耀哉の治療の第一弾が取りあえず成功したという話で、鬼滅世界にやってきてそれらを何人かに話していたのだが……
「アクセルさん! ちょっと来て下さい!」
産屋敷家の一室で休憩していると、不意に部屋の中に入ってきた輝利哉がそう叫ぶ。
輝利哉の表情がかなり必死そうな様子で、何かあったのは間違いない。
問題なのは、それが一体何なのかだが……この世界で輝利哉がこのような様子であるのを考えると、何となく予想は出来る。
「鬼が出たのか」
そう、ここは鬼滅世界である以上、何らかの問題が起きるとすれば鬼であるのは間違いない。
とはいえ、その辺の雑魚鬼であれば輝利哉がここまで必死になる事はないだろう。
そうなると十二鬼月が出て来たのか、あるいは天元が調べているという遊郭の一件で話が進んだのか。
そう思ったのだが、輝利哉の口から出たのは予想外の言葉だった。
「違います。いえ、鬼と言えば鬼ですが……上弦の参、猗窩座です!」
「……へぇ。レーダーに反応があったのか?」
「はい。ちょうどつい先程」
「そうか。俺がいる時にその件が明らかになるのは、大きいな」
そう言い、俺は輝利哉と共にレーダー……正確には発信器のある場所を察知する為の受信機のある場所に向かうのだった。
「この辺りか」
俺がやって来たのは、とある山の奥。
それこそそう簡単に人が入り込んでくるようなことはない、そんな秘境とも呼ぶべき場所だ。
勿論それは今だけの話で、昭和、平成といったように時代が進めばこの辺りにも開発の手が入ってくる可能性は否定出来ないが。
そんな訳で、今はまだ秘境の地と呼ばれる場所に俺はいた。
当然のように俺がここにいるのは、猗窩座の発信器がこの辺から反応したからだ。
猗窩座は自分が強くなる為の苦労は全く気にしないタイプの鬼だ。
いや、それだけなら鬼としてはそこまでおかしな話でもないのだろうが、この場合問題なのは普通の鬼なら人を食ってそれで力を増すといったような行動をするのに対し、猗窩座は人を食うのではなく自分を鍛える事によって強くなっていくという感じか。
猗窩座と戦った時に感じたその強さは、きちんと武術の訓練を重ねた強さだ。
そうである以上、このような場所でストイックに訓練をしていてもおかしくはない。
鬼が訓練をするような場所となると、そう簡単に準備は出来ないだろう。
ましてや、鬼にとって太陽は最悪の敵だ。
洞窟のような場所があれば、太陽を気にせずに日中も訓練が出来るだろう。
まぁ、日中に鬼がどうしてるのかは分からないが。
鬼である以上、睡眠は必要ないのか。
禰豆子は普通に眠っているが、炭治郎から聞いた話によると禰豆子は睡眠によって力を回復させているらしい。
つまり、普通の鬼は人を食う事によって力を回復したりするのだが、禰豆子の場合は人を食わない代わりに眠っている。
そんな禰豆子を普通の鬼と一緒にするのはどうかと思う。
……いやまぁ、普通の鬼が日中に眠っているかどうかというのは、正直なところ今は考えても意味はない。
現在は空に月が存在する……つまり、夜なのだから。
普通なら夜の山というのは、明かりらしい明かりも存在せず、暗闇に包まれている。
ましてや、秘境と呼ぶべき場所の山奥なら当然の話だろう。
しかし、混沌精霊の俺にとっては暗闇であろうとも普通に周囲を見る事が出来る。
そんな状況だけに、特に木の根に躓いたりといったような真似をせずに進み続け……やがて、不自然なくらいにぽっかりと空いた広場のような場所に出る。
「待たせたか?」
「そうでもない。アクセルがここにやって来たのは、気配で分かっていたからな。またあの至高の領域での戦いを経験出来るかと思えば、多少待つくらいは問題ない」
その広場のような場所……恐らく猗窩座が訓練をする為に作ったその場所で俺を待っていたのは、当然のように猗窩座だ。
以前遭遇した時と同じく、身体中に入れ墨のような模様が存在しており、その身体からは闘気……もしくは鬼気とでも呼ぶべきものが噴出していた。
多分、ここに来るまでに動物の類と遭遇しなかったのは、猗窩座の発するこの鬼気によって動物達がこの近辺から逃げ出したのだろう。
「そうか。……てっきりどうやって自分の場所が分かったとか、そんな風に聞かれるのかと思ったが」
「それが気にならないと言えば嘘になる。だが……今この時、アクセルが目の前にいる状況でそのような些事を気にしたくはない」
