メタリックなスライムになっちゃった   作:フリードg

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27話

 

 

 ミリムの世話役に任命されて大変な日々を送るこの国 最強族のスライム達。

 

 この世界にやってきて、嫌と言う程思い知ったのは やはりどうしても戦いで物事が決まってしまう場合が多いという事だ。強国、大国が小国を支配、領土を拡大していく。魔物の世界も当然ながら、弱肉強食を理にしている。

 

 だからこそ、日々の戦闘訓練も欠かせない。嫌々、と言ってられないからだ。

 それに、戦闘訓練(そういう事情)を聞いたミリムもいる。

 

「わはははっ! ならば、わたしが相手をしてやるぞ!」

 

 こうして、最強の魔王様が直々にご教授して頂けるという事だ。

 

 単純なサンドバッグ役が欲しいだけの様な気もするが―――――きっと気のせいだろう。

 

「じゃあ、頑張ってくれ給え、アティス君!」

「………………」

「………じょーだん。じょーだんです」

 

 流石のリムルも今回ばかりはアティスだけに任せておけない。

 普段の難題なら、アティスに押し付けても良い様な気もするのだが 事、戦いにおいては別だ。物事が戦いで決まるというのであれば、盟主である自分自身が鍛えないと示しがつかず、更に言えば盟主であるのと同時に、鬼人たちをはじめ、街の仲間達の中では一番の実力者の位置にいるのがリムル。その相手ともなれば……実力差は歴然ではあるが、やっぱりミリムが一番であるのは間違いないから。

 

 

 と言う訳で戦闘訓練はしっかりしないといけないから 日々の訓練相手はミリムに決定。今日もしっかりトレーニング。

 

炎化爆獄陣(フレアサークル)!」

 

 炎の上位精霊 イフリートを捕食した際に習得した技。範囲内を獄炎で包む。並の相手が受ければ一瞬で消し炭になる程の攻撃だが、ミリムに通用するか? と言われれば首を激しく横に振るだろう。

 

 と言うより何よりも当たってないのだ。

 

「わはははっ 何処を狙っておる!」

 

 丁度ミリムの右斜め前、1m満たない程の距離で炎が上がった。炎による高熱は範囲外にも伝わるが、ミリムにはそよ風に等しいものだ。……だが 勿論これだけで終わる筈もない。

 

 炎攻撃は囮であり、真の狙いは炎に隠れながら背後を取り、ハクロウ直伝の剣撃で攻めるというもの。

 

「――隙あり! ……あ」

「にっ!」

 

 ミリムがその攻撃に気付かない訳もない、と言うのも『勿論』である。

 笑顔で振り返るミリムは、リムルの剣を受けるまでもなく、魔王覇気を放出。

 ドゴッ! と凄まじい力の奔流が天まで届かんばかりに放出され、轟いていた。

 

「ぬわーーー!! って、アレ??」

 

 その覇気に吹き飛ばされた! と錯覚したリムル。……自分自身の周囲にキラキラと光を放つ粒子の存在をすっかり忘れていた様だ。

 

「おおっ、流石だな! よくぞ防いだというものなのだ! タイミングもばっちりなのだ!」

 

 両手を腰に当て、まるで自分の事の様に喜ぶミリム。

 今アティスは、リムルに纏わっていて、傍から見たら融合した様にみえる。

 

「おお、そーだったそーだった……、って、おい空に昇ろうとすんなアティス! もう二回目はウけないから止めろよな!」

「…………何とか 受けとめれたとはいえ、しょうげきハンパないんですよ!?」

「うむうむ。肉体的ダメージはほぼ無しのようなのだ。流石はヒカジイの力だな! ……だが、まだまだアティスはその片鱗、残滓、数%も引き出せてはおらんぞ? そこの所も訓練すれば 更に良いと思うぞ! むっふっふっふ~…… わたしもワクワクするぞ!」

「ぅぅ………、そんな笑顔しないで。ワクワクもしないでください……」

 

 やっぱり、ミリムとの訓練は ある意味最悪、ある意味災害、ある意味天災……、そして 有意義であると言えなくもなくない。この世界の力の頂きと相手してもらえるなんて、と。

