魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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ウイングゼロが久しぶりの登場。


第15話 偽りの闘争

なのはとフェイトが進化した相棒、『レイジングハート・エクセリオン』と『バルディッシュ・アサルト』の試し打ちをした次の日、ヒイロはリンディの頼みで彼女の外出に付き合っていた。

 

「・・・リンディ。」

「どうかしたかしら?」

「頼みに付き合うと言ったが、それはフェイトの携帯電話の購入のためだったはずだ。」

 

ヒイロがリンディを呼ぶと疑問気な声をあげながら視線を向けてきた彼女に気になっていた質問をぶつける。ヒイロが軽く視線を向けた先にはなのはとフェイト、それに彼女らのクラスメートであるアリサ・バニングスと月村すずかの姿があった。彼女らはフェイトの手に握られている袋を見ながら談笑に耽っていた。

その袋の中身がフェイトがリンディに買ってもらった携帯だった。

 

「・・・なぜ俺にも買ったんだ?」

 

その携帯が入っている袋はヒイロにも握らされていた。携帯電話が売られている電化製品店でフェイトを待っていたヒイロだったが、リンディから最初にこの袋を渡された時は割と目を疑った。

 

「まぁ、そうねぇ・・・。持っておいても損はないんじゃないかしら?」

 

たったそれだけの理由でヒイロに携帯を寄越したリンディにヒイロは呆れた表情をする。しかし、もらった以上無下にする訳にはいかなかったため、使わないだろうな、と前置きを置きながら確認のために袋から携帯の入った箱を取り出し、開封する。

デザイン自体はシンプルなもので青と白を基調としたものであった。

デザインには特にこだわりのないヒイロはしまおうとするがーー

 

「あれ、アンタも携帯電話買ってもらったの?」

 

ヒイロが携帯電話を持っていることを目ざとく発見したアリサ。そのことはすぐさま周りにいたなのは達にも伝わり、驚きに満ちた表情をする。

 

「・・・リンディに半ば強制的に押し付けられた。」

「って言うことは・・・それはヒイロさんのですよね?」

 

なのはにそう問われたヒイロはそれを否定する気も起きなかったため素直に頷いた。それを見たなのはとフェイトはお互いに目を合わせ、何か確認するように頷くとヒイロへと駆け寄ると、揃いも揃ってあるものをヒイロに要求する。

 

『携帯のアドレスをください!』

 

ヒイロはそれを聞くと、表情を一つ変えることもなく携帯を操作する。程なくしないうちに自分の携帯の番号やアドレスが書かれてあるページに辿り着き、その画面のまま二人に手渡す。

 

「・・・これだ。あとは好きにしろ。」

 

そう言われ、ヒイロの携帯を受け取るとヒイロの電話番号等を自身の携帯のアドレス帳に登録する。フェイトも覚束ない操作ながらも同じように登録する。

 

「アリサちゃんとすずかちゃんもする?」

「なのは・・・そう言うのはちゃんと本人に確認を取ってからいいなさいよ・・・。」

「え、えぇっと・・・。」

 

すずかは気が引けているといった表情をし、アリサはなのはの行動にため息をつきながらヒイロに視線を向ける。それを確認だと取ったヒイロは少し考え込む表情をするとーー

 

「・・・問題ない。お前達なら迂闊に言いふらすようなことはしないだろう。」

「しないわよっ!!なのはじゃあるまいし!!」

「ひ、ひどいよアリサちゃんっ!?」

「なのはちゃん・・・私とアリサちゃんはまだヒイロさんと出会って時間がそんなに経っていないからヒイロさんの警戒はごもっともだと思う・・・。」

 

友人二人からの口撃にショックを受けたなのはは少しばかりしょぼくれた表情を見せる。

なんだかんだありながらもアリサとすずかともアドレスを交換すると、何やら朗らかな表情しながら携帯を大事そうに握っているフェイトの姿を見かける。

 

