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ハグリッドが扉を開くと、そこに立っていたのは、厳格そうな魔女だった。エメラルド色のローブを着て、背が高い。真一文字に結ばれた口は、この人に逆らってはいけないと、ロニーに告げていた。
「皆さん、私は、ホグワーツ魔法魔術学校の副校長、ミネルバマクゴナガルです。」
そう挨拶して、マクゴナガル教授は、ハグリッドに向き直り、ここからは自分に任せるようにと言った。
マクゴナガル教授が目の前の大きな扉を開いた。
扉を開けた先には大きな玄関ホールがあった。ダーズリー家の何倍か......。
一年生はマクゴナガル教授に連れられて、玄関ホールを横切り、ひときわ大きな扉の前に止まった。樫の扉も、玄関ホールに続く扉も大きかったが、この扉はそれ以上に、豪華だ。扉の向こうではガヤガヤと笑い声がする。
ロニーは高揚感とも緊張感ともいえない面持ちでロンと汽車から降りたところで仲良くなった男の子、ダン・マッキンノンを見つめた。ダンは9と4分の3番線への入り方を教えてくれた、あの男の子だ。
「ホグワーツ入学おめでとう。」
マクゴナガル教授は扉に背を向け、ロニーたちに向き直った。
「新入生の歓迎会がもう間もなく始まりますが、まず、この扉の向こうの大広間に入ったら、皆さんが入る寮を決めなくてはなりません。寮生は、皆さんがホグワーツでの寝食を共にする仲間です。グリフィンドール、ハッフルパフ、レイブンクロー、そして、スリザリン。それぞれが輝かしい歴史を持ち、数々の偉大な魔女や魔法使いを輩出してきました。ホグワーツにいる間、皆さんのよい行いに対しては、加点が付き、反対に悪い行いは減点対象となります。毎年、年度末には、一番得点を稼いだ寮に、大変名誉ある、寮杯が渡されます。さて、間もなく組分けの儀式が始まります。できるだけ身なりを整えてお待ちなさい。」
マクゴナガル先生はそう言って、扉の向こうへ消えた。
「僕、ハッフルパフに入りたいんだ。父さんがそこの寮の出身だからね。あ、でもグリフィンドールも悪くないかも。」
マクゴナガル先生が見えなくなると、ダンがそわそわと言った。
「でも、ハッフルパフは劣等生が多いって言うよ?」
ロンが言った。人のことはいえないが、少しデリカシーに欠けてる発言だとロニーは思った。ダンの口ぶりからして、彼にとって父親は憧れの存在だ。
「知ってるか?ハッフルパフの出身者で闇の魔法使いになった人間はとっても少ないんだ。」
ダンもそう思ったのか、ムッとした様子で答えた。
「ごめん。でも、僕さ、君はグリフィンドールの方がしっくりくると思うな。」
ロンが申し訳なさそうに、謝って言った。
「何で?」
ダンとロニーは声を揃えて、不思議そうに聞いた。
「だって、君はあんまり優しそうな感じがしないじゃないか。何て言うか、ギラギラしてる。」
この言葉に、ダンは失敬な、という顔をしていたが、ロニーはおかしくて吹き出しそうだった。確かにダンは、優しそうじゃないし、キラキラしてるともギラギラしてるともいえる空気を放ってる。
「君こそ、グリフィンドールがいいんじゃないか?」
ついに小さく吹き出したロニーをムッとした顔でにらみながら、ダンが言った。
今度はロンが驚く番だった。
「何でそう思うの?」
「そりゃあ、君はウィーズリーだろ?」
ダンは当たり前だというように答えた。
確かに、ロンは列車のなかで少し、寮の話をしたときも、どこでもいいと言いながら、グリフィンドールに入りたがってるみたいだった。
「そういえば、ロニーはどの寮が良いの?」
ロンがロニーを見ていった。