 

 それは兎も角、訓練は大事と言う訳で只管実践あるのみ、である。

 

 リムルもそれなりにアティスに防御してもらえている為、吹き飛ばされるような事はないのだが、ミリムの攻撃の余波が来る為、アティスが言う様に精神がごっそり持ってかれてしまう様だ。

 この攻撃を直に受けているアティスには、本当に心底同情している。自分の事の様に感じているのだった。

 

 

 

「しかし、アティス。お前はほんとに護ってばっかだな? 攻めた方が楽しいと思うぞ!」

 

 休憩をはさんでいる間に、シュナが作ってくれたおやつを美味しそうに頬張りつつ、アティスにそういうミリム。デストロイ! なんて呼ばれてる魔王だから、当然ながら護りなど性に合わない様子。……と言うより、理由はあるが護る必要性も、そして強すぎる故にか護られる必要性もあまりないのかもしれない。

 

「うーん……、どっちかと言うと、オレはあまり攻めるっていうのは……」

「真正のドMって所か?」

「って、誰がドMですか! ヤられて喜ぶ趣味なんかないですからね!!」

 

 確かに防御に特化している事はアティスも認めている。こちらの世界に来るあの時に、堅い身体を願った様な気がする……程度だが、覚えているのだから。

 だけど、だからと言って嬉々として その身体の性能チェックをしたいとは思わないし、したくない。……仲間を護る為! と言う明確な現実に突き付けられた時のみ、その真価を発揮するのである。

 

 と言う事はリムルもよく判っている。なんだかんだ言いながらも、最後には文字通り身体を張って皆の前に立つであろうアティスの姿は簡単に想像できるから。

 

「まぁ、それは置いといて、ガゼル王相手に結構立ち回ってたじゃん? ハクロウも剣技は光るモノがある、って言ってたぞ?」

「ほほう! ハクロウにそう言われたと! 私には到底及ばぬとは言え、その力量は知ってるぞ! 面白そうなのだ! 次、それをやってみるぞ!」

「えぇ……」

 

 ひょんな事から、今度はアティスがミリムの相手? と言う名の訓練をする事になった。

 

 

 

「うむうむ! アティスが堅いのはわたしもよーく知っているぞ! だが、身体の強さと精神の強さは、同じなのだ。ヒカジイからの名付けで継がれた魔素も使いこなせれなければ宝の持ち腐れなのだ!」

「あぅ……、し、しんどい……。身体に悪いです……」

「と、言う訳でドンドン行くぞ! しっかりつかんでみるのだ!」

「良い笑顔しないでくださいよぉ……。なんか ストレス発散に扱われてるよーな気が……」

 

 ぶんぶん、と笑顔で腕を振るミリムを見て、ゾッとするのを今は通り越してる。

 

 

 どかーん、ばこーーん!

 

 

 と何度もミリムパンチ! を受けたアティス。ガビルを護った時みたいに、意識が昇天しかける様な事はだんだんと無くなってしまったが、それはそれで地獄。精神を護る為に、昇天……みたいなものなのに、現実に縛られちゃってるから、ひょっとしたら、廃人…… 廃スライムになっちゃうかもしれないのである。

 

「わっはっはっは! 攻撃ダメとか言っていたがアティス。さっきの攻撃は悪くなかったゾ! 全方位の攻撃とは面白いのだ! 面白いからもっともっとするのだ!」

「あぅぅ……」

「あの技名……剣の世界(ソードアートオンライン)ねぇ。元ネタが判るなぁ。お前が生前()に何が好みだったのかもよく判る」

 

 アティスが前にガゼル王相手に立ち会った時に行った技。金属王(キンゾクオウ)による無数の剣の生成。その名をアティスは そう名付けていたのである。

 何でも、決め台詞ではないが、何かしらの()を付ける事で技の安定化、更には強化が見込めるらしく。アティスは単純に気に入っている名を自身の技名として付けた事で強化が出来た様だ。名付けが重要な要素である、と言うのは最早疑う余地なし、である。

 

