「(俺は あの凄まじいエネルギーを受けた筈、だが)」
「(傷が、塞がりかけている……。全員共だ。何故……?)」
「(これは、リムル様の
魔王ミリムの攻撃? を至近距離から受けた筈の3人は困惑をしていた。
あの一瞬、頭を過ぎった死の予感。なのにも関わらず、擦り傷こそ身体にはそこらかしこにあるが、五体満足に生存出来ている。寧ろ、無傷だって言っても決して大袈裟ではなかった。
「ほっ、でも、間に合って良かったよ……」
そんな折に、ぱっちりと目が合うのは 銀の髪を靡かせるアティス。心底ほっとしているのが、その言葉以上に表情で分かった。
「これはアティス様が……?」
「うん。まだまだ練習中のスキルだけど、これからも必須のスキルだからね。特製の回復の魔法! リムルさんのフルポーション! まではいかないと思うからこれからも練習あるのみ。でも、まだまだで3割か4割回復って言ったところかな? 兎も角皆が無事でよかった」
キラキラと輝きを見せるアティスの光。何故気付かなかったのだろうか、淡い光が自分達の周囲に浮遊しているのだ。全て理解できた。
この光が、我々を護り――そして癒してくれたのだと。
多大なる感謝の意を、とも思ったが 今はそれどころではないとも思う。
アティスは、謙遜をしているが、体感で回復量は5割は超えているだろうが、それでも焼石に水だと思えてならないからだ。
回復をして貰ってそう思うのは失礼極まりないが それでもあの魔王ミリムに勝てる未来が全く見えない。
ただ、遊んでいただけの攻撃でここまでのダメージ。このまま続ければどうなるのか、火を見るより明らかな結果が眼に浮かぶ。如何に回復の手があったとしても。
「助けていただいたのに何だが、アティス様、早く逃げてくれ……! オレ達なら、大丈夫だ!」
「ダメだって、ベニマルさん。シュナさんとも約束したんだ。皆無事で帰ってくるって。大丈夫ですよって。その条件でここにいかせて貰えたんだしさ。それに―――」
アティスはチラッとリムルを見た。
そして、ベニマルたちを見直して ニコッと笑う。
「リムルさんに、何か手があるみたいですよ? なので、俺は防御に徹するのみです!」
リムルは、正直生きた心地がしなかった。
大賢者が言っていた10倍以上の
遊び半分だった様だが、それでも自身の10倍以上のエネルギーをぶつけられたら、どうなってしまうのか 考えたくもない。
そして、大賢者から聖母の交信があり、あのミリムのエネルギーが放出される刹那、街の方より輝く光を見て、心底ほっとした。
某国民的ゲームに出てくる最速のモンスターは、やはり速いのだと改めて思う。
「オレの部下たちが粗相をした見たいで申し訳ないな。お礼と言っちゃなんだが、ここからはオレが引き継ごう」
「……………」
「ちょっとした手を思いついたんでな。出来れば受けてたってもらいたいんだが。魔王なら、下々の攻撃なんて取るに足らない筈だろう? 受けてみないか」
「………………」
「あれ? おーい、魔王さん?? 魔王ミリムさーん??」
恰好付け気味で前に出ていったリムルなのだが、無視されてしまった様だ。無視――と言うより、ミリムは 何かに釘づけになったようだ。
争いにならないのが一番なのだが、ベニマル達が攻撃を仕掛けた以上、何か落とし前をつけなければ穏便には済まないだろう、と考えていたリムルだったが……どうしたものか、と困惑してきたその時だ。
「………アイツは何なのだ?」
「アイツ?」
「お前の分身体……と言う訳でもあるまい?」
ミリムが指さした先にいるのは……アティス。
因みに リムルが真ん前にいるのに、見られた挙句、指さされて アティスはビックリ仰天してた。
「ああ、アイツはオレの部下~ と言うより兄弟でNo.2で……」
色々と考えている時だ。ミリムが突如動き出した。その一歩は大地を削り、勢いそのままの力技による瞬足。一足飛びでアティスの元へとたどり着き――。
「捕まえたのだーーー!」
「わぁぁぁ!!」
アティスをあっさりと捕獲。逃げ足の速い筈のメタルスライム、危うし。
「あ、アティス様ッ!!」
すかさずシオンが反撃しようとするが、また強引な力技、脚力で元居た場所に戻ってしまい、衝撃波で吹き飛ばされてしまった。ミリムはアティスを抱きしめて頬擦りまでしていた。
咄嗟に勝てないまでも、攻めようとしていたリムルだったが、ミリムの姿を見てとりあえずホッとした。
「にゅっふっふ~~」
「ふぇっ!? ふぁっ!?」
「お、おい。相手をするのはオレの予定なんだが……?」
幼女と戯れる(姿は)美少女。
絵になるなぁ、とも一瞬思えたが、どっちも中身がとんでもないので直ぐに払いのけた。
ミリムは暫く抱きついていたが、堪能できたのか、話が出来る程度には解放してくれた。
「わっはっはっは! お前だな? お前なのだな?? あの時、こやつに取り付いておったのか?」
「ぷはっっ! あ、あの時ってなんです!?」
「間違いないのだ! この
「みりむあい!? ひかじい!? だから何の事なんですかっ!? え、えすけーぷっ!」
「おっ!?」
にゅるんっ、と はぐれメタル化して逃げるアティス。一度魔王に捕まった筈なのに、逃げ出せるところを見ると、仮にステータスがあるとするのなら、防御回避の項目は、もれなくSなのだろう! と。
「ほほう、褒めてやるのだ! ワタシでも驚く程の素早さだな! これは遊びがいがあると言うものなのだー! 直ぐに捕まえてやるのだー!」
