夏祭り。夜店。屋台。
智代子さんからお借りした少女漫画の中でも、想い合う二人が行くことの多い場所。
一度、行ってみたいと思ってはいましたが……
「お、ここの神社、お祭りやってるみたいだな。夜店も色々出てるな……凛世、ちょっと寄ってみないか?」
まさか、こんなに早く、しかもプロデューサーさまに伴われて。
「はい……凛世も、一度行ってみたいと、思っておりました」
大勢の人々で賑わう境内。でも……プロデューサーさまにご一緒頂けるのなら、何も……怖くは、ありません。
「凛世、何か気になるものはあるか?」
「あちらに……りんご飴、というものが……」
色彩に溢れる神社の中、一際に目を引く、まあるい深紅。提灯の灯りに浮かび上がって、引き寄せる、緋色。
「りんご飴かー、懐かしいな!」
「プロデューサーさまは、お食べになったことが……?」
「子どもの頃は、夜店を見つけたら絶対食べてたな」
「お気に入り、なのですね」
「うん、なんか食べちゃうんだよな。……すみません、りんご飴、ふたつください」
「お待たせしましたー、りんご飴ふたつですー」
「はいどうも。ほら凛世、ちょっと重いから気を付けてな」
「ありがとう、ございます」
受け取ったりんご飴は、プロデューサーさまが仰る通りに、少し、重くて。
「……とても、綺麗ですね……」
そしてそれ以上に、紅玉のように、きらきらと、眩しくて。
「これは、ほんとうに……食べられるのでしょうか」
「あはは。確かにそう見えるかもなー」
そう言ってりんご飴を舐めるプロデューサーさまは、子どものような笑顔。
「……本当に、お好きなのですね」
「うん。……多分、思い出補正もあると思うけどね」
……思い出、補正?
「プロデューサーさまの思い出が……りんご飴を、おいしくしているのですか……?」
そんなことが、あるのでしょうか?
「きっと、ね。もちろんりんご飴自体の味も好きだけど、子どもの頃にお祭りに行って、りんご飴買ってもらって、花火を見て……楽しい思い出が、脳裏に蘇って来るんだよな」
「なるほど……」
食べ物の味を変えてしまうような、素敵な思い出。それはきっと、プロデューサーさまにとって、とても大切で、綺麗で、楽しくて、かけがえのないものなのでしょう。
「プロデューサーさま……」
「ん、なんだ?」
それならば、きっと。
「凛世も……好きになると、思います……りんご飴」
凛世も、そのような思い出を得ることが出来ました。
「そうか、それはよかった。……事務所に帰ろうか、凛世」
「はい、プロデューサーさま」
そして、願わくば。
明日からも、そんな日々が、続きますように。