猗窩座にしてみれば、自分がどうやって見つかったのかといったような事よりも、俺と戦えることの方が嬉しいのだろう。
というか、この様子だと猗窩座に発信器の事について教えても多分それで怒ったりはしなさそうだな。
寧ろそれがあればいつでも俺と戦えると思って、それで喜びすらしてもおかしくはない。
強さを求める猗窩座、か。
やっぱりただ勝つだけじゃなくて、何度も戦って絶対に俺には勝てないといったように教え込んで、一度心を折る必要があるか。
そうなれば俺の話にも耳を貸すようになるだろうし、俺の血を受け取って召喚の契約を結ぶといった事になってもおかしくはない。
「喜んで貰えて何よりだ。……さて、そんな訳でこれから俺は猗窩座と戦う訳だが、ただ戦うだけではあまり面白くない。前回のように、賭けをしないか?」
「賭け? ……また血が欲しいのか?」
へぇ、どうやら猗窩座のこの様子を見ると、以前俺に渡してから新たに鬼舞辻無惨の血を貰ったらしい。
鬼舞辻無惨の血は炭治郎が必要であったり、技術班の方でも必要であったりと、あればあっただけいい。
本来なら俺が勝利したら素直に俺の血を飲んで召喚の契約を結べといったように言いたいんだが、それについては猗窩座の心を折ってからの方がいい。
「ああ、それでいい。俺がお前に勝ったら鬼舞辻無惨の血を貰う。それでお前が勝ったらどうするんだ?」
「決まっている。アクセル、お前には鬼になって貰う」
「お前が持っている鬼舞辻無惨の血を飲むというのなら、それを受け入れる。だが……こうして提案しておいて何だが、前回の件は問題なかったのか?」
「……さてな」
数秒の沈黙。
それが猗窩座が鬼舞辻無惨にどのような事をされたのかを示していた。
鬼舞辻無惨の血には鬼の全てが入っている。
それを思えば、鬼舞辻無惨の気持ちも分からないではないが。
ぶっちゃけた話、もし俺が鬼舞辻無惨の血を飲んでも鬼になるとは思わないんだよな。
寧ろ俺の身体に鬼舞辻無惨の血が完全に吸収される気がする。
そんな鬼舞辻無惨の血で、俺の身体に何か影響があるのかを考えれば、正直微妙なのだが。
俺の言葉を聞いた猗窩座は、俺の言葉の意味をしっかり理解しているとは思えないが、やがて頷く。
「いいだろう。それで構わない。……だが、俺に勝った時の条件は本当にそれでいいのか?」
「ああ。賭けの結果で無理にお前を従わせても、意味はないしな」
あるいは鵬法璽を使えば、その辺もどうにかなるかもしれないが。
「いいだろう。……破壊殺、羅針!」
俺に向かって構えながら叫んだその言葉と共に、以前猗窩座と戦った時と同様の魔法陣に似た何かが展開される。
これは以前の戦いの時の事を思えば、何となく想像出来る。
多分この魔法陣の中に入れば、それをいち早く察知出来るというものなのだろう。
鬼としての高い身体能力を持ち、武術の訓練も欠かしていない猗窩座にしてみれば、これはある意味で最強の防御方法でもある。
しかし……それは、あくまでも普通の敵を相手にしている時だけの話だ。
「準備は出来たみたいだな。……行くぞ」
呟き、一気に前に出る。
それを見た猗窩座は、俺が動くよりも前に地面を蹴って間合いを詰めてくる。
てっきり血鬼術……破壊殺だったか? それを使った技を使ってくるのかと思っていたのだが、最初は純粋に武術の腕を競い合いたいらしい。
その辺の鬼とは違い、力任せではなくきちんと武術の理を活かしたうえでの一撃。
鬼となって高まった身体能力と武術の融合。
そういう意味では、猗窩座は鬼として一種の到達点にいるのだろう。
そんな猗窩座でも上弦の参という事は、上にいるもう二人の鬼は猗窩座よりも更に強いのだろうと考えつつ、次々に放たれる猗窩座の攻撃を回避し……その中の一撃に、カウンターを放つ。
血鬼術でそれを察したのか、カウンターの一撃を回避しつつ、それに対して更にカウンターの一撃を放つ猗窩座。
俺の頭部に向かってくる拳の一撃を、顔を動かすことで回避して膝蹴りを放つも、その瞬間には既に俺から距離を取っていた。
へぇ……以前戦ってから、まだそんなに時間は経っていない。
だが、猗窩座はその短時間で間違いなく以前よりも強くなっていた。
一体どのような訓練をしたのかが気になるな。
「少し本気を出すぞ」
距離を取った猗窩座に向け、そう宣言する。
その言葉を聞き、猗窩座の顔が厳しく引き締まる。……引き締まりながらも、その口には獰猛な笑みが浮かんでいた。
