ドラゴンクエスト3 そして伝説へ……のはずが、僕の四人目の仲間がだいぶおかしい件について 作:笛ふき用
白竜の月 30日
まもなく白竜の月が終わり、地竜の月へと暦が移り変わる。というわけで日記が五日ぶりになった。ふりかえると激動の五日間だった。
こうしてまた日記が書けるようになったことは大変にいいことだ。とにかくこの五日間は大変な激動の日々だった。僕らにとっても、レーベの村にとっても、……そしてアリアハンの大地と景観にとっても。
恐ろしい試練の日々だった! 本当に!
あぁ、書きたいこと、突っ込みたいことが多すぎるけれど自分自身整理する意味もかねて時系列に沿って順に整理していこうと思う。
時系列 白竜の月26日
白竜の月の26日。つまり僕がアリアハンへ行ってルイーダの酒場でハンソロさんたちの協力の約束を取り付けたあと帰ってきた日であり、レーベの村がポイズントードの襲撃を受けた翌日からはじめよう。
この日ビルドは前日にあれほどの大仕事をこなしたにもかかわらずいつも通り元気だったのだが、動きは少なかった。
村の真ん中の空き地に座って、ボーとした顔で何かを考え込んでいたのである。
気になった僕が、
ビルド、どうしたの?
って尋ねたら、
ん~ あれる か
むらに つぎなにをたてるか かんがえている だけだよ
と応えてまたうわのそらに。
だけど僕の耳は聞き逃してくれなかった。
そざい そざい そざい そざい そざい そざい
ほしい ほしい ほしい ほしい ほしい ほしい
って小さな声でリズミカルにつぶやいているのを!
ひぃ! と小さな悲鳴を上げて後ずさる僕。
何か恐ろしいことが起きるかもしれないと、昨日ビルドが作り上げた村ひとつ囲う壁を見る。フォンもカダルも村の人たちも僕と同じようにほぼ真上を見るように壁を見ている。
そして明るくなった、そして一夜経って僕自身も冷静になったことで思い知った。
……どう考えても過剰だろ。
壁から結構離れているのに壁のてっぺんを見ようとするとかなり首が痛くなるだと。
ぼそぼそとちょっとだけ聞こえるビルドの声に聞こえないふりしながら物を作る喧騒が久しぶりにしていない村の静かさ。
そんな嵐の前を思わせる朝が終わり、太陽が頂点から傾き始めたころ、早速村にハンソロさんたちがやってきた。村の入り口に設置された【丸太の大トビラ】を開け、三人を迎え入れる。
お~い、アレル! やってきたぞ。……ところでここホントにレーベの村か? レーベの村にこんな壁絶対なかったはずなんだけど一体どういうことだ?
おどろきながらもにこやかに村に入ってきた三人のそんな当然すぎる疑問に苦笑いを浮かべながら応える僕たち。
ハンソロさんはしきりに壁に触ってこれなら俺たちの仕事は楽勝だな! なんていってるし、マーリンさんは背中に背負った大荷物が堪えたのか草地の上に腰を下ろした。
エルシドさんは早速ビルドに話かけると、お前さんすごいものつくりの名人らしいな、どうだ? この村にも酒場やバー、作れないか? って聞いてる。よっぽどお酒が好きなんだなとみんなで笑いあう。そうして村の人たちは僕たちが出て行ったあとも守ってくれる戦士たちを大歓迎した。
せっかくだからパーティだ! といった具合に、なまにくが焼かれ、キノコも昆布も焼かれにぎやかな昼食が始まる。
だけどそんな時間は長く続かなかった。その日の来客はそこで終わらず、招かれざる客がやってきたのだ。
またもあらわれた大量のフロッガー、バブルスライム、そしてポイズントードが姿を見せたのだ。
その知らせを聞くやいなや、とびあがってビルドは壁にはしごをかけててっぺんまで登りはじめた。
急いで僕らも追いかける。一番上で即席の足場を用意して魔物たちを見下すビルドの背中。
僕たちはその背中に、
やれる もん なら やって みろ
と太字の赤字ででかでかと書いてある……ように見えた。
そこからは一方的な展開だった。昨日の襲撃と同じように【逆茂木】を越えられず自滅するフロッガー達。同じく突っ込んできたポイズントードだったが、放物線をえがいて飛んだ毒のかたまりは全て壁にはばまれ村に被害はゼロ。
そのままいくつか【逆茂木】を壊すことには成功したものの壁の破壊には至らずそのまま倒れるポイズントードたち。
完全勝利だ!
