魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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第21話 地上を撃つ極光

ヒイロは真正面、なのはとフェイトは空からはやての肉体を媒介にして現れた堕天使(ナハトヴァール)と対峙する。

三人とも鋭い視線をナハトヴァールに向けるが、肝心のナハトヴァールは目を閉じたまま動こうとはしない。

 

しばらく睨み合いの状況が続く中、はじめに動いたのは、ヒイロであった。

足を一歩、前へ踏み出すと同時にウイングゼロのブースターを蒸す。アフターコロニーのモビルスーツにおいても随一の機動力を持つウイングゼロの加速は一瞬でナハトヴァールで接近し、ヒイロの間合いに入れさせる。

 

そして、手に持っているビームサーベルをナハトヴァールへ向けて振り下ろす。立ちはだかる敵を容易く溶断するビームサーベルから発せられる緑色の光刃をナハトヴァールは、瞬時に展開した紫色の魔力シールドで迫る光刃を阻んだ。

 

ビームサーベルと魔力シールドの接触面から稲光が生じるが、ナハトヴァールの魔力シールドにヒイロのビームサーベルが食い込んでいく様子は見られなかった。

 

(・・・・やはり硬いか。シグナム達が展開するシールドとは段違いに硬度がある。)

 

軽く歯噛みしながらヒイロは一度距離を取ろうとする。ナハトヴァールはただシールドを張っただけで腕といった四肢はフリーなのに対し、ヒイロは自身の腕でビームサーベルを振るっている。そのためナハトヴァールが何かしようとすればヒイロは対応が遅れてしまう可能性がある。それを考慮した結果ナハトヴァールと距離を取ることにしたヒイロだったが、不意にヒイロの視界にある光景を捉える。

 

(・・・・なんだ、あれは?)

 

それはナハトヴァールの顔にあまり似つかわしくないものであった。それは彼女の目から溢れ、頰を伝い、一筋の川を作っていた。紫色の魔力シールド越しなためわかりづらかったが、それは謂わゆる、人間で言う涙であった。

 

(涙・・・・か。となれば奴にも感情があるということの証左に他ならんが・・・・。)

 

涙が出ているということはナハトヴァールがこの状況に対して何かしらの感情を抱いているのは確か。嬉しさ、悲しさなど涙が出てくる感情は様々だが、状況やナハトヴァールの発言を鑑みると後者の方が可能性は高い。

 

ヒイロは思案しながらナハトヴァールの様子を観察していたが、ナハトヴァールがヒイロに向けて拳を振るおうとしていたため、瞬時に離脱し、距離を取った。

 

(・・・・速いな。)

 

ヒイロはナハトヴァールに視線を戻した瞬間、そう心の中で呟く。決してナハトヴァールの拳が速かった訳ではない。ナハトヴァールを捉えたヒイロの視界にはその姿とは別のものが写り込んでいた。

それはまるで血のように赤黒く染まりきった短剣であった。しかもそれは一本だけでなく何本もの血に染められたような切っ先がヒイロを取り囲むように宙に浮いていた。

 

即座に状況を確認したヒイロは短剣を動き出す前にウイングスラスターで打ちはらいながら上空へと飛び上がる。

 

病院の屋上で佇むナハトヴァールを見下ろす形となったヒイロの視界に今度は爆発音と共に爆煙が立ち上ったのを見る。ちょうどそこはなのはとフェイトがいた場所でもあった。

ヒイロがそちらの方に視線を向けた瞬間、今度は見慣れた金髪のツインテールが瞬間移動のように視界の端に現れた。忙しなく視線をそちらに向けるとなのはと手を繋いだフェイトがいた。

おそらくヒイロと同じように血のように赤黒い短剣に囲まれてしまった2人はフェイトの瞬間移動の魔法である『ブリッツアクション』を用いてヒイロの側へ転移してきたのだろう。

 

「闇よ、染まれ。」

 

声をかける暇もなくナハトヴァールからの攻撃は続く。視線を再度ナハトヴァールに向けると手を真上へ掲げている様子が見える。

その手の上には黒い稲光を纏った球体が展開されていた。その球体は急速に肥大化し、直径10メートルはくだらないほどの大きさとなっていた。

 