猗窩座にしてみれば、俺との戦いはそこまで楽しいものなのだろう。
俺としても猗窩座との戦いはそれなりに楽しめるが、それはあくまでも俺が猗窩座に合わせた力しか使っていない為だ。
ゲイ・ボルクは勿論の事、炎獣であったり操影術であったり。
瞬動を使い、猗窩座の真横に移動する。
だが、瞬動は以前にも経験している為だろう。
猗窩座は俺の一撃に反応し……だが、先程の仕返しとばかりに放たれた拳が猗窩座の頭部に叩き込まれ、吹き飛ぶ。
「ぐおっ!」
それでも地面に倒れず、何とか足から着地した辺りはさすがだろう。
そんな猗窩座に向かい……
「お前が血鬼術を使っている以上、俺も奥の手を一つ出させて貰おう。運が悪ければ死ぬかもしれないが……耐えてみせろよ?」
「っ!?」
体勢を立て直した猗窩座だったが、俺のその言葉に何かを感じたのか、即座に地面を蹴ってその場から移動する。
へぇ、判断が素早い。
俺の言動から感じたのか、もしくは武術家としての勘か。
それは分からなかったが……それでも回避をすることは出来ない。
鬼眼。
それが俺の発動したスキルだ。
相手に対してランダムで状態異常を与えるスキルだ。
ランダムであるが故に、俺でさえ何らかの狙った効果を発揮するような真似は出来ない。
それこそ、状態異常だけに下手をしたら見ただけで殺すといったような事になってもおかしくはない。
「ぐ……」
鬼眼によって見られた猗窩座は、即座に効果が発揮したらしく呻き声を上げる、
さて、一体どんな効果が発揮された?
即死したり石化したりといったような事はないみたいだが。
「一体……何をした!?」
叫び、猗窩座の拳は空中を貫く。
それもまるでそこに俺がいると思われるようにだ。
これは、幻覚か?
いや、だが猗窩座の様子からすると幻覚ではないようにも思えるが。
「お前が一体どんな状態異常になっているのかは、俺にも正直なところ分からない。だが、猗窩座も血鬼術を使ってるんだ。それなら、俺も鬼眼を使うくらいはいいだろう?」
「そこか!」
俺の言葉が聞こえたのか、猗窩座は一気に俺との間合いを詰めて拳を振るってくる。
その拳の一撃を回避し、胴体にカウンターの一撃を食らわせて吹き飛ばす。
今のやり取りで、猗窩座がどんな状態異常になったのかを理解した。
これは幻覚ではなく、盲目か。
行冥や耀哉の件を思えば、これはある意味で当然の結果だったのかもしれないな。
とはいえ、久しぶりに……本当に久しぶりに鬼眼を使ったな。
最後に使ったのは……いつだった? マブラヴ世界でBETAに使った時か?
そんな風に考えていると、猗窩座もようやく盲目になった混乱から立ち直ったのか、周囲の様子を注意深く確認する。
あの羅針とかいうのがあれば、周囲の様子を把握する事が出来る。
そう考えると、盲目であっても行冥や耀哉と比べるとマシなのは事実だろう。
それに鬼眼の状態異常は、一生って訳じゃない。
いや、種類によっては一生のものもあるのだが、この盲目は時間経過で治ると何故か理解出来た。
それでも盲目の状態からすぐに立ち直った猗窩座はさすがと言うべきか。
「さて、そろそろ盲目にも慣れたか? ああ、安心しろ。多分だが、その盲目状態はある程度時間が経過すれば治る。……で、どうする? 目が見えなくなったって事で負けを認めるか?」
「まだだ! まだこの程度では終わらん!」
目が見えない状態であるにも関わらず、猗窩座はまだ諦めない。
猗窩座の血鬼術があれば、それで対処出来るかもしれないと、そう思っているのだろう。
実際、羅針とかいう血鬼術を使えば気配とかそういうのを察知するといった真似も出来そうだし。
だが……目の見える状態で羅針とやらを使っていても、俺の攻撃を回避することは出来なかったのだ。
そうである以上、今の状況ではそのような真似を出来る筈もない。
あるいは視界がなくなったせいで他の五感が鋭くなり、その結果として俺の攻撃に対処出来るようになる……といった可能性も否定は出来ないが。
いや、出来ないというよりは猗窩座の能力を考えればそのような真似は出来ておかしくはない。
ただし、それは今すぐに出来るのではなく、あくまでも長い時間を掛けての事だ。
そうである以上、ここからは一方的に俺の攻撃になる筈だった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730