「うーん、私は組分けに任せる。でも、スリザリンはイヤかも。あなたの話じゃ、あんまり良くないみたいだし......。」
ロニーが珍しく、はっきりしない口調で言うと、ダンが言った。
「君はグリフィンドールじゃないの?母さんが君のお母さんの親友だったんだけど、グリフィンドールだったし。君のお父さんもそうだ。」
これははじめて聞く話だった。
父さんと母さんはグリフィンドールだったんだ。グリフィンドール......。いいかも。ロニーは顔には出さなかったが、かなりグリフィンドールを魅力的に感じていた。
「どの寮になるにしろ、同じ寮になれたらうれしいわ。」
ロニーがそう言って、ダンとロンにほほえむと、二人もそうだね、と微笑み返した。
友達を作るのって、案外簡単だわ。少し話しただけなのに、私はもう、二人のこと、友達だって思ってる。
「さあ、用意が整いました。ついてきなさい。」
マクゴナガル先生が扉も向こうから現れて、そう告げた。
マクゴナガル先生に連れられて進んだ先の大広間は、大きくて豪華だった。天井には本物の星が浮かび、何本ものろうそくがただよっている。四本の長テーブルがある。それぞれのテーブルにビロードのクロスがかかっている。真紅の地に金色の糸で刺繍されたライオン、カナリアイエローの地に黒色の穴熊、青地にブロンズの鷲......そして、緑色の地に銀色の蛇......。
新入生の姿が見えると、四つのテーブルから歓声が聞こえた。
その歓声を聞きながら、ロニーのお腹のそこに、気持ち悪い感じが戻ってきた。ダンやロンと話して、一瞬どこかへいっていたあの緊張感が百倍になって帰ってきたようだった。
大広間の一番奥につくと、椅子の上に古ぼけた帽子がおいてあった。いかにも魔法使いの帽子という感じがする。
「これ、どうするのかな?組分けに使うんだよね?」
ロニーがロンとダンを振り返って言った。
「さあ、フレッド、あ、僕の兄さんなんだけど、フレッドはトロールと取っ組み合いさせられるって言ってたけどな。もしかしたら、あそこからトロールが出てくるのかも。」
「まっさか、本気にしてないよな?」
ロニーがロンの話を聞いて、ヒッと声を上げかけたので、ダンがクスリとバカにしたように笑った。
「トロールってすっごくデカいんだ。それが大広間に現れてみろ、大変なことになるぜ?」
ロンがむっとして口を尖らせた。
「じゃあ、やっぱり、かぶるの?」
「かあさんはそんなようなことを言ってた。きみ、冗談じゃなかったの?」
ダンがロンをちらりと見て、驚いたように言った。
「かぶるだけなら簡単だし、そうだといいな。」
ロニーは帽子を見つめた。
すると、突然、帽子のふちのところが口のようにぱっくり裂けて、ぴくっと震え、歌いだした。
私はきれいじゃないけれど
人は見かけによらぬもの
私をしのぐ賢い帽子
あるなら私は身を引こう
山高帽は真っ黒だ
シルクハットはすらりと高い
わたしはホグワーツの組分け帽子
彼らの上をいくこの私
君の頭に隠れたものを
組分け帽子はお見通し
かぶれば君に教えよう
君が行くべき寮の名を
グリフィンドールに行くならば
勇気ある者が住まう寮
勇猛果敢な騎士道で
他とは違うグリフィンドール
ハッフルパフに行くならば
君は正しく忠実で
忍耐強く真実で
苦労を苦労と思わない
古き賢きレイブンクロー
君に意欲があるならば
機知と学びの友人を
ここで必ず得るだろう
スリザリンではもしかして
君はまことの友を得る
どんな手段を使っても
目的遂げる狡猾さ
かぶってごらん!恐れずに!
興奮せずに、お任せを!
君を私の手にゆだね(私は手なんかないけれど)
だって私は考える帽子!
