メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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24話

 

 

 

「みゅふふふ~~♪」

「………………むぎゅっ」

「むっふふ~~~♪」

「………………むぎゅぎゅっ」

「(なに? この状況)」

 

 

 ランガの背には今3人いる。

 1人は言わずと知れず、主であるリムル。そして、もう1人の主! と言っても差し支えの無い相手であるアティス。

 

 そして、最後の1人が、まさにこの混沌な状況を生み出した張本人である存在。アティスを思いっきり抱きしめ、ご満悦な顔をしてるひと。

 

 

 魔王ミリム。

 

 

 

 因みに他のメンバーは 全回復したので一足先にテンペストに戻ってもらって、色々と周知して貰ってる。シオンが少し渋ったのだが、何とかアティスがお願いした形で戻ってもらった。

 

「しかしまぁ、あのヒカジイが名を付ける様な事をするとは、思ってもなかったぞ。パワーバランスがどーとか、色んな生態系に影響が~とか言ってたと記憶してるんだがなぁ」

「むぎゅ……。ぷはぁっ、そ、そうなんですね……」

「にゅふふ。まぁ、お前はヒカジイと唯一の繋がりのある存在なのだからな。丁重にもてなすぞ! かわいがってやろうではないか!」

「え、えーーっと、今向かってるのは テンペストのリムルだから、どちらかと言えば、ミリムさんのほーがもてなされる相手、になるんだけど……」

「わっはっは! 細かい事を気にするな、なのだ!」

「く、苦しいです~~……」

 

 ぎゅむっ、と背中に抱きつかれてる形になってる。

 そして、最高硬度な身体を持ってるアティスと言えども、この世界で天災とも称される魔王ミリムの可愛がりは、強力極まりなく、肉体的なダメージは無くとも、精神的に来るものがある。

 

「そういや、アティスの名付けの相手、今までフワッとしか聞いてなかったな、オレも。トレイニーさんにも色々と教えてもらってるけど、そのヒカジ…… 光の神ってどんなヤツなんだ?」

 

 光の神。

 魔王って名を持つ者がいるなら、勇者、そして 神みたいなのも存在したって不思議じゃないし、驚きは無い。……が、色々と今までの事を総合して 連想してみると…… 何だか異質な存在である、と言う事はよく判る。

 

 連想するのは 未確認の伝説上の存在、実際に存在するのかどうかもわからない偶像……等々。

 

 トレイニーの話から、実際にいるのは間違いないと言えばそうなのだが、トレイニー自身もそういったレア存在なのだから、それが崇拝する相手ともなればやはり違う次元の存在なのだろう。 更に言えば、此処にいる最強魔王が心底慕ってる相手。

 

 考えれば考える程、気が遠くなりそうな相手、と言うのがリムルの結論だ。

 

「えーっと、オレもよく判んないと言うか、兎に角色々と眩しいお爺ちゃん? かな」

「何だよそれ……」

「うむ。間違っては無いぞ。ヒカジイはずっと輝いてるからな! う~む。次来るのは何時になるのだ? アティス」

「お、オレは知らないってば! くるしいーー」

「むむ。まぁ、良い! 美味しい食べ物に面白い相手が沢山。うむうむ、楽しいのだー」

 

 

 此処で少し時を遡ろう。

 

 それは、ミリムに最後の一撃を入れたあの場面。

 リムルの一撃はダメージ狙いの攻撃! ではなく、美味しい美味しい蜂蜜を食べさせる目的での攻撃だった。

 

 ハチ型魔蟲に採取してもらったとっておきだ。美味しさは抜群で、一気にミリムの興味を引き付け、―――最終的に交渉に持ち込む事が出来た。

 

 あの勝負は 引き分け と言う事にできた上に、今後、最強の魔王であるミリムが手を出す事はない、とまで約束させた。この時点で大金星。 アティスを掻っ攫おうとした様だが、そこは アティスがゴネにゴネて、リムルと一緒にいるからいつでも会えるから、で何とか妥協して貰えた、と言うのが真相である。

 

 

 

 

 そして、場面は元に戻る。

 

 今 ランガの上にいるので、あまり暴れないで欲しいんだが、と思ったりするリムルだが、上機嫌なミリムを咎める様な事は止めとこうと判断。ランガも平気そうだから大丈夫だろう。

 

「おお、そうだ。お前たちは魔王になろうとしたりはしないのか?」

「……しねーよ」

「同じくです。(……仮にも光なんだし、色んな意味で、魔王は無いと思うなぁ)」

 

 ミリムは意外な返答だったのか、首を傾げていた。

 そもそも、豚頭帝(オークロード)を魔王にしようと計画していて、それを頓挫させた相手…… 打ち破った相手であれば、大なり小なり願望がありそうだ、と思っていたから。

 

「え だって魔王だぞ?? 格好いいだろ? 憧れたりするだろ??」

「そもそも、魔王の第一印象は【怖い】です」

「またでたよ、ヘタレ発言」

「………しょーが無いじゃないですか。もうアレですよ? 真・魔王みたいなもんなんですよ? 相手は」

 

 アティスの言葉を聞いて、ミリムは胸を張った。

 

「ふっふっふ。そう、恐怖し、畏怖され、崇め奉り……そんな存在が魔王なのだ。まさに格好良い、の一言ではないか」

「どーしても、オレの中のベクトルは、そっちに向かないです。怖いです」

「まぁ、怖い~は兎も角、オレもやっぱ別にどうとも思わねーな」

 

 そっけない回答を再びもらったミリム。流石に2度目なので驚いた。

 