「・・・妙に嬉しそうだが、それほどまでに携帯を買ってもらえたことが嬉しかったのか?」

「ひ、ヒイロさんっ!?」

 

突然ヒイロに話しかけられたフェイトは顔を赤らめ、驚いた表情をしながら口調をきょどらせる。

 

「その・・・こう言うの、なんて言うのかな・・・。普通の女の子らしいことをするのは、初めてだから・・・。友達になったのもなのはが一番最初だから。」

「・・・・なら、その繋がりを大事にするんだな。」

 

まるで、今までは女の子らしいことをしてこなかったというようなフェイトの言い草にヒイロは少しばかり怪訝な表情を浮かべるが深く追及することはなく、端的に伝える。

 

「ヒイロさん・・・?」

 

あまりヒイロらしくない発言にフェイトは少しばかり疑問に思った。しかし、それっきりヒイロはだんまりを貫いたため、それ以上、話題が続くことはなかった。

 

 

 

 

「・・・・さて、ヒイロさんが言っとった管理局員の巡回ちゅうのは今日やったな。後の憂いを無くすみたいな感じやったけど、一体誰なんやろうな・・・。」

 

守護騎士達の夕飯を作りながらはやては誰もいない自宅の中で言葉を零す。

ヒイロから管理局に関する多少のことは聞いているものの、その後の憂いの正体を聞いてはいない。

 

 

「まぁ、私が知ることじゃないか。今、私ができることはみんなが無事に帰ってくることを祈るだけや。無論、ヒイロさんもな♪今度またウチに誘おうかな♪」

 

そういいながらはやては表情を緩ませながら料理の工程を進めていく。

全ては自分の愛する家族のために。

 

 

 

 

ビーッ!!ビーッ!!

 

リンディ達のいる海鳴市の拠点としているアパートに似つかわしくないアラート音が響く。

 

「エイミィ!!」

「はいっ!!」

 

突然の警報にも狼狽える様子を微塵も見せず、リンディはエイミィに状況の確認を命じる。

エイミィはアパートの一室に設けられた管制用のシステムを操作し、状況を確認する。

 

「至近距離にて緊急事態!!守護騎士と思われる反応を確認しました!!巡回していた管理局員によりある程度の包囲は完了している模様!!」

「確かその巡回、クロノも一緒にいたわよね!?」

「数分で戦闘エリアに入ります!!」

(・・・・始まったか。)

 

リンディ達のやりとりを聴きながらヒイロはシグナム達が行動を起こしたことを察していた。

今回のヴォルケンリッター達の行動はヒイロがはやてに頼んだ、全て仕組まれたものだったからだ。

目的は仮面の男の正体を明るみに出すため。

 

「フェイトさん、ヒイロ君、問題ないわね?」

「はい。いつでも行けます。」

「・・・問題ない。」

「オッケーよ。エイミィ、なのはちゃんは?」

「少し時間がかかるそうです!」

「わかったわ。それならアルフ、お願いできる?」

 

エイミィからなのはの状況、そしてフェイトとヒイロの状態を確認したリンディはアルフに視線を向け、彼女になのはの移動を頼む。

 

「わかった!とりあえず今はフェイトとヒイロを運んでからでいいか?」

「ええ、大丈夫よ。」

 

リンディの承諾を得たアルフはその手に転移魔法用の魔法陣を展開する。

 

「そんじゃあ、行くよっ!!」

 

アルフの声と共にヒイロとフェイトの視界は光に包まれる。

 

 

 

 

 

 

「・・・管理局か。」

 

周囲を見渡しながら、ザフィーラが自分達を囲んでいる人物達の正体を言い当てる。

管理局の巡回に引っかかったザフィーラとヴィータはおよそ10人ほどの管理局に囲まれていた。

 

「でも、一人一人の力量はお察しだな。アタシらヴォルケンリッターの敵じゃねぇ。」

 

