ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について 作:笛ふき用
一応ご注意ください。
あと前話最後の部分を少しだけ追加しています。
地竜の月 10日
あのとんでもないロマリア王との初めての謁見から数えること四日。ロマリア北部地域に連なる白い雄大なロマリア連峰。その崖下に広がる黄山石の渓谷地帯に僕たちとロマリア王宮から派遣されている鉱山監督官のマリルさんの姿があった。
やっとついたよ……。この四日間は大変だった。ロマリアについて早々に事情も分からずロマリアの問題に巻き込まれる事になってしまった。
ここに来るまでの道中の大変さといったら……。何しろ僕はロマリアに来るのはもちろん初めてだ。だからこの地方に土地勘もないし、ロマリア地方特有の魔物に対する詳細な知識もない。だからキャタピラーを筆頭にアリアハンとは違う数多くの強力な魔物との初めての戦いを、何故か戦うことができない女性を守りながらやるっていう、二重の大変さの中でこなさなきゃならなかった。正直、ロマリアのさらの北にあるカザーブの村周辺出身のフォンの的確なアドバイスとビルドが野営するタイミングになると毎日当たり前のように建てられる休息用の小屋でぐっすり休めていなかったら全員ここに無事にたどり着けたかどうか……。
というわけで今僕はロマリア鉱山事務所の鉱山夫たちの住まいで一息つきながらこの日記を書いている。
それにしても何というかうちの王様もひどかったけれど、ロマリアの王様はある意味その上を行くね。正直引いたわ。
いつも通り整理のためにこの激動の四日間を振り返ることにする。
時系列 地竜の日 6日 午後
勇者殿、我が王の謁見の場での不作法と突然のぶしつけなお願いを心よりお詫びする。その上でわしの話を聞いていただけぬだろうか?
大臣殿の執務室にて、ご苦労のあまり禿げたのであろう頭を下げる大臣殿に僕は声をかけた。
ともかく頭をあげてください。それでは話もできません。
そういっていただけると助かる。ともかくこの場を設けてもらって感謝いたす。
そういって顔をあげた大臣殿の顔には安堵とそして蓄積された疲れがあらわれていた。その後ろには青い顔のまま直立不動で立つ眼鏡の女性の姿があった。
ともかく説明していただけませんか? とあらためて大臣殿の発言を促すと少しづつロマリアが抱える問題について語り始めた。
事のはじまりは魔王バラモスの出現に端を発する。バラモスがあらわれたことにより世界中の魔物が凶暴化し、人々の生活が脅かされはじめた。それはここロマリアも例外ではなかったがそこは斜陽に差し掛かったとはいえ大国ロマリア、豊富な資源と僕の父であるオルテガのような突出した力を持つ戦士こそいないもののよく訓練され整った装備を持つ軍隊の力でロマリアはバラモス出現後も比較的平和を保っていたらしい。
さて、そうして直接ロマリアの民を守る多くの兵士や政務を執り行う優れた官僚機構のおかげでどうにか平和を維持していたロマリアには一つ困った問題というか人物がいたのである。
ロマリア王その人だ。何でもこの王様、ちょっと欠点が多い人らしい。
大臣殿曰く、
「ちょっと王様としてのやる気がなくて、ちょっと人の気持ちがわからなくて、ちょっと浪費が激しく、ちょっと傲慢で、ちょっと国の今置かれている状況が見えてなくて、ちょっとわがままで、ちょっと悪い方向にざっくばらんなところがあり、誰かに暴力を振るったり女性に無理やり迫ったりはしないちょっといいところもあるのだが、ちょっとばかりおうさまとしての資質に欠けるところがある」王様らしい。
……なるほど、分かりやすい。
とっても暗君ですね(笑)
口には出さずとも僕ら一行の心がひとつになった視線を浴びて全てを悟ったらしい大臣殿がハンカチを取りだして額の汗をぬぐう。
……苦労してるなぁ、この人。
ともあれそれでも優れた国としての力で何とかロマリアは安定していたのだけれどある日王様がやらかした。
わしはわしの王としての偉業を称えるための巨大な建物を建てるぞ!
