ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について   作:笛ふき用

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よてーへんこーです


28 決戦! ロマリア鉱山! 10

地竜の月 24日 

 

 翌朝。人間一晩立てば大体怒りと勢いは収まってしまうもので。

 

 そんな状態で新しく作ったまだ店主のいない宿屋のベッドで目覚めた僕はいまだに全身に残る筋肉痛と倦怠感に苦しみながら別のものにも苦しんでいた。

 

 あれ僕やっちゃった?

 

 昨日これまでたまりにたまった怒りとか勢いとかに任せて暴言はきすぎちゃった? 

 

 ベッドの上でじたばたしながら昨日の自分の言動を【おもいだす】。

 

 ――ここで今、はっきりいっておく! 

 

 ――僕たちだけであの巨大なガメゴンを倒すことは不可能だ!!!

 

 うわぁぁあぁぁぁぁ、事実とはいえかっこわるぅぅぅぅ!!!

 

 仮にも勇者がみんなの前で堂々と言う台詞じゃないよぉぉぉぉ!!!

 

 さらに【おもいだす】。思い出してしまう。

 

 ――そんなやつらが恥をしれだと? よくも言えたな、そんなこと! この恩知らずの腰抜けどもめ! どうやらどいつもこいつもその筋肉だらけの身体はただの見せかけのようだな! すっかすかでみっともない! 全部見せかけの張りぼてじゃないか!

 

 うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!! 勢いだけで何言っちゃってるの僕ぅぅぅ!! ていうか恥を知るのはお前だよぉ! アレルくぅぅぅん!!!

 

 人はこれを自業自得という。

 

 …………うわぁ。

 

 ベッドにうつぶせに寝そべって伸びたまま思わず声が出た。

 

 …………やっちゃったぁ。本当はもっと穏当な言葉でみんなにお願いする文章を考えていたのになぁ……、そう思いながらも一回やっちゃったものはしかたない。宿屋の部屋に朝の陽ざしがカーテン越しに差し込んでくる。そのまましばらくベッドに座って時間を過ごす。

 

 だってあんなこと言ったら10000%ロマリアの皆さん敵に回したはず。正直僕もどんな顔をしていいのかわからない。

 

 よくて無視……、悪くてリンチ……、最悪は暴動かな……?

 

 とはいえいつまでもここに閉じこもっているわけにはいかない。やることはいっぱいあるし、外に出ていくのはこの上なく気まずいけれど、そろそろこのままここにいつづけるのも限界だった。

 

 ……限界だったのは僕の膀胱だったのだけれど。

 

 だがしかしこれは尊厳にかかわる問題である。

 

 まてよ、前にもこんなことがあったような……。毎度、トイレに駆け込む勇者ってどうなの? とまた気持ちが落ち込みそうになるけれど今はそれどころじゃない。事と次第によっては朝一からトイレのためだけにルーラでレーベにトイレに行くことも辞さない覚悟を固めた僕が、そろりそろりと街へと出ると、街は何だか静かでそして閑散としていた。

 

 あれ? 誰もいない?

 

 そう思っておっかなびっくり急ぎ歩きかつ忍び歩きでトイレに駆け込み、何とか無事にピーーを済ませて外に出るとやっぱり静かな街がそこにはあった。

 

 あれ? と思って人の姿を探してみると、東側の段々畑に誰かの姿が。近づいていくと懸命に農作業に勤しむマリルさんとマリルさんのお母さんの姿があった。こっそり近づくとふと顔をあげたマリルさんとばっちり眼が合った。

 

 やべ、怒ってるに違いない。とはいえこう見つめあっちゃってるのに僕はいませんよ~、透明人間ですよ~とはいかず一発ぶっ叩かれることも覚悟しながら僕はマリルさんたちにお、おはようございますとご挨拶をした。

 

 すると。

 

 勇者様! 

