京太郎&赤木 クロスオーバー   作:五代健治

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私が新しい話を投稿すると、いつも最初の24時間くらいはお気に入り数が減り続けるんですけど、あれ何なんですかね。
さて、今回から半オリキャラ増えるので嫌いな人は気をつけてね。


12話 カエルの孫たちもカエル

 

 

「いやぁ、それにしても京太郎。おんしホンマに強くなったのぅ」

「え、そうですか?」

 

 一緒にタコスをかじりながら、染谷先輩が褒めてくれた。

 

「最後の一局もそうじゃが、それまでもなんとか耐えとったじゃろ。ツモられて削られまくっとったが、振り込みはやっすい変則待ちと、わしの多面張に振り込んだだけじゃし」

「いやその振り込んだのが跳満だったんで全然よくないんすけど………」

「まぁそりゃそうじゃが、よく南2局までは持ちこたえたというべきじゃろ。久ほどうまくはないが、大抵の奴なら東場のうちに変則待ちに調子を崩されて、もっと早く大物手に振り込み始めていたはずじゃ。正直わしの方が焦れたぞ」

「はぁ………」

 

 みんなの高打点ツモにゴリゴリ削られて、内心で止めてくれと泣き叫び続けていたので実感はない。

 あれだね、炙られ続ける焼き鳥の気分だ。

 

「うんうん。後ろで見ていて、そんなに大きな間違いはしてなかったよ。

 和ちゃんほど効率よく打ててはいなかったけど、好みの問題とかで片づけられる程度だったし」

「いやでも最後の{二}単騎は絶対大間違いだろ………。あんなの只の運……」

「京太郎」

 

 赤木さんが雑誌から顔を上げ、俺の方をまっすぐ見据えた。

 特別鋭いというわけではなかったんだけど、その視線を真正面から受けて、俺はひやりとしたものを感じた。

 

「その大間違いってのは、誰が決めた?」

「え? そりゃ………よくある、麻雀のセオリーとかと比べて………」

「定石通り打てば必ず勝てるほど、博打ってのは簡単なものか?」

「いや、そりゃあ違いますけど………」

 

 定石というのは大事だ。

 だが、それさえ守っていれば勝てるわけではない。

 そんなことを言ったら、和は今頃インハイ個人戦一位の実績を持っていないとおかしい。

 

「そう。そりゃ普段はよくある確率だのなんだのに従っていても、悪かないさ。

 だがそれだけでは、絶対に限度がある。

 定石や基本だけでは勝てない境界線に立った時………その時頼りになるものはもう、自分独自の考えではじき出した答えしかねぇ。

 そんな土壇場に来てまで、他人の提唱した考え方に縋りつくやつに勝機はない。

 普段従っている、「もっともらしい考え方」とどれだけ異なろうが、自分で導いた答えに従えないやつはずっと二流どまりさ。

 そしてお前は運よくか、そうなるべくしてなったのかは知らんが………自分自身の考えを信じ抜いた結果、勝利を手にした。

 その自分を勝利に導いたもの………言うなれば、博感や博才というもんは、絶対に疑うな。

 如何に鋭い感覚、才能があったところで、自分がそれを信じてやれなくちゃ宝の持ち腐れなんだからよ」

「……………はい」

 

 俺は表情を引き締めて、その言葉を噛み締めた。

 定石ではない、理屈ではない理外の強さ。

 そんなものが俺にあるのかどうかは分からないが、無いと最初から全否定してはあるものもなくなってしまう。

 

「うぅーむ、よくわからんじぇ」

 

 既に3つ目のタコスに手を伸ばそうとしていた優希が頭をひねる。

 食い過ぎると縦より横に伸びるぞ。

 

「あのな………つまり、多分だけど『自分らしい麻雀』を大事にしろってことじゃないのか?

 普段から理論をガン無視のめちゃくちゃをやれっていうんじゃなく、いざっていうときは自分だけで考えたオリジナリティを持てっていうか」

「それなら大丈夫だな! 東場で稼ぎまくっておけば、そんなピンチは無縁だじぇ!」

「さっき南場に入って倍満と満貫に振り込んで飛んだの誰だよ」

「しらんじぇ!」

 

 こいつぜってー大成しないな。

 南場に入ってからの弱点が完全に克服されれば、本当に無敵だろうに。

 

 

 

(…………っははははは!)

 

(ん?)

 

 店の外からだが、騒がしい笑い声が聞こえてきた。

 俺達と同じくらいの年齢の男子が数名、窓から見えた。

 着崩した制服などから見て、お世辞にも品行方正とは言えない風体をしている。

 

(お!? 何々!? 『本日メイドデー』だってよ!)