そうして村中の人たちが喜んでいる中、外から甲高い声が聞こえた。
ナァンダ コノ馬鹿ミタイニ 高イ 壁ハ!
突然現れたその声の主は、茶色の葉っぱを縦にしたような仮面をかぶった腰みの姿の変態、もとい魔物だった。
僕の後ろにいたフルカスが僕を押しのけるように前に出て壁のへりに前のめりになりながら、かすれた声でそいつの名を呼んだ。
ゾンビマスター、だと?
ゾンビマスター が あらわれた!
ゾンビマスター。名前だけは僕も聞いたことがあった。はるか遠くの国であり、フルカスの故郷であるサマンオサに出没することかなり高位の魔物で、死霊系の魔物を操る非常に厄介な魔物として知られている。
サマンオサ地方ではこいつに率いられた魔物によってほろんだ村々は数知れないといわれているほどの強敵。
それがなぜアリアハンに? 決まっている。バラモスの指図に違いない。そう思ったとき、僕の体の中で血が燃え上がるようになった。奴はたおさなければならない。勇者の使命とかは関係ない。奴は存在するだけで僕の国を、故郷を、このアリアハンを地獄に変える存在だ。
今ここで倒す。
決意を固めた僕が、急いで下に降りようとした僕をビルドが肩をつかんで止めた。振り払おうとした僕の耳にビルドの声が響く。こんなビルドの声聞いたことない。
なにか いるよ とても おぞましい ものが
ビルドの硬い声が呼んだのだろうか、奴の背後にある土がどんどん毒の沼地に変わっていく。そしてみるみる広がっていく沼地の中から、やがてそいつが、ビルドが言ったなにかおぞましいものが現れたのだ。
薄い紫色の肌。苔のような色のぼさぼさ髪と、髪と同じ色をした朽ち果てた服を着た巨人。左の眼窩からは眼球が失われ、残った右目で世界の全てを恨むように目の前を見ている魔物がそこにいた。
ゾンビマスター は なかまを よんだ!
どくどくゾンビ が あらわれた!
そのあまりの光景に誰も僕自身も動けなくなっている中、ゾンビマスターの甲高い声だけが村に響く。
マァ イイ 面白ク ナッテキタナ オイ ヤレ
その声でどくどくゾンビが動き出す。毒の沼地の中に両手を突っ込み、取りだした巨大な岩を奴は頭上に持ち上げて壁に向かって投げつける!
うなりをあげて宙を飛ぶ大岩が壁に激突するとものすごい揺れがおき、壁の上にいた僕らは振り落とされそうになるのを必死でこらえた。
そして地響きがして土煙が上がり、急いで下に降りた僕たちが見たのは。
……あんなに頑丈そうだった丸太の壁に開いた大穴だった。
また甲高い声が聞こえる。
デッカイ穴ガアイタ! デッカイ穴ガアイタ! 面白イ! 面白イ!
面白イカラ シバラク イカシテオイテヤロウ!
絶望シロ! ニンゲンドモ! 次ニ 我ラガ 来ルトキが オマエラノ 最後ダ!
そういって去っていくゾンビマスターとどくどくゾンビ。
あぁ~もうだめだぁ……。
そんな声に僕が振り返ると、そこに集まっていた村人たちの顔には絶望と、そしてあきらめがあった。
僕も、フルカスも、フォンも、カダルも、ハンソロさんたちもその声のあまりの悲痛さに、そして次々に二転三転する早すぎる展開に誰も動けなかった。なんていっていいか分からなかった。僕は拳を握りしめる。
何が勇者だ。勇気ひとつ、希望ひとつ与えてあげられないなんて。情けなさとくやしさでどうにかなりそうだった。
そんな中、ビルドが動いた。いつものように緊張感のないにへらと笑った顔で。足場を作って、あっという間の早業で壁の穴を早々と埋めたビルドは僕のところに来るなりこういった。
あれる そざい さがしにいこう
あいつら やっつけなきゃ
その時のビルドの顔に浮かんでいた笑顔を、僕は一生忘れないと思う。三日月みたいに口元がぐ~んと上がった笑顔。満面の笑顔。
なのに、怖い。
そして小さな声が聞こえた。
まものめ よくも やって くれたな
ぼくに じかんを あたえたことを こうかい しろ
そうつぶやいたビルドが僕には恐ろしい あくま に見えたのだった。
誤字脱字、感想よろしくお願いします。
というわけでアリアハン・レーベ編のボス登場となりました。
ここからの五日間にアレル君はついてこれるのか!
デュエルスタンバイ! 次回 アレル(くんの胃が)死す!
※ 二月五日修正済み