「やったー、まおーとともだち、どころか
「コラコラ、天に帰りそうになった次は大冒険に出発か? 現実逃避すんな。現状の問題点解決に寄与せんか」
「うまうまっ♪ これが、かれー と言う食べ物か! めちゃくちゃ美味いのだ!!」
3人の見た目美少女(内2人は男)が楽しそうに燥いでいる。
1人は、この魔物の国の盟主にして、最強名高いスライム。
もう1人は、同じくスライム族にして 唯一絶対とも言われてる《神》より名を与えられし稀有なスライム。
だが、現在……街にとって最も厄介極まりないのが最後の1人の魔王である。
「シュナ! おかわりなのだーー!」
「はい。判りました」
見た目どう見ても子供なのだけどその実力は計り知れず、最古の魔王の一角とも言われたり、デストロイ! 等とも言われたり、最強の魔王とも言われたり、
そんな存在と友達どころか
「うまうま~ なのだ! こんな美味しいのはハチミツぶりなのだ!」
「ハチミツって、今朝の話ですね。お土産を大事そうに持ってるの見るのは何だか嬉しいです。頑張った甲斐がありましたね、リムルさん」
「おーおー、オレも嬉しいよ。お前さんが正気に戻ってくれて」
「ちょ、ちょっとした現実逃避じゃないですか……」
「お前の場合、何処までが本気なのか判らんから嫌なんだよ! 空高く帰りそうだった時、大変だったんだからな!」
またまた燥ぎに燥ぐ。そんなやり取りを笑いながら見ていたシオンは、ふと ミリムが手にしているハチミツを見て思った。
「ミリム様が興味を持たれたあれは、ハチが集めた蜜だったのですか?」
「はい、そうですよー。リムルさんからはまだ秘密にしてて、って言われてて」
「っ! いきなりバラすなよ……」
「別に良いと思うんですけどね……。後々には公開! って予定でしたし」
「ったく、まだまだ量産化の目途たってねーだろっての」
とっておきのおやつとして持っていたリムルは何だかばつが悪かった様だ。アティスは純粋にリムルの計画に賛同してて、後で食べようと取っていたわけでもないから、なんとも思わず公開したのである。因みに それが判るのはもう直ぐ後である。
「回復薬かと思ってたが……(結構アレも美味いし) そういえば色が青ではなく黄色と違ってたな」
「いえ、ベニマルさんの言う通りですよ。ハチミツは薬効がありますからね。間違いじゃないです。でもやっぱり リムルさんポーションと比べたら、味は断然ハチミツだと思いますよ。甘くておいしいです」
「へぇ……、断然……甘い……」
じっ、とベニマルの視線がミリムの持つハチミツに集中。
ベニマルは何気に甘党なので、より興味を持った様だ。
勿論、魔王ミリムも黙っては無い。そんな視線など簡単に察知できる! のである。
「やらんぞ! ぜーーーったい! これはワタシのものなのだ!! やらないのだ!! 美味しいのだ!!」
「いえいえ、とりませんて。魔王様から奪い取るなんて無茶しませんて」
甘党だけど、自殺行為に等しい+迷惑な事になりそうなことはしないとベニマルは誓った。
「はぁ、アティスが色々とばらしてくれたから、もう喋るけど、補足するとな 他にも砂糖っていう甘味料の代わりに用意したんだけど、多くは取れないうえに、抽出も今のところ、オレやアティスにしか出来ないんだ。量産化も、ってさっき言った通りで その後にお披露目しようと思ってたんだよ。ほら、皆舐めてみ」
取り出したハチミツを皿に小分けして 皆に渡した。
指ですくった後に口の中へと入れる。舌の上で甘未が口の中に広がり…… 皆の目が変わった。特にベニマル。
「ッ!! ッッ!!」
「ま、まぁ、アティスに黙っとけって言った手前だ。一人占めしてたようなもんだし、悪かったよ。それに砂糖も量産化して 色々と料理の幅が広がって、甘いお菓子なんかも沢山作れるようになるって。もうちょっとの辛抱だ」
「あはは…… ベニマルさんも甘いのには目が無いんですね。シュナさんのお兄さんですし」
アティスは、リムルの説明を聞いて目の色を変えたベニマル、そしてシュナを見て笑っていた。甘いお菓子には目がない様子。勿論、シオンやミリムも同じく。同盟を造っちゃいそうな勢いだ。