と言い出したのだ。それを聞いた瞬間、僕は思わずうわぁ……っていっちゃった。すぐさま失礼をしましたと謝罪しようとしたけれど、その前に机に額を打ち付けている大臣殿の姿が。あまりにも率直な僕の感想に心が折れかかったらしい。
慌てて謝罪し何とかとりなすと大臣殿が話の続きを始めた。
そのために大量の石材や鉄、銅などが必要だと考えた王様はロマリアの豊富な資源と人的資源をそのために投入し始めた。そういって僕らに窓の外を見るように促す。
その先に見えたのは、とにかく巨大な作りかけの建造物だ。正直街の外から見えていたしビルドが興味津々だったけれどあえて心理的に完全に無視をした街ひとつ入りそうなほどとにかくデカい建物がそこにはあった。
……でっかい とうぎじょう いや、ころせうむ かな?
僕らの中で誰よりも建築に詳しいビルドがたちどころに建物の正体を言い当てる。
コロセウム、か。僕の知ってる限りだと遠い昔の滅びた国に人間同士を闘わせてそれを見物する興業を行うための施設って聞いたことがあったけれどそれを現代によみがえらせるつもりだったのか?
それも今? この魔王バラモスに全ての人たちがおびえ苦しんでいる今、それをやろうとしたのか?
……大概うちの臆病なアリアハンの王様もひどいと思っていたけどこのロマリアの王様はそれ以上だな。ちらりと見るとその場にいる全員の表情が苦々しさでいっぱいだ。めったに表情を変えることのないビルドでさえ、笑顔がひきつってる。
絞り出すように大臣殿が言葉をつづけた。
もちろん我らは皆そろって御止めした。だが陛下のお気持ちは変わらず国の財、特に建築に必要な石材や鉄などの資材がコロセウムの建設に使われるようになり……、その分必要とされていた街の壁の修復や兵士たちの装備の更新にしわ寄せが来るようになってしまった。
大臣殿の言葉を引き取るように、直立不動で立っていた眼鏡の女性――マリルさんが続ける。
それだけでしたらまだ何とかなっていたのですが、今から数か月前のこと、ロマリア北部にあるロマリア大鉱山で大規模な落盤事故が発生。それと同時に主要な坑道がすべて魔物に占拠される事態が発生しました。これにより鉄と銅の生産が激減、同時にロマリア各地で魔物の活動が活発化し戦いが激化し、装備の破損が相次いでいます。そして数か月たった今ではこのロマリアの街の武器防具屋にてつのつるぎ一本、てつのやり一本てつのよろい一つすらない状態です。
思わず手を額に当て天を仰いでしまった。
さらに追い打ちは続く。
そしてそのためにカンダタ一味なる盗賊に警備体制が甘くなったところを突かれ、まんまと王宮から陛下のお気に入りだったきんのかんむりが盗まれてしまったわけだ。そのことに連日陛下が激怒されていたところにちょうど勇者殿たちが来られた、というわけだ。陛下は……、ここまで国の恥をさらしておいて今さらよな、おそらくだが都合がよいと思われたのだろうな、我らに何の相談もなく勇者殿にあのようなことをおっしゃった……、そういうわけである。
と大臣殿が事の顛末を説明し終えたのである。
……理解しました。正直、お腹いっぱいです。
そりゃ街にただよう空気が疲弊、疲れているわけだよ。
滅びかけてんじゃん!! ロマリア!!!
この後、涙ながらに頼まれたロマリア鉱山の解放と復旧作業についての協力のお願いにただただうなづくことしかできない僕たち一行でした。
というわけで僕の頭にいつもの電波がピーンときた。
【ロマリア鉱山 を ふっかつ せよ!】
ってね。うん、わかってたよ今回は。
追記 鉱山監督官のマリルさんは王宮に今のロマリア鉱山の状況を訴えにもどってきたところだったらしい。合掌。
追記の追記 この話の後、ビルドが大臣殿に、
よく きく いのくすり だよ
ってなんか自作の薬をあげていた。グッジョブ! ビルド!
誤字脱字、感想お待ちしています。
というわけで新ミッション始まりました。