没ネタ短編。ブラックジャック作成中に完成した為投稿。


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連載用に作ったは良いものの没ネタになった短編。
もったいないので投稿。

誤字修正。残念無念で不書感想様ありがとうございました!


私はお前らにモテたいわけじゃない!

『貴様に転生する権利をくれてやろう』

「え、嫌です」

『うむ。ではよい来世を!』

「だから違うっあ、ああ〜!」

 

等という下らないやり取りをした後、私は神様と名乗る輩の手によるものか赤ん坊になって人生を再び歩み始めることになった。

今世の名は黒木智子。生まれ変わった時はふざけんじゃねぇ、責任者出せ!と赤ちゃん言葉で暴れ狂った物だが、性別がそのままでかつ日本に生まれ変わるというのはかなり運が良いのでは無いだろうか?と思い直し今では穏やかな赤ちゃんライフを送っている。

 

「智子ちゃんは大人しくてとっても良い子ね。しかもこんなに可愛い」

「あら、カオル君もとっても良い子じゃない」

 

ママンの腕の中で照れ隠しにペシペシと腕を叩くも伝わらない。褒められるの、何十年ぶりかなぁ。前世だと親孝行する前に亡くしてしまったから、今世では一杯孝行すると決めている。

 

でもそれはそれとしてこの歳(0歳)で親に手放しで褒められるのは恥ずかしいんだよ!こちとら前世は30超えてたんだぞ!未婚だったけど!恋愛した事なかったけど!

あ、やべ。灰色の前世を思い出したら涙が出てきた。今世はすぐ泣いちまうからなぁ。0歳だし。

 

「あら、もうお眠かしら」

「智子ちゃん、本当に泣かないわねぇ。オムツかもしれないわよ」

「あぶー(オムツじゃないです)」

 

あ、ママン待って!ちょ、そこはデリケートゾーンでああー!

 

 

 

6年後

 

どうやら今世の私は勝ち組らしい。

いきなり頭が湧いた事を言ってる自覚はある。正直すまない。だが、本当の事なのだ。

まず一つ目。うちの両親はそこそこの資産を持った資産家である事。前世は共働きで母さんが病気で倒れてからは兄さんも私も学校を辞めて働いていたから、それと比べたら雲泥の差だ。

 

前世の家族は愛しているが、体を壊すまで働き詰めになるのはもう嫌だからな。いきなり視界がブラックアウトするのはもう経験したくない。

 

次に二つ目。幼馴染のカオルきゅんだ。赤ん坊の頃からの付き合いだがカオルきゅんすげー可愛いんだ。お父さんは見たことないけどお母さんは凄い美人さんだしきっと将来はイケメンになる(確信)

しかも運動神経も抜群で、公園デビューしてからは瞬く間に近隣のガキ大将に収まってしまった。

青田買いが捗るでぇ()

 

そして三つ目。多分私はチート転生者という奴だ。

まず身体能力。先程カオルきゅんが近隣のガキ大将だと言ったが若干訂正がある。私とカオルきゅんの二人がこの近隣の幼児序列一位と二位を占めているのだ。そして私達は常に一緒。男を支える女として一歩引いて彼を盛り立てているから彼がトップだが、私とカオルきゅんが喧嘩をするとまず私が勝つ。しかも圧倒的な差で。

全力で走ると犬を追い抜いたし、ちょっと頑張れば車を持ち上げられると言えばお分かり頂けるだろうか。

 

頭脳の面も非常に優れており、前世の記憶は大体思い出そうと思えば思い出せるし、計算問題等もちらっと見ただけで解答がすぐ頭に浮かび上がる。難問と呼ばれ懸賞金が出ているような問題でもだ。父親の伝を使って解答を学会に発表しているのだが、もし賞金が入ってきたらコンピュータ関係に投資するとしよう。何せ時期的に今は平成に入ってすぐ。街を見ても全然コンピュータの姿を見かけないし、何よりネットがやりたい。早く窓が来ないだろうか。パソコン通信も乙なものだと思うけどね。

 

そしてこれが身体面での最大の恩恵だが・・・可愛いんだ!この智子ちゃんの容姿が!もうめがっさ可愛いんだ!