「理解しました。明日からはお砂糖の発見に全力を尽くすと約束致します! 高級品をお手軽に手にする日を、直ぐにでも! いいですね? シオン」
「はい! シュナ様! このシオン 一命に代えましても、砂糖を発見してご覧に入れます!」
「うむうむ! 頼んだのだ!」
結成―― スイーツ同盟。
がっちりと堅く握手を交わす3人の女たち。甘いものは別腹とはこの世界でも言う様だ。
「女の子たちですからね」
「その内バイキング形式で始めたら面白いかもな。スイーツバイキング」
「良いですね! 美味しいものを沢山作って広めて、販売して…… そんなことしてる国が悪い国~ なんて、きっと誰も思いませんって! うーん。平和が一番です~」
「おう。何かあってもお前がいるから大丈夫だろ? なんせ、ミリムの一撃を防いだ程だ。最強の盾はお前だアティス」
「へ? い、いやいや、天に召されかけた~ ってリムルさんも言ってたでしょ! あんな事故はもう二度と御免です!」
「安心しろって、そうそうないさ。そもそもミリム以上なんて、寧ろないんじゃないか?」
「何かある前提で話さないでください! 平和一番! って言ってるでしょ!」
騒いでる所にいつの間にか、ミリムがやってきた。
何だか悪い顔してるミリムは、リムルが言っていた『ミリムの一撃を防いだ』と言う単語だけ、聞き逃さなかった様だ。
その後『もう一度するのだーー!』と目をランランと輝かせながら腕を振る。アティスも『ダメです、嫌ですー』とぴゅーーと逃げる。
傍目からは、戯れてる童女たちに見えるのだが、その衝撃の規模を考えたら悠長に観戦できない。だって、建物が吹き飛んでしまうかもしれないから。
その後の夜――ミリムの世話係として、アティスは勿論のコト リムルも担当する事になった。
「まぁ、アイツだけに任せるのは、ちょっとだけ不味いって思ってたから別に構わないけど、お前らも手伝ってくれよ?」
リムルが見渡すと、大体が頷いてくれた。遠い目をしてたような気がするが気のせいだと願いたい。
「それとだ、旦那。ちぃと気になってる事があるんだ」
「なんだ? カイジン」
「魔王ミリム様の動向も確かに気になるが、オレぁ他の魔王の出方にも気を付けた方がいいって思うぜ」
「? どういう意味だ?」
カイジンの言葉を聞いて、リムルは ぽよんっ、と人型からスライムに戻って話を聞く。
「魔王は他にも何名かいるんだが、名が、その名称が同じだけでってだけで、別に仲間同士じゃないんだよ。互いににらみをきかせ、けん制し合ってる間柄と言っていい」
「いかにも」
そこに付け加えるのは、博識でもあるハクロウ。
「しかもです。リムル様はジュラ・テンペスト連邦国の盟主と言うお立場。そして、アティス様は リムル様の同族というだけではなく、かの光神の加護を受けし存在。まだ、ミリム様と我々のみ共有とは言え何れは漏れる事。 つまり、『テンペストが魔王ミリムと同盟を結んだ。その背後には 光の神の存在がある』と伝わる事になりましょう。……経緯を知らぬとは言え、そう見えるのは明白」
ハクロウの言い分は正しいだろう。ミリムもそうだが、あの何処か抜けていて、甘えったれなアティスも正体を探っていけば、ミリムにも引けを取らない。その背後の存在の事を考えれば、更に上位……この世界の神と信仰~ではなく、交友関係~ ともなればどうなってしまうのか、正直考えたくない。
「それに同盟が事実なら、今まで配下を持つことすらなかった魔王ミリムの勢力が一気に増す事になるでしょう。魔王の間の力の均衡が崩れる。森の管理者やミリム様を見てわかると思いますが、光の神とは絶大な存在。魔王といえど無視など到底出来ぬ存在。それが背後にいる国。……正直、面白く思わない魔王もいるかもしれない……ってことです」
「成る程な。この森が勢力争いに巻き込まれる可能性も、って事か。っておいおい、ちょっとまて。唯一の絶対が光の神っていうGODなんだったら(って、よく考えたらGODってただ神を英訳しただけだな……)、そんなもんがいるかもしれない所に無暗矢鱈に手を出したりしないんじゃないか?」
