から試験管を取り出し、そこに血を入れるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730