「・・・・爆弾か?」

 

ヒイロがそう呟いたのもつかの間、その黒い球体はさらにその巨体を肥大化させ、ヒイロ達を呑み込まんと迫り来る。

 

「ちっ・・・・・後退するぞ!」

「ふぇっ!?」

「きゃっ・・・・!?」

 

 

舌打ちしながらヒイロはなのはとフェイトを抱きかかえると迫り来る黒い球体から逃走を始める。

黒い球体の肥大化もかなりのスピードを持ってはいたが、ウイングゼロの機動力に追いつくことは出来ず、ヒイロは2人を抱きかかえたまま肥大化の範囲の外へと離脱する。

 

「あ、あの、ヒイロさんっ!?これからどうするんですか!?」

「奴のあの攻撃は範囲が広すぎる。威力も申し分ないだろう。一度身を隠し、対策を考える必要がある。」

 

なのはの質問に返答しながらヒイロは手頃なビルの陰にナハトヴァールから逃れるように隠れこむ。

なのはとフェイトを下ろしたヒイロはビルの陰からナハトヴァールの様子を伺うように顔を少しだけ出した。

 

ナハトヴァールがいる病院付近の空域を覆っていた黒い球体は消え去り、遠目にだが、ナハトヴァールが佇んでいるのが見える。少しの間様子を見ていたが、ナハトヴァールが動きだすようには見えなかった。

 

「・・・・奴がいつ動きだすか分からない。さっきも言ったができる内に対策を講じるぞ。」

「・・・・・あの黒い球体は多分、広域攻撃型です・・・。避けるのは、私たちでは難しいかと・・・。」

「あの攻撃をやられる度にお前達を抱えていくのは時間の無駄だ。闇の書の暴走が世界の破滅を引き起こすのであれば、少しでも手間を省くべきだ。」

「うん。一回一回ヒイロさんに任せる訳にも行かないから・・・・。防御・・・とか?」

「俺は魔法に関しては疎いが、あの魔法の威力は破格だと言うことは俺でも察せられる。防御も難しいと考えるべきだ。」

「あう・・・・。」

 

 

ヒイロにそう言われ、しょぼくれた表情を見せるなのは。現状としてナハトヴァールにあの黒い球体による広域攻撃魔法を撃たせないこと以外の対応が考えられない。

 

「フェイト!!なのは!!」

「あ、アルフ!?」

「全く、エイミィに闇の書が暴走しているって聞いて来てみれば、なんだい今の魔法!?とんでもないじゃないの!!」

 

打開策が浮かばず、思案に耽っている三人のところにアルフがやってくる。その様子は闇の書の暴走を目の当たりにしているのもあったのかかなり苦々しく表情を歪めていた。

 

「アルフ。ユーノやクロノはどうした?」

「一応、グレアム提督の方は済んだみたいだよ。どうやら闇の書を永久に凍結する腹づもりだったみたいだね。」

「・・・・根本的な解決にすらならんな。やはり奴のやろうとしていたことはいずれ同じ犠牲者を生み出す。」

「・・・・・言い方はともかく、解決になっていないってのは同感だね。」

 

ヒイロの言葉にアルフはムッとした表情を浮かべるが追及したりはせずに話を進めることにした。

 

「今はリンディ提督が試験運行中だったアースラを引っ張って来ている。ユーノやクロノもアースラに同乗しているけど、それでも時間はかかるみたいだよ。」

「・・・・今は私達でなんとかするしかないってこと?」

 

フェイトの確認の言葉にアルフは無言で頷いた。なのはも険しい表情を浮かべながらだったが、気持ちを入れ直し、大きく頷く。

その次の瞬間、ヒイロ達を突風が襲う。その風の強さは思わず顔を覆ってしまうほどであったが、なんとかその場に踏みとどまる。

 

「今のは・・・・結界か?」

「・・・・私達を閉じ込める用のだね。完全にターゲットにされたってわけだね。」

 