「確かに。アティス様自身が、GOD様の光の御業をお使いになり、更にはその御神をおよびし、力を誇示し、 ともなれば話は代わりましょう。……ですが、それは不可能なのでしょう?」
「お、おう。本当に僅か。片鱗。ちょこっとだけ、雰囲気だけ、ってな感じで本人は言ってるだけだし、完璧に再現っていうのは どんなスキルでも無理だ。大賢者が言ってた」
「人側もそうでしょう。魔物風情が神の名を語るなどと不届き千万、とそれだけでも攻める対象になるやもしれませぬ」
「……下手な力の誇示は、魔王たちの勢力~云々より、更に余計な争いを生むって事か? アイツ自身がカミサマにでもならない限り、そんなもん、ハッタリだーーって言ってくる連中が寄ってたかってくる、と?」
リムルの言葉に全員が頷く。
確かにアティスの力は計り知れない所があるが、それはあくまで下界? の者達の範囲内で語れるもの。完全な上位、それも最上位…… 神? とも聞かれたら、そんな上限が判らない様な存在ではないというのは一目瞭然。更にあんな性格してるし、余計に無理だろう。
「光の神の件は、我々が崇め奉り~ と言うていで済む問題でしょうが、そこにミリム様が加わるとどうなるか想像がつきませぬ。……しかし、実際にお帰りいただこうとしても無理なのでは。……言っても聞いてくださるとは思えません」
「リグルドのいうとーりだ。目に浮かぶよ。『大丈夫なのだ!』って感じで。何が大丈夫なのかは知らんけど、機嫌損ねられても後が怖いし。う~ん、飽きてくれるのを待つだけか」
「はい。仮に敵対するともなれば、他の魔王を相手にする方がマシです。魔王ミリムはまさしく天災ですので」
「だろーな……。やっぱりそーだろーな。……で、お前ら。もし アティスをミリムが無理矢理連れてく、って状況になったら?」
リムルがそう聞いたら、即座に返答が返ってきた。
「「「「全力で抗います」」」」
まさに即答。
少しだけ頬がにやける。
「ここにアイツがいないのは残念かもな」
「ところでリムル様。そういえばアティス様のお姿が見えませんが、どちらに?」
「ん? ああ、アイツならミリムにさらわれたよ」
「なんと!!」
「いやいや、変に考えるなよ? タイムリーな話題で難しいと思うが、多分風呂だろ。シュナやシオンに連れてって貰ったんだ。……まぁ、アティスは逃げるって喚いてたけど、逃げれると思えないから、一緒に混浴してるんだろ(う、うらやましくなんて、ないんだからねっ! とかいってみたり……)」
と、色々と噂してる所で、勢いよく扉が開いた。
「リムル!! ここの風呂はすごいな! 泳げる程広いのだ!! 面白いのだ!!」
「!?」
タオルを胸部と腰に羽織っただけのほぼ半裸状態のミリムが入ってきた。
幼児体型ではあるが、仄かに育つ部分もあって、少々目のやり場に困る面々……ではなく、殆ど唖然としてる様子。
「ミリム様! ほら、まだ御髪を洗えてないでしょう?」
「おお! すまぬな、感動したから早く親友に伝えたかったのだ! わはははは! おっ、親友と言えば、もう1人! 面白いな、アティスは! 堅かった身体が風呂でドロドロになったぞ!」
わはは、と笑うミリム。どうやら、アティスは はぐれメタル化した様だ。湯でふやけたのだろうか……(笑)
「じゃあな! リムル! 明日はお前も一緒なのだぞ!」
「きゃ、ミリム様、タオルがはだけてますよ」
「………………」
ちらっ、と見えた。シオンにしっかりと抱きかかえられているアティスの姿。所々赤くなってるのは やっぱりのぼせたからだろう。きっと。
「うふふ……、失礼しました……」
そそくさと立ち去る女性陣を見送った後に、わずかに静寂が流れ……。
「あー、改めて言うが、ミリム様のお相手はアティス様、そしてリムル様に一任するのが最善でしょう。そう、全てを」
『異議なし!!』
「おいベニマル貴様!! なんだ、『全てを!』って!」
「いやいや、あそこまで懐かれちゃったら、これが最善でしょう? アティス様にこのコトを伝えておきますよ」
「うむ。それ以外に適任者は考えられませぬ。我々は本当に幸運でした」
「うぐぅ……、なんだ? さっきもそうだけど、最初に決まった時より 何だか疲れが更に出てきたような気がする……」