魔法少女リリカルなのは 〜オーロラ姫の凍りついた涙は誰のために〜   作:わんたんめん

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推奨BGMは『Rhythm Emotion』もしくは『Eternal Blaze』のどっちか、だと思いますわ・・・。


第28話 未来の行方

「まずは足を止めさせます!!アルフさん、ユーノ君、ザフィーラは先行してバインドを!!」

「あいよ!」「了解!!」「心得た!!」

 

後方支援がメインのシャマルの指示で三人が先行して闇の書の闇へと接近する。

バインドを仕掛けて動きを抑制させるためだ。

しかし、闇の書の闇の周囲に蔓延る触手のような生き物の大口が開くとそこから魔力で編まれたビームが発射される。

触手の数も相まってそのビームの数は視界が埋まりそうなほど想像を絶し、アルフたちは足止めを余儀なくされてしまう。

 

「ヒイロ君!!援護を!!」

「任務了解。」

 

シャマルの指示がヒイロに飛ぶ。任務を受諾したヒイロはウイングゼロの翼を羽ばたかせながらビームの中を突き抜けていく。

やがて一度の被弾もなく弾幕を切り抜け、アルフたちの前へ躍り出たヒイロはツインバスターライフルを二つに分割した状態で闇の書の闇にその銃口を向けた。

 

「ターゲットロックオン。直ちに敵生命体を殲滅する。」

 

ヒイロがバスターライフルの引き金を引くと二つの銃口から山吹色の閃光が放たれる。触手状の生命体は変わらずビームを吐き出しているが、バスターライフルの荷電粒子砲の光はそれすらも容易く呑み込み、闇の書の闇を囲っていた生命体、配置的には砲台のようになっていたものをチリ一つ残さず消滅させる。あわよくばバスターライフルによるプラズマ過流とリーゼロッテをプロテクションごと焼き尽くした灼熱の奔流で闇の書の闇本体にもダメージを期待したが、肝心の本体はその巨体を覆うほどの結界を形成して防御しており、ダメージのようなものは見られなかった。

 

(あれが話にあった闇の書の闇が展開する複合4層の防御結界か。あれの破壊は別の奴に任せることになっている以上、余計な手出しは無用か。)

 

「敵生命体の消滅を確認。・・・再生されないうちに早く行け。」

「サンキュー、ヒイロ!!」

「先鋒の役割、しかと果たしてみせよう!!」

「あれほどの火力を瞬時に発射できてしまうなんて・・・やっぱりヒイロさんの世界は科学技術の進歩が著しいんだな・・・。」

 

アルフは感謝、ザフィーラは自身を鼓舞する声をあげ、ユーノはウイングゼロの火力に舌を巻くと三者三様の反応を見せながら闇の書の闇に接近していく。

 

「さぁーて。コア露出までアタシたちで時間を稼ぐよ!!」

「無論だ。盾の守護獣として、敵を押しとどめるのは専売特許だ。」

 

「それじゃあいくよ!!ケイジングサークルッ!!」

「チェーンバインド!!」

「穿て!!鋼の軛っ!!」

 

各々がバインド系の魔法を闇の書の闇に向けて使用する。ユーノのケイジングサークルは闇の書の闇を取り囲み、アルフの鎖は脚を縛り付け、ザフィーラの軛は楔となりて闇の書の闇に打ち込まれる。

楔に鎖、さらには自身を覆う囲いと移動を抑制された闇の書の闇。

しかし、その抑制もあまり効果がないのか闇の書の闇が暴れるとアルフのチェーンバインドとザフィーラの鋼の軛は粉々に粉砕されてしまう。

ユーノの展開しているケイジングサークルは強度が段違いなのか闇の書の闇が暴れても壊れる様子は見られなかった。

 

「そう簡単に、破らせる訳にいかないよ・・・!!!これでも伊達に結界魔導師をやっている訳じゃないからね!!」

 

 

 

「第1陣、なのはちゃんにヴィータちゃん!!お願い!!」

「鉄槌の騎士、ヴィータと鉄の伯爵、グラーフアイゼン!!」

「高町なのはとレイジングハート・エクセリオン!!」

 

「行くぜっ!!」「行きますっ!!」

 

