「あのー、そんなに震えなくても……。危害を加えるつもりは毛頭……」
「ぷるぷるぷる、ボクわるいスライムじゃないよー……」
緑の凄い存在が突然目の前にきたようです。
賢者曰く森の最上位の存在らしい。所謂この森のボス。そんな
「えっとですね? 何百年ぶりになりましょうか、光の神様と謁見する事ができ、貴方様の存在を知りまして……」
「ぷるる、ボク、いまはスライムだけど、あっ、メタルスライムだけど、にんげんになるのがゆめなんだっ」
「え、えーっと……」
スキルを駆使して、逃げようとしてるのに逃げれない。神様から頂いた(厳密にはちょっと違うけど) 《超絶運》もどうやらこの存在には通用しない……。全く効かないみたいだ。
『知らなかったのか……? 最上位の存在からは逃げられない………!!』
って聞こえた気がする。流石っ! 最上位な存在っ!
ここは良いスライムネタで押し切るしかないと瞬時に悟ったよ。だって、逃げれないから。勇敢に攻勢に出る! なんて、出来ないし。ヘタレ上等! ゴマすり上等!!
『こいつ、何かヤベェ。触れない方がええわ』
と、相手に思わすしかない。……と言うか 思ってください! 見限ってください!
堅い身体だから 攻撃はどうにか出来るかもしれないけど、……そこに目をつけられて、一生盾になれーとかされるかもしれないし。
「うぅ~ん、にんげんとおともだちになりたいな~。ライアンさーんっ」
「らいあんさん? とはどなたでしょうか……?」
「ぼくのとくいなのはホイミで……、や、できないや……。ごめんなさい……」
「い、いえ。その様な事で謝らなくても……」
「ぷるぷるぷる」
どう? オレ、イっちゃってるでしょ? 見限って! と強く強く念じるアティス。
前も(前話でも)言ったが、もっと冷静になって、しっかりと目を凝らして、《自動魔力感知》に集中して、ちゃんと彼女を見れば、怖がるような相手じゃない、と判る筈。
彼女は敵じゃなく、友好的。むしろ光の神G.O.Dの話をしているのだから寧ろ、おじいちゃん、と呼んだアティスであれば身内の話をしてくれるので安心さえ出来る筈だ。(多分)
でも、アティスは未だに彼女の顔を見てない。
「……仕様がないですね。えーっと、悪くないメタルなスライムさん」
「ぷるぷるぷる。なぁに~?」
「堅そうなお身体をしていますが、柔らかくなる事も可能ですよね? 流動する身体へと」
「ぷる……ぷるぷる」
「できますよねっ!」
「……………………で、き、る、よ↷」
会話が成立出来たのは良かった。
そして、アティスに普通の目が無かった事が残念だ。
「申し訳ありません。お連れしたい所がありますので、私に液状化した貴方を纏わせてください」
そして、時は少し進み――スライムの村 テンペスト。
ここでは、オークの軍勢についての話し合い、今後の方針を立てていた。
何よりも驚くべき所は、その圧倒的な軍勢。それにリムルは驚きを隠せられないでいた。
「はぁ――――っ!? 20万―――?? 20万ものオークの軍勢がこの森に侵攻してきてるってのか?」
まさに数の暴力。個の力をも容易に飲み込むであろう圧倒的な破壊の力だった。
信じられない、と言った顔をしているのは実際に襲われた鬼人の
言葉にすると簡単だが、実際に20万の豚を想像するのは億劫だから。
「は……。その通りでございます」
「だが、オレ達の里を襲撃したのは数千程度の筈だったが……?」
「あれは別動隊だったのだ。本隊は大河に沿って、北上している。そして本隊と別動隊の動きから予想できる合流地点はここより東の湿地帯……。つまりリザードマンの支配領域という事になります」
自分たちが今いる街の位置を確認し、オークの侵攻域を見るリムル。
そこに違和感を感じていた。
「(オレ達の街はターゲットに入ってないって事。……でも、それなら、オーガの里だって、本体の進路の妨げにはなっていなかった筈)……オークの目的ってなんなんだろうな」
行きつく疑問はそこにある。
オーガを襲った。だが、この街はスルーした。美味しそうな所を狙った、と言う訳だろうか? と色々と考えを張り巡らせるが、どうもリムルはしっくりこなかった様だ。