風が止むと先ほどまで夜の闇で暗かった視界が僅かにセピア色に染まる。それはシグナム達が張っていた結界と酷似していた。

ヒイロが再度ナハトヴァールの様子をビルの陰から見やる。するとちょうど背中から生えた黒い翼を一回りほど大きく広げたナハトヴァールが病院の屋上から飛び立った様子が見て取れた。

 

「・・・・奴が動き出した。」

「ど、どうするんですか?まだ対策と言える対策も立てれてないですけど・・・。」

 

フェイトの言葉にヒイロは軽く思案の海に入る。再度黒い球体を放たれてしまえば、範囲から鑑みてヒイロはともかくとしてフェイトやアルフら三人への直撃は免れない。

ならば最終的に帰結するのがそもそもとして撃たせないように立ち回る他に方法はない。

 

「・・・・・俺が奴に接近戦で組みついておく。」

「やっぱそれしかないのかねぇ〜。」

 

アルフが困ったように頭に手を回し、自身の髪を弄り回す。なのはやフェイトも似たような表情を浮かべているが、代替え案が出てこない以上、ヒイロに限らず誰かしらがナハトヴァールに組みついておくのが一番手っ取り早い。

 

「時間がない。行くぞ。」

 

ヒイロはそう言うとウイングゼロの白い翼を羽ばたかせながらビルの陰から飛び出していく。

ナハトヴァールがビルの陰から現れたヒイロを視認すると悠然と拳を構えながら突進してくる。

ヒイロはこの攻撃を手にしていたビームサーベルで斬り払おうとする。しかし、ビームサーベルの刃はナハトヴァールの拳に触れそうになったところで激しいスパークを発生させながら阻まれてしまう。

ヒイロは表情を一瞬驚愕のものに染めながらも原因を探る。

 

すると拳とビームサーベルとの接触面に僅かにだが紫色のバリアが見えた。ナハトヴァールは拳によく見ないと視認ができないレベルでプロテクションを張っていたのだ。

だが、原因がわかったところでナハトヴァールはもう片方の拳をヒイロに向けて振り下ろす。ヒイロはそれを視認するとナハトヴァールと斬り結ぶのをやめ、距離を取ろうとする。

 

「っ・・・・!?」

 

ヒイロの表情が再度驚愕のものに変わる。ビームサーベルを持っていた腕にいつのまにか桜色のバインドがかけられていたのだ。魔力光そのものはなのはのものだが、十中八九、目の前のナハトヴァールが仕掛けたのは明白だ。

 

(闇の書は元々は魔法を保管する書物・・・!!なのはから魔力を蒐集した時に使い方を記録したのか・・・!!)

 

強度こそは破壊できなくもなかったが、既に目の前にナハトヴァールの拳が迫っていた。

ヒイロは舌打ちをしながら空いていたもう片方の手でナハトヴァールの拳を受け止める。

常人であれば受け止めることすらままならない威力と衝撃だったが、ヒイロはそれを苦い表情を浮かべながらもなんとか押しとどめる。

 

しばらく力と力の取っ組み合いを繰り広げていたヒイロとナハトヴァールだったが、先に均衡を破るものが現れた。

ナハトヴァールの両足をオレンジ色のバインドが縛り付け、行動を制限する。ナハトヴァールはそれに僅かにだが視線を持っていかれる。

 

「ヒイロ!!ソイツから離れな!!」

 

ナハトヴァールにバインドを仕掛けた人物であるアルフがヒイロにそう呼びかける。ヒイロはそれを聞くと同時にナハトヴァールの後方からレイジングハートを構えるなのはの姿が見え、ゼロシステムがヒイロの背後にいるフェイトの姿を捉えていた。おそらく砲撃魔法を使用するつもりなのだろう。

意図を理解したヒイロはウイングゼロの双肩に搭載されているマシンキャノンをナハトヴァールに向けて掃射する。

あいにく放たれたマシンキャノンの弾はプロテクションに阻まれてしまうが、炸裂した煙幕がナハトヴァールの視界を潰す。

ヒイロはその間にバインドを物理的に破壊するとナハトヴァールから距離を取った。

 