ヴィータが自身のデバイスである『グラーフアイゼン』のハンマーを構えながら警戒していると、管理局員達は仕掛けようとはせずにヴィータ達から離れていった。

ザフィーラとヴィータが仕掛けてこないことへの不信感を抱いているとーー

 

「上だ!」

 

いち早くその不信感の正体に気づいたザフィーラはヴィータに警告を告げる。釣られてザフィーラと同じように自身の上を見るヴィータの視界には水色の刃が無数にも展開されていた。

 

「スティンガーブレイド・エクスキューションシフトっ!!」

 

その魔法の発動者であるクロノがデバイスを振り下ろすと無数の刃が雨霰のようにヴィータとザフィーラへと降り注ぐ。

咄嗟にザフィーラは自身の手のひらからプロテクションを発動させ、その範囲にいるものを悉く処刑せんがごとく降り注ぐ刃から身を守る。

しかし、その刃の鋭さは咄嗟だったとはいえ、強固だったザフィーラのプロテクションを破り、数本ザフィーラの二の腕に突き刺さる。

突き刺さる光の刃はザフィーラの筋力で粉砕する。大したダメージにはなっていない様子にヴィータは少し安堵した表情を見せた。

 

 

 

 

「・・・・あれほどの威力で少ししかダメージを与えられないか・・・。」

 

先ほどの魔法にかなり魔力を持っていかれたのか、少々疲れた様子を見せるクロノ。

だが、本来の目的は達成された。先ほどの刃が破壊された時に発生する粉塵でヴィータとザフィーラの視界を奪い、その間に結界の強化を他の管理局員にやらせた。

 

『クロノ君!聞こえるっ!?』

 

次をどうするかを考えているクロノにエイミィからの通信が入る。

 

「うん、聞こえーー」

『今、そっちに助っ人を送ったから!!』

 

クロノが返答するより先にエイミィは内容を伝える。助っ人という言葉を受けたクロノは周囲を見回した。

そして、ビルの屋上にその助っ人と思われる人影を見つける。

 

「あれは・・・フェイトとヒイロか。」

 

ビルの屋上にフェイトとヒイロの姿があった。クロノが声をかけようとした時に二人の周囲に橙色の魔法陣が展開される。

その魔法陣から今度はなのはとアルフの姿が現れた。

 

「・・・早いな。」

「アタシはフェイトの使い魔だからね!!これくらいは安いもんよ!!」

 

ヒイロの言葉にアルフが自信に満ち溢れた笑顔でそう答えるが果たしてそれが理由なのだろうかと、ヒイロは疑問に思ったが口には出さずにヴィータ達の方を見た。

 

(・・・・シグナムがいないな。奴はどこにいるんだ?)

 

そう思ったのも束の間、結界を貫きながら紫電がヒイロ達からさほど離れていない別のビルの屋上に落ちた。

 

(・・・・あれか。)

 

ヒイロがそう決定づけ、紫電が落ちた衝撃から発生した煙幕が晴れるとそこからシグナムが姿を現した。

 

「あの人は・・・!!」

 

フェイトがシグナムの姿を見ると険しい表情を見せる。

この前自分が手も足も出なかったことを思い返しているのだろう。

 

「・・・・前回のお前と今のお前は違う。奴に今のお前を見せつけてみろ。」

「・・・はいっ!!」

 

ヒイロの言葉にフェイトは自身を奮い立たせるように声を出す。

表情に思いつめたものがなくなったと判断したヒイロはなのはとアルフに視線を向ける。

 

「あの二人はお前達に任せる。俺は結界内部を回ってもう一人、闇の書を持っているであろう人物を探してくる。」

「うぇっ!?マジでっ!?」

 

アルフの驚きの声を置いていくようにヒイロはウイングゼロを展開すると、その純白の翼を広げ、飛び去っていった。

 

「ったく、自分勝手だなー、あいつは。」

 

ヒイロの突然の行動にアルフは呆れたような声を出すが、それはすぐさま好戦的な笑みへと擦り変わる。

 

