メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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19話

 アティスは、はっきり言って、いや はっきり言わなくてもビビりだ。

 

 実に辛辣で辛口なコメントではあるが、事実である。……だが、それは決して悪い事ではない。自分自身に過信する事も慢心する事もなく、大体最悪の想定をしつつ動いている。間違った方向へと直進しようものなら、アティスの聖母(スキル)が軌道修正をしてくれるので、殆どが良い方向へと導かれる。

 

 そして、今回の件。

 

 突如飛来する無数の脅威(現時点では本当の意味で脅威なのかどうかは不明)。

 本来なら、まだ自分達の暮らす街から見える筈もない遠間ではあるが、アティスは察知した。持前のビビり……ではなく、主に彼のスキル 超絶運の効果である。

 粒子状に変化させた身体を上空へと飛ばし、色々試しているうちに……発見に至る。

 

 より近づけば、常に街の警戒に当たってる隠密のソウエイ辺りが気付くだろうが、現在の距離では誰もが気付けない。

 アティスがパニックを起こしたのは言うまでもなく、しっかりと聖母に窘められて冷静に行動出来た。魔王ゲルドの時と比べてみればどうか? と言う聖母の言葉で 頭が冷えた様だ。 

 

 

「えっと、絶対コレ知らせた方が良いよね? 傍に誰かいる?」

 

――解。同意致します。近辺に個体名:ソーカ、ソウエイの存在を確認。交信致しますか?

 

「2人が傍にいるんだ。訓練かな? えっと、直ぐ傍にいる?」

 

――解。街の北部の森林地帯にて確認。

 

「了解。なら、直接行くよ。スキルの練習にもなるし。マザーも言ってたけど、あのペガサス?とは まだ距離的に余裕はあるんでしょ?」

 

――到達予測時間……凡そ1時間。

 

「ん。だいじょーぶ! はぁ、でももっともっと冷静にならないとだよね……。今は一人じゃないんだし」

 

 背後には仲間達がいる。傍には心強い聖母もいる。何処に怯える要素があるのだろうか、と自己嫌悪気味だ。

 

――全てが良い方へと向かっておりますよ。

 

「うーん、そうかなぁ…… なーんかやっぱり情けないよーな。……って、ウジウジ、クヨクヨ タイム終わり終わり! 時間は有限! えっと、メタルミスト~じゃなく、光粒子化!」

 

 アティスは、練習中のスキルを仕様。メタルスライムの身体が再び無数の粒子状に散らばり浮遊。

 

 そして、まだ練習中とは思えない程の速度で、まるで光の如き速度で、街の北部森林地帯へと超高速移動を開始したのだった。

 

 

 

 

 森の中では、ソウエイとソーカの2人がいた。ソウエイに憧れてる、と明言しているだけあって、四六時中行動を共にしている……訳ではなく、ソウエイの指示にはしっかり従い、特に任務や訓練が無い時は 彼の傍で技術を習得しようと頑張っているのだ。

 淡い個人的な感情は………ここではノーコメントとしておく。

 

 木の枝の上にて ソーカが一時休憩をしている時 光の粒子がソーカの周りに集まってくる。

 

「ッ!? 何者!」

 

 突然の事に混乱したソーカだったが、ソウエイが即座に現れ、膝をついた。

 

「こちらへ いらっしゃるとは。アティス様。どうかなされましたか」

 

 ソウエイがそういったと同時に、ぽんっ! と効果音と共に、アティスはメタルスライム化する。

 

「えっと 驚かせてごめんね、ソーカさん」

「っ、いえ そんな滅相もございません。私がまだまだ未熟なばかりに、アティス様を警戒するなど……」

「仕方ないよ。頑張ってくれてるし、いきなり出てきたら誰だって……じゃない! 呑気に話してる場合じゃなくって大変なんだ、2人とも! 北の空、まだ遠いけど変なのが沢山来てる!」

 

 慌てるアティスの言葉を聞いて、瞬時にソウエイは動く。

 高く跳躍し北の空を確認すると…… まだ黒い点の様にしか視認できない程の小ささではあるが、無数の何かが飛来してきているのが判った。

 

 直ぐにアティスの元へと戻ったソウエイ。

 