『Plasma Smasher』

「ファイアっ!!!」

『Divine Buster Extension』

「シューートッ!!!」

 

砲撃準備をしていたなのはのレイジングハートとフェイトが展開した金色の魔法陣からナハトヴァールに向けて一直線に二筋のビームが疾る。

 

「砕け。」

 

そのような状況でナハトヴァールは表情一つ変えることなく機械的に言葉を紡ぐと闇の書が発光。次の瞬間にはアルフが仕掛けたバインドを粉砕していた。

自身を縛るものがなくなったナハトヴァールがなのはとフェイトが放った二筋の光に向けて、掌をかざす。

 

「断て。」

 

再度一言だけ呟くと両の掌から漆黒の魔法陣が現れる。その魔法陣はなのはのディバインバスターとフェイトのプラズマスマッシャーを塞きとめる。

そのことになのはとフェイトは険しい表情を浮かべながらもナハトヴァールに向けて照射を続ける。

そんな最中、ナハトヴァールから距離を取ったあと、アルフの隣で様子を見ていたヒイロはナハトヴァールの周囲に血塗られた短剣が展開されていることに気づく。

 

「反撃されるぞ!!警戒を怠るなっ!!」

『っ・・・・!?』

 

ヒイロが2人に向けて告げた瞬間、血塗られた短剣が真紅の軌跡を描きながらなのは、フェイト、そしてアルフとヒイロに襲いかかる。

ヒイロはビームサーベルを手にするとゼロシステムを駆使して短剣の軌道を読み切り、ヒイロとアルフに直撃する直前でビームサーベルを横薙ぎに一閃する。

 

短剣を消しとばしたヒイロはなのはとフェイトがいた場所に爆煙が上がっていることに気づく。程なくして2人が爆煙から現れると無意識に無事を祈っていたのか、ヒイロは少しばかり息をついた。

 

「・・・・アンタの指導のおかげってやつかね?2人ともヒイロの声を聞いた瞬間にしっかりと反応していたよ。」

「・・・・・あの程度でやられるほど柔ではないだろう。」

 

アルフとそんなやりとりをしたのもつかの間、ナハトヴァールは次の行動に移していた。

掌を掲げると自身の足元に白い三角形の魔法陣を展開する。そして、掌からは桜色ーーつまりなのはの魔法陣が展開された。

 

「・・・・何をするつもりだ?」

「あれは、なのはの・・・・?」

「咎人達に、滅びの光を。星よ集え、全てを撃ち抜く光となれ。」

 

ヒイロとアルフが怪訝な表情を浮かべながら様子を伺っているとナハトヴァールが魔法の詠唱とも取れる言葉を発する。

するとナハトヴァールの周囲から桜色の光が生まれては魔法陣に集束、生まれては魔法陣に集束を繰り返していく。

光は徐々に巨大化していき、ナハトヴァールの身長を優に越すほどまでになっていた。

呆然とした様子のなのはだったがポツリと言葉をこぼす。

 

「スターライト・・・ブレイカー・・・・?」

 

スターライトブレイカー。それはヒイロがまだ記憶を失っていた時になのはが結界を破壊するために放った砲撃魔法。

その威力は凄まじく、結界を破壊してもなお、その爆光は空を貫いてくほどであった。

 

「アルフ!!ヒイロさん!!」

 

フェイトは呆けているなのはの手を引きながらアルフとヒイロに呼びかける。

アルフはフェイトが何を言おうとしているのかがわかったのかナハトヴァールに背を向け、現空域から離れていこうとする。

ヒイロもアルフを追うようにウイングバインダーを羽ばたかせ、現空域を離れる。

 

「・・・・あれは余程の威力を誇るようだな。」

「あれ、ヒイロ見てなかったのかい?てっきり初めて守護騎士の連中と戦った時に知ってるもんだと・・・。」

「・・・・あの時はゼロに苛まれていた。その時の意識は曖昧だ。これまでの記憶を取り戻したというのもあったのだろう。」

「なるほどねぇ・・・。」

「なのは、スターライトブレイカーの射程距離はどれほどだ?」

 

