藤丸立香の時計塔生活   作:佑々

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04/ある日の夢

「やはりこの部屋か。恐らくお前が死のうともここはこのまま変わることは無いのだろうな」

 

懐かしい声が聞こえた。監獄塔で出会って以来、何かと世話を焼いてくれる男の声だ。

 

「───」

「喋るな。ここは夢と現実の狭間、意識したら直ぐに消えてしまうような場所だ。ただ聞くだけでいい」

 

「まず、穏やかに死なせてやれなかったことを詫びよう。まったく花の魔術師め、生き返せたところで普通に暮らしていけるわけがないのに──いや、彼にとってはお前が魔術師であっても普通の範疇なのだろう。まあ、いい。魔術師になってしまったものは仕方がない。ロード・エルメロイII世の庇護下ならトラブルに巻き込まれることはあっても、外道に堕ちることはないだろう」

 

「さて、本題に入ろう。お前は意識していないだろうが、キャスパリーグの存在を認識することによってお前の部屋は工房と化した。縁の補強、と言うべきだろうか。ほぼ見えなくなっていた縁が今ではあちらをたどれる程に強くなっている。それによってこの部屋というごく小規模の空間のテクスチャが変化したのだろう。本来、お前にはテクスチャを張り替えるほどの力はない。だが、お前と縁を繋いでいる者達の中にはそういうことができるものもいるのだ」

 

「とはいっても、お前と英霊達が再会することは難しい。お前のマイルームの性質はあくまで既にあるものを呼び寄せるというものだ。現世に存在しているのならともかく、存在していないものを作り出すことはできない。もし、それでもなお。お前がまた英霊と肩を並べたいと思うのなら"───待て、しかして希望せよ"」

 

「っち、気づかれたか。全くお前も厄介な女に目をつけられたものだ。夢は忘れるものだと自分に関する記憶を全て消しておきながら、未練タラタラにこの世界までお前を追いかけて来ている。さて、鉢合わせる前に俺は消えるとしよう。───共犯者よ。お前が我々に行った魔術、意思の種を付与する簡易的なものであったが、そのおかげで曖昧だった俺たち()()は力こそ元に戻ってはいないものの存在を確立することができた。お前にとっては呪詛返しのためだったのだろうが、指向性を持たせるものではなくあくまで俺たちを信頼してくれた結果だ。感謝する」

 

意識がはっきりしていく。夜明けだ。目覚めの時だ。今聞いたことはほとんど忘れてしまうだろう。だが、一つだけきっと忘れないことがある。その言葉さえあればたぶんこの世界の辛いこともなんとかしていくことができるだろう。"───待て、しかして希望せよ。"

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───ずるいわ。ほとんど何も残せないこの時間で的確に必要なものを残していくなんて。ずるくて、悔しくて、殺したくなっちゃいそう。………私からもプレゼント。魔術師として生きる貴方にとってあまりいいものでは無いかもしれないけど、護身のために使ってね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「小僧、起きろ。チョコ鱈ぶつけんぞ」

 

懐かしい声で目が覚め──

 

「いったぁ!頭に!頭になにか刺さった!」

チョコ鱈(ゲイ・ボルグ・ミニ)だ。早く起きねぇからこうなるんだ。っち、面倒事に巻き込まれやがって。ふん、俺は人形に戻る。せいぜいうまい言い訳でも考えておくんだな」

 

あたりを見てみるとどこかで見たことがある光景──というかマイルームだった。まるでバレンタイン後でお返しを整理しきれていなかった時のように部屋はぐちゃぐちゃだ。

 

「ヒッポグリフのぬいぐるみに、クー・フーリンからもらった槍、アルジュナからもらった矢と、カルナから貰ったアクセサリー……」

 

その他にも宝具っぽい剣、聖なる気配がするアクセサリー、ネコ(スフィンクス)等々知られたらマズそうなものが至る所に落ちている。

 

「朝6時、ノーリッジさんが来る前に片付けないと……」

 

 

 

──片付けは寸でのところで終わり、持っていっても大丈夫そうなものは何個か持っていくことにした。ハッサンと隕鉄扇と何故か俺が念じれば消える刀、バレても大丈夫そうなやつだ。何はともあれノーリッジさんがヤバいものに気づくことは無かったと思う。ただ、またあの屈辱を味わうとは思ってもいなかったケド。




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『巌窟王 1』
夢で会ったかつてのサーヴァント。今でも見守ってくれている。
その事実だけでも俺を安心させる。

『「」 1』
─────目が覚めた時、枕元に刀が置いてあった。


───

もう1話投稿します。
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