なのはとヴィータがそれぞれの獲物を構えながら闇の書の闇へと飛翔を開始する。

ユーノのケイジングサークルに阻まれ、碌に動けない闇の書の闇は自身の周囲から再度触手型の生命体を作り出し、接近する二人に向けて砲撃を開始する。

 

「ヴィータちゃん!!」

「わーってるからさっさと援護を頼むぜ!!」

 

飛来する砲撃に対し、ヴィータはスピードを上げながらさらに闇の書の闇に接近を開始する。

対するなのははレイジングハートを構えると自身の周囲にアクセルシューター用のスフィアを展開する。

途中、直撃弾の砲撃が飛んでくるがなのはの堅牢な防御力の前に弾かれる。

 

「ターゲット、マルチロックオン・・・・!!当たれぇぇぇぇぇぇ!!」

『Accel Shooter』

 

振り上げた右手を勢いよく振り下ろす。その瞬間、なのはの周囲を飛んでいた総勢32のスフィアが桜色の軌跡を描きながらヴィータに近づく砲撃を悉く撃ち落としていく。

 

「よくもまぁ・・・あんな数を制御するもんだ。」

 

ヴィータはなのはに対し、驚嘆するような表情をしながら、彼女の援護のもと、闇の書の闇の頭上までたどり着く。

長らく自身や幾人もの主を苦しめてきたその元凶を叩き潰し、ついぞ得ることのなかった平和な日常をこの手で掴む。

ヴィータはグラーフアイゼンを握る手に力を込めるとカートリッジの薬莢を吐き出させ、リロードする。

 

「轟・天・爆・砕!!!」

 

ヴィータがその掛け声と共にグラーフアイゼンを振り回すとその槌の部分が分解され、パーツが組み替えられていく。パーツとパーツが組み合わさる音を辺りに響かせながらグラーフアイゼンはその姿を徐々に巨大にしていく。

やがてグラーフアイゼンの槌はヴィータの身長をゆうに越え、闇の書の闇と同等の大きさまで巨大化する。

 

「ギガント・・・シュラァァァァァクッ!!!!!」

 

 

およそ質量保存の法則もへったくれもなくなったグラーフアイゼンをヴィータは思い切り闇の書の闇へと振り下ろす。

闇の書の闇は当然防御結界を展開し、防御するが、グラーフアイゼンのその圧倒的な質量攻撃に第1層目を粉砕されながらその身を海中へと沈められる。

しかし、結界は破壊しても闇の書の闇自体は未だ健在で辺りに砲撃を撒き散らしながら耳をつんざくような咆哮を上げる。

 

「一層目、ぶっ壊したぜ。」

 

それでも一通り、自分の為すべきことをなしたヴィータは得意気な表情を浮かべながら元の大きさに戻ったグラーフアイゼンを肩にかける。それを確認したシャマルが次の指示を飛ばす。

 

「次、シグナムとフェイトちゃん!!魔力攻撃による第2層、第3層の破壊をお願い!!」

「了解した!!剣の騎士、シグナムとその魂、炎の魔剣、レヴァンティン!!」

「フェイト・テスタロッサとバルディッシュ・アサルト。」

 

「参るっ!!」「行きますっ!!」

 

海水ギリギリの高度でシグナムとフェイトが闇の書の闇に向けて肉薄する。

シグナムとフェイトが迫り来ることを視認したのか闇の書の闇は砲撃を二人に向けようとするが、ヒイロ達が瞬時にバスターライフルやバインドを用いた妨害に入り、まともな対応を取らせない。

 

「先行します!!」

「ああ、頼んだ。」

 

フェイトがシグナムにそういうと彼女の前に踊り出て、バルディッシュを構え、カートリッジを二発リロードする。カートリッジからの魔力をもらったバルディッシュはその鎌状の魔力刃の輝きを一層強める。

 

「クレッセント、セイバーっ!!!」

 

そして勢いよくバルディッシュを振るう。バルディッシュについていた魔力刃は斬撃波のように回転しながら闇の書の闇に飛んでいく。

しかし、その刃は結界に阻まれ、その巨体に届くことはなかった。

 

これでいい、フェイトはその心の中で言いながら大きくジャンプすることで闇の書の闇を飛び越え、シグナムと挟み撃ちのような構図を作り上げる。

 

「刃、連結刃に続く我が魂のもう一つの姿、今ここに見せよう。」

 