「さぁ、もいっちょヤルのだ!」

「そ、そろそろ休憩にしません……?」

「まだまだ余裕なのだ!」

「(オレがもーやばいんです!) ほら、シュナさんがご飯を作ってくれてますよ!? ね? リムルさんっっ!!」

「お、おう。パンモドキとかジャムとか……」

 

 アティスの必死の形相に面食らったリムル。流石に自分もそろそろ休憩を入れたかった、と言う理由もある。

 

「何っ!? よしっ、休憩にするのだ!」

 

 ご飯と聞いて、コロっと意見変えたミリム。色気より食い気……ではなく、暴れるよりは美味しいご飯を食べたい、と言う事だろう。

 大張り切りで、街の方へと向かった。それに続く様にリムルやアティスも向かった。

 

「にしし。しかし2人とも、なかなか良い具合だぞ。攻撃と防御のバランスも良いし、私はどちらが魔王になっても良いと思うのだ!」

「ならねーって」

「右に同じです……」

 

 賞賛してくれるのは嬉しい事ではある。最強の魔王に認められたスライム達。……何気に凄い事なのではないだろうか。スライム界に衝撃、である。

 

 

 

 

 

 その後、美味しい美味しいとミリムはご機嫌。

 更に後には、可愛い服を見繕うと約束してた為、シュナがミリムを連れていってくれた。

 

「ふぅ。シュナにも懐いてくれて助かるな」

「全くです……。研究所で暴れ…… 色々と壊しちゃったら大変ですからね」

 

 これから2人は日課の視察である。

 2人で行くときもあるし、リムルやアティスがバラバラで行く時もあるが、今回は2人でいく。

 勿論それには理由がある。

 

「カイジンも連れてくから、製作所にも寄るぞ」

「了解です!」

 

 

 

 

 

 

 と言う訳で カイジンも連れてやってきたのは回復薬研究所。

 

「ガビルさん、身体の方は大丈夫ですか?」

「アティス様……、吾輩 アティス様の為に今後とも粉骨砕身、この命さえ惜しくはありませぬ!! 次は吾輩を盾にお使いください!」

「いやいやいや。そんな命なんていらないですから!」

「ん。元気そうだな。一応殺す気は無かったってミリムも言ってたし。アティスが護ってなくても大丈夫だったと思うゾ。………多分」

 

 研究所にはガビルもいる。ポーションの現状であるヒポクテ草栽培に携わっているからなのと、前にアティスに護られたとはいえ、ミリムに殴られた事もあって より一層回復薬についての研究に精を出したかったらしい。

 あの恐怖を刻まれたら……、やっぱり回復薬のありがたみが痛い程判る様なのである。

 

 因みに、ガビルは原料部門。研究部門で活躍しているのは、更にもう1人。

 

「よう。調子はどうだ? べスター」

「こんにちはー」

 

 研究部門の責任者はべスター。

 カイジンと同郷のドワーフの1人である。

 

「これはこれはリムル殿にアティス殿。よくぞいらっしゃいました」

「ゆっくりと話は出来てませんでしたよね? べスターさん。改めて宜しくお願いしますね?」

「こちらこそ、よろしくお願い致します、アティス様。……腕がなります。ここで研究をさせていただけている御恩に報いる為にも、頑張りますとも」

 

 ニコリと笑いながら朗らかに話す面々。

 アティスは知らないのだが……、以前べスターとは確執があったらしい。何でも、カイジンがドワーフの国から追放される切っ掛けを造った人物だとか。

 

 因みにべスターは、突然ガゼル王がやってきて放り込んできたのである。

 問題を起こしたとはいえ、かなり有能な人材と言う事もあって、遊ばせるのはもったいない、と言うのとその研究成果を国に持って帰る様に、と言う理由があって此処に来た。

 

 話にしか聞いてないだけなんだが、べスターは土下座しながら小一時間平謝り。

 当事者じゃないから、どうして良いか判らないアティスは、ただただオロオロしてて、最終的には これ以上は めんどくさい、と言う理由とカイジンも許し賛成したということで晴れて魔物の国 テンペストの一員になってくれた。

 