そこにドワーフのカイジンが声をかける。
「……ふむ。オークはそもそもあまり知能の高い魔物じゃねぇ。この侵攻に、本能以外の目的があるってんなら、何がしかのバックの存在を疑うべきだろうな」
オークと言う種について、リムルはそこまで詳しく知らなかった。
何か大きな何かが、背後にいる。それが格上のオーガを襲い、滅亡の手前まで追い詰めた、と言うのなら、……そんな生半可な相手じゃない。そして、思い浮かぶのは ベニマル達と一戦交えた時に、発していた《魔人》と言う存在。
いや、それよりも上。
「たとえば魔王……とかか? って、なんてな。まぁ、何の根拠もない話だ。忘れてくれ」
魔王。
その存在はリムルにとって他人事ではない。……今は亡き彼女の想いを受け継いだリムルだからこそ、強く思うのだ。シズと言うかつての人間界の英雄。……そして、それを苦しめたのが魔王レオンなのだから。
話し合いを進めていた丁度その頃。
「素晴らしいですね。この形態。鋼のはごろもとでも言いましょうか…… いえ、世に4種しかいない竜種の鱗を纏っているかのようです。なのに軽くて動きやすく、極上です」
「ぷるぷるぷる……」
嫌な予感的中致しました。
このまま一生防具としてこき使われるのだろうか。逃げれないのなら、戦うしかない?
ヘタレ返上しなきゃダメ?
「(戦いのスキルって何かあったっけ? 賢者さん)」
――解。エクストラスキル 黒炎 が使用可能です。
「(ナニソレ。神様にそんなの貰ったっけ?)」
――解。洞窟内での残留魔素を纏った時に習得致しました。………世界の声として周知された筈です。
「(そーだっけ? あれ? 蝙蝠たちに襲われてたとき、かな)」
――はぁ。
「(!! あ、呆れないでよ! 必死なんだから! うぅ……、オレ、どうしたら良い?その黒炎使った方が良いかな?? ちょっと頭のおかしなメタルスライム~ を演じてたら、いらんっ、って放られると思ったのに、はぐれメタルにされて、上手い事 服にされちゃったし……)」
――解。黒炎の使用は推奨いたしません。このままでも問題ないと思われますので。危害を加えられる可能性0%。
「(えー、だってそりゃ、今オレ防具だもん。……自分で自分を傷つける様なもんじゃん? うぅ……この窮地を逃れる方法は無いかな? 緑のひと、最上位なひとなんだよね……? きっと、変身は5~7回は残してて、手が捥がれ、頭捥がれ、更に生えてきて、どんどんゴツクなってて、この世を恨んで~ って………。あぁ…… あたまのなかで、あのBGMがながれる……。最後の戦い、始まる……。どう、すれば……)」
――解。流動する身体、流体多結晶合金の状態でも触覚は問題ない筈です。前方面に触覚を集中させると判明します。視覚での方が早いと思われますが、身に纏われている以上、触覚の方が早いかと。
「(ナニソレ……? 触覚?)」
――解。纏っている者を、
確かに、このはぐれメタルの身体は余すことなく感覚は行き渡ってる。五感、多分味覚は無理だと思うけど。
「(え、えーっと、やってみよう、かな。んんーーー、前面に前面に……)」
ぷるんっ、とした体をゆっくりと動かした。
勿論バレない様に、細心の注意を払って、ゆっくりとストーキングする様に。
身体の扱いはそれなりに慣れてきたつもりだったので、何とか出来た。
「(う、う~ん…… あれ? 身体ってイメージしてた程大きくない? ゴツイのを想像してたんだけど……、頭二つあるとか……。ま、まぁ あんまり大きすぎると、オレの身体の容量オーバーしちゃいそうだし……。どれだけ広がるかわかんない、か。 んん、それより、これ 多分肩だよねー、えとえと、これ鎖骨。人間っぽい? ん? んん? …………んんん!??)」
肩、そして鎖骨、と人型であろう身体の中心部へと感覚が張っていく。と言うかよく判らないがメチャクチャ感度が上がったみたいで、身体の輪郭が手に取る様に判る。
ぽよんっ、ぽよんっ、と、スライムの身体に負けないくらい……。いや、堅いスライムと比べるなど烏滸がましい! はぐれメタルなぼでぃ…… いなっ!! もっともっと心地良い感覚!