「ま、私もアイツと戦いたかったから、ちょうどいいけどな!!」

 

獰猛な笑みを浮かべながらアルフはザフィーラに向けてファイティングポーズを取った。なのはも少し乾いた表情を浮かべながらもヴィータに視線を向けていた。

 

「・・・行こう、フェイトちゃん。」

「うん。行こう。なのは。」

 

なのははヴィータへ、フェイトはシグナムへと己の戦う相手を見ながら、自身の相棒の名前を呼ぶ。

 

「レイジングハート!」

「バルディッシュ!」

 

『セットアップっ!!』

 

 

 

 

「クロノ、聞こえるか。」

『ヒイロ?どうかしたのか?』

 

なのは達から離れたヒイロはクロノに連絡を取る。

 

「お前に頼みがある。守護騎士は四人いるが、まだ三人しか姿を現していない。残りの一人が闇の書を所持している可能性が高い。俺が結界内部を担当する。お前は結界の外を担当しろ。」

『・・・・わかった。闇の書も確認できていないから、おそらくその最後の一人が持っているんだろうな。』

「・・・仮面の男には注意しろ。状況によっては妨害に走る可能性がある。」

『・・・警告、痛み入るよ。』

 

ヒイロはそこでクロノとの通信を切り、姿を現していない守護騎士、シャマルを探すという名目のもと、結界の張られた海鳴市の空を飛ぶ。

 

(クロノとシャマルが協力関係になれれば、仮面の男の拿捕は可能なはずだ。だが、状況によってはコイツの使用も考える必要がある。)

 

ヒイロは自身の身の丈程の長さのある無骨なライフル銃、『バスターライフル』を二挺ある内の一つを手に取っていた。

 

 

 

 

 

「・・・・強くなったな。」

「・・・そうですか?」

 

フェイトと対峙したシグナムは不意にそんな言葉を零す。それにフェイトは疑問気に首を傾げる。

 

「相手の強さを測る目は持っているつもりだ。それに強さとは己自身では認識はあまりできないものと考えている。」

 

シグナムはそういうと自身のデバイスである『レヴァンティン』を構える。

構えからも改めて自分が対峙している相手がかなりの強敵だと認識したフェイトはバルディッシュを握りしめることでそれに応える。

 

「我が名は守護騎士ヴォルケンリッターが一人、烈火の将、シグナム。お前の名を聞きたい。」

「・・・管理局所属嘱託魔導師、フェイト・テスタロッサ。」

「フェイトか。いい名前だ。お前の全力、見させてもらおう。」

「言われずとも!!」

 

 

その言葉を皮切りにフェイトとシグナムが同時に動き出し、紫電と稲妻が交錯する。

 

 

 

 

「・・・・・・。」

「えっと、前回は教えてもらえなかったけど、今回こそは教えてもらうから。」

「・・・・あー、わかった。アイツ、伝えてないなこれ。」

 

自身を見下ろす形となっているヴィータに向けてなのはは改めて名前を問う。

しばらくヴィータはそのなのはの目を見ていたが、ふと合点がいったような表情を浮かべた。なのははそれに疑問気な表情を浮かべる。

 

「アイツ・・・?一体誰のこと?」

「いや、こっちの話だ。気にすんな。とりあえず名前だったな。それだったらアタシを打ち負かすぐれぇのことはしてくれねぇとな!!」

 

ヴィータは獰猛な笑みを浮かべながらなのはに自身のデバイスであるグラーフアイゼンのハンマーを向ける。

 

「・・・・やっぱりこうなっちゃうか・・・。」

 

なのははそういうと静かに、それでいて決意のこもった目をしながらヴィータにレイジングハートを向ける。

 

「はっ!テメェもやる気なんじゃねぇか!!」

「覚悟はある・・・。私は、闘う。」

 

 

「想いだけでも…力だけでも…。それが今、私があなたに届かせられるものだから!!」

 

 

 




なのはがどこぞの准将になってきた。

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