左手にレヴァンティンの鞘、右手に剣を持ったシグナムは剣の持ち手を本来であれば刃を入れるはずの鞘に差し込んだ。

その瞬間、レヴァンティンの形状が僅かに変化し、剣の切っ先と鞘の先端が魔力で編まれた糸で繋がった。

その様子はさながら弓のようであった。

 

「闇の書の闇・・・貴様の存在、その何もかもを夜天の書から消してみせよう。」

 

シグナムは闇の書の闇に向けて静かに言い放つとカートリッジから二発リロードし、魔力で構成された矢を摘みながら弦を弾く。

視線を鋭くし、闇の書の闇をその眼光で捉える。

さらにシグナムは矢を引いた状態のまま、もう二発、カートリッジをリロードする。

 

「翔けよ、隼っ!!」

『Sturmfalken』

 

シグナムの指から矢が離れる。その瞬間、凄まじい勢いで矢が発射され、その矢が炎に包まれる。

紅蓮の焔に包まれながらもその形はさながら鳥のような翼を持ち、一直線に闇の書の闇へと突っ込んでいく。

その炎の鳥は闇の書の闇の展開する結界を貫き、内部で爆発。その威力は結界内部が炎に包まれて見えなくなるほど強力なものであった。

 

「フェイト・テスタロッサ、目標を破壊しますっ!!」

 

対岸にいるフェイトもバルディッシュにカートリッジリロードを命じる。

 

「バルディッシュ、ザンバーフォーム!!」

『Zanber form』

 

薬莢が吐き出されたことを確認したフェイトはバルディッシュに指示を下し、その形状を変えさせる。

バルディッシュは鎌状から剣の持ち手部分のような形へと変わり、半実体化したような魔力で構成された刀身を作り出した。

 

「撃ち抜けっ!!雷神っ!!!」

『Jet Zamber』

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

乾坤一擲、声を張り上げながら巨大化したバルディッシュの刃を闇の書の闇に向けて振り下ろす。

その太刀筋は一切の迷いなく、闇の書の闇の結界をシグナムが破壊しかけた第2層と第3層をまとめて破砕する。

 

「あと一層・・・・!!」

 

フェイトがそう言いながら追撃を仕掛けようとした瞬間、闇の書の闇に異変が生じる。

胴体の大口が一際大きな咆哮をあげ、その巨体が悶え始める。

 

何かがおかしい。フェイトの直感がそれを感じ取る。

 

「う、ウソ・・・・!?」

 

フェイトは思わず驚愕の表情を浮かべながら、()()()()()()

闇の書の闇がその背中に生えていた生々しい翼を羽ばたかせるとその巨体を空へと浮かせる。

ある程度まで浮遊した闇の書の闇は水色のプレート状の結界を自身の周囲を取り囲むように展開する。

 

「まだクロノの魔法には時間がかかる・・・。このままじゃ・・・。」

『各員に通達する。そのまま作戦行動を継続しろ。』

 

逃げられる。その思った瞬間、フェイト達に念話が届く。その念話の主はヒイロであった。

フェイトは咄嗟にヒイロの姿を探すが一向にその姿を見つけられない。一体どこに行ったのかと思っていると視界の端に僅かに空に輝く光が見えたような気がした。

 

「ヒイロさん・・・・?」

 

目を凝らしてその光を見てみると滞空している闇の書の闇、そのさらに上を取ったヒイロがツインバスターライフルを構えながら滞空していた。

 

 

「出力をリミッター上限の70%に調整・・・・戦術レベル、効果最大確認・・・。」

 

ヒイロは照準を闇の書の闇に向ける。僅かにブレを見せていたサイトは程なくして固定化され、動かなくなる。

 

「ターゲット・ロックオン。ツインバスターライフルを使用する。」

 

その瞬間、ヒイロはツインバスターライフルのトリガーを引く。銃口に一瞬、光が集まったかと思った瞬間、バスターライフルの時とは比べものにならないほどの爆光とエネルギー質量が闇の書の闇に向かい、一直線に飛んでいく。

なのはの持つ砲撃魔法、スターライトブレイカーと遜色ないほどのビームを闇の書の闇は展開していた結界で防ごうとする。

しかし、ツインバスターライフルのエネルギー質量の前にプレートは瞬時に呑み込まれ、消し炭と化す。

そのままツインバスターライフルの光は闇の書の闇に直撃し、その巨体を貫通。突き抜けたビームは海上で大爆発を起こし、海鳴市の空に巨大な水柱を形成する。

高く打ち上げられた水柱から降り注ぐ海水と爆発の余波に思わず顔を腕で覆うフェイト。

しばらく爆発に煽られるフェイトだったが、やがて衝撃波も止み、恐る恐る腕を下げるとそこには目を見張る光景が広がっていた。

 