「………申し訳ございません。警戒していたのにも関わらず気付かない等、隠密として恥ずべき事」

「いやいや、ほんと偶然だから。オレ、結構向こうの方でスキルの練習1人でしてて、気付いただけだから! だから そんな頭下げないでー! それより早く皆に知らせようよ! オレ、リムルさんの所に戻るから。マザーの見立てじゃ1時間くらいは時間ある見たいだし。ソウエイさんたちは、このまま見張ってて。ひょっとしたら進路変えるかもしれないからね」

「了解致しましたアティス様。変化がありましたら随時、連絡致します」

「宜しく。んー でもやっぱり何も無かった、が一番の理想なんだけどねぇ……」

 

 そうとだけ呟くと、アティスは再び光になってこの場から姿を消した。

 

 いなくなったアティスの姿を、街の方へと向かったであろう姿を目で追いながら――ソーカは思う。

 

 アティスをリムルと同格――主として仰ぐ決意を見せ、仕えている。その期間は決して長くはないが、自身の主の性質はよく判った。

 

 リムルは勿論だが、それ以上にアティス。それは……何よりも優しい、と言う事だ。

 

 オークとの戦争の時も、敵側である筈のオークに、ゲルドに涙を見せた。更に護るとまで約束した。今現在も誰に対しても分け隔てなく接し続けている。 

 

 

――その優しさが、いつの日か災いを呼ばねば良いが……。

 

 

「そのために我らがいる」

「ッ……」

 

 

 ソーカの考えを読んだかの様に、ソウエイが告げた。

 

「あの方々はおやさしい。……敵であれ、如何なる輩の命を奪う事を禁じ、命じている程にな。街が大きくなれば成る程、我らが主たちのやさしさに、そこに付け入る者どもも必ず現れるだろう。……その時は」

 

 ニヤリ、と妖しく笑みを見せるソウエイ。普段は決して見せない笑みを見たソーカは思わず身震いしそうになるが、意思は同じ。故にソーカは頷くのだった。

 

 

「(しかし、アティス様の索敵能力は凄まじいの一言。恐らくは、オークを護る為にその能力を……、いや このジュラの森全てを守護するおつもりなのでしょう)」  

 

 

 アティスの能力。

 怖いのが嫌で嫌で怖がりで……、と言う理由で得たと言う事はソーカは知る由もない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

□□ リムルの家 □□ 

 

 

 

「へぇ……って、空から!? 航空機、戦闘機か!?」

「いや、マザーが言うのはペガサスだって」

「ペガサス! なんか凄そうだな……。それでソウエイ達の連絡待ちって訳か。でも 今のうちに最悪の想定はしておいた方が良いな。避難命令とか。……あー、素晴らしい平和な期間だったのに。時間は大体どれくらいだ?」

「マザー。リムルさんの大賢者さんと連動して、情報を伝えて」

 

――了。

 

 聖母と大賢者は情報を共有。 1時間、と言うのは発見時点での目標到達時間だったから、その更新だ。

 

「了解だ、大賢者。それと聖母(マリア)もサンキュー」

 

 リムルの家について、だらだらとしてるリムルを叩き起こして、アティスは状況を説明。

 無数のペガサスがやってくる、と。まだ此処に来るとは確定してなく、ソウエイが見張ってくれる事も告げた。

 

 

 緊急事態になる可能性もあるので シオン達に指示。

 リムルとアティスは、万全の体制で迎え撃つ構え。……勿論、ここに来なければいいんだが……、ソウエイからの報告もあって、そんな希望的観測は淡く打ち砕かれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――告。目標が下降を開始しました。目的地はこの場所で間違いありません。

 

「うぅん。統制の取れた武装集団って感じだぞ、アレ。下手したらオークの軍勢より脅威だ」

「空からって言うのがそうですよね……。空を飛べるひとって限られますから」

「街もせっかく出来てきたんだし、争いは避けたい……、と言うか あれ何者なんだ? ペガサス乗り回すなんて、何と羨ま……じゃなく、興味深い」

 

 

 色々と話している間に、ベニマル達戦闘参加者が集まってきて、更に万全な状態となった。勿論、先手必勝!とするわけではないが、常に最悪を想定しつつ、穏便にが一番。

 

「あれ、もしかして……」

「おいおい、なにしてるんだよカイジン。早く避難してくれよ」

「危ないのは嫌ですけど……、ここ危ないかもですから」

 

 戦闘員ではなく、生産職鍛冶を専門に持つスペシャリストのカイジンがなぜか前線にまでやってきていた。腕っぷしは凄いの一言なのだが彼は非戦闘員だ。

 

