ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について 作:笛ふき用
時系列 地竜の日 7日
翌日。王宮に寄った僕らは昨日の眼鏡の女性、鉱山監督官のマリルさんと一緒にロマリア北部へと旅立った。
今回マリルさんはロマリア鉱山への道案内役を引き受けてくれた。彼女だけならキメラのつばさで移動できるけれど、僕らが一緒では無理らしく一度歩いてロマリア鉱山へ向かう必要があるからだ。
ロマリアの半島部分を構成する見通しの良い草原を過ぎる。遠くにぴょんぴょん跳ねているスライムに和んだ。ロマリアにもスライムがいるんだなぁ。そんな中、アリアハンでスライムを倒し過ぎたフォンとカダルはスライムを見ないようにしていた。トラウマが深いなぁ……。
そんなかわいそうな二人から目をそらすためにロマリアの景色をあらためてながめてみた。こうして観察してみるとやっぱり違いがたくさんある。何しろ草ひとつ、木ひとつとってもアリアハンとは植生がずいぶん違うからだ。そんなアリアハンとは違ういろんなものが存在するこのロマリアでビルドが大人しくしているわけもなく色々見つけるたびに、いつもの通りに猛ダッシュで走っていく。そしておおきづちでぶっ叩いてはそざいに変えていった。
【黄色い花】【オリーブの木】【オリーブ】【ぬの草】。他にもいろいろ。それらを手に入れるたびにビルドはいろんなものを思い出したかのように思いつき背中の本に書き込んでいた。
そういえばこの前少しだけ見せてもらったけれど、あの背中の本もずいぶん不思議な本だったなぁ。【そざい】って大きく書いたページの次のページが【01:木材】でペラペラめくっていくと、飛び飛びに会い間が空いている感じ。01と02は埋まっていて03、04は埋まっていないのに05は埋まってる、みたいな。知らないものを書いていくんだったらああゆう書き方にはならないんじゃないかなぁ……と思ってしまうおかしな書き方をした本だった。
僕らがアリアハンを離れても何も変わらないいつも通りのそんなビルドの姿を眺めているとマリルさんが、
ゆ、勇者様、ずいぶん個性的なお仲間ですね……。
といってきた。あれ? とこの人は何をいっているんだろう? あんなのいつものビルドじゃないか……と思い至ったところで逆に気づかされた。僕のほうこそ完全に毒されている……。
同じことを考えたのか、フォンとカダルがはっとしていた。フルカス? いつも通りはっはっはと笑っていたよ。あいつに関してはあきらめた。
そしてまだ染まっていない目の前の真っ白なマリルさんの心に対して、心の中で静かに合掌しておいた。短くない付き合いになりそうな彼女が僕らのように染まるのがいつになるやら。そんなことを思いながらロマリアの中部地方に広がる大森林に差し掛かったところで、そいつはあらわれた。
遠目には盛り上がった草地にしか見えなかったけれど、目ざとく見つけたフォンが気をつけて! キャタピラーよ! と声をあげた。
キャタピラー が あらわれた!
その声に反応するかのようにのそりと長くて大きな体を持ち上げる巨大な芋虫。その持ち上がった体だけでも大人ひとり分くらいの高さがあった。
キャタピラー。ロマリア地方の代表的な魔物である。文献に、近寄りさえしなければそれほど危険な魔物ではないが、いざ戦いとなれば大変に凶悪な魔物で特にしっぽの先端についている鋭い毒の針とその巨体による体当たり、そしてその体力には注意が必要であると書いてあったのを思い出す。
まもののむれ が あらわれた!
さらに少し遠くに見える森からつられるように現れる緑色に見えるさそりばちのようなキラービー、人間の顔より大きな蝶々の体に、不気味な顔面がうごめくじんめんちょうといった魔物があらわれた。
どいつもこいつも毒や麻痺毒をあやつる強力で厄介な魔物たちだ。きゃあ! と叫んでその場にしゃがみ込むマリルさん。僕らは彼女を守るように戦闘の態勢を整え、まずは手前にいる厄介なキャタピラーを倒すために全力を尽くすのだった。
追記 ビルド、戦えないマリルさんを守るためとはいえ、彼女の周囲を全部【石垣】で囲うのはやり過ぎだと思うよ?
