メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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12話

 

 それは、仲間達を銀の守りで包む少し前の事。

 

 

――告。スキル:変体化を使用。粒子状にまで変化させる事で、周囲の守護は可能。

「了解! ……んん、でも 凄く繊細に力を使わないといけないんじゃ……。今は予断を許さない状況だし、ぶっつけ本番って、昔から苦手だったんだけど……」

 

 身体の変化は、メタルスライムな身体を ウネウネと動かし続けたから、何ら問題ない。擬態する事により、リムルの姿を模倣する事も出来たのだから。

 

 だが、粒子状…… つまり気体…… 霧状に、あの豚頭魔王(オークディザスター)の放つオーラの様な状態にしなければ ならない。身体の操作は慣れた!とはいえ、見た通り桁が違う制度が必要になる。

 

――告。エキストラスキル:賢者に主導権を移行し、自動防御態勢(オートディフェンスモード)にする事で、この場での制御は可能。

「……おおっ!! 賢者さんが制御してくれるって言うのなら、安心だね!」

 

 賢者のスキルは、リムルの大賢者には及ばなくとも、情報処理の類は得意……と言うより、専門分野だ。機械の様な精密さで行ってくれる事だろう。

 

――告。リムル=テンペストの特異(ユニーク)スキル《大賢者》と連動、制御を移行するとより高い性能で行う事が可能です。

「え? リムルさんのスキルの?」

 

 大賢者と言うスキルは、文字通り 賢者の上位のスキルだ。その能力は、全てにおいて上回ってる。アティスは少しだけ考える。

 

「えっと、賢者さんだけじゃ無理っぽいのかな?」

――解。防御の範囲、個体数、全てを考慮。可能です。

「じゃあ、賢者さんにお願いするよ」

――了。……理由を尋ねてもよろしいですか? 大賢者のスキルの方が強力です。

 

 スキル 相談者を取り込んでいる賢者。

 機械的な受け答えが印象的な賢者のスキルは、時折人間味を帯びる事がある。今回の受け答えの後半部分がより人間のソレだった。アティスは気付いてない様だが。 

 

 そして、言葉にはしていないが、より人間味を その感情を深める事になるのはこの次だった。

 

「大賢者さんは、リムルさんの相棒だからね? オレは賢者さんだよ。賢者さんなら、信じられる。何せ、ほんとの意味で生まれた時から一緒だし! あ、勿論 大賢者さんを信用してない、って訳じゃないからね? そこんところヨロシク!」

――………了。

 

 たった一言だったが、温かい気持ちが芽吹き、花を咲かせた。それと同時に賢者のスキルの能力を解放。大賢者のスキルに肉薄する程の精度を誇るスキルとなり、主導権がアティスから賢者へと移行した。

 

 銀色の瞳が赤く染まり、瞬時にその身体が霧散し 仲間たちを包み込んだのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……〈なんだ? コレは〉」

 

 早く餌にありつきたい。満たされぬ飢え少しでも、と その本能だけに従っていた豚頭魔王(オークディザスター)が、瞬時に冷静さを得た。だが、直ぐに激昂する。

 

「……喰エ。喰い尽くセッ!」

 

 怒りのままに、飢えのままに雄叫びを上げ、混沌喰(カオスイーター)を放つが、まるで通らない。あの銀の光が全てを遮る。まるで、自分とは真逆の存在。

 

「……豚頭魔王(オークディザスター)ゲルドの名において命ずル。餌となレ!!」

 

 喰えない事のイラつきが、憤怒の炎を沸かせた。

 

――ふっふふーん! これ気分良いね! ぜんぜん攻撃通らないや! 痛くないし、透き通るような隙も全然ない! ま、攻撃出来る気もしないけど! 相手が飽きるまでずーっとこうしてるっていうのも良いね! 逃げなくて良いし。

 

「解。保有する魔素は護る対象の数、そして敵の攻撃により常に消費しています」

――……つまり、消費し続けて、無くなると 解除&すりーぷ? 賢者さんすきるもだうん?

「解」

――わーーー! ダメダメ! それ困るッッ! すっごく困るッッ!! オレも皆も困るっっ!!