「abc順に名前をお呼びいたしますので、呼ばれたら、前に出て、帽子をかぶってください。」
マクゴナガル先生が長い羊皮紙をまきながら、言った。
「アボット・ハンナ!」
金髪のおさげ髪の少女が転がるように前に出た。一瞬の間……。
「ハッフルパフ!」
右側のテーブルから歓声が上がり、ハンナは小走りでテーブルに着いた。
「ボーンズ・スーザン!」
「ハッフルパフ!」
「ブート・テリー!」
「レイブンクロー!」
組み分けはどんどん進んだ。帽子は、すぐに判断して叫ぶこともあれば、迷ってなかなか叫ばないこともある。汽車の中で会った女の子、ハーマイオニーグレンジャー(ネビルのカエルを探していた子で、グリフィンドールに組み分けされた)の後の、ネビルロングボトムなど、丸々十分くらいは、椅子に座っていた。心なしか、組み分け帽子のグリフィンドール!という叫びも自信なさげだった。
そして、ネビルがやっとグリフィンドールの席に着くと、次はダンだった。
「マッキンノン・ダニエル!」
ダンは小さく息を吸って、小走りで前に出た。グイっと帽子をかぶる。
「グリフィンドール!」
帽子が一瞬なやんで、すぐに叫んだ。ダンは少しだけ、二っと笑って、小走りでグリフィンドールのテーブルに着いた。
「ほら。やっぱ、僕の見込みは正しかった。」
ロンがニコニコと言った。
「マルフォイ・ドラコ!」
そういえば、ドラコとダンはイニシャルが一緒だ。
ドラコは例の高慢ちきな表情を崩さずに前に出た。それでも、ただでさえ青白い顔がなおさら青白くなっている気がする。
「スリザリン!」
帽子がドラコの頭に触れないうちに、叫んだ。どうやら、ドラコはこの結果に満足したようで、悠々とふんぞり返って、スリザリンのテーブルに向かった。
ムーン、ノット、パーキンソンにパチル姉妹、それからパークス、サリーアン……。
そして、
「ポッターハリー!」
マクゴナガル先生が呼んだ。
ハリーが前に進み出ると、広間がシーンと沈黙に包まれた。どの寮の生徒も、ハリーをじっと見つめている。
二、三分が経って……。
「スリザリン!」
帽子が声高々に叫んだ。
ハリーはニッコリ笑って、スリザリンのテーブルのドラコの横に着いた。
「ポッター・ベロニカ!」
遂にロニーの番が来た。今度は、ハリーの時と対照的なざわめき声が重い波のように広がる。
ロニーはすっと、なるべくキレイでかっこよく見えますようにと祈りながら、前に進み出た。帽子をぎゅっと握りしめてかぶる。
「グリフィンドール!」
ドラコの時と同じくらいすぐに、帽子が叫んだ。椅子から立ち上がて、大広間を見回すと、一番右の、赤いテーブルではダンやロンの双子の兄たち、フレッドとジョージが立ち上がって喜んでいる。大広間の反対側、スリザリンのテーブルでは、ドラコやハリーが残念そうにうなだれている。
ハリーは、スリザリンだ…。そして私はグリフィンドール。もともと、あんまり似てない兄弟だったんだけどね。見た目もそうだけど、何よりも性格が。
ロニーはハリーに二っと笑いかけて、小走りでグリフィンドールのテーブルに着いた。
「やっぱりな。卒業までよろしく。」
向かいの席のダンがロニーに二っと笑いかけた。
「あなたこそ。ロンの見込みは正しかったのね?」
ロニーも笑い返した。
「そうみたいだ。ハッフルパフがいいって言ったら、それでもいいけど向いてないって、帽子に止められた。じゃあどこがいいんだ?って言ったら、グリフィンドーール!って。まあ、スリザリンッ!じゃなくてよかったよ。グリフィンドールなら、母さんも喜ぶ。」
「ハリーはスリザリンよ?まあ、もともと私たち、全然似てない兄弟だったんだけど。」
ロニーが眉毛をキュッと上げていった。
「やあ、特急で会ったな。」
フレッドかジョージ……とにかく、ロンの双子のお兄さんの一人が斜め前の席から身を乗り出して握手を求めた。
「きみの弟……兄?いや、どっちでもいいけど、とにかくハリーポッターがスリザリンだなんてな。驚き桃ノ木。」
今度は双子の片割れがむすっとして言った。
すると、三つむこうの席から、角ぶち眼鏡をかけた赤毛が身の乗り出した。
