ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について   作:笛ふき用

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というわけで、できました。


26 決戦! ロマリア鉱山! 8

地竜の月 23日 

 

 明けて翌日。僕らは朝食後、鉱山街のみんなを街の中心部に集めた。三々五々朝食を済ませたマリルさんご一家やあらくれさんたち、そしてアイーダさんたちが集まってくる。

 

 その中でも僕はあらくれさんたちの様子を注意深く見ていた。足取り、歩き方、視線の行き先、そういうものに人間のその時々の感情や気持ちがあらわれることがある。そんな単純な話か? と言われるかもしれないが、人間元気な時、前向きな時にはまっすぐ前を向いて自信ありげに歩くものだけれど、落ち込んでいるときやつらい時にはどうしても足取りが重くうつむき加減になるものなのだ。

 

 その結果だけれど、昨日までよりは少しマシといった程度。

 

 やはり今日こそが勝負を決める。そのことを僕は確信し、そして自然と手がズボンのポケットにふれた。

 

 ビルドの言葉を【おもいだす】。

 

 ――あれる だんどりは ぜんぶ ぼくがやる

 

 ――だから あれくれさんたちの こころに ひをつけろ

 

 ――だいじょうぶ きみなら できる

 

 ――だって こんなんや ぜつぼうを まえに ひとを たちあがらせる こころ の つよさこそが 

 

 ――きみの ゆうしゃ としての さいだいの さいのう なんだから

 

 思い出したその言葉にまず僕の心に火が入ったよ。

 

 そうして僕はみんなに今日、ビルドが西の坑道に入って必要な作業をするのでそれが終わるまで万が一のために東の坑道に避難してほしいってことを伝えた。

 

 場が騒然とし始める。おびえて肩を震わせる人、覆面の上からでもわかるほど怒る人、反応は様々だったけれど、ビルドが西の坑道に入ると聞いて鉄を取りに行くと思ったのだろう一番多かったのは青い顔をしながら「だめだ、あのバケモノを刺激しないでくれ」っていう声だった。

 

 僕は少し騒ぎが収まるのを待ってみんなへの言葉を続ける。

 

 皆さん、落ち着いてください。僕たちは何もあの坑道最下層にあるガメゴンお住みかで新たに鉄鉱石をてにいれるつもりはありません。

 

 ただ、他に必要なものがあの西の坑道の中にありそれを取りに行くだけです。

 

 何故なら僕たちが鉱山監督官殿と皆さんの仲間たちを連れて何とか西の坑道から生還したあの日から、僕たちは皆さんのロマリア鉱山に巣くう怪物をやっつけるための準備をしてきました。

 

 今夜、その成果を皆さんに見せます。この方法ならあのとてつもなくでっかいカメの化け物である巨大ガメゴンだって倒せる、皆さんにそう思ってもらえる方法を僕たちは考えてそれを今夜皆さんに見てもらいます。

 

 全てはそれからにしましょう。だから今は僕たちの指示に従って一時東の坑道へと避難してください。

 

 最後にお願いしますと僕が頭を下げると、マリルさんのお父さん、つまり監督官殿があらくれさんたちにこう言ってくれたのだ。

 

 おい、お前達。遠い異国からやってきた勇者様がこれほどに我らロマリアのために尽力してくださっているのにその態度は何だ! 立ち上がれ! 胸を張れ! お前たちはそれでも暗くつらい坑道でひたすら鉱物を掘り続けるあらくれなのか! お前達の筋肉は飾りなのか! 早く東の坑道へ向かうぞ。勇者様たちのやることの邪魔をするでない! さぁ、これは私からの命令だ! さぁ早く!

 

 その言葉にゆっくりとではあるが各々東の坑道へと向かう鉱山街の人たち。やがていつもの喧騒が嘘のように静まり返る鉱山街。それでも念のため、僕らは手分けしてもう一度全ての建物や物陰などをチェックし街には誰もいないことを確認した後、最後に残っていた相変わらずピクリとも起きないカダルをフルカスが背負って僕たちも東の坑道へと向かった。

 

 ビルド一人をそこに残して。すれ違いざま、目配せをする。お互いに強く頷き返すだけだった。

 

 そうして無人の鉱山街に一人残ったビルドは、右手におおかなづち(二号)を握りしめ、顔はいつもの締まりのない笑顔だけれど目を爛々と輝かせて西の坑道へと突撃していった。

 

 東の坑道の中は入ってすぐのところが街の人が全員入れるくらいのでかい休憩スペースになっていた。万が一に備えて天井を支える柱を多く入れたり、食料がたくさん入った【収納箱】が用意されたりしていた。

 

 その中でみんなで身を寄せ合うようにして時を待つ。

 

 静けさと緊張感だけがその空間にはあった。

 

 やがてしばらくしてズズン、ズズンという小さな揺れが何度も何度も起きて、その後微かにではあるけれどあの恐ろしいガメゴンの咆哮が聞こえた気がした。

 

 そんなことがある程度の時間の間隔を開けて何度か続いた後、それがピタッと止み、それからしばらくしてみんなが空腹を覚え始めた頃にタタタタタという軽快な足音とともに全身ホコリまみれになったビルドが帰ってきた。

 

 真っ先にそれに気づいた僕がビルドに駆け寄る。

 

 成果は?

