ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について 作:笛ふき用
地竜の月 15日 つづき
というわけで、現在僕たちは今東の坑道最後の一本へと足を踏み入れた。
ジョヴァンニさんもどうにか目覚めてくれていつものようにガタガタ震えながらも道案内をかってでてくれている。但しビビる対象は魔物ではなく恐ろしい気配を漂わせながらず~~~と、
てつぅ~ てつぅ~
と呟き続けているビルドにだったようだけど。
気持ちはわかる。あれは怖い。そりゃあもう怖い。だってジョヴァンニさんだけじゃなくフルカスもフォンもカダルも、そして僕もガッタガタに震えている理由はこの最後の坑道が今までの坑道とは違い緩やかなに下っていく横穴ではなく、そこら中に水が滴る鍾乳洞の中にできた縦穴であることだけでないことは間違いないと思う。
てつぅ~ てつぅ~
と薄気味悪く幽霊みたいにユラユラしながらもビルドの動きはいつもと変わらないどころかキレにキレまくっている。
各自の持っている【たいまつ】だけを頼りに進むうす暗い鍾乳洞の中で、『ボク、イイキノコデスヨ』っていう擬態をして近づいた途端に襲い掛かってきて眠らせてくる狡猾な魔物【おばけキノコ】を、
あほかだれがだまされるかこのかすどもじゃまだからさっさとしね
というビルドの口からでる普段と違うすらすら出る言葉と今まであまり聞いたことのないレベルの罵詈雑言。そして新しく作った【ブロンズハンマー】で【緑石】や【丸い石】ごと吹っ飛ばしては動きを止め、同じく新しく作った【せいどうのつるぎ】で切り刻んでいく。その早業に僕らはまるで手を出す暇すらなく、
てつぅ~ てつぅ~
あれる~ ちゃんとそざいはぜんぶひろっておいてねつかうから
というなぜか息切れひとつせずにすらすらしゃべるビルドの指示通りにそざい集めぐらいしかすることがないほど。
そうして道中あらわれる【おばけキノコ】や【ドラキー】などをなぎ倒して行動を奥へ奥へと進んでいくとやがて目の前にものすごい勢いで上から下へと流れる水の壁があらわれた。
こ、ここなんだぞ! 試掘のときにここで水が出たせいで今この坑道は割が合わないから一旦掘るのをやめてたんだぞ! べ、べつにいじわるとかわすれてたとかでこの坑道を後回しにしたんじゃなかっただぞ! だってオイラたちあらくれは泳げないんだぞ! こ、こわいんだぞ! こんな大量の水は!
とジョヴァンニさんはこの坑道を後回しにした実に情けない理由をガタガタ震えながら力いっぱい教えてくれた。
そんなジョヴァンニさんたちあらくれが泳げるかどうかはさておき、この坑道が半ば放棄されていたことには納得がいった。道中も今までと違いひんやりしていて水が滴るせいでろくにたいまつを設置することも難しかったし、魔物もキノコに擬態する【おばけキノコ】という厄介な魔物。さらにこんなに水が出るならまともな採掘作業は難しいだろうし、さらに外に運び出す運搬ともなると基本的には横穴だった今までとは違いこんな急こう配で細い縦穴では効率が悪いという問題もあり、この坑道は一旦放棄という判断がされたんだろう。
一応念のため、ふくろから【ひのきのぼう】を取りだして目の前の水の壁とかした滝に突っ込んでみるとものすごい勢いで下方向への力が加わり思わず手を放しそうになってしまうほどだった。
これはこの水を何とかしないと無理だな……と僕が思っているとビルドが動き出した。
今日までの作業で出た土砂の中でも一番使い道のない大量の【土岩】をつり出したかと思ったらそれをどんどん階段のように壁に積み上げて滝の上ほうへと登っていき邪魔な岩を壊して天井付近に道を作っていく。気になった僕がビルドの後を追って上に上がると、ビルドは今度は硬い【白い岩】を取りだして巧みに水が噴き出ている穴を埋め始めた。あっという間に水を吹き出していた穴が埋まりやがて勢いよく流れていた水はせき止められ、坑道のさらに奥へと続く道とその先に広がる巨大な地底湖が僕たちの目に飛び込んできた。
これは……、美しい……。
すごい、とってもキレイ……。
これはすごい……、地下にこんな美しい場所があったなんて……。
すごいぞ! オイラ、こんなきれいなの初めて見たぞ!