上まできっちり閉めたせいで、戦闘終了後助け出した時別の意味で震えていたからね?
時系列 地竜の日 7日 昼から夜
何とか魔物の群れを退けたものの慣れない敵との戦いに結構消耗してしまった僕らは昼食を兼ねて休憩することにした。いつものようにあっという間にできる【木の壁】でできた小屋を一軒。その外に食事のための【調理用たき火】をセットし、イスを人数分ならべ、さらにトイレを作って、その周囲を囲う石垣の壁を作り上げた。
ここまでわずか30分。さすがの早業である。目を白黒させるマリルさん。そうだよねぇ……、普通そうなるよねぇ……と思いながらほんの一か月前の自分を眺める僕ら。
そんな僕らを尻目に何か急いでいる様子でビルドは僕らに【キノコ】を渡してあとは好きに焼いて食えといってきた。
どこかに行くんだろうか? 目の前の初めて入る森という宝の山を前にして辛抱たまらなくなったのではないだろうか? そう思った僕が、一人で危なくない? 僕も行くよというとビルドは、
だいじょうぶ もりに はいる わけ じゃない
ちょっと そこまで いってくる だけ だからね
そういって囲いの外に飛び出していくビルド。
いったいどこに……、と思って外を見てみるともうどこにもいない。はてな? と思いながらもビルドの突飛な行動には慣れっこの僕らは見張りを買って出てくれたフルカスを石垣の上に残して、いったん食事をすることにした。
キノコの焼けるいい匂いがする。やがて焼きあがった最初の【焼きキノコ】をまずは緊張しているマリルさんに渡す。
よろしいのですか? そういって戸惑っている彼女に目で促すと恐る恐る小さな口で【焼きキノコ】にかぶりつく。
おいしい! おいしいです! 勇者様!
そういって喜ぶマリルさんの顔に出会ってから初めての笑顔があった。
おいしい食事は誰かを笑顔にする。これが僕がビルドから学んだことのひとつだ。おかげで僕も他のみんなも笑顔になった。旅先でおいしいものをみんなで食べる、これも旅のだいご味だよね? おじいちゃん。
その後しばらくして帰ってきたビルドは何だか一仕事終えた後のようにニッコリしていた。いったい何をやってきたのやら。その後、マリルさんの護衛のためにフルカスとカダルを小屋に残した僕、ビルド、フォンの三人で森の探索に向かうことにした。
キラッキラした目で探索というか偵察を提案してきたビルドの意見はこうだ。
はじめて はいる もり だから
まず ていさつ から
極めてまともなその意見を聞いた後、僕はこういった。
ビルド、本音は?
そざい ほしい!
素直でよろしい。飛び上がって訴えてくるビルドにそう返すと、僕はみんなに今日のこれからの方針を告げた。今日はここで夜を明かすからそのつもりでってね。そうしてロマリア鉱山への旅の一日目は森の手前までとなったのだった。
追記 珍しくこの日はビルドよりもフォンがハッスルしていた。森にたくさん生っていた【モモガキ】なる果物を見つけては食い、見つけては食いしていたのだ。どうやら故郷の味らしくなつかしさに手が止まらなかったらしい。あわれだったのが【モモガキ】が生る木の周りにいたドラキーたちだ。次から次へとぶっ飛ばされる様を見て、スライムはダメでドラキーはええんかいと心の中で突っ込んでおいた。
さて、この日の森の探索での最大の収穫は森になぜか自生していた【キャベツ】と【キャベツの種】だった。なので夕食はみんなでキャベツパーティ。たき火を囲んで一心不乱にみんなでキャベツをかじる。
とってもシュール。
あと当然のように森が二つ消えた。草原が森ふたつ分増えたともいう。
誤字脱字、感想お待ちしてます。
私事なのですが、しばらくの間ちょっと投稿ペースが落ちるかと思います。
楽しみにしてくださっている方、おられましたら申し訳ありませんが時間を見つけて更新しますのでご容赦ください。