 

 ばっちり

 

 そう言ったビルドが袋の中から取りだしたのは、あの西の坑道に初めて侵入した時に僕が地面ごと釣り上げられたゴンドラを構成していた大量の【鉄のブロック】と【鉄の鎖】だった。

 

 ニヤリと不敵に笑うビルド。

 

 これで じゅんびは ととのった

 

 さぁ みんな そとに でよう

 

 いまから ぼくが あの でっかい まものの たおす しくみを つくって あげるから

 

 そういって汚れた顔をぐいっとぬぐって外へと飛びだすビルド。

 

 まちの いりぐち あたりの がけのふちから みんなで みててね

 

 そういって走り出すビルド。そこから大工事が始まった。

 

 まず【鉄のブロック】と【鉄の鎖】を動かしていた大きな歯車を加工して【鉄の鎖巻き上げ機】を作り上げ、それを昨日作ったあの崖から張り出した東側の足場の上にセット。それから目も眩むほどの高さにある中央の足場の下側に大量の【鉄のブロック】を使って凹の形をした【鉄の鎖】をぶら下げる頑丈な【鉄の鎖台】を完成させ、そこに【鉄の鎖】をつないだ。

 

 中央の崖の足場の下にぶら下がった長い長い鎖。それはビルドが作った新しい街のシンボルである見張り台の上の方に垂れ下がっていた。

 

 次に前日に大量にとってきておいた【銅】と【スズ】をこれでもかというくらい【炉】に放り込んだ後、今度は西の坑道方向、街の外縁部分にあたるへりの部分からどんどん足場をつぎだして空中に作業用の足場を完成させたビルドは、それからあの僕たちを阻んでいた硬い【黄山岩】を使って巨大なオブジェをつくりはじめたのだ。

 

 作業を続けるビルドを夕日が照らし、その姿をみんなが見守る中、ドンドンそのオブジェは何かの形に変わっていく。

 

 やがて暗くなっていく空をビルドが大量のたいまつでライトアップしたころそれは完成した。

 

 それはあの巨大なガメゴンを思わせる竜の首をした【黄山岩】の石柱だった。

 

 完成したその頭の上でビルドは自慢気にふふ~んと鼻を鳴らした後、足場を伝って地上に降りてきた。

 

 さすがに消耗した様子で、しばらくものすごい勢いで次から次へと食べ物を口に運んでいたけれど、たらふく食ったら回復したのかみんなにこう告げた。

 

 さぁ とくと ごろうじろ!

 

 ぼくの いっせい いちだいの おおじかけ を みせてあげる!

 

 そういうとビルドは炉から取りだした大量の【青銅のインゴット】を一気に加工していく。 

 

 その数何と100個。

 

 その大量の【青銅のインゴット】を使ってビルドが作り上げたもの、それは。

 

 【巨大すぎる青銅鉄球】が完成した!

 

 それをえっちらほっちら見張り台の上に持っていき、また足場を組んで少し上に行き鉄の鎖の先端に接続。さらにもう一本その【巨大すぎる青銅鉄球】に鎖をつなげそれを東側の足場まで引っ張っていく。

 

 最後に【鉄の鎖巻き上げ機】につなげてついに準備は完成した。

 

 ――【ロマリア鉱山・決戦場(デモンストレーション)】が完成した!

 

 そうして僕らはビルドと一緒に力いっぱい【鉄の鎖巻き上げ機】を動かしはじめた。僕もフルカスもビルドもフォンも、いまだに寝坊助のカダル以外はみんな必死になって大きな【鉄の鎖巻き上げ機】を回していくと少しづつ【巨大すぎる青銅鉄球】がそれに引っ張られて鉱山街の東側へと移動していく。

 

 呆然と事の推移を見守っている街の人たちを置き去りにして、最後の力を振り絞り僕が手でさわれるところまで【巨大すぎる青銅鉄球】はやってきてそこで動きを止めた。

 

 あまりに両腕を酷使したためか痙攣する両腕をぶらりとぶら下げながら僕らは街の西側にたいまつの灯りに照らされた作り物の巨大なガメゴンの顔をみた。

 

 そしていつもは寡黙でどちらかというと物静かなフルカスの

 

 いくぞぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!

 

 という声とともに、【鉄の鎖巻き上げ機】に巻き上げられていた【巨大すぎる青銅鉄球】が振り子の要領でうなりを上げて夜の鉱山街の空を東から西へと弧を描いて、ものすごい轟音とともについに作り物の巨大なガメゴンの顔に直撃した!!

 

 そのあまりの音の大きさにみんなが一瞬目を閉じ、そして開いた時にはそこには硬い硬い【黄山岩】でできた巨大な竜の頭は首だけ残してどこにもなく。

 

 あとにはぶらぶらとゆれる鉄の鎖と、少し遅れて鉱山街にその光景を見た人々の大歓声だけが轟いていた。

 

 その光景を僕らは東側の崖の上から見ていた。僕もフルカスもフォンもそしてビルドも疲れて果てていたけれど口元にはニヤリと笑みを浮かべて、目だけは爛々と輝かせて。

 

 あの夜最初にビルドはいった。

 

 ――あんな しろや とりでみたいに でかい やつを たおすためには 

 

 ――こっちも でっかい はんまーを よういしたら いいんだよ 

 

 そして出来上がったこの超巨大ハンマー。そしてその効果は今僕らの目の前で実証された。

 

 さぁ、待ってろ、ガメゴン! 今度はこの【巨大すぎる青銅鉄球】をお前の顔面にお見舞いしてやるからな!

 

 

 

 追記 ……え? なになに? いま、ものすんごい音しなかった?

 

 そして、その音でついにねぼすけカダルも目覚めたようだ!

 

 おはよう! カダル!




誤字脱字報告、感想お待ちしています。

というわけで今回のギミックは、

昔、ビル解体などに用いられていたクレーン鉄球でした!

ピンと来ない方は、

ビル解体 クレーン 鉄球 

で検索よろしくです!

ヒントの答え合わせは、次回やります!
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