「アクセル!」
耀哉はそう言い、俺の方を見てくる。
……いや、正確には俺の方ではなく、俺をだ。
以前は盲目だったので、声のした方に視線を向けていた。
その為に微妙に声を発した相手から視線が逸れていたりしたのだが、今の耀哉は移植された義眼でしっかりとこっちの方を見ていた。
「移植された義眼は問題なく機能しているようだな」
「ああ。まさかまた自分の目で直接見る事が出来るようになるというのは、驚きだったよ。……それにしても、アクセルはそういう顔をしていたんだね」
今まで何度も会話をしていた耀哉に、こんな風に初めて顔を見られるといったような事になったのは、正直なところちょっと不思議な感じがする。
「こういう顔なのは間違いないな。……で、これからリハビリ……義眼の使い方に慣れるのか。頑張れよ」
「勿論。出来るだけ早く義眼を使いこなせるようになって、鬼滅世界に戻る必要があるからね」
義眼とはいえ、シャドウミラー製の義眼だ。
当然ながら、見ただけでは普通の眼にしか見えない。
その辺は行冥も変わらなかったので、特に驚くようなことではないのだが。
「そうだな。現在鬼滅世界ではあの汽車の件から色々と動きがある。それを考えると、出来るだけ早く戻った方がいいと思うぞ」
そう言い、耀哉を発奮させる為にということで鬼滅世界の情報を1つ話す事にする。
「神鳴流の剣士の1人が、奇妙な壺を見つけたらしい」
「……壺?」
「ああ。何でも鬼の気配がする壺だとか」
鬼の気配がする壺という言葉に、耀哉の表情は真剣なものになる。
耀哉にしてみれば、その言葉は決して聞き逃せるものではなかったのだろう。
「それで、その壺は?」
「神鳴流の剣士が回収してきた。で、問題なのはその壺を売ったのがとある貿易商という事らしい。そんな訳で、現在鬼殺隊は隠を動員してその貿易商を調べているらしい」
「それは……息子の、輝利哉の指示かい?」
「そうだ。輝利哉にとっても、この件については調べる必要があると考えたんだろう。何しろ貿易だ。下手をすれば、鬼が海外にまで行くといった可能性も否定は出来ない」
鬼が海外に行ってどうするのかというのもあるが、俺が知る限りでは海外には鬼殺隊のような組織は存在しない。
つまり、鬼殺隊のいる日本を脱出することが出来た鬼は海外で好き放題出来るのだ。
勿論、海外には海外で鬼……というか、妖怪、もしくはモンスターか? そういうのを退治する組織の類があってもおかしくはないのだが。
それでも鬼殺隊のいる日本にいるよりは好き放題に人を食えるのは間違いない。
「鬼がどこまでを考えているのかは分からない。しかし、その話を聞く限りではかなり頭のいい鬼……十二鬼月が関わっている可能性が高いだろうね」
「それは俺も否定しない。鬼にとって今回の一件はかなり大きな意味を持つのは間違いないと思う。単純に金が欲しいという思いからの行動かもしれないが」
「とにかく、気になるのは間違いない。こうなったら、少しでも早く義眼を使いこなせるようになる必要があるだろうね」
「そうしてくれれば、俺がこうして情報を漏らした甲斐もある」
この情報によって、耀哉が少しでも早くリハビリを終えるといったようなことをやろうと思えば、話した甲斐があったな。
こうして俺からの情報により耀哉はより一層リハビリをやる気になるのだった。
「隠が何人か行方不明に?」
「はい。これで貿易商に鬼が関与してるのは間違いなくなりました」
耀哉の件を教えようと思って鬼滅世界にやって来たのだが、その件で喜んで貰えたのはともかく、次に聞いた話は俺にとっても予想外だった。
「そうなると、貿易商に鬼が関わっているのはこれで決まりか。いや、最初からそれは予想されていた話だけどな」
「はい。しかし、それでも少し予想外だったのは事実です。まさかここまで堂々と手を出してくるとは思いませんでしたから」
「考えられる可能性としては、鬼が貿易商を使ってやるべき事は全て終わったとかか? もう用件がないのなら、別にここで無理に隠れる必要もないだろうし」
貿易商として、一体何が欲しかったのか。
金? まぁ、それもあるだろう。
だが……金を入手するだけなら、それこそ銀行なり宝石店なりを襲えばどうとでもなる。
そういう強盗をする場合は夜になる以上、鬼の能力も十分に発揮出来るだろうし。
だが、鬼が選んだのは貿易商。
金を得る為に壺を売る伝手が欲しかった?