 

 

 

「こちらが最新の回復薬です。……どうでしょうか?」

 

 そして、今日の視察の最大の目的……、それは べスターが研究に研究を重ねた成果をリムルに報告する為なのだ。ドワーフの国では、どう頑張っても上位回復薬(ハイポーション)しか作成が出来なかった。……だが。

 

 リムルは、捕食し……解析。

 

「ふむ。……オレ(大賢者)が作ってるものと同じだ」

「旦那、ってこたぁ、コイツは……」

「ああ、完全回復薬(フルポーション)だ。やったな? べスター」

「おおお!」

「凄いっ!」

 

 ついに、その高い高い壁を……超えたのだ。

 

「……わ、わたしは……わたしは……」

 

 思わず涙ぐむべスター。その肩にはカイジンの手があり、ガビルはお祭り騒ぎ。

 アティスも便乗する様に 光輝く光の粒子を振らせて祝福。

 

「何だかんだあったが、一本気な気質だしな。奇跡でも偶然でもない。日々研究に没頭するべスターなら必然。当然の結果だ」

「でも、凄いですよね?? 素直に褒めましょう!」

「褒めてるじゃん。やったな? って」

「もっともっと! 部下を褒めるのは上司の仕事でもありますよー」

「わかったわかった」

 

 と言う訳で、リムルも加わってファンファーレ、である。

 

 

 その後は、アティスの回復魔法についての話になった。

 

「回復量は、完全回復薬(フルポーション)(ベース)にしてますけど、オレの物真似(スキル)じゃ、8割が限度ですし、そもそも物真似を応用して作ったオリジナル回復魔法だから、ちょっとムラがあるんですよね」

「ふむ……。色々と検証は出来ると思います」

「はい。ありがたいです。流石に意図的に怪我人を出させて、試すっていうのは嫌ですから……」

 

 魔法は基本的に専門外ではあるが、この研究所は回復薬に特化しているので、回復系統であれば色々と検証できるのだ。

 完全回復薬は、損傷し、失った部位をも回復させる。……が、そんなの普通に検証しようと思ったら、実際に色々と取れてるヒトを見つけてくるしかない。あまりにグロい話になるので、割愛する。

 

「と言うか、アティスには 聖母(マリア)がいるから、制御面は問題ないって思うんだが? 効果とかも」

「確かにそうなんですけど……、実際にやってみた方が良いですし、自信にもなるかな、って。それにほら マザーにずっと頼るのも、って思ってますから」

「……もうスキルって呼べねぇよな。お互いに」

 

 自分のスキルなのに、頼ってばかりいられない、って考えるのは 正直間違ってる様な気もするんだけれど、あれだけ人間味を持ってるスキルと一緒にいたら……、とリムルもアティスの言う事がよく判っていたのである。―――今後も頼る事になるが、なるべく自分も頑張る様に、と気合を入れ直すのだった。

 

 

 アティスの話が終わった後、カイジンとべスターは、何やらガゼル王の話で盛り上がってしまっていた。ぜんぜん終わる気配が無かったので、ここで2人は御暇する事になって……問題が起きたのは、その帰りの道中。

 

 

「ふぁ……元素魔法の 拠点移動(ワープポータル)ってホント便利ですよね。……会社と自宅に欲しかったです」

「おっ、同じ気持ちだ。日本で普及して欲しかったよなぁ、コレ」

 

 べスターが設置してくれた転移系魔法陣のあまりの便利さに感銘を受けていた。

 アティスの物真似のスキルでも出来そうな気がするが、入り口と出口をしっかり設置出来ている魔法陣の方が遥かに精度が良い。8割成功する転移と10割成功する転移魔法陣であれば後者を選ぶのが当然。

 

 ……話は逸れたが、問題が起きたのはこの後。

 

「さて、そろそろミリムを、って ええ………??」

「……うわぁぁ。ナニアレ?」

「さぁ……」

 

 2人して、唖然として見上げるのは街の中央広場の方。

 何故なら、街の上空に爆炎? 炎の竜巻?? が発生してるのだから。

 

 

 

「火災旋風……?」

 

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