父さん母さんがどっちも美形だからこうなるんじゃないかなーとは思ってたんだけどさ。

正に立てば芍薬座れば牡丹歩く姿は百合の花って奴ね。

にこっと笑うだけで周囲の悪ガキどもが一斉に顔を赤く染めてしまうし、道を歩く時に変なおじさんに声をかけられる率も125%ある(必ず声をかけられる。残る25%は再度突撃してくるの意)

護身術に合気道や空手を習っているので(最近跡取りにならないかと言われて断った)実戦訓練がてらおじさんたちをボコボコにして警察に突き出すのが日課のようになってしまった。すでに地元の名物少女みたいな扱いになってる件。

 

このように私は間違いなく勝ち組に分類されていると思うんだよ、うん。

前世ではモテるモテない云々の前にまず生きる事が大変だったからね。今生ではモッテもてのばら色人生が待ってるぜ!

いやっほう!

 

 

 

更に6年後。

 

「お嬢様、学校に到着いたしました」

「・・・・・・そうか、ご苦労」

 

執事の言葉に目を開ける。もう着いたのか。カバンを手に取り、執事に言ってくると声をかけた。

幅の広いリムジンから降りると、校門前に立つ特攻服を着た金髪の男が声を荒げた。

 

「全ぇん員、整ぃいれえええええつ!」

「「「押忍!!!おはようございます!姐さん」」」

「うむ、おはよう」

 

校門周辺から様々な学校の制服や学ランを着た人相の悪い男達が校門から校舎の入り口まで列を成して並び彼女が通り過ぎる時に頭を下げる。

この周辺一体の女帝はその中をゆっくり歩きながら校舎に向かっていた。

いつものようにそのまま校舎へと向かうのか・・・と思われたその時、彼女はピタリ、と足を止める。

頭を下げている一同に動揺が走る中、彼女はゆったりとした動作で左に立つ男を見る。

 

「見ない顔だな。どこの人間だ?」

「え・・・あ・・・その・・・・・・」

「いや、言わなくて良い。その右手で握っているものを捨てれば見逃してやろう」

 

にこやかな表情でそう言った彼女に、男は滝のように汗を流しながらごくりと唾を飲み込んだ。

見抜かれている。全て。

周囲が殺気立つ中彼女は尚も笑みを崩さない。

慈母のような微笑。だが、彼にとっては巨大な蛇が鼠を前に笑みを浮かべているようにしか思えなかった。

追い詰められた鼠が取るべき道は二つ。一か八か噛み付いて隙を突くか・・・・・・全て諦めて腹を見せるか。

そして男は、前者を選んだ。

 

「死ぃねやあああくろきぃいいい!」

「馬鹿が」

 

右手のナイフを男は真っ直ぐ智子に突き立てた。

化け物のような女でも人間。ナイフを腹に受ければひとたまりも無い。

そんな思いを込めたナイフの一刺しは、しかし。彼女の左手の親指と人差し指に阻まれる事になった。

渾身の一突きを、指二本で。

笑顔のまま智子はそっと右手をデコピンの形にして、男の額を『出来る限り』優しく弾いた。

ヅガン、という音と共に奇妙な悲鳴を上げながら数回転宙を舞い、男はグラウンドに倒れ付す。

 

「背後を吐かせろ」

「はい!」

「・・・・・・気づかなくても仕方が無い。気にするなよ」

「・・・!は、はいぃ!」

 

傍に居た男に声をかける。向かい合った男がどこぞの刺客だと気づかなかった事を責められると思っていた彼は、その言葉に目を見開いた後、涙を零して頭を下げた。

その様子をうむ、と頷いて、智子は校舎への道を再び歩き始める。

ひそひそとカッケェ、やら流石は姐さん、やらと声が辺りに響くが、智子は特に気にする様子も無く校舎の中に姿を消した。

その背中が、男達を惹きつける。

 

 

 