 

 大パニックになっていた所に、違う声が頭に響いた。

 

「大丈夫だ。任せろ、アティス」

 

 よく知る人物、リムルの声。

 どうやら、さっきまでのやり取りは、賢者・大賢者・リムルとしっかりリンクしてくれていた様子。

 

 せっかく 恰好つけて皆を守る事が出来たというのに、台無しである。

 

 

 

 

 

 

 

  

「この光は、アティス様の……?」

「我々だけじゃない。リザードマンの生き残り全員にも」

「凄まじい程の魔素量…… 此処まで範囲を広げた上に、強度劣る面が無いとは」

 

 シオンとソウエイ、ハクロウは銀の光に包まれているのを目の当たりにし、ソレの正体を直ぐに把握出来た。よく知る気配を広く強く感じれたから。 それは他のメンバーも同様だ。

 

「何と凄まじくも神々しい。……これがアティス様の。だが、アレだけの力を保ち続けるのはきつ過ぎる筈だ」

 

 魔王の圧倒的な回復力を前に、決定打に欠ける鬼人たち。

 アティスの守護で、こちらも魔素量の桁が跳ね上がった故に負けの文字は消えたが、それはアティスに消耗を強いる事になる。長引けば長引く程、魔王の力は全力でアティスを蝕むだろう。

 

 それを良しとする者は此処にはいない。

 

 ベニマルは直ぐに行動をしようとしたときだった。

 

『聞こえるか? ベニマル。ここは オレ達に任せろ』

 

 聞こえるのはリムルの声。

 リムルはいつの間にか、混沌喰(カオスイーター)を全方位、全力で解き放ってる眼前に迫っていた。

 

「リムル様!? いつの間にそんなに前へ!?」

「待てシオン」

 

 前に出ようとするシオンを引き留めるベニマル。

 

 

 

「リムル様は、任せろと言った。……オレ()に、と」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆の主として、満を持してリムル=テンペストが動いた。

 スライム軍VS魔王軍 最終決戦の幕開け! と言っていい展開なのだが……。

 

『いやはや お前たちの信頼関係は微笑ましさが湧き出るもんだが、ちょーっと台無し感が漂ってるよーな気がするゾ? 『――大丈夫です。オレが皆を護ります』キリッ だったのにさー』

『わーーー、や、止めてください!! ってか、目の前! 目の前!! まおーですよ!』

 

 魔王を前に、随分と余裕のあるやり取りをしている様子が見て取れる、が、勿論理由がある。

 アティスがそうであるように、リムルもアティスと同じ様に、大賢者に自身の主導権を移行。自動戦闘状態(オートバトルモード)になってる為だ。

 

 しっかりと働いてるのは、其々のスキルのみ。

 

 

「「……はぁ」」

 

 

 実に人間味のある反応を見せるスキルたちだった。

 

『なぁ、大賢者。オレのテキトーな見立てなんだけど、アティスの賢者のスキルって、全然大賢者に迫ってる様な気がするんだけど』

特異(ユニーク)スキル 物真似の効果。賢者のスキルは 元々アティス=レイの経験も相乗し、8割以上大賢者のスキルに迫ると推察」

『成る程な。(なーんか、アティスの賢者って、相棒って言うより、お母さんって感じがするんだよなー)。それより、どうだ? アティスが頑張ってくれる間に、やれそうか?』

「解。アティス=レイの魔素量の測定は不可。正確なエネルギー量が判らない以上、推察の域を出ません」

『それでもかまわないよ。アティスも、ああは言ってるけど、根性は見せてくれそうだ』

 

 リムルの周囲の光の輝きが増した。

 色々と騒いでたアティスだったが、『頑張る!』と言ってる様に瞬いていた。

 

 そして、眼前の魔王。混沌喰(カオスイーター)が通らない事のイラつきは急速に冷めていき、認識を改めなおしていた。

 

 実体がよく判らない相手。喰えない相手。即ち餌ではない。

 

「敵……。強敵か。だが、貴様は別だ」

 

 視線の先にいるのはリムル。

 

「一点集中。存在している以上、貴様は喰えぬ相手ではない。そして、永遠に維持する等も出来まイ」

 

 ゲルドは、視線を他のオークたちに向けた。

 全員が首を垂れている。幾万の兵達は、全員が糧になる腹積もりなのだろう。最初から持久戦のつもりの様だ。

 

 

「否」

 

 

 リムル……大賢者は、ゲルドの言葉を短く否定した。

 そして、自身の剣に黒炎を纏わせた。

 

 それと同時に、ハクロウの速度にも勝るとも劣らない神速で接近。ゲルドの腕を斬り飛ばした。

 

 

 

 

「アティス=レイの自動防御状態(スキル)。リムル=テンペストの自動戦闘状態(スキル)。現状、負けの要素は限りなく皆無」

 

 

 


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