ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について   作:笛ふき用

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閑話 勇者アレルの末裔アルス王子、伝説の戦いを垣間見る

 これは勇者アレルの時代からおよそ百年余年の時が経った頃のお話。

 

 アレルから数えて六代目、七歳になったカ―メン王国王子のアルスはアレルの時代バラモス城と呼ばれた城の跡地に建てられた城であり、彼が生まれ育ったカ―メン城にてとある儀式に臨もうとしていた。

 

 守役兼教育係のカ―メン王国の元神官長タルキンと、同じく守役兼護衛兼剣指南役である騎士団長の娘ルナフレアに連れられて、今まで足を踏み入れることが許されなかった城の最深部への階段を地下へと進む。

 

「ねぇ、老師様。これから僕は何をすればいいの?」

 

 少年らしいまっすぐな瞳で前を歩くタルキンに尋ねるアルス。その姿は少年時代の勇者アレルに酷似しており、在りし日の勇者アレルの姿を知るタルキンにとってアルスは育て導き、そして仕えるべき次代の王であり、幼き日にあこがれた伝説の勇者の現身であり、そして何より生涯を独身で過ごした彼にとってかけがえのない孫同然の少年であった。

 

 そんな少年を振り返り、タルキンは茶目っ気たっぷりにこう言った。

 

「そうじゃのぉ……。わしも詳しくは知らんのだが……、昔同じ儀式を為された陛下によると」

 

「父上によると?」

 

「勇者アレル様になる、儀式だそうじゃよ?」

 

「え~、アレル様になる儀式ってどういうことぉ?」

 

 その言葉に頭の上に疑問符を浮かべながらさらに地下へと降っていく二人に付き添いながら、女性の身でありながらカ―メン王国の若手でも屈指の剣腕を持つ麗しき護衛ルナフレアは優しい光を目に浮かべながらその後についていったのである。

 

 その部屋はカ―メン城の最深部、かつて魔王バラモスが鎮座した玉座の間の跡に存在した。

 

 到着した三人を待ち受けていたのは、立派なひげを蓄えた壮年の男性。身体は豪奢かつセンスの良い仕立ての服からでもわかるほど鍛え上げられた持ち主で、その腰には黄金に輝く鳥を模した剣があった。

 

「父上!」

 

 彼こそカ―メン王国第四代目国王であり、アルスの父カ―メン四世である。

 

「アルス、よくぞ来た。老師殿、ルナフレアご苦労であった」

 

 その声に即座に片膝をつき控える二人。この時アルスは目の前の父から強面ながらも優しいいつもの父ではなく、カ―メン王として、そして何より勇者アレルの末裔としての父であると感じた。故に真剣な顔つきで父の言葉をまった。

 

「さて、アルス。今からお前がなすべき試練は、記憶の試練と呼ばれる我がカ―メン、そして兄弟国たるローラン王国の王子が必ず通らねばならぬ試練である」

 

「はい!」

 

 息子の緊張気味だが意思のこもった声に内心満足しながら表面上堅い顔つきのままカーメン王は続ける。

 

「この試練はお前の勇気が試される。大事なことは慌てないこと。恐れないこと。そして勇気をもって自分自身と偉大なる勇者アレルとその仲間たちのことを信じることだ」

 

 そういって王は自ら古の魔王の玉座への扉を開いた。

 

 扉の先はある意味意外なものだった。淡く光を放つ不思議な宝玉が銀色の台座にぽつんと置かれているだけだったのだ。

 

 何かに導かれるようにその宝玉に近づいていくアルス。それにふれる直前不安に思ったのか後ろを振り返り、父と守役たちの顔を見て彼らがうなづいているのを見て意を決してアルスは宝玉にふれた。

 

 その瞬間、アルスの意識は場所も時間も違うどこかに飛んだ。

 

 場所は百余年前の地下世界アレフガルドに存在した大魔王ゾーマの居城の最奥部。

 

 そして時間は勇者アレルと一行のゾーマとの戦い、その死闘の最中へと。

 

 

 

「……ここはどこ?」

 

 目を覚ましたアルスが辺りを見回すと、見たこともない場所、見たこともない大人の人が四人懸命に巨大な魔物と戦っている姿だった。

 

「アレル、無事か!」

 

 額に瞳がある変わった男性がアルスに声をかけてくる。

 

 体をあたたかな光が包む。これはべホマの魔法? 嘘みたいに体が軽くなりアルスは体を起こした。

 

 それにしても僕はアルスなのに、どうしてこの人はアレルっていうんだろう。そう思いながらも見たことがないはずの目の前の男性に見覚えがあることにアルスは気づいた。

 

 え? もしかしてこの額の目の人……賢者様? 賢者カダル様じゃ?