「フレッド、スリザリンだからって、何でもかんでも悪いと決めつけるのは良くない。事実、コーネリウスファッジ魔法大臣は、スリザリン出身だ。」
「それ、『現代魔法社会』で読んだわ。」
栗色のぼさぼさ頭の女の子、ハーマイオニーがロニーの隣で言った。
「あなた、ハーマイオニーでよ?汽車の中で会ったね。ロン、カンカンに怒ってたわよ。」
ロニーが面白そうに言った。
「何しでかしたんだ?」
ダンがニヤニヤとハーマイオニーを見た。
「簡単に言うと、公衆の面前で、初恋の相手がテディベアだってばらすのと同じくらい、屈辱的な仕打ちをね。」
「ほんとのことを言っただけよ。」
「そりゃ確かに、初恋の相手をばらすのだって、嘘はついてないからな。」
ハーマイオニーがすまして言うと、ダンが水を差した。
「でも実際、偶然にもあいつの初恋はテディベアのマダムルーシだぜ。」
今度はジョージだ。
すると、いきなりフレッドがむせこんで、悲壮感たっぷりに言った。
「マジかよ?俺、アクロタマンチュラに変えちゃた。あいつの……レイディ・ル、ルーシーを!」
「八歳の時だ。」
ジョージが合の手を入れる。
「ところで、ロナルド坊ちゃんと言えば、組み分けだ。懸けるか?無事、このテーブルに着くことができるかどうか。」
さっきのあの表情はどこへやら、フレッドがにやっと笑った。
「ロン、グリフィンドールに来るかな?」
ロニーがダンに聞いた。
「ロンはグリフィンドールだよ。なんたって、ウィーズリー家の一員だ。」
ダンの代わりに、角ぶち眼鏡の青年が答えた。よく見ると、ロンによく似ている。眼鏡をとったらそっくりだ。
「分かんねえぞ、パーシー。事実、ジニーなんて、危ないぜ。スリザリンかもしれない。」
「ウィーズリー・ロナルド!」
マクゴナガル先生が威厳たっぷりにロンを呼んだ。生徒はあと、ロンを入れても二人しか残っていない。
「それ来た。耳が真っ赤だ。」
ロンはがくがくと震えながら、前に出て帽子をかぶった。
「グリフィンドール!」
ロンは嬉しそうに、本当にうれしそうに笑って、グリフィンドールのダンの横に座った。
「卒業までよろしく!」
「どうぞよろしく。」
ロンの次に呼ばれた男の子、(ザビ二・ブレース!)はスリザリンだった。
「さて、あとはジニーか。」
組み分けが終わって、椅子を片付けているマクゴナガル先生を見ながら、ジョージが言った。
ロニーは空っぽの大皿を眺めた。おなか、ペコペコだ。
教職員テーブルの真ん中で、ダンブルドアが立ち上がった。
腕を大きく広げ、この上ない幸せ、というように笑った。
「おめでとう!ホグワーツの新入生、おめでとう!歓迎会を始める前に、二言三言言わせていただきたい。では、行きますぞ。そーれ!わっしょい!こらしょい!どっこらしょい!以上!」
ダンブルドアはもう一度ニッコリ笑って席に着いた。
「あの人、変な人だね。」
ロンが斜め前から身を乗り出した。
「でも、なかなかよくまとまってて、素敵なスピーチだったよ?好きなくとも、短かったもの。」
ロニーが肩をすくめた。
「まったくだ。ほら見ろよ。このごちそうに比べりゃ、どんないい話も、ダル・ニッケルのブクブクキャンディと同じくらい価値のないもんだぜ?」
ロニーがダンに言われて目の前の大皿を見ると、おいしそうなステーキキドニーパイが盛られていた。
「ワーオ。」
まったく、ダンの言うとおりだ。ダル・ニッケルのキャンディがどれほどヒドイのか、ロニーは知らないが、少なくとも、あの、ダドリーが食欲を失うほどにはヒドイに違いない。
すごいごちそうだ。テーブルの上の大皿はローストビーフ、ローストチキン、ポークチョップ、ラムチョップ、ソーセージ、ベーコン、ステーキ、ゆでたポテト……ほかにもたくさん。ダーズリー家にいたのでは、見ることもできなかっただろう。
ロニーは、どれも少しずつ皿にとって、一口一口味わって食べた。向かいのテーブルでは、ダンとロンが、どちらがベイクドポテトの山を早く平らげることができるか、競争している。
「おいしそうですね。」
ロニーが骨付きラム肉をどうにかして食べやすいサイズに切ろうとしていると、ひだ襟服のゴーストが悲しげに言った。
「食べればいいのに。ゴーストは食べちゃいけないの?」