 

 はじけるような笑顔で段々畑からかけ下りてきたマリルさんが僕の手を取ってこういってきたのだ。

 

 ありがとうございました! 勇者様! 昨夜の勇者様の演説、私感動しました。おかげで目が覚めました! 勇者様に助けてもらうだけじゃなく、私たちが自分たちにできることを精いっぱいやることが大事だってわかったんです! 街のみんなもです! いまみんなはビルド様と一緒に東の坑道にいっています。みんなやる気に満ち溢れていて、生き生きしていて! まるで昔の鉱山街に戻ったみたいで私うれしくて! ありがとうございます! ありがとうございます!

 

 マリルさんにぶんぶん上下に両手を振られながら、僕は何故か勢いだけの昨夜の演説が何故か大成功だったことを知った。しばらく呆気にとられていた僕だったけれど、いつまでも興奮が収まらなかったのかありがとうございます! って連呼しながらぶんぶん手を振るマリルさんと僕との距離がかなり近いことに気が付いた。

 

 どれだけ近いかというと眼鏡越しに見えるキラキラしたマリルさんの瞳に僕の困惑した姿が映っているのが分かるほど近いことに気が付いた僕は急に恥ずかしくなった。そしてちょっと彼女の後ろを見るとあらあらまぁまぁといった風情のマリルさんのお母さん、そして。

 

 まりるさんのおかあさん

 

 どうですか? うちのあれるはああみえてなかなかゆうりょうぶっけんですよ

 

 あらビルド様、うちの娘などでよろしいのでしょうか?

 

 ええ ぼくてきにはこのままふたりをやどやにほうりこもうかとおもうていどにおにあいのふたりかと

 

 その言葉が聞こえたのか、急にわたわたと手を放したマリルさんが振り返ってお母さんにも~~~~と顔を真っ赤にして抗議を始めた。

 

 僕は何だかいつものようにビルドに突っ込む気も起こらず、何故ここにビルドがいるのかを尋ねる。

 

 ビルド、おはよう。坑道にいったって聞いたけど? あと、こんなときにだけスラスラしゃべるなよ。一体全体ど~~なってのさ、君の口は。

 

 僕がぼやくとビルドはこういって僕の質問に応えたのである。

 

 おはよう あれる

 

 さいくつは かれらに まかせてきた から だいじょうぶ

 

 もくひょうの どうの いんごっと 500こ 

 

 かれらには がんばって もらわないとね

 

 あと ぼくは きみを からかったり おちょくったり することに いのちを かけている 

 

 だから きみを ひゅーひゅー とはやしたてる ためなら げんかいの ひとつや ふたつ いつでも こえてみせるとも!

 

 そのビルドのどうしようもない言葉に、僕は奴の頭に一発どたまにげんこつを落とすことで返すことにしたのであった。

 

 追記 

 

 その後、ビルドにあらくれさんたち僕たちに怒ってなかった? とビルドに尋ねたんだけど、ビルドはふっと小さく笑って、否、嗤ってこういった。

 

 だいじょうぶ 

 

 はねっかえりが いないわけ じゃなかった けど

 

 ぼくが さいくつしょうぶで だまらせた から

 

 ぜんいん じつりょくさで じめんに はいつくばらせたし

 

 もし また さからってきたら その はんこうしん ごと

 

 こなみじんに はかいして あげるよ

 

 あははははははは あははははははははは!!!

 

 そう言って笑い続けるビルドの姿は確かに姿だけいつものビルドだったんだけど、僕にはビルドの姿をした悪魔にしか見えなかったとだけ、この日記に書き残しておきたい。

 

 何やったのさ、君。

 

 そしてその後、あらくれさんたちがビルドの姿を見るたびに恐怖と畏怖で直立不動のガッチガチになる姿を僕らはこの後しばらく見ることとなる。

 

 ホント、君何やったの? マジで。




誤字脱字、感想お待ちしています。

遅くなって申し訳ない&進まなくて申し訳ない……。

前回宣言したR様の出番は諸事情で後に回します。

そして次回はダイジェスト展開で時間を一気にまわします!
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