貫通するほどの攻撃を喰らい、バランスを崩したのか、闇の書の闇はその身を再び海上に下ろしていた。

だが、何より目につくのはその巨体に付けられた円形の空洞、十中八九、ヒイロが撃ったビームが原因だろう。

穿たれた円形の空洞は外縁が赤熱化して、その熱が闇の書の闇の無限再生機能を阻害しているのかしばらく治る気配は見当たらなかった。

 

「結界ごと、闇の書の闇を撃ち抜いた・・・!?これが、ヒイロさんの世界の、ウイングガンダムゼロの力・・・・?」

 

フェイトは目の前に広がる光景に驚くことしかできないでいた。ただでさえ火力の凄まじいバスターライフル。一度、リーゼロッテ達を捕らえる際に撃っていたが、あれは二丁あるうちの片方、それも出力を抑え、わざとビームを外した上でその余波だけで管理局でも有数の実力者であるリーゼロッテを奇襲だったとはいえ、一撃で撃墜した。

それだけでも舌を巻いてしまうほどの火力だと言うのに、そのバスターライフルを二丁合わせた武装はそれすらも軽く凌駕してしまった。

 

「な、なななななな、なんや今の・・・!?ま、まさかとは思うけど、ヒ、ヒイロさんが、やったんか・・・?」

『何という、火力とエネルギー量・・・・。単純火力だけを見れば、高町なのはのスターライトブレイカーと遜色ない・・・!!あれが、ヒイロ・ユイの、アフターコロニーのモビルスーツの、力・・・・!!!』

 

目の前で起こったありえない光景にはやてはベルカ式の正三角形の魔法陣を展開したまま、その中心で驚愕の表情のまま固まり、リィンフォースは改めてウイングガンダムゼロの圧倒的な火力の高さに対して認識を改める。

 

「凄い・・・・・・!!」

『何を呆けている。闇の書の闇は再生を始めているぞ。さっさと作戦行動を再開しろ。』

「あ!!は、はいっ!!」

 

なのはがツインバスターライフルの火力に呆然としているとヒイロから念話が飛んでくる。なのははその声に慌てた様子を見せながら移動を開始する。

チラリと視線を闇の書の闇に移してみればヒイロの言う通り、ツインバスターライフルで開けられた空洞が塞がりかけていた。

やはり、コアをどうにかしなければ停止させることは難しいようだ。

 

 

「クロノ君!!あとどれくらいで行けるんや!?」

 

驚愕していた表情を元に戻し、はやては海上に立ち、グレアムから託され、現在手にしているデバイス、『デュランダル』を構えながら、詠唱しているクロノに声をかける。

 

「…………30秒。いや、20秒待ってほしい。」

「20秒やなっ!!りょーかい!!」

 

詠唱しているクロノは静かに閉じていた瞳を開けるとはやてに端的にそう伝える。それを聞き届けたはやては予め展開しておいた魔法陣の光を一層強める。

 

「彼方より来たれ、やどりぎの枝。銀月の槍となりて、撃ち抜け。石化の槍、ミストルティン!!」

 

はやてが詠唱を唱えると背後から魔法陣を中心に六本、その生み出された槍の中心に一本の計7本の槍が闇の書の闇に降り注ぐ。

ツインバスターライフルによるダメージで再生に躍起になっているのか、闇の書の闇は避ける素ぶりすら見せず、槍はその巨体に深々と突き刺さると刺さった箇所からさながら侵食するように石へと変えられていく。

程なくしないうちに闇の書の闇は完全に石化してしまった。

 

「刺さった箇所から石に変換させる魔法か・・・。仮に相手になるのであれば厄介極まりないな。」

 

ヒイロははやての魔法を見て、そのようなことを口にする。どれほど効果が強いのかは検討はつかないが、もし掠めただけでその石化の効果が発揮されるのであれば、ヒイロにとっても脅威になりかねない。

 

「足止めにしかならんと思うけど・・・!!」

「いや、十分だ!ありがとう!!」

 