(え、アレじゃね!? すっげー巨乳のねーちゃんいんぞ!?)

(おっしゃ突撃―!)

 

 え、こっち来るの? と思った時には、入口のドアに付けられたベルが、外れかねない勢いでやかましくリンリン鳴り響いていた。

 

「こんちわー! 巨乳メイドさんのミルクティー3つお願いしまーす!」

「ぎゃっはははは! 実物でも可能でーっす!」

 

 顎が四角い馬面といった感じの、学ランを着崩した馬鹿な高校生が3名入ってきた。

 明らかに下心満載の視線を和に向けており、和が身を縮こまらせるのが分かった。

 

「あいつら………」

「知ってるんですか?」

 

 小声で呻いた染谷先輩と、小声で会話する。

 

(あの真ん中のたらこ唇の四角顎………このあたりの店でブラックリストに入っとる奴じゃ。

 確か東京の川田組とかいう暴力団傘下の組の、組長の馬鹿孫じゃ。

 確か竜崎とか言ったかの………)

 

 暴力団組長、要するにヤクザの孫というだけでなんとなく理解できた。

 後ろ盾が怖くて、注意できる人間がいないといったところか。

 

「あれ………?」

 

 その竜崎とやらの隣にいる馬面に、少し見覚えがあった気がした。

 

(その隣の馬面が、矢木っちゅう正真正銘の馬鹿じゃ。

 今年の長野の男子インターハイ個人戦代表じゃが、インハイ本番でイカサマをして失格になったど阿呆じゃ。

 確か京太郎、おんしも確か予選で当たっておらんかったか?)

 

 そうだ、思い出した。

 インハイの個人戦予選で打った、とびっきりマナーの悪かった奴だ。

 チョンボすれすれの挑発行為も繰り返して来たが、何か言っても大負けしている奴の遠吠えになると思って言いだせなかった。

 

 その後長野代表のイカサマが発覚したと聞いていたが、あいつなら納得だ。

 

(残りが確か黒崎いうたかな? 

 帝愛グループっちゅうでっかい金融会社の重役が親戚にいて、ずいぶん羽振りがいいそうじゃ。高校生の分際での)

 

 なるほど、最後のデカっ鼻は他の二人と同じように学ランを着崩しているが、妙に目立つ金ぴかの腕時計なんかを身に着けている。

 やけに黒い鞄も、高い本革製なのだろう。

 

(一番ヒョロそうに見えるのはあいつじゃがの、一番やばいうわさがあるのはあいつじゃ……。金貸しまがいのことをして、払えなくなった奴の指を切り落としたらしい……)

(ま、マジっすか………?)

(ああ、あくまでも噂じゃけどの……。和、おんしは厨房に入っとれ)

(は、はい)

 

 少しおびえた様子の和は小さくなって厨房に入って、姿が見えなくなった。

 代わりに染谷先輩が3人の方へ向かう。

 

「あーお客さん方、いらっしゃいの前に一言言わせてもらうぞい。

 一応ここ、ただの喫茶店じゃからおさわりは禁止じゃし、周りのお客に迷惑は………

 

「はぁ? 何このわかめっぽいの? チェンジでー」

「ワカメで眼鏡とかマニアック過ぎんだろー。マジ萎えるわー」

「おーい、おっぱいちゃーん! 君が注文取りに来てよー!」

 

(の野郎………!)

 

 注意しようとした矢先に、これ以上なく無礼な返事がよこされた。

 染谷先輩が身体を少し震わせたが、一つ呼吸を置いて落ち着く。

 俺は怒りで頭が沸騰しそうになったが、染谷先輩が堪えているところを見て、なんとか我慢する。

 お店の中でもめ事を起こしても、先輩の迷惑になるだけだ。

 

「…………ミルクティー3つじゃったな?

 今日はサービスしておいてやるから、飲んだらさっさと………」

「だーからワカメはいらねっつの。ほら、しっし」

 

 ブチッ

 

(赤木さん)

(ん? 手を貸せってか?)

 

 興味無さそうにしていた赤木さんに耳打ちする。

 

(ええ、ちょっとトイレに入っててもらえます?)