 

 賢者カダル。賢王カダルとも呼ばれる勇者アレルを支えた四人の『ケンオウ』の一人。その姿は肖像画としてカ―メン城の大広間に掲げられており、子どものころから何度もそれを見ているアルスにとってその特徴的な顔から真実へとたどり着くことは難しくなかった。

 

「え? カダル様? 賢王カダル様ですか?」

 

「はぁ? ケンオウ? カダル……、様? おい、アレルいったい何をいってる? 今どういう状況かわかってるのか?」

 

 その最中にもカダルの背中越しに激しい戦いは続いていた。吹き荒れる猛吹雪、燃え上がる爆炎に対し、どこからかあらわれた巨大な壁を取りだす小柄な少年の影と、必死に反撃を試みる見事な体躯の戦士と一瞬のスキを伺っている女性だろう細身の武道家の姿。

 

(じゃあ戦士は……『剣王』フルカスで、女の人は『拳王』フォン。そしてあの小柄な影がじゃあ……)

 

 『建王』ビルド。世界を作ったと呼ばれる人。

 

 つまり目の前にいるあのバケモノは、大魔王ゾーマ? じゃあ今僕はご先祖様になってるってこと?

 

 アレ? アレレレ? 試練って僕が勇者アレルになって、あの大魔王ゾーマを倒すことなの? 

 

「……やばい。みんなアレルが混乱してる!」

 

 その声にフルカスを除く二人が警戒しつつ後ろに下がってきた。入れ替わりに賢王カダルが前に出る。壁の間から抜けてくる防ぎきれないゾーマの攻撃の余波よるダメージを時にやわらげ、時に回復することで何とか戦線を膠着させていく二人。フォンが頭を掻きむしりながら叫ぶ。

 

「はぁ? この土壇場でなんで混乱してるのよアレル! ビルド、何かないの? 混乱なおすやつ、確かあったでしょ?」

 

 凄まじい力を感じさせる青い道着に身を包んだ『拳王』フォンがイライラした様子で傍らの少年にまくしたて、少年は何かをふくろから取りだした。

 

 てんしのきつけやく は あるけど これは こんらんじゃ ないみたい

 

 こんな激戦の最中でも張り付いたような緊張感のない笑顔の男がフォンにそういった。

 

「じゃあ、どうすんのよ! あぁ、もうわかんない! 殴ってくる! あとは任したからね、ビルド!」

 

 そういって再び戦線復帰するフォンの背中を見ながらいまだ状況に適応できていないアルスにビルドが声をかけた。

 

 おちついて きみは みらいから ぼくのつくった どうぐで やってきたこ だね

 

 思わずうんうんとうなづくアルス。ビルドは満足そうに頷いてから言葉をつづけた。

 

 じゃあ まずは しんこきゅう

 

 ひっひっふー だよ ひっひっふー

 

 いわれたとおりに深呼吸すると腹をかかえて笑い出す『建王』ビルド。からかわれた! ていうかからかったよ、この人この状況で! そして腹かかえて笑ってる! 何この人ぉ!

 

 そんなアルスの思いを知ってか知らずか、一笑いした後ビルドはこういった。

 

 ごめんね さすが あれる の しそん 

 

 いい はんのう だった

 

 それは さておき きみのなかにある あれるのこえに みみをかたむけて みるんだ

 

 おちついて やれば できるよ

 

 そういわれたアルスは、目の前でなぜかぜーはー言っているビルドを横目に自分の中の声とやらに耳を傾けるため精神集中を始めた。

 

 やがて聞こえてくる声がある。

 

 我が末裔、アルスよ。己の心と力を信じよ……。そして仲間の力を!! 光の玉を掲げるのだ!