はやてが苦々しい表情を浮かべるがクロノから感謝の言葉が届く。それが意味するものは、魔法の詠唱が完了したに他ならない。

クロノはデュランダルを石化している闇の書の闇に向けた。その彼の周囲には夥しいほどの視覚化された冷気が立ち昇る。

 

「悠久なる凍土、凍てつく棺のうちにて、永遠の眠りを与えよ!!」

 

「凍てつけっ!!エターナルコフィンっ!!!!」

 

クロノが手にしたデュランダルから青白く輝くビームが発射される。そのビームは海上を凍らせながら闇の書の闇に迫り来る。やがて、そのビームは着弾すると闇の書の闇を呑み込むほどの眩い光を放つ。

光は周囲に撒き散らすがデュランダルのものと思われる四つのビットがその光を反射し、闇の書の闇を光の中に閉じ込める。

 

エターナルコフィンの光が収まってくると、闇の書の闇は澄んだ氷の檻に閉じ込められ、その動きを完全に停止させていた。

クロノはその様子を確認すると、荒い息を吐きながら、空を見つめる。

見上げた空には一面の黒く分厚い雲ーーではなく、超巨大な桜色のスフィアが形成されていた。その超巨大なスフィアを作り上げた少女の側には、親友である金色に輝く雷光、白い魔法陣を展開している最後の夜天の主。

 

そして、彼女らを守護するようにその身の丈程ある巨大な純白の双翼を広げた天使が、その手に持つ銃身の長い細身の銃を闇の書の闇に向けていた。

 

「なのは、フェイト、はやて、ヒイロ!!あとは頼んだっ!!」

 

 

 

「・・・・準備はいいな?」

 

ヒイロがそう確認を取るとなのはとフェイトは無言で頷いた。しかし、はやては魔法陣を展開したまま、申し訳なさげな表情を浮かべ、考えに耽っているようだった。その様子はどこか悲しみを帯びていた。

 

「・・・・はやて。」

 

見かねたヒイロがはやてに声をかけるとびっくりしたのか一瞬、身を竦ませるとヒイロに視線を向ける。

 

「・・・・もしかして、見とった?」

「深く追及するつもりはない。だが、これだけは言っておく。お前が戦わなければ、またお前と同じような犠牲者が必要となってくる。」

「・・・・・ヒイロさん、時折ずるい言い方しよるよな・・・・。」

「事実を言ったまでだ。」

「でも、ありがとな。気を使ってくれたんやろ?」

 

そう言って笑顔を浮かべるはやてにヒイロは視線を向けることすらせずに闇の書の闇を見据えている。

その瞳がクロノのエターナルコフィンで作られた氷の牢獄の中で胎動を続けていることを目にする。

 

「この状況でもまだ動くか。はやて、もう一度確認するが、行けるか?」

「・・・・・うん。大丈夫。」

「・・・・そうか。」

 

はやての意志を確認したヒイロは再度ツインバスターライフルを闇の書の闇へ構え直す。

なのは、フェイト、はやての三人も自身のデバイスを介して、魔法陣の光を一層強める。

なのははとてつもない大きさの桜色のスフィアの輝きを強め、フェイトは雷光を帯びた半実体化した巨大な剣を、はやては正三角形型の魔法陣のそれぞれの頂点から黒い稲光を帯びた白いスフィアを発生させる。

 

「スターライト……!!」

「プラズマザンバー……!!」

「響け、終焉の笛!!ラグナロク!!」

 

ヒイロもツインバスターライフルの照準を固定する。その照準が捉えているのはその巨体に取ってつけたような女性の上半身の姿をした部分であった。

 

「闇の書の闇、ゼロが見せる未来の中に、貴様は存在しない!!」

 

ゼロシステムが見せたビジョンがその女性の上半身を模した部分にナハトヴァールのコアがあることを知らせる。ヒイロはそのビジョンの通りにツインバスターライフルのトリガーを引く。

 

『ブレイカァァァァァァァァァァ!!!!!!』

 

ツインバスターライフルの閃光が先に迸ると同時になのは達三人の魂のこもった砲撃魔法が闇の書の闇に向けて振り下ろされる。

組み合わさった兵器と魔法、相反する二種類の砲撃は闇の書の闇に直撃すると、大爆発を起こす。

 

