ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について   作:笛ふき用

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31 決戦! ロマリア鉱山! 13

地竜の月 29日

 

 そうして狂乱の夜が明けた。あらくれさんたちは二日酔いの頭を抱えながらも昨夜バーで過ごした夢のような時間を糧にやる気全開で今日も東の坑道へと向かっていった。

 

 人間という生き物は、いや訂正しよう、目の前にかわいかったりエロかったりする女の子をぶら下げた男という生き物は本当に恐ろしい。目の前に人参を吊られた馬よろしく、彼らは昨日本当によく働きこの時点での作業達成率は何と驚きの70%であった。僕ら、特にあらゆる作業に八面六臂の活躍をしたビルドという要因があったとはいえ、たった昨日半日で工程の40%を達成するという偉業を彼らは成し遂げたのである。

 

 そして昨日のペースを考えると僕たちが作業に参加しなくても大丈夫だろうと、ビルドが判断したため僕らは一丸となって今日の作業へと向かう彼らの背中を見送ったのだ。

 

 ぽっかり空いたこの時間であるが、もちろんやるべきことは残っている。今回の勝負の要であるカダルが、あの呪文を本当に使えるようになっているのか。そしてビルドが話してくれた理論やあの深夜に行われた非道の結果を試しに僕らは再び東坑道へと足を踏み入れることにしたのである。

 

 ちなみに、メンバーはこの通り。

 

 せんし ゆうしゃ ばにー びるだー そうりょ

 

 である。

 

 大事なことなのでもう一回。

 

 せんし ゆうしゃ ばにー びるだー そうりょ

 

 である。

 

 原因はビルドのこの一言。

 

 ふぉん ちなみに その ばにーすーつ いっしき

 

 みかわしのふく より ぼうぎょ たかい からね

 

 その言葉を聞いたフォンは泣いた。そりゃあもう泣いた。地面にうずくまり嗚咽を堪えながら泣きたおした。バニースーツのまま。そしてヤケクソになった結果がこれである。目のやりどころに困るので決戦までには着替えてほしいような、そうじゃないような……。

 

 まぁ、カダルがやけにやる気になっているからいいかな? なんといっても今回の育ち過ぎたガメゴン討伐の主役は、勇者の僕じゃなく、怪力無双である戦士のフルカスでもなく、見事な脚線美を網タイツに包んだバニーさんもとい我らが紅一点の武道家のフォンでもなく、ビルダーのビルドと、そのビルドの手によって怪しい改造手術を受けた、現在緊張で顔が真っ白、体がガチガチ状態の僧侶のカダルなのだから。

 

 なんたってカダル、今日今までずっとまるでさまようよろいみたいに動きがガチガチなんだもの。見ているこっちが笑ってしまう。

 

 そんな頼りない今日の主役を引き連れて、そのまま地底湖の奥へと踏み込んだ僕らはしばらく青白く輝く地下の道をどんどん降りていき、少し広場になっているところにたどり着いた。その場所は地底湖の他の場所に比べてずいぶんと拓けた砂浜にあたる場所で、そんな砂浜を僕らを代表して無造作に歩きビルドは青々と広がる水面へと足を踏み入れ、そしてすぐに引き返してきた。何故かって? それは水面の底をひと目見ればわかる。だってそこには大量の赤と緑の魔物の姿が。

 

 つまり――

 

 ぐんたいがに たちが あらわれた!

 

 じごくのハサミ たちが あらわれた!

 

 まもののむれ が あらわれた!

 

 ――こういうことである。

 

 案外素早い横歩きで浜へと押し寄せてくるカニの魔物の大群に、カダルは緊張した面持ちで、僧侶が本来となえられないはずの呪文を唱えた。

 

 ――ル、ル、ルカナン!

 

 広域の敵の防御力を下げる効果を持つ呪文であるルカナンによる濃い青紫のヴェールがカニの大群を包み込み、それを見たフルカス、フォンがたがいに向き合って驚きの表情を見せた後、カダルの顔を振り返り、ブルブルと顔を振るった後、ようやく気を取り直し魔物の群れに突貫した。

 

 硬い殻が柔らかくなったカニなどどれだけの数がいようとも今の僕らにはただの雑魚である。

 

 金属のように硬いはずの殻がフルカスのせいどうの大剣による打ち下ろしの一閃で面白いように二つに裂ける。続いてフルカスが力任せに大剣を横に振るうと一体のぐんたいガ二でその一撃は止まらず、そのまま硬いはずの二体目のぐんたいガ二の甲羅に深々と突き刺さりそのまま二体のぐんたいガ二を倒してしまった。