うっすらと淡く光を放つコケとその光を反射して青く光る神秘的な景色にしばし僕らは目と心を奪われた。
てつぅ~ てつぅ~
……一人を除いては。
しばし見とれていた僕らを何かを壊す音が現実に引き戻す。それはこの地底湖を住まいとする【スライムつむり】という珍しい魔物であったり、地底湖のそこかしこに生えていた【わたげ草】という【わた】が取れるそざいだったりした。
……ビルド、気持ちはわかるけどたまにはキレイなものに感動してもいいんじゃないかな? といういつもなら必ず言っていたツッコミをこの時僕は飲み込んだ。だってそんなことを言って今の完全にイカレテしまっているビルドに朝のジョヴァンニさんみたいに片手で宙吊りにされるのはまっぴらゴメンだったからね!
そして地底湖をぐるりと回るように奥へ奥へと進んでいくと採掘場らしき広間があった。どうやらそこはキノコの群生地になっているらしく、普通の明るいオレンジ色のキノコや見たことのないまがまがしい紫や赤紫っぽい色のキノコの中にひときわ大きな、それこそ太い木の幹くらい太いキノコが真ん中に生えているというそんな光景が広がっていたのだ。
うっわ、あからさまー。
さすがにこれは分かる。あれは魔物の群れであの真ん中のでかいキノコはここのボスに違いないと。だがだとするとあのサイズ、基本標準サイズよりデカい=強い、の法則が適応される魔物の生態においてあの巨大なキノコは相当に強力な魔物に違いない、これはいったいどうするべきか……な~~~んていう僕らの思考はすべて無駄になった。
あきらかな罠であり強力な魔物の群れであろうそれを興味なさげにかつ蔑み切った目で一瞥したビルドは、
けっ
と一言吐き捨てた後、何故か以前レーベの村でどくどくゾンビのときに大活躍した【タルカタパルト】と【銅の投てき機】を設置し、そしてそれらに乗せる【油ダル】と【つみわら】を取りだして僕らにこういった。
あれどうせぜんぶまものだからあいつらばかだからちょうどつごうよくみっしゅうしてるしここからちかづかないでやきころそう
といって早々と三機の【タルカタパルト】全部に【油ダル】を装填し、発射した。
ひゅ~~~んという音が透き通った静寂が支配する地下に響いてやがてゴ~ンと何かと何かがぶつかる音がして広場のキノコたちが一斉に動き出した!
【おばけキノコ】 が あらわれた!
【マタンゴ】 が あらわれた!
【マージマタンゴ】 があらわれた!
まもののむれ が あらわれた!
そんな次の瞬間、今度は三機の【銅の投てき機】から燃え盛る【つみわら】が美しい放物線を描いて魔物たちの群れの中心に着弾し、次々と油に引火。
だが まもののむれ は おどろき おののいている!
あっという間に荘厳な地下に響き渡るキノコの魔物たちの絶叫とキノコの焼けるいい匂い! そして矢継ぎ早に繰り出される情け容赦のない炎の御代わりに魔物たちはこんがり焼かれることしかできず。
まもののむれ を やっつけた!
――戦いは終わった。
てつぅ~~~~~~~~~~!!!!!!!!!
そして雄叫びをあげてこんがり焼けた魔物になど見向きもせずにビルドが走り出す。広場の中心に立ち、試掘の後だろう壁の凸凹を目でなぞりながらやがて何かを見つけ、その場所に近づき何故かあえてブロンズハンマーではなくおおきづちで壁を壊しはじめた。
そして満面の笑みを浮かべて僕らを振り返り、手に持った黒いものを掲げてビルドはジャンプした!
【鉄】 を てにいれた!
その姿に僕らの心は一つだった。
ただただ一つだった。
――よかったぁ! ビルドがいつものビルドに戻ったぁ!
誤字脱字報告、感想お待ちしています。
いやあ、まとめてやきころすなんてまったくひどいじけんでしたね(棒)
あとお知らせです。
また資格試験が近づいてまいりました。
これから約10日間ほど更新が極めて遅くなると思いますので皆様何卒ご容赦のほどよろしくお願いいたします。