その規模は爆発の余波で生まれる衝撃波が周囲にあった岩盤のオブジェを壮大な音を響かせながら崩壊させるほどのものであった。

無論、その爆発の中心にいる闇の書の闇も例外ではなく、三つの砲撃魔法と一つの大規模ビームが組み合わさった爆発はその巨体の肉を容赦なく削いでいく。

徐々に肉や皮が削がれ、骨格のようなものを爆発の中で晒していく闇の書の闇。

その中にヒイロは、怪しく紫色に輝くものを自身が狙い撃った女性の上半身を模した部分の中から見つけ出した。

 

「シャマルっ!!コアの露出を確認したっ!!」

 

直感的にその怪しく輝いている光の球体をコアだと断定したヒイロはシャマルに向けて呼びかける。

 

「こっちでも、確認済み・・・・っと!!」

 

その声が届いたかどうかは定かではなかっつが、爆発から離れた位置にいたシャマルは自身の転移魔法である『旅の鏡』から様子を見ていた。

そして、旅の鏡から映し出される映像にナハトヴァールのコアを確認したシャマルはそのコアを旅の扉の性質で自身の目前に、『取り寄せた』。

 

「長距離転送っ!!」

「目標、軌道上っ!!!」

 

シャマルのそばにいたユーノとアルフが彼女が取り寄せたナハトヴァールのコアを挟み込むように魔法陣を展開する。

そして、ナハトヴァールのコアは二人の転送魔法によって、上空に空高く打ち上げられた。

 

 

 

「コアの転送を確認!!ですが今なおコアを中心にして再生中!!は、早いっ!?」

 

ナハトヴァールのコアが転送されたのを確認したアースラのブリッジでは慌ただしくコンソールのパネルに打ち込む電子音が響き渡る。

 

「各員は落ち着いて対応を!!エイミィ、アルカンシェルのチャージは?」

「既に完了済みです!!いつでもどうぞ!!」

 

その慌ただしい状況の中でも艦長であるリンディは落ち着いた声をあげながらエイミィにアルカンシェルのチャージ状況を聞いた。

 

「試運転中に闇の書の暴走が始まってしまったから、細部の調整まで済んでいないけど、やるしかないわね。」

 

リンディは周囲に聞こえないほどの声量で言葉を零すと目の前に半透明な立方体が現れる。その立方体にはちょうど鍵が入りそうなほどの細い空洞が取り付けられていた。

リンディは手にしていた鍵を静かに見つめる。リンディが持っている鍵はアルカンシェルの火器管制機構のロックシステムを解除する文字通りの最後の鍵だ。

 

「ファイアリングロックシステム、解除。」

 

そういいながら鍵を挿し込むと半透明だった立方体は真っ赤に染まり、さながら閉じられていたものが開いたかのように立方体が二つに分割される。

 

「転送されたコア、来ますっ!!!」

 

アースラの正面に複雑な巨大魔法陣が三つ現れると同時に地球から転送されてきたナハトヴァールのコアが出現する。

その身はぐちゃぐちゃに崩れたまま再生されたのかもはや生物としての原型を留めていないほど様々な生物が混ざりに混ざり合っていた。

思わず艦内でどよめきの声が上がるがリンディは最後まで落ち着いた様子のまま、アルカンシェルのファイアリングロックシステムに手を当てる。

 

「アルカンシェル、発射っ!!!!」

 

 

「・・・・ゼロが激しい警告を挙げている?どういうことだ?」

 

リンディの意志のこもった声とヒイロの疑問気な声はほぼ同時に発せられた。

アースラから放たれたアルカンシェルの光は正確にナハトヴァールのコアへと飛んでいく。

 

 

『Anfang』

 

 

積み重なった闇は天に広がる希望の虹さえ、呑み込んだ。

そのことに最初に気づいたのはーーー

 

「ウソ・・・・!?アルカンシェルを……吸収した?」

 

エイミィの声が管制室の中で静かに響きわたる。それほど大きな声で言った言葉でなかったが痛いほどに響き渡ったのは全員が目の前の現実を正確に認識できていないからだ。

未来へと続く道は未だ、分厚い絶望の雲に包まれたまま。虹すら呑み込む深淵の闇を人は、人類の可能性は乗り越えることができるだろうか?




あー闇の書の闇がしぶといんじゃー^_^

闇の書の闇「まだだ、まだ終わらんよ!!」


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