 

 声に導かれるまま立ち上がったアルスが光の玉を掲げるとゾーマを包んでいた闇の衣と呼ばれるバリアが引きはがされた。

 

 そこからの戦いは凄まじいものだった。『剣王』フルカスが振るう剣は、二回攻撃を可能とするハヤブサの剣のように見えたが、その破壊力たるや恐るべきもので一撃で二回切り付けるだけでなくその一撃一撃が伝説の武器の一撃に匹敵するという矛盾の満ちたものだったし、『拳王』フォンは緑色の足場の下にバネの付いた器具で何度もジャンプしたと思えば一気に天井まで飛び上がり、あまつさえ迎撃しようとしたゾーマの大火球を空中なのにジャンプすることで躱した後、再び天井を蹴って急加速したままの勢いで飛び蹴りをゾーマの角へとぶちかまし、そのまま左の角をへし折った。

 

 『賢王』カダルも負けていない。バギ系極大呪文バギクロスを使いこなし攻撃をしつつも、炎や吹雪のブレスから身を守る超高等補助魔法フバーハや呪文反射魔法マホカンタ、そして攻撃力を高める魔法であるバイキルトに、最高位回復魔法であるベホマラー、べホマを駆使してパーティ全体を最高の状態で戦うことができるようにしていた。

 

 そして……、『建王』ビルドはというとなんというか滅茶苦茶だった。

 

 前線にもどるや否や、ゾーマの攻撃を防いでいた巨大な壁をまた何個も取りだして並べ安全圏を確保しつつ、合間に大きな大砲を並べてゾーマを攻撃しだしたのだ。しかも大砲から打ち出されるのは鉄の玉じゃなく……魔法弾! アルスは子どものころに寝物語に聞いたホラ話を思い出した。世界にはあのイオ系極大呪文イオナズンを打つことができる大砲が存在するというそんなホラ話を!

 

 もしかしたらそんなホラ話の中の道具だと思っていたものを駆使して『建王』ビルドは他のなかまにも負けないほどの活躍を見せていた。

 

 そして戦いに最後の時が訪れる。アルスの、いや、勇者アレルの体がアルスの意思とはかかわりなく動き出している。

 

 力強い声でアレルが呪文を叫ぶ。

 

 ギガデイン、と!

 

 瞬く間に大魔王の間が稲光で満ち溢れ、ギガデインの莫大なエネルギーが勇者アレルが持つ剣に充填された。

 

 その手にある剣をアルスはまじまじと見た。姿は父がどんな時でも手放さないカ―メン王家、そしてローラン王家に伝わる伝説の剣王者の剣と同じもの。

 

 だけどこれは違う。勇者アレルの剣は真なる王者の剣であるといわれている。オリハルコンを用い、カ―メンから遠く離れたジパングの国の真なる神の武器を鍛冶場にて打たれた唯一無二の真なる王者の剣!

 

 ロトの剣!

 

 そのロトの剣に最強の魔法の全ての力を宿らせた勇者アレルが最後の一撃をうちはなった!

 

 ギガブレイク!

 

 その一撃を受けた大魔王ゾーマがゆっくりと崩れ落ちていく。最後に不吉な予言を残して……。

 

 ゆうしゃ アレルよ……。

 

 よくぞ わしを たおした……。

 

 だが ひかり あるかぎり

 

 やみ も またある。

 

 わしには みえるのだ。

 

 ふたたび なにものかが 

 

 やみから あらわれよう……。

 

 だが そのときは おまえは

 

 としおいて いきては いまい。

 

 わははは…………っ。ぐふっ!

 

 そう言い残しゾーマは倒れた。

 

 そして勝利を喜ぶ間もなく崩れ落ちるゾーマ城から去るアレル達の中で一人、『建王』ビルドだけがぼそりと呟いた言葉が意識が再びどこかに行こうとしているアルスの耳に残った。

 

 おしえてくれて ありがとう

 

 しらみつぶしに さがして ぜんぶ たいさく することに するよ

 

 という言葉が。




誤字脱字、感想お待ちしてます。

終わらなかった……、もう少しだけ作者の自己満足にお付き合いください。

それにしてもやり切りました! 

く~~~~、これがやりたいがためだけにロト紋クロス要素を出したんですよ!

四人のケンオウ 『建王』ビルドwwwww

我ながらあほやなぁ(遠い目)

なんていうパワーワード……。

ちなみに、

この時のルナフレアの装備は、

E ひかりのつるぎ
E きぞくのふく

『拳王』フォンの装備は、

E 神竜のつめ
E 神竜のぶどうぎ
なし
E 神竜のかみどめ
E ほしふるうでわ
E そらとぶくつ

です。

ん ちょっとだけおかしいきがするなぁ(棒)
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