両手を腰に当て、大笑いするミリム。どうやら、魔王に褒められた様だ。あまり嬉しくない様だが。
「よかったな。遊び相手認定されたみたいだぞ? 魔王の」
「ヤに決まってるでしょっ! そんなのっ!!」
「わっはっは! 良いではないか! 楽しむぞ!」
アティスはひゅるんっ、と再びリムルに纏わる。
今度は、正真正銘の羽衣状になって。
「ほう? あの時の姿、形態と言った所か。それがお前の、お前たちの本気と言うヤツなのだな」
「まぁ、そんな所かな」
ミリムの反応がヒーロー物の特撮かなんかの影響を受けた子供みたいだな、と思ったリムル。勿論口には出さず、頭で思っただけである。正面からやり合うのはほんとごめんなので、兼ねてよりの対処法を繰り出す事にしていた。
そして、アティスはしっかりとリムルに纏わる。何処まで硬い身体が通じるか……否、防ぐことが出来るか判らないが、出来る事はしよう、と心に決めていた。
つまり、怖がりでビビりなアティスだが、仲間達と一緒なら、だれかが傍にいるのなら、巨大? で強大な相手を前にしても、逃げると言う選択肢はとらないと言う事だ。
そんなリムルとアティスの姿を見て、ニヤリと笑うのはミリム。
その姿はまさしく魔王たちが見た映像のままの姿だった。1つ違う点があるとすれば、あの映像ではリムルは空を飛んでいて、今は空を飛んでいない、と言った点だけ。
「(……この
「(おう。一応手は考えてるって。この手の相手に最適な手をな)」
魔王相手に実に頼もしい回答をしてくれるリムル。アティス自身もミリムの凄まじいオーラと聖母からの情報を前にしても、何処か安心できる想いだった。そして、改めて全力で手伝う覚悟も。
「さぁ、遊ぶぞ!」
「おう。なぁ、自信があるなら、オレからの攻撃を受けてみないか?」
「……む? ワタシにただでヒカジイの力を受けろ、と言うのか?」
ミリムの視線がやや鋭くなる。
ヒカジイとやらが、一体何なのかは判らないが、この話から察するに 魔王ミリム相手にも引けを取らないどころか、遊びじゃなくなるような ナニカ である事は察する事が出来た。
なので、リムルは一先ず首を横に振る。
「違う違う。純粋に、オレの力だ。ひかじい、って言うのオレは知らないし」
「ほう? だが、お前から……いや、そいつからは間違いなく感じるのだぞ。見てみてもよく判る! ……んー、ま それは置いておくか。お前の力とやらも楽しみだ」
「言質とったぜ?」
「魔王に二言は無いのだ。ただし、条件があるぞ」
ミリムはニヤリと笑った。純粋に楽しむ笑いではなく、何か企んだそんな笑み。絶対的な強者には何処かそぐわない何かだった。
「通じなかった場合、お前はワタシの部下になる事。約束するのだぞ?」
「わかった」
「うぅ………(殲滅!とかに比べたら全然良い条件なんだけど、リムルさんが部下になっちゃうのか……、でも、それ以上に何か嫌な予感がする)」
仕掛けたのはこちら側だと言うのに、それだけで許してくれるのは大分優しいと思える。だが、
「そんでもって、お前! ヒカジイ、じゃなく えーっとアティス、だったか? お前はワタシの遊び相手認定だ! 喜ぶが良いぞ! 色々と確認したい事があるからな!」
「うぇぇ!? え、えっと リムルさんの攻撃が通じなかったら、ですよねっ!?」
「うん? 決定事項なのだぞ?」
「無条件!? ま、待ってください! そ、そのオレ達は一蓮托生と言うか、心の友! と言うか、兄弟、兄弟なんで!」
「我儘で、仕様が無いヤツだな。それで許してやる」
「(うぅ…… 横暴だぁ……。また、我儘言われた……。オウサマに続いてマオウサマも、似たようなものだよ……)」
アティスは、どんよりと気落ちするが、そんなアティスを撫でるのは リムル。
「とりあえず、此処はオレに任せとけって。まぁ、なる様になるさ! 条件もそんな悪くないだろ?」
「いや……、リムルさんが負けた日には オレ、大変な未来しか見えないんですけど……」
遊びと生じて、ボコボコにされそうな気がしてならないアティス。単純にじゃれられるだけで、凄まじいオーラで吹き飛ばされては戻ってきて……捕まえて、放られて、延々と……、と言うのが未来予知。
どう転んでも最悪な事態は回避出来そうなので、やるだけやってみる精神でリムルは 立ち向かう事に決めた。寧ろ、強引に奪われないだけいくらかマシなのだから。
「じゃあ、オレだけが攻撃する、って事で こいつは一先ず離れておいてもらうぞ」
「うむ。いつでも良いぞ」
「では、これを喰らえ!」
笑顔で仁王立ちするミリムに突っ込むリムル。
その時間にして、1秒程度の間にも頭の中では大賢者の情報が巡る。
□ 膨大過ぎる魔素量の為捕食は不可。
□ 通用する攻撃手段は皆無。
□ 全ての攻撃は反射される可能性大。
絶望しか浮かばない様な内容だが、それでも自信満々にリムルは攻めた。
自身の掌に、まるでアティスでも纏っているかの様な光を纏わすと……、それをミリムの顔面に押し当てる。
ぱちっ! と乾いた音が周囲に響き渡った。
傍から見れば見事な掌底突きが決まった! と思うが、相手が相手なので楽観視は出来ない。
全員が固唾をのんで、見守る事 2秒。
ミリムの目が輝きだした。
「な、ななな、なんなのだ!? これは!? こんな美味しいもの、今まで食べた事がないのだ!!!」