 

 一方のフォンも負けてはいない。バニー姿のまま跳躍すると柔らかくなったカニの甲羅を踏みつけ、砕き、そしてその反動を利用してまるで本当にウサギさんかのよう(意味深)にぐんたいガ二や地獄のハサミを倒していった。

 

 その時のフォンの表情と言ったら……、本当に楽しげでやけっぱちでそれでいて最高に解放感にあふれていて、あぁ昨日の一連の出来事でのストレスをここで一気に晴らしているんだなと確信させるに十分なものであった。

 

 正直、シュール過ぎて怖かった。だって幻想的な地底湖で大量の赤や緑のカニの魔物を満面の笑みで踏みつけ続けるバニーガールだよ?

 

 そんな風に以前この地底湖に潜った時にあんなに苦労したぐんたいガ二たちがまるで嘘のように蹴散らされていく光景を見ながら、それをやってのけたカダルは呆けたように目の前の光景と自分の手を見つめていた。その後ろに自信満々のどや顔をしているビルドの姿が。

 

 ほら いったでしょ? できるって

 

 そういって呪文の常識を破壊した僕たちのビルダーは未だに自分のやったことが信じられないカダルの目の前で勢いよく手を打ち合わせた。

 

 パァンという音が空間に反響する。そしてカダルの意識が現実へと戻ってきたのを確認したビルドは、今日の本来の目的を果たすためカダルにこういったのである。

 

 ほら いつまでも ぼーとしてないで

 

 るかなん なんて ぐうぜんの ふくさんぶつ は どうでもいいから

 

 ほんめいの じゅもん となえてよ

 

 そして既にずいぶんと数を減らしていたけれどいまだ健在だったカニの群れにカダルは今回の要の呪文を唱えたのであった。

 

 ――ボミオス、と。

 

 

 それから僕とビルドも参戦してまるで動きが遅くなったカニの群れを片付けるまでそれほど時間はかからなかった。

 

 それから何度か明日以降の動き方などを確認し、僕らがリレミトで帰って来た時には既に外は真っ暗で、そして町の広場では万歳三唱しながら僕らの帰りを待っていた鉱山街の人々の姿が。

 

 その様子にビルドはニッコリして早速そろった材料をものすごい勢いで加工し始める。あっという間に小山のように詰み上がる今回の決戦場の材料を見ながら、僕はようやくあのガメゴンへと挑む時が来たことを確信するのであった。

 

 

 

 あの夜、ビルドはこういった。

 

 あの そだちすぎた でかい がめごん は

 

 ものすごくでっかい せいどうせいの はんまーを つかって ぶったおす

 

 やつが とおりがかった ところに ふりこのような はんまーを なんども くらわせて やるんだ

 

 あの けいばじょうみたいな ちかこうどうの ちけいを さいだいげん りようすれば しょうきは じゅんぶんに ある

 

 だって かめは うしろへは あるけない あんな でかい かめにとっては あのつうろの とちゅうじゃ ほうこうてんかんも ままならない

 

 もんだいは はんまーには おっきなせいどうきゅう を つくるんだけど

 

 まちがいなく いっぱつじゃ あのでかぶつは たおせない

 

 そして いっぱつあてたら まちがいなく こわれる

 

 だから たくさん せいどうきゅう を よういして やるひつようと あてるたびに あたらしいのに つけかえる ひつようがある

 

 だから こんかいは やくわりぶんたんが じゅうようだ

 

 まず ふるかす きみは まきあげきの たんとう だよ

 

 じまんのかいりきで ぼくが あいずしたら きょうりょくしてくれる あらくれさんたちと いっしょに ちからのかぎり はんまーを うえへとあげてくれ

 

 つぎに ぼくは とうぜん したで はんまーを つけなおす かかりだ ぼくいがいに だれがやるんだっていうんだよ これ

 

 そして さいごに あれる ふぉん そして かだる 

 

 きみたちさんにんは あの そだちすぎた がめごん の あしもとで ちゅういを ひいて そして にげまわってもらう やくわりを おねがいする

 

 まるで けいばで にげる にげうまの ようにね?

 

 つまり僕ら三人は、あの巨大な育ち過ぎたガメゴンと命がけの追いかけっこをしなければならないということなのであった。

 

 

 うっわ~~、今になって体が震えてきたぁ~~。初めてこの計画を聞いた時も思ったけど、ビルド狂ってるわ~~。

 

 発想がおかしいんだよ!

 




誤字脱字、感想お待ちしてます。

というわけで次は久々にR様による今回の決戦場紹介です。
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