「(ちょちょちょちょ、こ、これって……!! これって、なにっ、この柔らかいの、なにっっ!?)」
――解。
別に賢者に聞いた訳ではない。でも、気を聞かせてくれたのか、しっかりと、淡泊に答えてくれた。
ちゃんと認識できたので、認識してしまったので、超精密な動きなんかできる訳がない。一気に解除された様に、うねうねと身体を動かしてしまった。そのおかげで、より この人の身体に密着をしてしまう結果になって、さぁ大変。
「おぱおぱおぱおぱおぱおぱおぱおぱーーーーーーっっっ!!??」
「っ、と。どうしました? もう少しで目的地へと付きます。もう暫し我慢していただけると助かります。……そこで全てお話しますので」
告…… はぐれメタルな身体が変色……チェリースライム色へと進化。
名前も生前もチェリーがついてる。わーい、お揃いだ――。
「お、お、お、おんなのひとで ありんしたか!?」
「ありんし? ……はい。私は、
「ほわっわわっ!! え、ええっと、わわ、お、オレっ、なんで、こんなひっついて……っ! ご、ごめんなさーー」
「………?? 纏わる様に、とお願いしたのは私の方ですよ。……ああ、もう到着しましたので。向かいます」
ちょっと取り乱してしまったけれど、大丈夫です。感動に胸を打たれてるだけです。
女の人の身体の感触……、なんと柔らかい事でしょーか。こんな柔らかさ…… 社会人になって一度だけ、たった一度だけ体験したコンパニオンさんのパフパフ、以来じゃのぅ……。
もーちょっと心の準備をさせてくれたら、『FOOOOOOOOOOOOO!!』っと歓声上げたのに。もうそれも終わりそうで、残念だ。
ぼふんっ! と舞い散る花びらと共に、鮮やかに華麗に演出を決めて、色々と怖いだろう、と予想して半ばビクビクしてたスライムの領土、その中心へと入ってしまった。
「―――初めまして、“魔物を統べる者”及びその従者たる皆さま。そして、突然の訪問相すみません。わたくしは
流石は最上位な存在。
こんな上位種やらドラゴンを取り込んだ? スライムやらがいる中に入っても威風堂々としてた。何とか持ち直したのに、また心臓?バクバクいってる。(気がする)
「オレはリムル=テンペストです。初めまして、トレイニーさん」
そんなトレイニーに笑顔で挨拶してる女の子がいた。固まってる人が多い中、ただ1人だけ、笑顔で挨拶。
「(うわぁ……、ぜーーったい、あの子も凄い存在なんだろうなぁ……。判るかな? あの子、どんな子?)」
――解。スライム。個有名:リムル=テンペスト。この集落の長、そして
「ええええっ! この子がっ!? この子なのっ!? マジっ!?」
「「「ん?」」」
多分、視線が一気に自分に集中したんだと思う。最悪の展開。ただでさえ また取り乱しそう。
だって、皆の見てる所……トレイニー様! であって、違うかったから。オレの方を見てる、気がするから。……気のせいなんかじゃないから。
「んーー、んん?」
あの水色の髪の女の子? がゆっくり近づいてきた。気が付いてるのかもしれない。だって、最強のスライムさんだから。
それに、なんか怖い人たちの視線も集まってる。頭に角があって……、明らかに纏ってるオーラが違ってて……、アレが前に聞いたオーガの上位種 鬼人だと判る。
「(……あらヤダ。現実逃避したい。睨まれただけでちびっちゃう。……って、ダメダメダメ! トレイニー様にかかるっ!!)」
なので、必死にアティスは念じに念じた。己に暗示をかけるかの様に。
「え、えーと。トレイニーさん? 今日はいったいなんのご用向きで……、と言うのと 今の声は……?」
「(……オレは、