ロニーが一旦、ラム肉を何とかすることをあきらめて、ゴーストの悲しげな眼を見つめ返した。
「ゴーストというのは、食事ができないんです。する必要もありませんがね。かれこれ、500年食べておりません。もっとも、正確には499年ですが。ああ、まだ自己紹介をしてませんでした。ニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿でございます。以後お見知りおきを。」
ニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿は礼儀正しくお辞儀した。
「僕、君のこと知ってる!ほとんど首なしニックだ!兄さんたちがいってたよ!」
ダンとの、ベイクドポテト早食い対決に大差をつけて勝利したロンが目を輝かせて叫んだ。
「どうひ……て、ほどんど、ふびなひ……になれう、の?」
ダンがポテトで口をいっぱいにしながら聞いた。
「呼んでいただくのであれば、むしろニコラス・ド・ミムジー・ポーピントン卿と……。」
「ねえどうして?」
黄土色の髪の少年、シェーマスフィネガンが割り込んできた。
ニックは、自分の思った通りに会話が進まないので、ひどく気に障ったようだ。
「ほら、この通り。」
ニックが自分の左耳をつかんで、思い切り引っ張った。
首が蝶番のように開き、ぐらりと落ちた。誰かが、首を斬り損ねてしくじったらしい。
「打ち首?何やらかしたの?」
ロンが聞いた。
ハーマイオニーが隣でなんて無神経な!という表情をした。
ほとんど首なしニックは一瞬、顔を半透明にして、怒りの声をあげたが、すぐに元に戻って、話題を変えた。
「とにかく、今年こそは両杯を我がグリフィンドールの手に。この六年間、血みどろ男爵は鼻持ちならない状態ですぞ。六年連続、スリザリンが寮杯をとっていますからな。」
皆が一斉にスリザリンのテーブルを見た。血みどろ男爵はドラコとハリーの間に座っているゴーストだろと思った。虚ろな目、げっそりした顔、衣服は血でべっとりと汚れている。ハリーもドラコも居心地悪そうにもごもごと動いていた。
「なんで、血みどろになったの?」
シェーマスが興味津々で聞いた。
「かれこれ、500年の付き合いですが……聞いてみたこともありませんな。」
ニックが言葉を濁した。
「友を恐れるなんて、ひどい。」
ロニーが面白そうに言った。
今度こそニックは気を悪くしたようだ。ふわふわとテーブルの反対側に漂っていった。
全員がおなかいっぱいになったところで、食べ物は消え去り、デザートが現れた。ロニーはいつもの百倍の量の夕食を食べた後だったので、デザートを流し込む余裕など全くなかったが、それでも何とか、全種類のデザートを小さじ一杯分ずつ食べた。
ロニーがアップルパイを一切れ食べていると、家族の話になった。
「僕はハーフなんだ。ママは魔女で、パパはマグル。結婚するまで、ママは自分が魔女だって言わなかったみたい。パパはずいぶんどっきりしたって。」
シェーマスが言って、みんなが笑った。
「僕は自分でも、分かんないんんだ。ちっちゃいころに父さんが家を出てっちゃって。母さんはマグルだから、多分マグル生まれなんだけど……。」
シェーマスの横の男の子が言った。ディーントーマスだ。
「じゃあ、母子家庭なんだ。俺と一緒!」
ダンが笑って、ディーンとグータッチした。てっきり、憧れの父親だと思ったのに。
「兄弟はどうなの?」
インド系の女の子、パーバティ・パチルが聞いた。
「お兄ちゃんがいたんだけど、父さんと一緒に行っちゃったからな。あんまり覚えてない。」
ダンが肩をすくめて答えた。
「僕は、小さい妹がいるけど、まだ、魔女らしいことは全然。そういうのって、いつごろ分かるの?」
ディーンの問いかけにはネビルが答えた。
「僕は八歳くらいまで、知らなかったんだ。みんな、僕のこと、スクイブだと思ってた。アルジー大叔父さんなんか、なんとか、僕から魔力を引き出そうって、溺れさせたりとか、三階の窓からぶら下げたりしたもん。それで、十七回目に叔父さんが窓から僕をぶら下げたとき、叔父さん、うっかり手を離しちゃったんだ。僕はまっ逆さまに落ちたんだけど、マリみたいにぐーんって弾んだんだ。もう、みんな大喜びでさ、ヒキガエルを買ってくれた。」