一瞬そうも思ったが、改めて考えてみればそれは色々とおかしい。
だとすれば……
「日本にはない、貿易商でしか入手出来ない何かを鬼は欲している?」
「アクセルさん?」
俺の呟きに、輝利哉は不思議そうな視線を向けてくる。
恐らくこれが耀哉なら、すぐに分かったんだろうが……跡取りの未熟さか。
「ふと疑問に思ったんだが、金が欲しいだけならどこかの店を襲うなりなんなりすればいい。そんな中で、何故貿易商だ? 壺を売る為と考えても、ちょっと疑問がないか?」
「それで、貿易商でしか入手出来ない何か、ですか?」
「ああ。とはいえ、これはあくまでも可能性だ。だが、もしそれが正しい場合、その入手したかったのだろう何かというのは、非常に大きな意味を持つと思う」
貿易商に手を回すといったような真似をしているのだから、当然ながらその辺の鬼に出来る事ではない。
つまり、十二鬼月……あるいは鬼舞辻無惨本人が関わっている可能性が高い。
そこまでしてこのようなことを行っている以上、それが実はただの趣味だからとか、そんな風に言ったりはしないだろう。
であれば、今のこの状況においては……それこそ鬼の秘密か何かに関わってくる可能性も十分にあった。
勿論、これはあくまでも俺の予想だ。
実は全く予想が外れており、誰かが趣味で金儲けをしているだけとか、壺を作った鬼が自分の壺を広めたいと思っていたり、そういう理由である可能性も否定は出来ないのだ。
「つまり、この貿易商の件は慎重に進める必要があるという事ですか?」
「どうだろうな。もう隠が見つかっている以上、鬼殺隊が関わっているのは知られているような気がする。だとすれば、半ば強引に話を進めた方がいいかもしれないな」
「強引に?」
「ああ。鬼がもう貿易商を切り捨てたのなら、最悪何らかの秘密を知っている者、あるいはそれが秘密だとは分からないままで知っている者の場合、口封じの為に殺すと思う」
「それは……」
輝利哉は俺の言葉に驚いたのか、何も言えなくなる。
俺の意見は予想外だったのだろう。
「どうする? この状況を考えると出来るだけ早く動いた方がいいと思うけどな」
その言葉に難しそうな表情を浮かべる輝利哉。
こういう時に耀哉がいれば、即座に行動するように決めるんだろうが。
それでもさすがに耀哉から次期産屋敷家当主とされている人物だけあって、やがて輝利哉は頷く。
「そう、ですね。今の状況を考えるとそうした方がいいかもしれません。出来るだけ早く行動する必要があるかもしれません」
「その件については俺も興味があるから、しっかりと協力しよう」
そう言うと、輝利哉は驚きの表情を浮かべる。
「え? いいんですか? 本当に?」
「ああ。勿論そっちが迷惑だと言うのなら、無理にとは言わないが」
「いや、そんな。もしアクセルさんが協力してくるのなら、大歓迎です。……でも、何故そこまで?」
「今回の件は色々と怪しい点がある。それに……どうせなら耀哉が戻ってくる前に輝利哉もきちんと手柄を挙げておいた方がいいだろ」
「……ありがとうございます」
深々と一礼し……そして輝利哉はすぐにでも貿易商を調べる準備を始めるのだった。
「派手に気持ち悪いな。この影のゲートって奴」
影のゲートから出て来た天元が、何とも言えない表情を浮かべる。
「そうですね。でも、便利なのは間違いないですよ?」
天元に対し、しのぶがそんな風にフォローした。……いや、これはフォローなのか?