「オレ、カイジンさんを送っていきますね?」

「ちょい待ってくれ、アティスの旦那。あの部隊には心当たりがあるんだ。……昔、酒の席で退役した老将に聞いたんだ。ドワーフ王の直轄に極秘部隊がいるってな」

「それが奴らかもって?」

「ああ。なにせ、その部隊は――天翔騎士団(ペガサスナイツ)って名なんだ」

「ペガ…… あー、成る程 これ以上ない心当たりだね。名前のまんまだし……」

 

 沢山のペガサスが下りてきた。背中にしっかりとナイトたちを乗せている。だから、ペガサスナイツ! そのまんまだった。

 

 軈て一番大きなペガサスが前にやってきて、その背から一人の男が下りてきた。

 その人物を見るや否やカイジンは跪いた。

 

「……お久しぶりでございます。ガゼル王よ」 

 

 圧倒的威圧感が半端でない。生まれながらに王である、と言っても全然不思議じゃないのがその姿に体現されていた。がっちりとした筋骨隆々な身体。その身の内に収まりきってないのだろう、迸るエネルギーがあふれ出てるのがよく判る。

 褐色の肌、後ろに撫でつけた漆黒の髪……、威厳たっぷりな髭。

 

 ガゼル・ドワルゴはカイジンを、そしてリムルを見た。

 

「久しいな、カイジン。それにスライムよ。余―――いや、オレを覚えているか?」

「(ガゼル王…… 忘れる訳ないよ。色々あったし)あー、でもお前は知らないだ……ろ? あれ??」

 

 隣を見ようとしたが、いつの間にかアティスはいなかった。

 何処にいった? とキョロキョロ見渡してみると……いつの間にかリムルの影にすっぽり収まってた。

 

「(何してんの?)」

「(あ、いや…… その………)」

「(……ナニぷるぷるしてんの? ってビビってんの?? まぁ、判らんでもないけど、魔王相手にあんだけ立ち回ってた癖に、ほんと過小評価も此処に極まってるな、お前……)」

「(うぅ……そう、じゃなくって……、でも そうじゃない、とも言えないような……)」

 

 呆れたようにため息を吐くリムル。 

 アティスは、いつの間にかリムルの影に逃げていた様子だ。

 でも、違和感がないわけでもない。逃げるのであれば、何処か遠くに光粒子化して逃げれば良い。影の中より遥かに安全だ。……でも、仲間たちを置いていく様な真似をするとは思えない。リムルが言う様に魔王相手に引けを取らず、立ち回り最後には打倒の位置役を担った男なのだから。

 

「(じゃあ何で?)」

「(苦手です………、むかし(生前)、あんな生徒指導の先生がいて、めちゃめちゃ怒られて……)」

「……はぁ」

「うぅ……」

 

 どうやら、トラウマを思い出してしまったらしい。幼き頃に刻まれたモノは、挫折はそう易々とぬぐえないのは それなりに判るつもりだ。時として、その悪夢は……魔王さえも凌駕するのだろう。……多分。

 

 

 

 そんなスライム同士の会話は置いといて、話題はガゼルだ。王をいつまでも無視する訳にはいかないので。

 

「王よ。本日は何か御用があるのでしょうか」

「なに。そこのスライムの本性を見極めてやろうと思ってな。今日は王としてではなく、一私人として来た。物々しいのは許せ。こうでもせぬと出歩けぬのでな」

 

 王が1人で出歩くなど出来る筈もないのは当然だろう。それが例え一騎当千の強者であっても、万が一でもあれば 国の崩壊だから。

 

「まあ、王様だしな。(……でも、これはヤバい。この言い方でオレが貶されたって思ってるのか? 鬼人たちが怒ってる)」

 

 ちらっ、と後ろを見てみると、集まっていた鬼人のベニマル、シュナ、シオンの表情が怖い。唯一笑っているのはソウエイだけだが、その笑みが一際怖い。

 

「もう一匹スライムがいると聞くが、姿を現さんのか?」

「ん? ああ、アイツは……」

 

 アティスの事を言おうと思ったが、影にすっぽりハマってて出てきそうにないので、どういえば良いか悩む。

 

「臆病風に吹かれた、と言う訳でもあるまい」

「(まさかの正解だよ……。って、やばいやばい! オレに加えてアティスの事も、爆発寸前!?)」

 

 一際視線が鋭くなっていて、心なしか 鬼人を象徴する角が鋭く漲ってる様に見えた。背後に炎も見える。いつ爆発するのか判ったものではない。そして、アティスは出てくる気配はない。