(…………なるほど)

 

 俺がテーブルの下でこっそり、備え付けの調味料の中から塩と胡椒を大量に手の中に握り込むのを見て、赤木さんがいやーな笑みを浮かべる。

 赤木さんがトイレに入っていくのを見て、俺は席を立った。

 

「おい、お前ら」

「あん?」

 

 身長180センチ以上の男が出てきたことに、馬鹿三人組が少し警戒を強める。

 

「心のこもってない謝罪なんかもらっても胸糞悪いだけだからな。

 見逃してやるから、今すぐに店から出ていけ」

「はぁ? つーかお前………あっはっはっは! おま、あん時の糞雑魚かよ!」

 

 矢木が、俺の顔を見て思い出したのか、いきなり笑い声をあげる。

 

「あん? 知り合いか?」

「あー、インハイ予選で最初に当たってよ。俺含めて他家に向かって満貫跳満倍満の順番にきれーに振り込んでくれたんだよこいつ」

「ぶっは、だっせぇ!」

 

 馬鹿どもが俺を指さして腹を抑えるが、そんなことはどうでもいい。

 俺は仕事をしやすいように、矢木を挑発する。

 

「そういや俺もアンタのこと見覚えあるな。インハイ本番でヘッタクソなイカサマがばれて、無期限出場停止になったクズだったか」

「あ?」

 

 矢木の表情が怒りを帯びたものに変わる。

 

「舐めてんじゃねーぞザコ? なんだったら、今すぐここでもう一度ぶちのめして―――」

 

 矢木が唾を散らしながら吠える。

 だがちょうどやりやすい。自分より背の高い相手の顔を正面から見据えては、手元への注意が反れる。

 俺は手に握り込んでいた大量の塩と胡椒を、矢木の目許に思い切りぶっかけた。

 

「でゃっ!?」

 

 奇妙な悲鳴を上げて、矢木が目を抑えてうずくまる。

 

「お、おい矢木!?」

 

 慌てた竜崎が矢木の隣にしゃがみ込む。少し余っていたので、こいつにも一丁。

 

「うぎゃぁっ!?」

 

 堪らず竜崎も同じように悲鳴を上げる。

 

「み、水! 水ぅ!」

「こ、こっちだ! トイレに………!」

 

 残った黒崎が二人の尋常ではない痛がり方を見て、俺を放っておいて二人をトイレへと引っ張る。

 しかしすでに対策済みだ。

 ガチャガチャガチャガチャ!

 いくらドアノブを回し、押しても引いてもトイレは矢木たちを通さない。

 

「おーう、入ってるぜー」

「おい! 今すぐ出ろ! おい、ぶっ殺すぞ!」

ドンドンドン!

 

「あー? 最近耳が遠くてなー? なんだって? 気にせずごゆっくりどうぞ?」

「ざけんな! 開けろ! おい!」

 

 

 赤木さんがどんな顔で笑っているか、容易に想像できる。

 頼んだのは俺だが、楽しんでくれて何よりだ。

 

「ひぃ、ひぃい………!」

「目が、目がぁ~~~~!!!」

 

「あー、店の前に川があるからそこで洗えば?」

 

「くっそ………!」

「な、なんでもいい! 早く、早くぅ!」

 

 俺が厨房の前に仁王立ちして、「こっちも使わせない」という意思を表すと黒崎は観念したのか、俺の言った通り店を出て、すぐ前の川へとほうぼうの体で二人を引っ張っていった。

 ま、護岸工事しっかりしてるから、川に降りるためにはもう何百メートルか歩かなきゃいけないんだけど。

 橋から飛び降りれば別だけどな。登る時大変だろうけど。

 

「きょ、京太郎…………」

「済みません、染谷先輩。勝手なことをして………」

 

 呆然としてる染谷先輩に、頭を下げる。

 冷静になってみると、ヤクザ関連の客にこれはまずかったか。

 

「いや、助かったぞい。というか、おんしこういうことに慣れてたんじゃな。いいガタイじゃから喧嘩は強いかもくらいに思っておったが」

「その、前に一度体格差を考えずに本気で喧嘩したら相手が大変なことになりまして……」

 

 中学三年の時点ですでに180センチを越していた俺は、体格というものが殴り合いにどう影響するのか全く分かっていなかった。

 それ以来、ストレートな喧嘩はしないようにしている。

 

「今日は念のため、もう店仕舞いしとくわ。帰り道が怖いし、和たちを送って行ってもらえるか?」

「ですね。わかりました」

 

 お礼参りという言葉が脳裏をちらつく。

 そう考えると、今日は陽の高いうちに帰路に着いた方がいいだろう。

 特に和は、悪い意味で異性のターゲットになりかねない。

 そうしてその日は、出来る限り手早く解散となった。




アカギシリーズからキャタピラ王子こと矢木さん、竜崎さん。
カイジシリーズから黒崎さんの親戚が登場です。
黒崎さんトネガワ見る限りはかなり大物っぽいけどね。

まぁ高校生で悪ぶってるキャラってこんなものかなとかなり小物風に書きました。
本家の矢木さんたちが好きな人はごめんなさい。

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