校舎の中に姿を消した智子は下駄履きで靴を履き替え、同じように校舎の中でも自身に挨拶をしてくる面々に笑顔で応対して教室に入る。

 

「よぉ。見てたぜ、智子」

「あら。恥ずかしいわカオル君」

「へっ」

 

にこりと笑うと穏やかな笑みを浮かべて彼は智子の隣の席で、特注の椅子を軋ませた。

うん、可笑しいよね。ここは普通の私立の中学校で君も私も学生のはずだよね。何で君の椅子は社長さんが座るような総革張りの椅子なのかな。

体も・・・うん。あの将来イケメン間違いなしの爽やかボーイが小学校高学年になると急にガチムチのボディビルダーも真っ青な体になるとは見抜けなかった。この私の目をもってしても。

いや、まあこういうすっごい体も好みっちゃ好みなんだけどね。前世のお父さんを思い出すし。

ただ、体が成長したせいで下の方まで成長しちゃったのはいただけない。今も私の肩を抱き寄せてくるし。

あ、キスまでは許すけどそれ以降は私を倒さないと駄目だからね?

 

「・・・・・・駄目か」

「駄目。最初に言い出したのはカオル君でしょう?」

 

女に負けるのを恥ずかしいと。必ず私を超えると言って彼は己の信念を曲げて様々な分野の格闘技を始めた。

その成果も上がってきているのだが、まだまだ私には及ばない。

彼の持ち前の怪力と同じ出力を私の細腕は出すのだから。そして格闘技の年季でも私が上。なら、まだ超えられるわけには行かない。

まあ、この調子で頑張るのなら高校生くらいになったら考えてあげてもいいかもしれないが。

まあ、こっちは良いのだ。

 

「お、見ろよ智子。お前の舎弟共が校門から挨拶してるぜ」

「うん、そだねー」

 

そう。こっちは良いのだ。多少、いや大分思惑と違ったが。

問題はあれである。

 

「智子姐ぇぇさんへ!愛をぉぉぉぉ込めてぇぇぇ!愛羅武勇ぅぅぅ!三っ唱ぉぉぉぉ!!!」

『『『愛羅武勇!愛羅武勇!愛羅武勇!』』』

「声がちいいいせえええええ!」

『『『愛ぃ羅ぁ武勇ぅぅぅぅ!愛ぃ羅ぁ武勇ぅぅぅぅ!愛ぃぃぃぃ羅ぁあああ武ぅ勇うぅぅぅぅう!』』』

 

金髪、モヒカン、坊主。学ランから特攻服、中には何故かジャージまで。

あいつら全部智子が小学生の間にボコボコにした変態共である。

いや、最初は近隣のチンピラが声をかけてきていたんだ。そいつらをボコにしてたらどうも「やたら腕っ節のあるガキがいる」と近隣の不良共の噂になったらしい。

で、最初はカオル君(流石にきゅんといえる外見ではない為)に言っていたのだが途中で連中、馬鹿の癖に真実に気づきやがって・・・・・・

そして、気づけばこうなっていた。

県内全てを勢力に収めた女帝、黒木智子。それが今の私の肩書きだ。

確かに私は、モテたかった。

前世の鬱憤を晴らすように派手に生きたかったさ。

でも。

 

「姐さああああああん!」

『『『愛ぃ羅ぁ武勇ぅぅぅぅ!愛ぃ羅ぁ武勇ぅぅぅぅ!愛ぃぃぃぃ羅ぁあああ武ぅ勇うぅぅぅぅう!』』』

 

私はお前ら(不良共)にモテたいわけじゃない!!!

 




没ネタ理由:もこっちでやる意味がない

黒木智子:一応全分野のトップ手前にまで上り詰める事ができると言う『完成』一歩手前位のチートを持つ小市民。適当にちやほやされたかっただけなのに全力で不良たちのヒーローになってしまい困惑。

カオル君:クロスオーバー要素。本名・花山薫。自身の全てを上回る智子を超える為に日夜努力中。


やる夫スレにして普通のやる夫板短編所に投稿しました(ぼそり)


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