アルフとの会話を終えるとヒイロはウイングゼロの通信機能を介して、なのはに念話という形でコンタクトを取る。

 

『え?射程・・・・ですか?伸ばそうと思えば伸ばせるので・・・わかんないです。はい。』

「・・・・射程ぐらい把握しておけ。戦闘において自分の有効射程距離を把握しておくのは当然だ。」

『ご、ごめんなさい・・・・。』

 

なのはの言葉に呆れ果ててため息すらも出てこないヒイロ。射程がわからないのであれば、どこまで逃げ果せれば良いのか具体的な部分がわからない。

 

『あの・・・とりあえず私が答えますね・・・・。』

 

どうやら代わりにフェイトが答えてくれるそうだ。ヒイロはなのはが知らないことをフェイトが知っているのだろうかと思っていたが、口には出さないことにした。

 

『とはいえ私自身、なのはのスターライトブレイカーの射程はわかりません。だけど回避に専念することを薦めます。まともに喰らえば、防御した上でも堕とされます。』

「・・・・まるで自身が受けたことがあるような言い草だな。」

『はい。なのはと戦った時にバインドをかけられた上でそれを喰らいましたから。』

 

ヒイロはその言葉を聞いて、拠点のアパートでエイミィに見せてもらったなのはとフェイトが戦っている映像を思い出す。

 

『死ぬほど痛かったです。』

「・・・・そうか。」

 

フェイトの抑揚のない言葉にただ一言だけ返すヒイロ。しかし、デバイスには非殺傷設定が施される以上、自爆以上に死ぬほど痛いことにはならないだろうとヒイロは心の中で決め込んだ。

その時、ウイングゼロのセンサーがある反応を示す。

ゼロシステムにより、ヒイロの脳内に直接インプットされる情報によると、どうやら結界内にヒイロ達4人とは別に生体反応が二つほど存在しているということであった。

 

『ヒイロさん・・・!!』

「こちらでも確認した。結界内に生体反応が見受けられる。状況を鑑みるに一般人だろうな。」

「一般人・・・!?こんなところにかい!?」

 

フェイトの念話にそう返すとアルフが焦ったような声が響く。ナハトヴァールは現在スターライトブレイカーのチャージ中だ。ツインバスターライフルには及ばないかもしれないが、それでも高威力なのは確かだ。衝撃に巻き込まれればひとたまりもないだろう。

 

「俺が救出に向かう。お前たちはそのまま現空域を離脱しろ。」

『・・・・わかりました。でも、決して無理はなさらないように。』

「ああ。」

 

フェイトの念話に端的に答えるとヒイロは高度を落とし、ビルの合間を潜り抜けていく。

高度を落としてから程なくして、ヒイロは反応のあった地点に降り立つ。

その時にちょうど建物と建物の間から2人の子供が出てきたのが見えた。

片方はストレートに伸ばした茶色じみた金髪に碧い瞳の少女。

その彼女が手を引いているのはウェーブがかった紫色のロングヘアーに白いカチューシャをつけた少女。

 

ヒイロが出会ったアリサ・バニングスと月村すずかその人であった。

 

ナハトヴァールのチャージは目前まで迫っていた。猶予の時間はほとんど残されてはいないと考えていい。

 

「貫け、閃光。スターライト、ブレイカー。」

 

そして、ナハトヴァールの魔法陣からチャージが完了したスターライトブレイカーが放たれる。地上に向けて撃たれたそれはドーム状の爆発を引き起こすとビルをまるごと呑み込みながらヒイロ達へと迫り来る。もはや選択肢は残されていない。

ヒイロはアリサとすずかに背後から近づくと有無も言わさず2人を担ぎ、スターライトブレイカーの爆発から逃走を図る。

 

 




プランは整えた。あとは自分がどこまでやれるか、確かめるだけです。
こじつけかもしれないけど、二次創作とはそのためにあるものだと考えている。原作とはぶち壊すもの。
祝福の風、その風を途絶えさせないために。

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