テーブルの向こう側では、ハーマイオニーが一人、パーシーと話していた。
「ホントに待ちきれないわ!特に変心術に興味があるの、私。すごく難しいっていうけど......。」
「はじめはほら......、簡単なものから始めるんだ。マッチ帽を針に変えるとか。」
パーシーが答えた。
教職員のテーブルでは、鍵鼻のむっつりした先生と、奇妙なターバンのクィレル先生が話していた。
ロニーは、二人を眺めた。
そして......一瞬、本の一瞬、鍵鼻の先生と目があった気がした。一瞬で目を逸らされてしまったから分からないが、ロニーは、その目が自分の目を見て、大嫌いだといっている気がした。バーノンおじさんの小さな目よりも強烈に。
「エヘン、皆よく食べ、皆よく飲んだことじゃろうから、また、二言三言。新学期を迎えるにあたり、いくつかお知らせがある。一年生、構内の禁じられた森は禁じられておる。立ち入り禁止じゃ。上級生の何人かにも、改めて注意しておこう。」
ダンブルドアの青い目がキラッと輝いた。
「管理人のフィルチさんからお知らせじゃ。ろうかでの魔法の使用は禁止出そうじゃ。今学期のクィッディチのの予選は二週目じゃ。参加したい人は、マダムフーチに連絡すること。」
ダンブルドアはぐるりと広間を見回した。
「そして最後に、一番大切なお知らせじゃ。今年一杯、とてもいたい死に方をしたいもの以外、四回階の右側のろうかには立ち入らぬよう。」
目の前でダンが笑った。
「ほんとだと思う?何があるのかな?」
ロニーが目を輝かせた。
「では、寝る前に校歌を歌うとしようぞ!」
ダンブルドアが声を張り上げた。
ダンブルドアが杖を降ると、金色のリボンが流れ出て、校歌の歌詞を示した。
「みんな自分の好きなメロディーに!」
ホグワーツ ホグワーツ
ホグホグ ワツワツ ホグワーツ
教えて どうぞ 僕たちに
老いても ハゲても 青二才でも
頭にゃ何とか詰め込める
おもしろいものを詰め込める
今はからっぽ 空気詰め
死んだハエやら がらくた詰め
教えて 価値のあるものを
教えて 忘れてしまったものを
ベストをつくせば あとはお任せ
学べよ脳みそ 腐るまで
みんなバラバラに歌い上げた。双子のウィーズリーが最後に残った。ダンブルドアは杖を指揮のように振っていたし、ロニー、ダン、ロンはコーラスとして加わった。
「音楽とはなんと素晴らしい魔法じゃ!」
ダンブルドアが感動の涙をぬぐいながら言った。
「さあ、諸君、就寝時間。駆け足!」
グリフィンドールの一年生は、パーシーに連れられて、ザワザワとしたなかを、進んだ。
歩きながら眠たくなってきた。あとどのくらいで着くのだろう......?そう思ったとき、突然パーシーの足が止まった。一枚の太った女性の絵の前で、滑稽なゴーストがとおせんぼをしている。
「何で止まったの?」
ラベンダーブラウンがあくび混じりに聞いた。
「ピーブスだ。」
パーシーが苦々しげに言って、声を張り上げた。
「ピーブス‼️血みどろ男爵を呼んでも良いのか?」
すると、ピービスが渋々どこかへ消えていった。
「このフレーズは役につ。ピーブスがおそれるのは、血みどろ男爵だけだからね。」
パーシーが威厳たっぷりに言った。
「合言葉は?」
太った女性の絵がいきなりいった。
「カプート・ドラコニス!」
パーシーがそう答えると、肖像画がぱっくり空いた。つくづく、魔法ってすごいと思う。
肖像画が隠していた穴を抜けると、居心地の良さそうな談話室だった。
ロニーは正直、その場で寝てしまいたかったが、何とかパーシーじゃない方の監督生に連れられて女子寮にたどり着いた。
ベットはふかふかだ。
ロニーはそのまま、眠りに落ちた。
明日、起きてみたら全部幻だった......。そんなことになったらどうしようと、ロニーは夢の中でも不安だった。
しかし、翌朝起きてみると、ちゃんとベッドはふかふかで、昨日と変わらず、居心地の良い場所だった。
ロニー以外は変えたくないといっておきながら、一人、オリジナルキャラクターが!
最後まで読んでいただいて......ホントにありがとうございます。