「えええーーー!? じゃあ何を楽しみに生きているんだ!?」

「魔王格好いい! だけが楽しみなの? ソレ なんか寂しいと思うよ?」

「うぐっ!?」

「ヒカジイ、光のお爺ちゃんってなかなか来てくれないみたいだし……、もっと他に楽しい事だって沢山あると思うんだ。大変な事も多いと思うけど」

「オレ達がまさにそれだな。発展途上も良いトコだし、繋がりとか今後の事とか考える事が山積みだ」

 

 次々に反論してくる2人。ミリムは魔王なのに、少し圧倒されてしまった。

 それにイジケ気味な様子。

 

 

「でもでも、魔王は魔人や人間に威張れるのだぞ?? 面白いだろ??」

 

 

  何とか同意してもらいたい感満載だが、生憎だった。会心の反撃を受ける。

 

「やっぱり、ミリムさん寂しそうな顔、してますって。それだけじゃ楽しくないでしょ?」

「流石 色々と感情面を掬い取るのが得意っぽいアティス。……と言いたいが、流石にオレにもわかるぞ。ソレ、退屈してるんじゃないか? 威張るだけとか。ミリムくらい強かったら 訳ないと思うけど、顔色ばっか窺ってくる奴らばっかだと退屈に拍車をかけそうだ」

 

 

「ッッ―――――!!!」

 

 

 電撃が身体を貫いた。

 如何なる攻撃魔法(電撃系)を受けてもビクともしない身体なのに。

 

 瞬間的に、腕の力が増し増しになる。つまり抱いてるアティスは 万力の様な力で締め上げられてしまう。

 

「むぐぐぐぐぐ、つ、つぶれちゃう、つぶれるぅぅーー」

「まてまてまてーーー、お前ら、お前ら! アレだな!? 魔王になるより面白い事してるんだろ!? ヒカジイ独り占めにするどころか、楽しい事までしてるとは! 何たる狼藉なのだ!!」

「ちょちょ、ちょーーっと待て! ランガの上で暴れるな! それにオレはヒカジイにあった事無いって言っただろ!?」

「兄弟と言ってたではないか! ならば同罪なのだ同罪なのだーー! ズルいのだズルいのだーーー! もう怒った! ワタシも仲間に入れるのだ!!」

「駄々っ子かよ……」

「むぐぐぐぐ……(息っ、息っっ!! 死んじゃうっ! ま、まざーたすけてぇ……)」

 

――解。呼吸の必要はございません。

 

 

 

 ある程度締め上げたら満足出来たのか、少し緩めてくれたので、アティスは脱出した。はぐれメタル状になってランガと並走する

 

「うぅ……、ランガ、ごめんね? 背中で暴れちゃって……」

「問題ありません。それに、アティス様は暴れてませんが」

 

 ミリムが暴れてるのが正解なのだが、何だか自分が謝らないと、と思ってしまったアティスだった。悪さした知り合いの子、いやいや 姪っ子の面倒を見てる気分だ。力が凶悪過ぎるのが玉に瑕……どころではなく、頭を悩ませる所ではあるが。

 

「こらーー、アティス戻ってこい! 押し付けるな!」

 

 アティスがいなくなったので、腹いせにリムルを盛大に揺らすミリム。

 

「ワタシも仲間に入れるのだ入れるのだ、入れるのだーー!」

「わーーー、わかったわかったから、オレ達の街を案内してやるから!」

「本当だな!? 本当なのだな!?」

「ほんとほんと。じゃあさ、お前のことはミリムって呼ぶから、オレの事リムルって呼んだらいい」

「確かに仲間っぽいですね~。その方が」

「だーかーら! 戻ってこいコラ!」

 

 遠目で眺めてる感じなアティスをスライムボディ操作で巻き付けて再びミリムに押し付ける。ミリムも待ってました! と言わんばかりに両手を広げてた。

 

「ふむ……。いいケド、特別なのだぞ? ワタシをミリムと呼んでいいのは、仲間の魔王たちだけなのだ」

「アレ? 光のお爺ちゃんは違うの?」

「うむ。ヒカジイは、ミリーや、って呼ぶぞ」

「大体一緒じゃんソレ。(孫みたいなもんか……)」

 

 名前呼びを渋々と応じてくれるミリム。確かに最強の魔王なのだから、名前で、それも呼び捨てにして呼ぶような事は滅多にないだろう。でも、仲間と言うのなら、他人行儀っぽくなるので、やっぱり名前呼びが良い。……いや、仲間と言うより、もっとしっくりくる言葉がある。

 

 

「仲間って言うより、友達が良いかな?」

「そうだな。今日からオレ達は友達だ」

 

 

 口喧嘩したり、わぁわぁと絡んだり、楽しんだり。

 これらが出来る相手は、仲間~と言うより友達と呼びたい。勿論、仲間と言う呼称が悪いわけではないが、寂しがりやッポイ所があるミリムにはこれが一番だと感じた様だ。

 

「と……、とも……だち。ともだち、ともだち……」

 

 ミリムも新鮮だったのだろう。そして、温かい気持ちが身体の中に流れ込んでくるのが判る。もう、こんな感覚は一体いつぶりになるだろうか……。最後に光の神G.O.Dと会ったあの時以来の感覚だった。

 

 そんな嬉しい様な楽しい様な、温かい様な 色んな感覚を堪能していた時だった。

 

 

「ホラ、ついたぞ。アレがオレ達の街だ」

 

 

 見えてきたのは、魔物の国―― 魔国連邦(テンペスト)

 

「おおおー!」

 

 子供の様に目を輝かせているミリム。

 

 ここから新しい事が始まるのだと確信した様だ。間違いなく楽しく――――退屈など決してしない事が。

 

 

 

 

「ここは やっぱり、ようこそ、テンペストへ~ かな?」 

「だな」 

 


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