 

「(まぁ、戦うような事になったら、出てくるだろ。そこまで根性無しって訳じゃないし)あ――、今は裁判中でもないし、こちらから話しかけてもいいんだよな? 後、もう1人のヤツはオレの兄弟で、今はお休み中だ」

「ふむ。……下がっておれ」

 

 ガゼルも側近たちを後ろに下がらせる。

 それと同時に、リムルは姿を変えた。

 

「まずは名乗ろうか、オレの名はリムル。……スライムなのはその通りだが、見下すのは止めてもらおうか。これでも一応ジュラの森大同盟の盟主なんでな」

 

 スライムが人の姿に化けるのを見て どよめくがガゼルは全く動じなかった。

 

「まぁ、これが本性って訳でもないが、こっちの方が話し易いだろ?」

「ほう……、人の姿で、剣を使うのか……」

「一応武器を携帯してるだけなんだが……、そんな警戒しないで欲しいんだけど」

「それを判断するのはこの俺だ。……貴様を見極めるのに、言葉などは不要」

 

 ガゼルは剣を取り出し――剣先をリムルに向けた。

 

「この剣一本で十分だ。この森の盟主などという法螺吹きには分と言うものを教えてやらねばなるまいしな」

「(いや、煽んないで欲しいんだけど……)」

 

 リムルの背後に燃えあがる炎が……、冗談抜きでベニマルは小さな炎を出していて臨戦態勢だ。

 

 そんな時、リムルの影からぽんっ、ともう1匹のスライムが飛び出した。

 

「おお?」

 

 こればっかりはリムルも驚く。まだ暫くは隠れてるだろうな、と思っていた矢先だったから。

 

「(確かに 物凄く怒られたし、凄く怖かったし、拳骨メチャクチャ痛かったし、何度も泣いた……。でも それはオレが悪さしたり、忘れ物したり、……兎も角、オレが悪かったから故のムチ! でも、この人理不尽っ!! ……………苦手な顔だけど)」

 

 ひゅるん、とリムルの身体に纏わりついた。

 

「む……?」

「オレ達の盟主様に酷い事いうなーー、このアホーー!」

「オレに隠れるな! 子供かお前! と言うか煽り反すな」

 

 

 王に対して、アホとは……と周囲が更に色々と殺気立つ。アティスの発言は少なからず溜飲が下がったのか、にやっと笑ってた。

 

「ほう。貴様がもう一匹のスライム。……光るスライムとやらか」

「ぅ……あ、あほー、あほーー」

「(ダメだこりゃ、心おられかけてるし)って、何でコイツの事を? あの時はいなかったんだけど」

「ふん。こちらも色々と掴んで居るのだ。……さぁ、まずは得物を抜け」

「えぇ……」

 

 一瞥するだけで、アティスの子供染みた悪口は無視してくれた。そんなことに動じる様な王なら、正直ダサいだろう。

 

 そんな時、一陣の風が舞い そして、姿を現した。

 

 

「……我らが森の盟主に対し、傲岸不遜ですよ、ドワーフ王よ」

 

 

 現したのは樹妖精(ドライアド)のトレイニー達だ。

 心なしか、トレイニーは怒っている様で、表情が険しい。

 

 森の管理者である樹妖精(ドライアド)が姿を現した事に当然場が騒然となる。数十年に一度現れる……そんな存在が突然出てきたんだから仕方ない。

 

「よう、トレイニーさん」

「御無沙汰しておりますリムル様。同盟締結の日以来ですわね。アティス様も」

「ば、ばーかばーーか!」

「そろそろ落ち着け、トレイニーさんに呆れられるぞ」

「ふふ、元気そうで何よりですよ、アティス様」

 

 楽しそうにトレイニーと話すスライム。

 色々な情報を掴んでるドワーフ側だが、まさか樹妖精(ドライアド)まで出てくるとは想定してなかった。それと話しを交わすスライム リムルにも驚きだった。様々な魔人を従えていると言う情報だったが、樹妖精(ドライアド)とまでつながりがあるとは思いもしなかったから。

 

 そんな混乱の最中、笑い声をあげるのはガゼル。

 

 

 

 

「ふはっ、ふはははは! なるほどな。森の管理者がいうのであれば真実なのであろう。法螺吹き呼ばわりは謝罪するぞリムルよ。……だが、貴様の人なりを知るのは別の話。得物を抜けい!」

 

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