ともあれ、今回の調査に参加する事になったのは、俺、天元、しのぶの3人。
本来なら天元は遊郭の方を調べて貰っているのだが、今はそちらは3人の妻に任せているらしい。
元忍者ということもあってか、天元にとってこういうのはかなり得意な仕事だったらしい。……まぁ、派手好きの忍者という点で正直どうかと思うが。
忍者なら忍べよと。
で、しのぶの場合は産屋敷家から一番近い場所にいる柱ということで採用された。
本来なら隠であったり、剣士とかが調べたりするのだが、柱2人を投入する辺り、輝利哉が今回の貿易商の一件をどこまで重要視しているのかを示していた。
本来なら他にも何人か連れてきてもよかったんだが。
例えば嗅覚……はともかく、聴覚の鋭い善逸なら潜入して調べるといったような時に役立つのは間違いない。
それでもこうして俺達だけになったのは、やはりそちらの方が色々と便利だからというのが大きいのだろう。
「じゃあ、それぞれ分かれて捜すか。鬼が出て来る可能性もあるけど……まぁ、この面子なら大丈夫だよな。十二鬼月が出て来たら話は別だが」
下弦はともかく、上弦……俺が戦ったのは上弦の中でも上位に入る上弦の参の猗窩座だが、正直なところ猗窩座は柱が1人で倒すのは難しいと思う。
柱2人で互角、柱3人でようやく倒せるといった感じか。
勿論戦いの相性もあるし、柱と一口に言っても戦闘力はそれぞれ大きく違う。
だから3人で倒せるというのは、あくまでも目安でしかない。
そうである以上、もしかしたらこの貿易商の会社に十二鬼月がいても、下弦の鬼なら倒せるかもしれないし、上弦でも下位の鬼なら対処は可能かもしれない。
その辺の事情を考えると、やはり十二鬼月が出て来たらここにいる3人で対処した方がいい。
「分かった。出て来たら派手に合図してやるよ」
「そのような真似をしたら、潜入してるのに見つかってしまいますよ? 私もその件については了解しました」
そうして2人が了承したのを見て、俺達はそれぞれ会社を調べ始める。
にしても、鬼滅世界が大正時代で本当に助かったよな。
これが昭和……はともかく、平成とかになれば防犯装置とかがかなり発達しているだろうし。
天元もしのぶも、柱として十分な実力を持つので、防犯装置の類があっても何か出来る可能性は十分にあったが。
そんな風にしながら、会社の中を調べていく。
調べていくのだが……貿易商だけあって色々な商品を扱っているな。
深く狭くではなく、浅く広くといった感じで商売しているらしい。
それが正しいのかどうかは、俺には分からない。
商売の仕方というのは、それこそ環境や時代によって大きく違うのだから。
ただ、壺は結構な数売れているらしい。
あの不気味な壺をそこまで欲しがる奴がいるのか?
そんな風に疑問に思うが、実際に売れて……しかもそれなりに高値で売れてるのを見ると、この世界には物好きが多いのか、それとも俺に芸術品を見る目がないのか。
ともあれ、壺の件はいいとして……うん?
書類を確認していると、何だか妙に植物の類を集めているな。
問題なのは、この集めている植物は鬼が欲しているものなのか、この貿易商が日本で商売をする為に必要なのか。
彼岸花、曼珠沙華、リコリス・ラジアータ。……この3種類の花が多いらしい。
しかもこの輸入や調査には結構な額が……青い彼岸花?
ふと書類の中でもかなり重要そうな場所に書かれているのを見つける。
青い彼岸花……青い彼岸花ね。
こうして特別に書かれているという事は、普通の彼岸花というのは青くないのだろう。
俺が知ってる彼岸花は赤い。
とはいえ、薔薇を見れば分かるように花というのは同じ種類であっても色が違うというのは珍しい話でない。
だが、それでもこうして青い彼岸花をかなり重要視してる以上……何なんだろうな。
十二鬼月や鬼舞辻無惨には、実は花を愛でる習慣があるのか。
あるいは鬼とは関係なく、貿易商としての仕事で青い彼岸花を探しているのか。
その辺りは分からないが、取りあえずこの書類は貰っていこう。
会社から書類が1枚消えると、それなりに問題になったりするような気もするが。
それでも今の状況を考えれば、この書類がなくなっても誰の仕業なのかは分からない筈だ。
まだ指紋とか、そういうので科学的な調査をしたりといった真似も出来ないし。
この部署にいる者が上から雷を落とされるかもしれないが……鬼の関わっている会社で働いていたという事で、運が悪かったと思って貰おう。
そうして青い彼岸花という、恐らく……もしかしたら……多分……きっと……そうだったらいいな……とにかく鬼にとって重要な代物っぽいのの情報を入手し、他にも何か手掛かりがないか探す。
具体的には、あの壺の作者とかが分かればいいんだが。
あの壺の作者が鬼なら、その辺の情報が残っている筈もない、か。
そんな風に思いつつ色々と調べ……だが、結局他に何か重要そうな情報なく、仕方なくそれ以上は諦めるのだった。
アクセル・アルマー
LV:44
PP:1810
格闘:309
射撃:329
技量:319
防御:319
回避:349
命中:369
SP:1995
エースボーナス:SPブースト(SPを消費してスライムの性能をアップする)
成長タイプ:万能・特殊
空:S
陸:S
海:S
宇:S
精神:加速 消費SP4
努力 消費SP8
集中 消費SP16
直撃 消費SP30
覚醒 消費SP32
愛 消費SP48
スキル:EXPアップ
SPブースト(SPアップLv.9&SP回復&集中力)
念動力 LV.11
アタッカー
ガンファイト LV.9
インファイト LV.9
気力限界突破
魔法(炎)
魔法(影)
魔法(召喚)
闇の魔法
混沌精霊
鬼眼
気配遮断A+
撃墜数:1730